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リアクション
第三章
その頃、黒髪のロングウェーブのナイト宇都宮祥子(うつのみや・さちこ)は考えていた。
「なぜ、犯人は下着を盗み、覗きを行ったのかしら」
犯人の動機について。
「動機は……盗むのは下着の選定、覗きは理想のボディバランスを見極めるための情報収集と考えられるわね」
つまり、女子と考える。
「自身と生徒達の体形を比べたが故の悩みからそのような行為に走ったのでしょう」
そして、こう宣言する。
「つまり、犯人はエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)校長である!」
自信満々に、声高に、そう宣言した。
「ちょっと待ったぁ!!」
それに待ったを掛ける声。
黒髪ショートのウィザード如月陽平(きさらぎ・ようへい)だ。
その後ろには、ぼさぼさ金髪のパートナーである守護天使、顔立ちが端正なのに、貧乏そうなプリーストシェスター・ニグラス(しぇすたー・にぐらす)もいる。
「君のその推理、間違っているぞ!」
陽平は自分の推理を語り始める。
「魔法を使わずに更衣室に入れて、透明化できるとなると、ゆる族以外に考えられない。犯人はゆる族だ!」
なんの証拠も無かったが、自分の直感を信じる彼に迷いはない。
「という訳で……行くぞ、リストラデカ!」
と、自分のパートナーである、シェスタ―に向かってそう言えば。
「了解です、二毛作デカ」
と返事が返ってくる。彼らは今、ある伝説の刑事になりきっている。
このニックネームは、その刑事にあやかって付けたものだ。見れば、アンパンと牛乳を手にしている。張り込み中に食べる為にわざわざ買ってきた物であり、それほど気合が入っている事が窺い知れる。
「いいえ、犯人は校長よ。間違いないわ」
それに対し、反論する祥子。二人の推理は全く違うモノだったが、お互い自分の信じる道を進むだけだった。
二人のデカはゆる族の調査、張り込みを始める。牛乳を片手に、アンパンに齧り付き、影から周囲に目を光らせる二人組はこの学校という場所ではかなり目立っていたが、二人は楽しそうだった。
「次は向こうで張り込みだ!」
「どこまでも付いていきます! 二毛作デカ!」
一方、校長室の前では祥子と、更に二人がいた。
端正な顔立ちで大人びた雰囲気、黒髪を後ろで束ねたナイト譲葉大和(ゆずりは・やまと)とそのパートナー白い髪をボブカットにした八重歯の輝く剣の花嫁、プリーストラキシス・ファナティック(らきしす・ふぁなてぃっく)
祥子の推理では校長が犯人、ならばと説得に来たが、そこには先客。
大和の推理では、インヴィジブルポーズはただ目立とうとしてるようにしか思えない。そこで、何かを直感する。それは、彼ならではの直感。
「最近では、変態紳士なんて呼ばれているようですが……真の変態紳士この俺だ! その俺の第六感が黒幕の存在を主張しています」
「それじゃ、真の変態の紳士の大和ちゃんは、だれが黒幕だと思うの?」
「ここに来た事が答えです」
真の変態紳士もまた、エリザベート校長を疑いここまで来たのだった。
「ですが、どうやら同じ考えの方がいらっしゃるようですね」
「私も驚いたわ、私と同じ天才がもう一人いるなんてね」
本当は自分で自分を天才などと思う事は無かったが、流れで言いたくなってしまった。
「俺の場合はカンですが、そういう事にしておきましょう。ところで、どうして校長が黒幕だと思ったのですか?」
私の推理では、と前置きしてから祥子は自分の見つけた答えを言う。
「おそらく露出の多くなる季節柄、自身と生徒達の体形を比べたが故の悩みからそのような行為に走ったのでしょう」
校長、エリザベートの体形を夢想し、本人も悩んだ末の行動だったんでしょう、とだけ付け加える。
姿だけは幼いエリザベート校長。自分の理想を求めての犯行だと主張する祥子。
「なるほど。ですが、俺はこう考えます」
大和のカンでは、全ては蒼空学園に対する嫌がらせで、インヴィジブルポーズはその為のスケープゴート、つまり生贄、黒幕は校長、以上の事がカンで思いついた答えだった。
二人の考えでは犯人は合っていた。しかし、その動機で食い違う。
後は本人を問い詰めて、合っていた方が名探偵。という所で、校内放送が響く。
その内容に驚いた。
「全校生徒のみなさん、今、騒ぎになっているインヴィジブルポーズの犯人が解りました」
なんていう事を言い放ったからだ。
そこは放送室。そこいるのは黒髪のロングウェーブ、知的な雰囲気を纏ったナイト織機誠(おりはた・まこと)だ。
誠は続けて言う。
「ずばり、犯人は……」
一度区切り、自信満々に言う。
「犯人は、リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)さん、あなたです! 聞いてますか?」
どこかで誰かがずっこけたような音がした。
「理由は名の通り、透明になれるという事ですが、これは簡単に光学迷彩を使用していると考えられます。光学迷彩といえばゆる族、という事は、ゆる族がパートナー、そして、リンネさんのパートナーのゆる族は、リンネさんに頭があがらないと聞きました」
ここまで一気に言うと、一旦、間を開けて続ける。
「そして、更衣室に入ったと言う事は、女子であるという事です。でも……リンネさんには動機がありませんでした、しかし、こう考えれば筋が通ります。我が校生徒の被害は『覗き・下着泥棒』と間接的なものでした。これらは全てフェイクです。本当の目的、それは蒼空学園に対する嫌がらせ、そんな事をし、尚且つ、リンネさんを動かせるのはただ一人です」
再び一呼吸置き、言いきる。
「黒幕は、エリザベート校長……あなたです。校長をリスペクトしているリンネさんはあなたの指示に従い動いた、つまり今回の事件は校長とリンネさんが仕組んだ蒼空学園への嫌がらせだったんだよー!!」
「な、何だって―?」
あちこちから驚きの声があがる。
そして、放送はまだ続いていた。
「あ、リンネさん、自首してください。今ならまだまにあブロッ!?」
何かが殴られたような音がスピーカーから響く。
「く、口封じのつもりですか? しかし、既に全校生徒に……あ、それはやめてくだァァァァァァァ!?」
音だけが聞こえるため不気味だ。
と、不意に静かになる。そして、小さい声で再び放送される。
「あ、ええ、その……あ痛、みなふぁん、ひまのはムヒャクヒャしてひたら犯人にひ立て上げられそうな人がひたので、犯人にでっちあげまひた。今は反省してひま」
ブツッ! という音を最後に放送は終わった。
今の内容をまとめればこうだろう。
ムシャクシャしてやった、今は反省している。後悔もしているだろう。
「何だったのでしょうか、今のは……」
と、大和が不思議がると。
「とにかく、校長を問い詰めに行くわよ」
と、祥子。
校長室へ向き直ると……。
「おや、扉が開いている?」
さっきまで閉じられていた扉が開いていた。一体いつの間に?
「いきなり放送で黒幕扱いかと思えばぁ、今度は直談判なのぉ?」
二人は後ろから聞こえた声に振り向けない。振り向いてはいけない。
ラキシスだけが向かい合う形になっていた為、その人を見ていた。
「さぁてぇ、色々言ってくれたけどぉ、わたしはぁ、黒幕ぅ、または犯人とは関係ありませぇん」
「な、なんですって?」
「そんなはずは……」
驚愕する二人。校長が嘘をついているのかも、とも考えた。
「私が赤字で言ったことは真実、それだけですぅ……それでぇ、覚悟はよろしいですかぁ?」
校長室の扉が閉まる。そこに残っていたのはラキシスだけだった。
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