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オークの森・遭遇戦

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オークの森・遭遇戦
オークの森・遭遇戦 オークの森・遭遇戦

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第6章 決着

6‐01 撤退

 続々、殿の待つ方角へ向け、撤退していく仲間達。
 撤退においては、敵の反撃は免れない。攻め寄せてくる、オーク達。
「我等の任務は生き残ることが最優先。ここで死ぬわけにはいかないっ!」
「戦闘続行は危険です。撤退を提案します」
 レーゼマン、イライザが、散っている兵らに声をかける。
「三十六計逃げるに如かずでござる!」
 伐折羅も、風次郎に合流。今からは、撤退戦に入る!
「撤収開始……銃弾の雨をお見舞します」
 クリスフォーリルも、すでに木から下り立っている。霧島も、行動は手早い。
 ソルジャー達の、スプレーショットを合図に、一斉に退く、獅子小隊。
 クライス、レオンが殿軍になり、円陣を保ったまま、迅速に動く。
「この薔薇が一人や二人で手折れるものだとは思わないことです……って三体きた、たすけてー!?」
 そこへ、ローレンスも加わり、防戦。
「次! どうした、その程度では私は倒せぬぞ!」
「おんどりゃあああ!忍の体術でござる!」
 ここぞ、戦場狭しと駆け回る、伐折羅。
 しかし立ち退いては、攻め寄せる、オークの群れ。
 セシリアが、オークの足もとに火をつけ、追っ払う。
「シャンバラの獅子の妹の力??舐めるななのじゃ!」
「セシリアさんっ、あまり前に出ては……」
 ファルチェが、しっかりとフォローする。

 と、森奥で、オーク・キングの、凄まじい叫びが上がった。
 一瞬、戦場が凍てつく。
「何だ、どうなったんだ?!」
 獅子小隊とすれ違って、鈴木 周とレミがその方向へ、走っていく。
 懸命に、キングと打ち合う、クルードと村雨。腕を落とされているが、怒りで槍を縦横無尽に打ち振るうその乱撃は脅威そのもの。
「……クッ、……!」
 クルードのカルスノウトが払われる。
 ユニが、駆けつけてくる。「……ユニ、危険だ……」
 村雨も、今は回避するのに、必死だ。アリシアも、走り寄ろうとする。
 燕、百鬼、戦場の乙女達は、周囲のオークを寄せ付けないように牽制を続ける。
 ユウが、尚キングに向かう二人を止める。
「これでは、無理です! 二人とも、退きましょう。ベアさん、二人を……ってベアさん??」
 ここへ来て、
「前に出る。マナ……無茶する頼むぞ!」
「馬鹿熊! 下がって! あんなんまともに戦えるわけないじゃない!」
「……くっ。皆間合いを取って! オーク王と戦ってる皆をカバーするよ!」
「馬鹿熊!」「ベアさん〜〜!!」ベアを止める、ユウとマナ。
「クルードさんお願い、光条兵器を使って!」
 ユニの服が破れて、クルードの身丈程もある銀の剣、「銀閃華」が光を放って現れた。
「このままじゃ、もたないどすえ!」
「今や、戦闘続行は困難。撤退の時であろう!」
 ヴィンセントと飛鳥も、防戦に加わっている。
「はぁぁぁ! 爆炎波!」
「俺の太刀、漆喰を受けな!!」
「……銀閃華……!!!」
 そこへようやく! 周が、森奥へ到着した。
「皆! 待たせた。バックスチームは準備万端だ!」
「……俺は負けない……どんな奴が相手でも……」

 キングが、再び雄たけびを上げる。森中に響く、雄たけびだ。
 オークに全軍突撃の号令がかかった。



6‐02 火

 ベオウルフ、バックスチーム。
 先ほど、森奥で救助を受けた兵、それから、獅子小隊が、無事、殿へ戻るのを迎えた。
 後は、同じベオウルフ隊の、フロントチームとの再会を待つばかりだ。いや、そして、オーク達と、キングの殲滅を……
 その時は、来た。
 森の木々の向こうに、喚声、すぐに近付いてくる。
 最初に、オークが出た。手負いだ。
「待って、トラップは、まだ……!!」
 続いて、村雨 焔!
 左右に、オーク二匹を相手にしながら走っている。が、光条兵器の「漆喰」で、すぐにそれを打ち払っていく。前の一匹も、村雨の刃に倒れた。
 今度は一度に、十数名が駆け出てくる。
「……よく見極めて。味方だ、トラップは勿論、まだっ」
 中心に剣の花嫁達、それを守るように、ヴァルキリー、機晶姫達。周が導いている。すぐ後ろに、燕……それから百鬼が、リターニング・ダガーをキャッチ。一匹付き纏っていたオークを倒したようだ。それに、あれはヴィンセント……?
 次に、オークが、四、五匹、……六匹!
 どうした、クルード、ベア、ユウは、まだか……!
 牙竜が、たいまつ片手に、帰ってきた村雨と、もう一方で手を打ち合う。「牙竜! 戻ったぜ……!」
「ケンリュウガーだ、今はな」
 ケイ、リアストラがワンドを構え、魔力を高め始める。
 オーク六匹が倒木の位置へ入ったが……「まだ……オークの数は、こんなものではない筈です!」
「じゃああいつらは、俺の獲物だ」
 侵入を許してしまったオークに、ケンリュウガーが立ち向かう。
 仲間達、ケンリュウガーと入れ違って(「??!!」Byヴィンセント&飛鳥。すかさず「いつものことだから気にしないでいいよ!」Byリリィ))、続々、トラップのこちら側へ戻ってくる。
 しばらく、ケンリュウガーとオークの打ち合う音以外、静かになって……
 次の瞬間。
「で、出た!!」
 ドザーーーッ
「キ、キングだ!」
 そしてそれと剣を交わしながら、走ってくるのは、確かにクルード、ベア、ユウの三人だ! クルードの黒いマントはずたずたで、ユウの盾は、半分になっている。ユウはキングの攻撃を防いで、クルードの剣も、攻撃が防御という状態だ。ベアは、周異にいるオークと移動しながら交戦している。傷も多い。
「ああまずい!!」
 敵味方入り混じったままなので、倒木地点一を抜けてしまう。
「間に合わない!!」
 ギャザリングへクスで魔力を増強した、緋桜 ケイが前に出た。火術をぶち込んでかたを付けたいところだが……!!
「氷術!」
 ケイの放った冷気がオーク達の足もとを凍らす。
 これで一気に、ユウ達は突出し、トラップ地点を切り抜けた。周が導き、落とし穴の前で、止まる。
 オーク精兵が隠し持っていた屈強な弓兵が、矢をつがえる。
「雷術!」
 ケイの魔法が、敵の武器を打ち落とす。
 ロープを切り崩すケンリュウガー、ウィング。オーク弓兵が倒れ、退路が断たれる。こうなると、オークには突撃しか残されてない。
「き、決まった!」
 声をもらすウィング。
 クルード達が避けると、オーク達は見事に、落とし穴にかかっていった。すでに、火は放たれている。楔に掛かり、火を逃れられず、オークの呻きが聞こえ、それもやがて萎んでいく。
 この図を描いた、ウィングにはとりわけ、もちろん、落とし穴を作ってきたベオウルフ、バックスチームには、むろん、勝利を願ったベオウルフ隊、すべてのものにも、達成の瞬間。
 だが、やはり……これで死ぬキングではなかった、というわけだ。
 箒にまたがり、ケイ。
 キングの周囲を、ゆっくりと回る、リアストラ。
 妖しい火の匂いを含む空気が、立ち込め始めた。熱気が、すでに辺りの風景をゆらめかせ始めている。
 リアストラから、呪文が漏れ出した。皆には、よく聞き取れない。
 リアストラが地にワンドを突き立てると、姿を現した火が狼のような姿に変わり、キングに立ち塞がる。それを払いのけながら、トラップから這い上がるキング。火が、周りの枝葉に燃え移る。
 その空を旋回し、伸ばした両手に集めた火をキングへ投げ打った。





 辺りは、完全に火に包まれた。宵の色はここにはなく、一面、火の色。
 今、落とし穴を隔てて、焼けるオークの黒い煙の向こうに、キングの影が浮かびあがっている。
 箒から降り立ったケイ、リアストラを前に、それと対峙するベオウルフ隊。 
 もう、攻撃の手法はなかった。
 キングも、それは同じだ。
 火と煙が、全てを覆い始めている。
 燃え盛る森の奥へ消えていく、キングの影……
 ベオウルフ隊も、一人、一人と、殿の待つ方へ向け、ここを去っていった。





 最後に、ケンリュウガーが残った。
 一枚のカードを、ここに残していく……そこにはこうあった。
「ケンリュウガー参上!」
 ……
 彼が去ろうとしたとき。
「うう、うっ……」
 落とし穴に嵌って、焼け残っている者発見。
 パラミタ刑事シャンバランだった。
 手を差し伸べる、ケンリュウガー。

 森奥へ消えたキング。謎のカード。そして、ケンリュウガーとシャンバランの出会い。
 ……これは一体、何を意味するのだろうか。……





6‐03 戦いの終わり

「しっかり、……!」
 森が火に包まれ行く前、すでに戦跡となった森奥で、血に浸ったその男を助け起こすのは、宇都宮 祥子だった。
 もう誰もない、オークも、戦士達も消えた森の奥で眠る男、ネイト・フェザーを。
「……大丈夫だ。俺は、歩ける」
 ネイトは傷を負いながらも、強靭な生命力を見せた。
「セリエ。裏の道を、通って行くのよ」
 宇都宮とセリエは、ネイトを抱え、これまでの探索で通ってきた安全な道を通り、殿を目指した。





 殿(しんがり)。
 レーヂエ、獅子小隊は、森奥で戦って傷付いた者を回収し、帰還。
 レーヂエはわりとしょんぼりともしていたが……騎凛にとっては、なくしたくない部隊長でもあった。レーヂエ自身は、獅子小隊に回収してもらえたわけだが。あのままでは、危なかった。
「では、……森奥で勇敢に戦った部隊の二名は、戻らぬ者となったのね。それと……ここにいる一名」
「はい。……ああ、この者は、亡くなったのでしたか」
 朝霧の傍ら、ひざをついて、手を合わせているライゼ。その下に、報告に来た兵の遺骸があった。
 森奥で逃げ散った者は、黒炎、クレア、宇都宮が収拾と救助を行った。
「おかげで、行方不明になった兵は、ゼロ。皆、ここへ合流してくれました。怪我で動けなかった者も多く、クレアの治療がなければ、助からなかったかも知れない」
「ただ……宇都宮さんが、戻っていません。彼女は森奥へ向かいました。おそらく、ナドセ部隊長を……」
 森のなかで一度宇都宮に会っているクレアは、心配でならなかった。黒炎にしても気持ちは同じだ。森奥へ行くと言っていた……もしかしたら、という思いがよぎる。
「……待ちましょう。
 退路へ向かった生徒達とは、すでに、ロンデハイネを通して、連絡が取れています。彼らは施設で、待っている。救援物資まで、遣してくれました。殿で傷を負った新入生も多かったから、これは助かりました。が、無事施設に着いた生徒と照らし合わせると、施設にも着いておらず、ここにもいない生徒が数名。もしかしたら、撤退中にはぐれて、森のオークに討たれた、ということも考えられます。単独で行動すれば、オークと言えど、集団なら私達を倒すのは難しくない。他の部隊が探してはいますが、森奥へ行っているなら、もう無理かも知れません」
 そう言って、騎凛は、森奥の方を見やった。
 森を背に立つ獅子小隊。その後方の森はすでに、火に包まれつつあった。
 もう、辺りに、オークの気配はない。残ったものは、奥地へ、去ったのだろう。キングは、どうなった……森奥にいた者にはやはりそれが気になったが。
「あと……遊撃隊として、奥への進撃を許した、ベオウルフ隊……」
「ここが火に覆われれば、我々も危うくなります」
 残る全軍の撤退を促す、レオンハルト。
「ベオウルフ隊は勇敢でした」
「奴等は、戻らんか。くっ、やはり、無茶をするからじゃっ」
 弓を投げうつ、アンテロウム。
「……もう少し。……! あれは」
「……来たわね」獅子小隊の後方にいた、クリスフォーリルが、はっきりと言う。
「来たのじゃ!」言ってセシリアは、レオンお兄様の方を向き直る。
「ふん、なるほど。帰ってきたようだな」
 殿部隊の者達が、それを迎える。
 ベオウルフ隊の帰還。
「おおお! お、おまえら、よく帰ってきたぞい……!! キングと焼け死んだのかと思うたぞ」
 アンテロウムも彼らを迎えた。
「それはないぜ!」
「……ふっ。……俺は、オーク・キングなどにやられはしない……」
「いつも道りだったろ……?」「馬鹿熊だまって! 腕が、……ボロボロじゃない。くっ大丈夫! 今痛みを……」「飯楽しみだぜ……「あ〜ん」って食べさせてくれな……」「馬鹿……」(「初々しいことだな」とは、ルースの言葉。)
「こう言うてやりましたえ。
 蒼空の狼達に狩られはったんや、光栄に思て天国行きぇ〜」
「ふっ」レーゼマンの眼鏡はただ、夜を湛えている。
レオンハルトは、声もなく、密やかに笑ってみせた。
「では皆。……全軍、施設まで撤退だ」騎凛のナギナタが、森の南を指した。





 一方、施設では、多くの者が、仲間達の帰還を待ちわびていた。
 戦部と橘は、大佐の部屋で、優雅にチェスを。
 日紫喜先生は、すでに酔っ払っている大佐の酒の相手を。と、いうかすでに酔いつぶれているので、相手は結局、パートナーのローランドだ。
 リアトリスは、あの人達は、ちゃんと待ちわびているのだろうか……と思いつつ、得意のハーブの調合を、施設の兵に披露している。パルマローザは勿論……好物のピッツァを食べている。

 クレーメックは照明灯を運び、全軍が速やかに撤退できるよう、道を示した。
 一色やイレブンらと共に、ロンデハイネの中軍と浅森を結ぶ位置に兵と展開。退路を保っている。
「何か、人数が少ないけど、他の奴らは何をしているんだ……!?」

 ジャックとイルミナスは、施設に辿り着いたときのままで、防壁の上と下、だ。
「ジャックー、お腹空いたー」
「……ったく、またか。戻って来いっ!」