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リアクション
☆★☆★☆★
古城のホールに、数十年ぶりの光が見える。
セレンフィリティから話を聞いたラズィーヤが、父親にお願いして、豪華な、とは言えないが、短時間で準備したとは思えない規模のパーティーを開いていた。
「是非、踊りを……」
後に続く言葉は声になっていなかったが、
「勿論だよ」
楽しそうに微笑む少女へリアトリス・ブルーウォーター(りあとりす・ぶるーうぉーたー)は微笑み返した。
立ち上がったリアトリスの周りの空気が、少し変わる。一瞬で静かになったホールに、力強くも軽快な足音が響いた。
着ているチャイナドレスの裾が意思を持つかの様に動く。 しなやかに動く指先は、見ている者を魅了する。
そして、踊り終えて一礼したリアトリスに、皆が大きな拍手を送った。
「とっても素敵!」
少女の笑顔は、本当に幸せそうだ。
その少女の傍に、超感覚を使用した狼姿のスプリングロンド・ヨシュア(すぷりんぐろんど・よしゅあ)が居る。触れられないのは残念だけど、と、少女は笑った。
「わたくしにも、触らせてくださいな……!」
と、そこへ百合園の生徒がやって来て、あっと言う間にスプリングロンドは女生徒に囲まれてしまった。
困り顔で彼はリアトリスを見たが、にこやかにその様子を見るリアトリスに、スプリングロンドは諦めてもふもふされる事にした。
「皆様、静かに……」
女生徒が気付いたのは、スプリングロンドに寄り掛かる様に、眠りに落ちた少女の姿だった。
幸せそうに眠る少女はゆっくりと消えてゆき――
やがて、完全に見えなくなってしまった。
「願いは、叶えられたのかしら」
その様子を見ながら、誰に言うでなく、セレンフィリティは言った。
少女の願い、それはもう一度、この城に人の笑い声を――。
「墓守姫さん?」
暗くなった古城の庭で、墓守姫はゆっくりと、空を見上げた。
「……いくのね」
そう呟いた墓守姫の視線を、姫星も一緒に追った。
「……そうですか、判りましたわ」
シュリーからの連絡で、老婆が旅立った事を知ったラズィーヤは、深く、息を吐いた。
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