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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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第6章 己をかけた主砲

「潜入に向かった方たち、陣内へ上手く入り込めたんでしょうか」
 陽動作戦を開始する機会を西軍側から1kmの地点で窺っていた風森 巽(かぜもり・たつみ)は、敵陣へ潜入している仲間をサポートするため小型飛空挺に足をかける。
 首に赤いマフラーを巻き、顔は銀色のヒーローお面を花火の火花が目に入らないようガードするために被っていた。
 小型飛空挺の後ろにテーマソングをかけるコンポを載せてある。
「こういうものは気分が大事ですよね。紅い砂塵を巻き上げて、蒼いマシンで迎え撃つ。仮面ツァンダーソークー1を貴公たちに聞かせてやります」
 コンポのスイッチをオンにし、巽は飛空挺の上へ乗り地上を走る。
「行きますよ、とぉおああ!隠れも逃げもしません、我はここです!」
 炎の矢のようなロケット花火を避け、西軍の攻撃を紙一重でかわしていく。
「とーぶぞ 鉄拳 轟雷拳〜♪床をも砕くパンチ パンチ パンチ〜♪」
 軽快すぎる巽の歌声とサウンドに、西軍側が苛立ち始めた。
「敵は無茶苦茶な撃ち方してくるであります!」
 マジックハンドでコウジは、陣内に迫り来る花火をキャッチする。
 ライラプスもカルスノウトで花火を叩き落としていくが、長時間に耐え続けた影響で呼吸が乱れている。
「あぁっ!せっかく頑張って作った砲台が壊されたー!」
「まだ予備はあるから、急いでセッティングしよう」
 怒りで熱くなっているルカルカと対照的に、ダリルは冷静に防火シートに被せてあった予備の台をひっぱりだす。
「よぉし・・・見てなさいよ・・・自慢の改造砲台で撃ち落としてやるんだから!」
 ルカルカは砲台の照準を巽の方へ合わせて花火を発射させるが、全て避けられてしまってまったく命中しない。
「火を噴く 蒼空 赤心拳〜♪竜巻砕く ソニック ハンド スマッシュ〜♪」
 巽はロケット花火を発射するため、飛空挺の前面に固定した花火にライターで火をつけて西軍目掛けて発射させる。
「チェーンジ・・・ロケット花火ハーンドォオオ!」
 今度は数本のロケット花火が入った筒を点火して両手に持ち、叫ぶように声を上げて敵陣へ放つ。
 幾つかの砲台を破壊された西軍は、設置し直すために慌てふためいている。



「まったく危ないなー!女の子に当たったらどうするんだよ」
 植物の蔓のような形状をした光条兵器を手に、麻野 樹(まの・いつき)は東軍側から次々と放たれる花火を叩き落とす。
「樹・・・怪我してるじゃないか」
 降りかかる火の粉で怪我を負っている麻野を、雷堂 光司(らいどう・こうじ)が心配そうな表情を向ける。
「俺よりも女の子たちの怪我を治してやってよ」
「―・・・あぁ・・・。顔に傷が残ったりしたら可哀想だからな。(樹のことも心配なんだけどな・・・)」
 止むを得なく光司は女子の傷の手当する役目に専念することにした。
「照準よしっと。それーいっけー!」
 暗視スコープで敵陣の花火が置いてある場所を確認し、砲台にセットされたロケット花火を撃つ。
 ドーォオンッと大きな爆発音が響く。
「よぉしっ当たった♪」
「やりましたね!」
 喜びながら水神 樹(みなかみ・いつき)と愛はパンッとハイタッチをする。
「伏せろ!」
 セツナ・アーミティッジ(せつな・あーみてぃっじ)は油断している水神の前に立ち、手にしている槍で花火を叩き落す。
「セツナ様まだきます!」
 敵側が放つ迫り来る花火を指差し、リリー・アンバー(りりー・あんばー)は声を上げた。
「―・・・くっ」
 セツナはもう片方の手で花火を掴むが衝撃で体勢を崩してしまい、熱で手の平がジュウッと焼ける音がする。
 第3撃を代わりに麻野が防ぐ。
「怪我してしまったようだね・・・」
「―・・・火傷しているな。俺がヒールで治してやるよ」
「では私も一緒に術をかけさせていただきますね」
 光司とリリーの2人がかりでセツナの火傷を治す。
「よかった・・・きれいに治りましたね」
 リリーはほっと安堵の息を漏らした。
「すまない、2人ともありがとうな」
「礼なんていいぜ、仲間なんだから助け合って当然だろ」
「そうですよ」
「元はといえば、私が油断してしまったせいですよ」
 俯きながら水神は、首をフルフルと左右に振る。
「それでは私も敵陣へ撃ちましょうか・・・」
 キョロキョロと水神が予備の砲台を取りに行こうとしていると、冷たい水を配っている初島 伽耶(ういしま・かや)の姿を見つけた。
「こっちにもくださいー」
「はーい、今いくね」
 伽耶は水の入った500ミリリットルのペットボトルをリヤカーに乗せて持ってくる。
「火花の熱でさっきから熱くって・・・助かりました」
「まだ沢山あるから安心してね。あっ、それと死に水もちゃんと取ってあるから大丈夫よ」
「不吉なこと言わないでくださいよ」
 笑顔で言う伽耶に、水神は苦笑する。
「こっちにも頂戴ー」
「俺たちの方にも2本くれ」
 配っている水を求めて、愛と光司が片手をあげた。
「はいはいー、どうぞ」
 伽耶は手をあげた順番に手渡してやる。
「ほら樹、少し給水した方がいいぞ」
「あぁ・・・ありがとう」
 ふぅっと一息つき麻野は、光司からペットボトルを受け取って水を飲む。
「丁度なくなったわね。持ってこなくっちゃ」
 空っぽになったリアカーを引き、伽耶は基地から少し離れたところで待機しているアルラミナ・オーガスティア(あるらみな・おーがすてぃあ)の方へ戻る。



「そろそろ戻ってくるかな・・・」
 大量のペットボトルの傍で、アルラミナはパイプ椅子に座って待機している。
「おーい!水あとどれくらいあるー?」
 リヤカーを引いて伽耶は、大声で言いながらやってきた。
「200本くらいよ」
「それくらいあればもつかしら」
「えぇ、もうそろそろ終盤だからね」
「じゃあ50本もらっていくわね」
「いってらっしゃーい」
 アルラミナは大きく手を振り、再びリヤカーに水を乗せて西軍基地へ戻っていく伽耶を見送った。