空京

校長室

【2020修学旅行】東西シャンバラ修学旅行

リアクション公開中!

【2020修学旅行】東西シャンバラ修学旅行
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リアクション

 
『やけに盛り上がってると思ったら、こういうこと』
『どうするの? 秋葉原のアイドルとして、このまま黙って見過ごすつもり?』
『ま、放っておきましょ。どうせ今日限りですもの。あんなに首振って熱狂してる人たちも、明日からは私たちの前で同じことをするわよ、きっと――』
 
 中央通りにそびえる巨大ビルの屋上から、複数の人影がイベント会場の様子を伺っていた。
 そのまま高みの見物を決め込もうとしていた彼女たちは、しかし上空に現れた一機のロボットを見かけて態度を変える。
 
『ロボットですって!? ……そう、あなたたち、本気で秋葉原を我が物にするつもりなのね』
『アイドルは見過ごせても、ロボットは見過ごせませんわ!』
『……そうね、ここで彼らの蹂躙を許しては、私たち『ARB28』の名折れだわ。……行くわよ、あなたたち!』
『はいっ!』
 
 彼女たちの声が響くと同時、どこからともなくロボットのパーツが出現し、それらは組み合わさって一つの人型機動兵器を形成する。
 陽光を背に受け、完成したロボットがブースターを噴かし、屋上からダイブする――。
 
「サマーバケーションでパッフェルちゃんが葦原公式水着なのはなんでだ!」
 コクピットの中で、桐生 景勝(きりゅう・かげかつ)が今まで聞き損ねていた疑問をぶつける。
(景勝、それを確認するためだけにイコンを……? まぁ、いいです。どうせ今回も一撃でやられてしまうでしょう。でもいいんです! 私には撃墜された後、薄くて高い本を買う作業が待っているんです! さぁ、遠慮無くガツンとぶっ飛ばしてください!)
 同じくコクピットで、男同士がキャッキャウフフと組み合う本を想像して夢見心地のリンドセイ・ニーバー(りんどせい・にーばー)の思いが通じたか定かではないが、突如何かに押さえ付けられる衝撃を受ける。
 
『あなたの疑問に、私たちが答えてあげましょう!』
 
「な、何だぁ――」
 ワケがわからないといった様子で呟く景勝は、今度は機体が浮き上がる感覚に襲われる。モニターには、自機体が別のロボットに掴み上げられている光景が映し出されていた。
 
『葦原公式水着は、胸が強調されるデザイン……それを着ることで、胸をアピールポイントに出来る!』
『あの位置にいる以上、そうでもしなければアピール出来ないのです!』
 
 何故か自信たっぷりに言ってのけた謎のロボットが、フッ、と掴んでいたイコンを放り投げ、落ちてくるイコンへ渾身のアッパーを見舞う。
 
『ちなみに他の3名は、胸以外の要素……腋、脚、食い込み、紐パンといった要素でアピールしているのですわ』
『腋はいいですわよね』
 
 空中で爆砕するイコンの欠片が降り注ぐ中、重厚なフォルムを光らせるロボットを見上げて、辛うじて脱出を果たした景勝が震える声で問いかける。
「ど、どうしてそこまで知っている……? 見てきたはずはねぇだろ?」
『フフ……愚問ですわね』
『ええ、愚問ですわ』
『ですが、特別に教えて差し上げましょう。何故なら……』
 
『私たちは、アイドルだから!』
 
 ビシッ、とポーズを決めて迷いなく告げる彼女たちの登場に、イベント会場は騒然となり始める。
 
 一方その頃――。
 
「……ん……あら、ここは……?」
 暗がりの中で目を覚ました御茶ノ水 千代(おちゃのみず・ちよ)が、直前の記憶を探りつつ現在の位置を確認しようと立ち上がると、突如バッ、と明かりが灯される。細めた目で辺りを見渡した千代は、パートナーの水都 塔子(みなと・とーこ)他、多くの生徒たちの姿を確認することが出来た。しかもそれは、かつて『秋葉原四十八星華』の認定を受けた者たちばかりであった。
 
『よく集まってくれた。早速だが、君たちはロボットになって戦ってもらう』
 
 響く声に千代が視線を振り向けるが、声の主は見当たらない。どこかで聞いたことがあるようなないような気がする声だが、誰なのか思い出せない。
「あれ? 今なんかおかしいこと言わなかった? 『ロボットになって』ってどういうこと?」
 塔子の疑問は(そこ以外にも疑問はあるだろというツッコミはさておき)尤もであり、普通は『ロボットに乗って』となるはずだろうに、今の声は明らかに『ロボットになって』と言っていた。
 
『それはすぐに分かることだ。さあ、時間がない。行くぞ』
 
 ろくに説明もしないまま、声が途切れると同時、千代を始め生徒たちが光に包まれていく――。
 
「頼む、リフルに会わせてくれ! 俺は……俺は、リフルに告白する!」
「勘弁して下さいよぉ〜」
 騒動のゴタゴタに紛れる形で、楽屋に押しかけリフルに会いに行こうとする百々目鬼 迅(どどめき・じん)を、どこかで見たことがあるような気がするスタッフが必死に制する。
「なぁ、ティセラでもミルザムでもいいんだけどさぁ、どうしたらそんなに胸がでっかくなるんだ? なんか秘訣でもあんのか?」
「ひ、秘訣なんて知りませんっ。行く先々で踊りを披露している内に、いつの間にか……」
「わたくしも、これといったことはしておりませんわ。そうですね、一種自信のようなものを持ち続けていれば、胸に限らず女性は皆、磨かれていくのではないでしょうか」
 その横では、ティセラとミルザムにシータ・ゼフィランサス(しーた・ぜふぃらんさす)が色々と質問を投げかけていた。
「ふーん、じゃあさ、率直に聞くけど、あいつのことどう思う?」
 ニカっ、と笑って迅を指すシータに、二人は視線を向けて、見たままを答える。
「頼りなさそうな印象を受けますね」
「ついからかって遊んでしまいたくなる方ですわ♪」
「そっかー。……迅、春はまだまだ先みたいだぞ
 哀れむような視線を向けるシータ、その直後、ステージがうっすらと光り始める。
「わーわーすごいすごーい、歌にロボット、次はどうなるのかなー。あきはばらってすごいですねー」
「おーおー」
 事情がよく分からないながら楽しんでいた北條 あげは(ほうじょう・あげは)ケイ・ピースァ(けい・ぴーすぁ)、他観客が見守る中、突如ステージが音を立てて二つに割れたかと思うと、地下から何かがせり上がってくる。
 ガシャン、と音を立てて止まったそれは、現れた人型機動兵器と同じ……ように見えるロボットであった。
 
「秋葉原四十八星華が一人、魔法少女アイドル・マジカル☆カナ、参上ですよ♪ 皆、今日は萌え燃え☆ で行こうね〜!」
「……おい、どうしてこうなった……まぁ、こまかいこたぁいい、か。歌菜も楽しそうだしな」
 ロボットの『脚』として、やたらと前に進み出そうとする遠野 歌菜(とおの・かな)を、長槍としてロボットに装備されながら月崎 羽純(つきざき・はすみ)が見守る。
「いやん……ああっ、足踏みする度に声が出ちゃうッス――いやんっ!」
「さあ、私の煙を吸って皆、自分をさらけ出してしまいなさい!」
 もう片方の『脚』として、赤いカラーリングが映えるサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)がガシャン、ガシャンと脚を動かす度にえろい声をあげ、吸うと老若男女関係なく脱ぎだしてしまいたくなる煙玉になったヨーフィア・イーリッシュ(よーふぃあ・いーりっし)が、どこかSっぽい雰囲気を醸し出しながら言い放つ。
「…………」(例えこの無茶振りにおいても、奥ゆかしく、しかし皆を支える足として振る舞うのが、秋葉原四十八星華の一員としての務めであります……!)
「えっとさー、どうしてカナリーちゃんまで足なわけー? そりゃ確かに用意したのは『もりがみフィールド』だったけどさー、まさかここまでいじられるなんて思わなかったよー?」
 二人の脚のさらに下、『足』としてマリー・ランカスター(まりー・らんかすたー)カナリー・スポルコフ(かなりー・すぽるこふ)がロボットを大地に立たせる重要な役割として振る舞う。
 まさか『もりがみフィールド』(効果:四十八星華キャラクエ生みの親が見てるという、敵味方問わずいじられるフィールドを形成する)を用意したカナリーも、ここまでになるとは思いもしなかっただろう。だがしかし、ガイドには『持ってきてください』とは書いていないのである。
「ぬぉわーっはっはっはっは、こう来るとは我輩も予想出来なかったぞ! よろしい、ならばこの我輩自ら、『自爆は男のロマン』であることを刻みつけてくれるわ!」
「……ちょっと待て、自爆すれば当然、あたしらも吹っ飛ぶだろが!」
「大丈夫だ、問題ない。その時は私の高出力バリアーで、私たちは無事、相手には大ダメージがいくようにする。……そう、これが魔法少女の力……!」
「……とても大丈夫には思えないんだけど……ま、やると決めたからにはやるしかねぇ! 正攻法で勝負してやる!」
 ロボットの『胴体』として、青 野武(せい・やぶ)が中心、その上下に弁天屋 菊(べんてんや・きく)夜薙 綾香(やなぎ・あやか)が配置される。自信たっぷりな様子の野武と綾香に、一人菊が不安を感じつつも、挑まれた勝負は退くわけにいかないと、自らを奮い立たせる。
(うふふ、綾香、張り切ってますね。私も楽しませてもらいますよ。ええ、悪魔らしいやり方で……)
 ロボットの背中には、秋葉原に飛び交うデンパを受信し、機体や武器の稼働エネルギーとするシステム、『アキハバラシステム』となったアンリ・マユ(あんり・まゆ)がその受光部を光らせ、エネルギーを充填する。
「うふっ……うふふぅ……うふふふっ……」
「おい、マリーア……ダメだこいつ、完全に『卵焼きを作る』→『食べる』のサイクルに入ってやがる……どうする、あえて持っていかないのも手か?」
 『自動卵焼き器』となり、自ら作った卵焼きを食べるを繰り返して至極満悦といった表情のマリーア・プフィルズィヒ(まりーあ・ぷふぃるずぃひ)を、それを持つ『手』となった橘 カオル(たちばな・かおる)がここに置いていくべきかどうかを本気で悩み始める。
「僕は腕ですか。この腕はロケット内蔵で飛ばすことが出来るんですよ。……ただ、一発撃ったら撃ちっ放しで戻って来れませんけれどね」
「あっ、僕と同じだね! 歌って踊れるロケット腕なんて中々クールだろっ!?」
 ロボットの『腕』は、片方が青 ノニ・十八号(せい・のにじゅうはちごう)、もう片方が飛鳥 桜(あすか・さくら)となり、両方ともロケット内蔵で飛ばすことが出来る(そして戻ってこない)仕組みとなっていた。
「アイドル“が”ロボットになってバトルなんて、何その俺すら得しないイベント!? こんなんじゃナンパにも行けないっつーの!」
 ロボットの肩口には、一対のスピーカーになったフランシス・フォンテーヌ(ふらんしす・ふぉんてーぬ)がアイドルのナンパに繰り出せないことを悔しがっていた。
「……なぜ僕がこんなところに……なぜ僕が頭なんかに……というか、ドクロを持ってきたせいでドクロそのものになってしまった……」
「わぁい、人がちっさく見える〜! 楽しいねぇ、フリッツ!」
 ロボットの『頭』として、実は秋葉原四十八星華だったフリードリッヒ・常磐(ふりーどりっひ・ときわ)が、持ってきたドクロの影響でドクロになってしまった自身を嘆きつつ、上下左右に動いたりヘドバンをしてみたりしていた。そして、一緒に頭になったゴルゴルマイアル 雪霞(ごるごるまいある・ゆきか)はと言うと、フリードリッヒと一緒に来られたことが単純に嬉しいようで、終始はしゃいでいた。
(あら、ドクロに幽霊、ピッタリじゃないですか。いい感じです、こんな雰囲気の中でも秋葉原のアイドル達は、皆に夢や希望を与えられるのでしょう?)
(今まで秋葉原四十八星華にあこがれて下積み生活を重ねてきたあたい……ついに今、四十八星華の一員としてデビューできたんだ!)
「うわ〜、こんなんじゃ殴りに行けないじゃない! ということは他の皆に期待するしかないわね! いけー、秋葉原四十八星華は、ヤワなアイドルじゃないんだぞ〜!」
 そして、ロボットの意のままに動くオプションとして、幽霊姿の緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)がどこか楽しげな様子で周囲をふよふよ、と漂う。
 それだけならドクロの頭にピッタリなのだが、流石にアイドルとして悍しすぎるとされたか、ドクロの額には親魏倭王 卑弥呼(しんぎわおう・ひみこ)の日輪が掲げられ、後頭部から首筋にかけては霧雨 透乃(きりさめ・とうの)の光のヴェールがふわりと舞い、幾分雰囲気を軽減しているようであった。
 
『完成だ! さあ、皆の者! この『秋葉原四十八星華ロボ』で戦うのだ!』