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魔法の森のミニミニ大冒険

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第4章 大きいことはいいことだ



エリザベート達が蟻の群れから逃走を試みていたのと同時刻、霧が立ち込める森の別の場所には、アキラ・セイルーン(あきら・せいるーん)とそのパートナーたち一行がいた。
彼らも又、エリザベート達の捜索と救出のために、霧が立ち込める森の中に突入していた――――のではなかった。

「天国だ………」

アキラはそうつぶやくなり、ごろりと横になった。

「ワタシ、もうお腹いっぱいだヨ…」

そう言ってアキラの横に座り込んだのは、パートナーのアリス・ドロワーズ(ありす・どろわーず)だった。

彼らはちょっとした野外ステージ程の広さを持つ、木のトレイの上にいた。トレイには一緒にハートや星の形のクッキーや、生クリームがいっぱいにかかったシフォンケーキ、宝石のように光る果物の砂糖漬けやチョコレートが並んでいる。そのどれもが、両手で抱えないと持ち上げられないくらいに大きかった。

「まったく…動けなくなるまで食うこともあるまいに。食い意地の張った奴らじゃのう」

同じくアキラのそばに立つルシェイメア・フローズン(るしぇいめあ・ふろーずん)が呆れたように言うと、傍にいたセレスティア・レイン(せれすてぃあ・れいん)もクスクスと笑った。

イルミンスールの校長たちの呼び声を聴いてとりあえず森にやってきたアキラは、霧の中に一度足を踏み入れた時に、あることに気が付いた。それは、霧の魔法がかかって小さくなるものはあくまでも「自分の身体」と「身に着けている服や道具」のみであって、それ以外の物の大きさは変わらないということだった。

――お菓子とか持ち込んで自分たちだけ小さくなれば好きなだけ食べ放題じゃん!

閃いたアキラは早速パートナーのセレスティアにお茶とお菓子が入ったトレイを用意させた。そしてルシェイメアの如意棒を使って、先に霧の中にトレイを運び入れ、自分たちは後から小さくなって、大きさの変わらないお菓子セットのもとにやって来たのだった。

そうやってアキラ達がお茶会を楽しんでいると、ふいに近くの草がガサガサと揺れだし、やがてその間から青年が頭を突き出した。

「うわっ! 君たち、ここで何をやっているんだ!?」

青年――エースが声を上げる。ほどなくして草むらからエリザベスとその救出グループ一行も姿を見せた。

「何って…お茶会だけド?」

アリスがさも当然といった口調で答える。

「お茶会って…あなた達、人が蟻に襲われてる時になにやってるですぅ!」

エリザベートが地団太を踏んで怒るが、特に気にも留めずにルシェイメアが答える。

「お、エリザベート達は見つかったのかの? それはめでたい。ほれどうじゃ、一緒にお茶でも」
「せっかくのお誘いはうれしいけど、俺たちは今蟻の群れから逃げてるところなんだ。ここも時期に奴らが来るから危ない。早く逃げた方がいいぜ」

エースの言葉に、アキラは顔を曇らせた。

「困ったなあ…。逃げるにしてもお腹いっぱいで動くのはしんどいし、かといって戦うのも面倒くさいし」
「あの、どうせなら蟻さんたちにお菓子をあげちゃえばいいんじゃないでしょうか? たぶん私たちだけではこのお菓子は食べきれないですし。時間稼ぎにもなるんじゃないでしょうか?」

セレスティアの答えに、ルシェイメアも賛同する。

「フム。いい考えじゃ。そうと決まればお菓子でバリケードを作るぞ」
「あー…俺は動けないから、セレスティアとルシェイメア、よろしくね〜〜」
「やれやれ、仕方のない奴じゃの。ゆくぞ、セレス、アリス」
「はい」
「リョウカーイ」

あくまでもお菓子のそばから離れようとしない主をそのままにして、ルシェイメアとセレスティアとアリスはエリザベートたちと共にお菓子のバリケードを作り始めたのだった。