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【重層世界のフェアリーテイル】おとぎばなしの行方

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【重層世界のフェアリーテイル】おとぎばなしの行方

リアクション

 遺跡内部。
「……で、一通りみたわけだが」
「何かわかりましたか?」
 ドロシーに聞かれた海は、自嘲気味に笑いながら首を横に振る。
「これといって収穫なしだ。見ただけで特にわからないな」
「そうですか……」
「まぁ、一目見ておこうと思ってただけだからな。収穫は期待してないさ……さて、一旦戻るか」
 そう言って海が引き返す。すると、 
「……うーむ」
遺跡の中央部。ウィング・ヴォルフリート(うぃんぐ・う゛ぉるふりーと)が空中を見て、一人唸っているのが海の目に入る。
「何をしてるんですか?」
「ん? ああ、君達ですか……」
 海が話しかけると、ウィングが振り返る。
「あ、もしかして邪魔しちゃいましたか?」
「いや、そんなことはないですよ……空間に【サイコメトリ】をかけていたところです」
「空間にですか?」
「ええ、何か読めるかと。四方に要がある、ということは中央部が怪しいのではないかと思いましてね」
「中央部、ですか?」
 ドロシーが言うと、ウィングは頷いた。
「私はですね、『大いなるもの』というのは闇龍の末端の存在なのではないか、と思うのですよ。例えば、闇と嵐の死龍クロウ・クルーワッハとかね」
「闇龍の末端……」
「他にも色々考えられます。四つある世界の封印を守っている特殊な代物、例えば武具みたいなものがあるのではないか、とか。そういった手がかりを探しているのですが……」
 そう言うと、ウィングは溜息を吐き、首を横に振った。
「他の四か所も回ってみましたが、今の所成果はありません。残念ながら」
「そうですか……」
「ええ……当時の物であるから、何かしら手がかりはあると思うのですが……私が予想したような物は今の所見えてきません。私はもう少し調べていこうと思うのですが、君達は?」
「俺達は一度村へ戻ろうかと」
「そうですか。ではお気をつけて」
 そう言うと、ウィングは再度別の遺跡へと歩いていく。その後ろ姿を見送り、海達は遺跡の外へと出た。

「ここにいたのか、カイ」
 遺跡を出た海達を出迎えたのは、コア・ハーティオン(こあ・はーてぃおん)だ。
「先程小屋に行ったのだが、居なかったから探したぞ」
「俺に用ですか?」
「うむ、先程第三世界から帰ってきてな」
「第三世界ですか……何があったか聞かせてくれますか?」
「その為にカイを探していたのだよ」
 そう言うと、コアは自身が見た第三世界の事を海に話す。
――第三世界は未知の存在『ドールズ』と戦闘状態であるらしい。
 その影響で第三世界は既に数万の被害が出ている。何故『ドールズ』が戦闘を仕掛けてきているか、目的は不明。
 現在、『ドールズ』の本拠地を調べるために作戦を展開している。
「……『ドールズ』、ですか」
「まだある。第三世界ではかつて、ロボット同士の争いがあったらしい。しかもその結果として『大いなるもの』が封印された、と聞いた」
「ロボット同士の争いの結果、『大いなるもの』は封印された? 一体どういうことだ……?」
「そのロボット同士の争いに『ドールズ』……関わりがあるのかは不明だ。しかし気になるのは『大いなるもの』とは人の負の心から生まれた存在なのだろう? 何故そこにロボット同士の争いが絡むのだ?」
「……ああ、また解らないことが増えたな」
「……あのー」
 考え込む二人に、ドロシーが遠慮がちに話しかける。
「ん? おお、君が例の……どうかしたのか?」
「あの、この方は……?」
 ドロシーが視線を向ける先には、彼女の周りをふわふわ……なんて優しい物でなくびゅんびゅんと飛び回る何かがあった。
「やーやー! あなたがドロシーね? あなた歌が上手いって聞いてたから会うのが楽しみだったのよー♪」
「……私のパートナーだ……リトル、名くらい名乗るべきではないか?」
 それを見たコアは頭に手を当て、飛んでいる――ラブ・リトル(らぶ・りとる)に呆れたように言う。
「おっと、いけないいけない! あたしはラブ・リトル! 蒼空学園のアイドル! よろしくね♪」
「……アイドル?」
「自称だ」
 海の呟きに、コアが答える。
「ね、ね! あなたの歌聞かせてよ! あたしもお返しに歌うからさ!」
「……えーっと?」
 どう対応していいのかわからない、という表情で海達を見るドロシー。その表情を見て、どうしていいかわからないという表情になる海達。
「お、そうだそうだ! こんな遺跡の前じゃなくてさ、花が咲いてる村の方で歌おうよ! ほら、ね! 行こう行こう!」
「え? あ、は、はい……す、すみません海様。私は一足先に戻りますね」
「あ、ああ……わかった」
 申し訳なさそうに頭を下げるドロシーを、リトルが急かす。
「……後で会ったならば彼女にすまないと伝えておいてくれるか?」
 コアが溜息を吐きつつ、項垂れた。