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アトラス・ロックフェスティバル

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アトラス・ロックフェスティバル

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TRACK 14

 続いてステージに立ったのは『神世魁』(しんせかい)の4人。

「成程、バンドをやりたい、というのはよーくわかった。わかったが、なんで俺が女装しなければいかんのだ」
 鈴倉 虚雲(すずくら・きょん)風森 巽(かぜもり・たつみ)を問い詰める。
「ティア(巽のパートナーであるティア・ユースティ(てぃあ・ゆーすてぃ))と愛沢(愛沢 ミサ(あいざわ・みさ))の希望はガールズバンドなんですよ」
 巽も女装するつもりらしい。虚雲は自分から積極的にバンドを始めたり女装したりする性格ではないが、人付き合いはいいので頼まれると引き受けてしまうタイプだ。
「わかった。ただし本名は出すなよ」

 それからの虚雲の努力は涙ぐましいものがあった。苦手なギターの練習を繰り返し、女装について習った。
 訓練の甲斐あって、当日の虚雲の姿はなかなかのものであった。衣装はパンクに改造された教導団女性制服で、フリルにミニスカート。下着は黒のレース。鬘に化粧、スネ毛の処理まで万全である。
 しかしギターは最後まであまり巧くならなかった。

 巽は蒼空学園女子制服を着て髪を解きただけでだいぶ女の子のような外見になった。白いぼろぼろのベースに黒サインペンで「ツァンダー」と書いてある。
 ティアは百合園、ミサはイルミンスールの制服を着てきた。これでシャンバラにある6校のうち、4校までを表現したのだった。薔薇の学舎は男子校だし、今のパラ実には制服らしい制服がない。


 壇上に上がったティアは、メンバー紹介のMCから始める。
「盛り上がってるかー、ふぁっきんどもー! もっともっと、ナラカの底まで盛り上がってくよ! ボーカルのTIAだよ!」
「教導団の軍服が凛々しいぞ! ギター、RIN」
「楽器はボロでも心は錦! ベース、TATUMI」
「魔法の旋律奏でます! キーボード、MISA」
「じゃあいくよ!」

『イラッ☆新世界』

作詞作曲:RIN


ある朝、御神楽校長に口答えして
パラ実に強制送致!


イラッ☆
シャンバラを巻き込んで
皆でハイテンション Woh! Woh!
最高のステージで
あたし達煌めいてる
音色で邪神もメロメロよ♪


 パラ実送りにされても頑張る元蒼空学園生の心境を歌った歌詞だった。

 曲が終わったところで、虚雲はステージ上で生着替えを始める。そこに東條 カガチ(とうじょう・かがち)がステージに乱入した。
「なんだよぉ、このぬるいバンドは!」
 もっと強烈なハードロックやメタルを期待してわざわざツァンダからやってきたというのに、なんで同じ学校の生徒がやっている女装バンドなど見せられるのか。
 カガチは脱ぎかけた服で視界がふさがっている虚雲を客席に放り込む。
「何をするんですか東條サン〜〜〜」
 盛り上がった観客に囲まれて姿が見えなくなる虚雲。観客の一部がわっと群がって虚雲の服をはぎとろうとする。
 残ったメンバーはとりあえず曲も終わったので、先に舞台裏に戻ることにした。

 舞台裏に戻ると、菅野 葉月とミーナ・コーミアが顔を出した。

「失礼。こちらにヨーコさんは……いらっしゃいませんね」
「何があったんだ?」
「実は……」
「じゃあ俺も探すよ!」
 事情を聞いて、ミサが飛び出していった。後を追う巽。