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【初心者向け】イコンシミュレーター イコン VS 『何か』

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【初心者向け】イコンシミュレーター イコン VS 『何か』

リアクション


第二章 第1試合

 イコンチーム

 平等院鳳凰堂 レオ(びょうどういんほうおうどう・れお)出雲 カズマ(いずも・かずま)
 セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)
 猪川 勇平(いがわ・ゆうへい)
 雨宮 湊(あめみや・みなと)
 雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)

 巨大化チーム

 曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)
 マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)
 ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)
 エッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)


「不運的な意味で勝てる気がしないんだけど!!」
「あなたに言われたくないわよ!」
「なんで演習の成績が悪かったから強制参加させられてるって知ってるの!?」
「そうなの!?」
「え、ちょっと、え、知ってて言ったんじゃないの!?」
 配置につくなり始まったセレンフィリティと雅羅の応酬に、周囲から思わず笑いが起こる。
 第1試合ということもあり堅苦しい緊張感に満ちていた場が一気にほぐれた。
「二人とも、始まるよ」
「はいはい」
「わかってるわよ」
 レオの一言に、二人はぴたりと言い合いをやめると構えを直した。
 勇平と湊は機体設定の最終確認を行う。
 先ほどとは違う、良い緊張感が場を満たした。
(ほう……)
「さすがですぅ」
 コリマとエリザベートが同時にルカルカを見る。
「良い試合になりそうだね」
 ルカルカは軽く笑うと、まじめな声に切り替え、戦闘開始を宣言した。
「今回の試合、イコンチームはレオがリーダー。セレンフィリティがサブリーダーになるよ。巨大化チームのみんなは好きに暴れてね。それじゃ、開始!」
 
 
「がおー、怪獣だぞー。この街で暴れてみようかねぇ」
 瑠樹は布製のふんわりした可愛い恐竜着ぐるみを着込んで巨大化していた。
「なうー、なうなうー」
「……みゃう」
「納羽、ミーシャ、折角だから遊んでおいでー」
 納羽とミーシャも大きくなった姿で街を動き始める。
「なうー」
 納羽は早速車やビルなどに飛びつき、転がしたりしてじゃれ始める。
「あぁ、ミーシャまで巨大化してる……」
 ミーシャは気ままにビルをぺしぺし叩いては、すぐに飽きて次のビルに向かっていく。
 そんな姿を見たマティエは一人頭を抱えた。
 瑠樹の、にゃんずも留守番ばかりでなく外で遊ばせてやらないと、という思いつきに巻き込まれ参加することになってしまった今回の訓練。
「まぁ、納羽は確かに楽しそうではあるけど……」
 シミュレーションとはいえ戦闘なのだ。ミーシャと納羽が心配でならない。
 いつイコンが来ても守れるよう、マティエは油断なく周囲を窺った。
「みゃう!」
 と、突然ミーシャが走り始める。
 慌てて後を追うと、雅羅の凄まじい枕と遭遇した。
「ま、まさかミーシャ……」
 マティエの想像どおり、ミーシャは凄まじい枕に飛び乗ると、寝ようとしはじめる。
「お願いだから無茶しないでー!」
 マティエに構わずごろんと身体を丸めたミーシャを、雅羅は振り落とすと激突して攻撃する。
「みゃぅ……」
「えええええええええええ……どうして訓練でこんな罪悪感感じるのよ……」
 拗ねた目で凄まじい枕を見ながらシミュレーターから消えるミーシャの姿に雅羅は複雑な思いを抱く。
「ミーシャの仇ーーーーーーーーーーっ!」
「えええええええええええええええええ!!!」
 そこへすかさず繰り出されたマティエの疾風突きを雅羅はギリギリのところでかわした。
「こっちにもいるんだけどねぇ」
「させるかっ!!」
 逃げた先に潜んでいた瑠樹の攻撃が凄まじい枕を直撃しそうになったところに、勇平のIRR-SFIDAバルムングが飛び込んだ。
「おい、大丈夫か!?」
「ありがとう」
 そのまま二手に分かれると、瑠樹とマティエが順に攻撃を繰り出してくる。
 勇平が高初速滑腔砲をけん制として使用し、ビル群に身を隠すと、どこにいたのか納羽がじゃれつこうと飛びついてきた。
 勇平は冷静に距離を取るとスフィーダソードで一刀両断にする。
「なうぅ〜……」
 納羽は悲しそうに鳴くとシミュレーターから姿を消した。
「うーん、困ったねぇ」
「くっ……!?」
 いつの間にか後ろに回りこんでいた瑠樹がのんびりとつぶやきながら素早く疾風突きを繰り出した。
 攻撃直後で避け損ねたバルムングは、バランスを崩す。
 勇平はそのままビルの裏へと勢いで飛び込むと、急ぎ体勢を立て直した。

 セレンフィリティはプラヴァー(高機動パック仕様)で神田周辺を動き回っていた。
 巨大なビルの陰を伝い、慎重に移動する。
「セレン、後方に反応!」
「えええ!?」
 セレアナの鋭い声に、焦った声を上げながらも、素早く機体を横にずらす。
 直後プラヴァーが立っていた前のビルが、綺麗に崩れた。
「敵影7時の方向!」
 セレアナの声にセレンフィリティがその方向を見ると、巨大なメイド姿の美羽が見えた。
「ちょっと可愛いんだけど何アレ!! 見た目の割に攻撃力高すぎるわよ!!」
「なるほど、秋葉原ね」
「なんにせよ、倒さないとね!」
 MVブレードを構えると、プラヴァーを駆り一気に美羽との距離を詰め、斬撃へとアクションを繋げる。
「そうはいかないよ!」
「消えた!?」
 楽しそうな声と共に、美羽の姿が見えなくなる。
「セレン、右!」
「……っ!!」
 突如再び姿を見せた美羽のライトブレードをギリギリでかわすと、そのまま距離を詰め攻撃に転じる。
 確かに手ごたえはあったはずだが、美羽にダメージらしいダメージは見当たらない。
「驚きの硬さなんだけど! 巨大化してるって言ったって生身でしょう!?」
「メイド服の防御力ね」
「わあ、さすがだね! このメイド服、防御力はイコン並だよ!」
 冷静なセレアナの分析に美羽が返す。
「美羽さん、大丈夫ですか?」
 その隙にメイド服となったベアトリーチェがグレーターヒールでダメージを一気に回復した。
「やっぱりイコン戦は向いてないわ……」
 歩兵として、生身での戦闘能力が高い分、あまり得意ではないイコンでの戦闘に感覚がうまく追いつかず苦労するセレンフィリティ。
 一方の美羽は生身の身軽さを活かし、ゴッドスピードで素早く動き回りながら側面や背後からの攻撃を繰り返す。
 セレアナがセンサーで探知しギリギリのところで直撃は避けられつつも、セレンフィリティはなかなか攻撃に転じることができ無い状況が続いた。


「イコン戦について勉強したいんだ。後ろにくっついてってもいいか?」
 湊はCHP008{ICN0004306#プラヴァー}で移動し、レオの乗るCHP009ブケファラスを見つけると声をかけた。
「もちろんだよ」
「よろしくな」
 レオとカズマの返答を聞くと、湊はブケファラスの少し後ろに位置をずらした。
「契約者の中には、生身でイコンに挑む人もいる。注意すべきポイントは2つ。生身の人間はイコンのレーダーで探知ができないということ。次に対イコン武装やスキルを所持しているか、ということ。」
「今回はそのパターンが多いってことだよな」
 レオの言葉に湊が頷く。
「ああ。だから結構大変だと思うぜ? ただ、単座でもそれなりにイコンの力が引き出せるってのは良かったな。本来ならイコンの性質上、地球人とパラミタ種族が一緒に乗っていないと性能は三割くらいしか出せないぜ……っと!」
 カズマが補足していると、目の前に巨大な黒い影が出現した。
 巨大化したエッツェルの姿のおどろおどろしさに、3人は一瞬息を呑んだ。
 繰り出されたカオスディーナーでの攻撃に、ブケファラスがプラヴァーの前に飛び出し、攻撃をはじく。
「湊と合流、浅草地点で接敵。敵数1、みんな状況どうかな?」
 そのままレオがエッツェルから距離を取りつつメンバーに通信を入れた。
「秋葉原地点で交戦中。敵数1、動きが早くて苦戦してしてるわ」
「新宿地点で雅羅と合流、交戦中。敵数2! このままそっちに向かっていいか?」
「こっちも合流していい!?」
「了解」
 応答したセレアナと勇平、セレンフィリティにそう返すと、レオは湊とともにエッツェルに攻撃を開始した。

「あー、どんだけ切羽詰った戦況だか知らないけど、あたしをイコン戦闘に投入するようになったらもう末期戦ねー」
「なら、なおさら生き残るために上達しなきゃね」
 なんとか美羽に一撃を与えると、即座に離れ仲間と合流するために移動を開始する。
 セレンフィリティの言葉にセレアナがそっけなく返した。
「それに今回は打ち上げで料理を食べられるか寂しく後片付けするかがかかってるしね」
「ぐだぐだ言ってるだけじゃしょうがないわよね!」
 セレアナの言葉に気を取り直したセレンフィリティは、速度を上げてレオたちとの合流地点を目指す。
「みんな揃ったね」
「まあ、巨大化チームももれなく勢ぞろいしそうだけどな」
「チーム戦だからこれでいいんだよ」
 カズマの指摘にレオが苦笑いで返す。
 浅草の町並みの中に、参加者が並んだ。
「これはこれは、皆さん」
「お待たせー!」
「悪ぃ、にゃんずがやられたからこっち2人だ」
 巨大化チームも合流すると、エッツェルが不穏に蠢きイコンチームにけん制をかける。
 その隙に素早く作戦会議を行う。
「さて、どうしますか?」
「せっかくだからしばらくはいろんな戦略パターン試してみよっか」
「私も頑張ります」
 美羽の言葉にマティエが頷く。
「んじゃあオレらと美羽たちは前衛だよなぁ。あんたはどうする?」
「では、私は少し後ろに下がります」
「うん! よろしくね」
 エッツェルが後ろに下がったのを合図に、イコンチームも動き始める。
「イコンは四機で組むのが効率がいいんだ。成果を上げるには必須だな。それから、攻撃系のスキルは基本的にイコンじゃ使用できないから気をつけるんだ。二刀流をするならそれに応じたスキルが必要になるぜ」
 街を駆け抜けながらカズマが説明する。
 イコンチームは雅羅を後衛に置き、残りのメンバーが前衛、レオが臨機応変に動き回り、さまざまな状況における戦い方を再現していく。
 そんな中、瑠樹とマティエの素早い疾風突きにより、イコンチームの編成が崩れる。
「セレン! 1体足りないわ!」
 各機の配置を確認したセレアナが、敵が1体前線から消えていることに気がつき声を上げる。
「どういうこと!?」
「きゃあああああっ!」
 セレンフィリティが反応するのとほぼ同時に背後から雅羅の悲鳴と大きな音が響いた。
 美羽が混戦状態の中心部から素早く抜け出し、素早く後ろに回りこんでブライトマシンガンで雅羅の凄まじい枕を攻撃したのだ。
 美羽はそのまま距離を詰めると乱撃ソニックブレードで雅羅にとどめを刺す。
「お二人とも、避けてください……!」
 エッツェルの合図で前線で動き回っていた瑠樹とマティエが左右に飛ぶ。
 そこに、エッツェルが歴戦の魔術を乱射する。
 イコンチームが回避行動を取っている隙に美羽が再び回り込み、前線に合流した。

 控え室ではコルマたちが戦況を見守りながら意見を述べ合っていた。
(まずは後衛を潰したか) 
「今のは背面センサーの見落としだな。機動性が勿体無い」
(反応が遅れていたのは事実だな。前に気を取られすぎたのであろう)
「ああ、そもそも……」
「ダリル、教導団以外の人って評価や評論される事に慣れてないから、マイクからは流さないでね」
 ほどほどにしてあげて、と笑うルカルカの言葉に、ダリルは言いかけた言葉を飲み込む。
(ならばテレパシーで行なおう)
 ダリルはテレパシーに切り替えると、戦況についてコルマと論じ合うのだった。
「今の巨大化チームの攻撃は、連携の重要さを知ってるからこその作戦だね」
「後ろにばかり気を取られていると、今度は前が危ないですぅ」
 そう言うと、エリザベートは身を乗り出してシミュレーションを見守るのだった。

「悔しいけど、見事だね」
「とりあえず、数合わせはしないとね。左に行くわよ!」
 レオに伝えると、セレンフィリティは一気に加速をかけ、標的を瑠樹に絞る。
「……いくぜ、バルムング。俺は絶対にお前を使いこなしてみせる……だから力を貸してくれよ……俺も行くぜ!」
 勇平も瑠樹に向かうと、セレンフィリティと連携し、さまざまな方向から攻撃を仕掛けていく。
「どっちから潰そうかねぇ」
 困ったように呟く瑠樹にセレンフィリティはヒット・アンド・アウェイで攻撃を繰り返す。
 セレンフィリティの攻撃がヒットした瞬間、勇平が高機動で瑠樹の懐に掻い潜るとスフィーダソードで一刀両断にした。

 レオはカズマと共に機敏に動き回るとさまざまな状況を作り出し、戦闘の流れを湊に実践で伝えていく。
「うわっ!!」
 後方で魔術攻撃を仕掛けていたエッツェルが突然前に出ると、湊のイコンに異形左腕で喰らいついた。
「くっそお!!」
 引き離そうと武器を振り回す湊。
 レオはエッツェルの後ろに回りこむと新式ビームサーベルで斬り付けた。
「これはこれは……」
 再び新式ビームサーベルを構えるレオに対し、エッツェルはサーベルごと、強引なカウンターを喰らわせる。
「アンデッドか! 湊、アレは倒すのは難しい。動きを止めることを最優先で考えよう」
「お、おう! でも、その傷大丈夫か?」
 一部外装に傷が付いたブケファラスを見て心配そうな声を上げる湊に、レオは笑って返す。
「大丈夫だよ。奇襲で重要な機関を破壊されると継戦が難しくなるけど、2機でカバーしながら戦えばまず負けないから、落ち着いて対処すること。イコンの機晶コーティングは普通の攻撃じゃ突破できないし、対イコン武装は『イコンに傷がつけられる』だけであって、互角ってわけじゃないからね」
「そうか。じゃあ、行くぜ!」
 湊はプラヴァーを駆り一気にエッツェルとの距離を詰める……と見せかけて、急速転回すると、横に潜んでいた美羽に銃剣付きビームアサルトライフルで攻撃を仕掛ける。
 ベアトリーチェが咄嗟にメイド服の装甲を変化させ、アサルトライフルの軌道に沿って装甲を厚くした。
 ベアトリーチェの機転で致命傷は避けられたものの、直撃の衝撃に少し動きを止めた美羽。
 そんな美羽の前にエッツェルが移動する。
「私の後ろで回復していてください」
「ありがとう。でも、そういうわけにはいかないよ」
 ベアトリーチェにグレーターヒールをかけてもらいながら美羽が苦しげに立ち上がる。
「なぜですか? 私はアンデッドなので大丈夫ですよ」
「仲間に盾になってもらうわけにはいかないもん!」
 一連の状況を見ていた控え室からは妙な歓声が上がっていたのだが、戦闘中のメンバーは知る由もない。
「美羽さん、もう大丈夫です!」
 ベアトリーチェの声と同時に美羽は即座に体勢を立て直すと、左右からつっこんできたレオと湊の機体をエッツェルと共にはじき返した。
「ラチが明かないな!」
「デカイ攻撃のが効率は良いが……エネルギーを使用する兵器は強力なものが多い分、稼働時間が減ったり、チャージに時間がかかったり、反動が大きかったり、デメリットもあるぜ」
 だいぶイコンの操縦に慣れ、攻撃に余裕の出てきた湊がしびれを切らす。
 ちょうど良い機会だと、カズマがエネルギー攻撃についても伝えるのだった。

「残り3分だよ!」
 シミュレーター内にルカルカの声が響く。
「カズマ、ブケファラスは頼んだよ」
「ああ」
 レオは煙幕で死角を作ると機体を降り、エッツェルへと生身で直接攻撃を叩き込んだ。
 想定外の足元からの攻撃にエッツェルがバランスを崩す。
 美羽はその隙に街を駆け抜けると、湊のプラヴァーとブケファラスを一気に潰しにかかった。
 マティエも潜んでいたビルの裏から飛び出すとセレンフィリティの機体に疾風突きで突っ込む。
 すかさず勇平がスフィーダソードを構え飛び出すと、マティエを両断した。

「そこまで!」
 ルカルカの声に、シミュレーター内の景色が消える。
「イコンチーム有効戦力1機。巨大化チーム有効戦力3体。巨大化チーム勝利!」