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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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激熱…夏の陣!東西ロケット花火戦争

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第8章 我散っても勝利と栄光を・・・

「また砲台を壊れたー!」
 巽が撃ってくるロケット花火に自慢の改造砲台を破壊され、ルカルカは怒りのあまり地面をダンダンと踏み鳴らす。
「早く予備の砲台を持ってこなきゃ」
「何台残っているんだろうな・・・」
 ルカルカとダリルが砲台を取りに行く。
「―・・・ターゲットたちがきたわ」
 傍にいるイレブンへカッティ・スタードロップ(かってぃ・すたーどろっぷ)が耳打ちした。
 2人はタバスコなどの攻撃を防ぐため、ゴーグルとマスクで顔をガードする。
「もう少し・・・あと数歩近づいてきたら実行しよう。よし、今だー!」
 イレブンは爆炎波で砲台を破壊し、ロケット花火に着火させた。
「はーっははは!残念だったな、これは偽物だ!」
「まさに飛んで火に入る夏の虫とはまさにこのこと!ここで燃え尽きなさい!」
 技のタイミングに合わせ、カッティがイレブンにパワーブレスをかける。
 爆風の反動でイレブンは東軍の方へ飛ばさせていき、カッティも彼の腰に捕まって飛んでいく。
 迫り来る花火の火の粉を被る彼に、パートナーがヒールをかけ続けた。
「くそっ!侵入者を取り逃がした」
 マーゼンは悔しそうな表情をし、空を飛んでいくイレブンたちを睨みつける。



-AM0:15-
「花火の補充ですよー」
 黎明は花火を西軍の人々に手渡していく。
 それから15分後。
「(さて・・・そろそろ動き出しますか)」
 西軍に潜伏していた黎明は火の手が上がり始めたことを確認し、合図用のロケット花火を1本空へ上げた。
「(やっと黎明からの合図がきたでございますね)」
 黎明のパートナーのネア・メヴァクト(ねあ・めう゛ぁくと)が空を見上げる。
 情報攪乱の能力で黎明は、スパイが隠れている嘘の情報を流していった。
 デタラメな情報により、しだいに人々はパニックになっていく。
「そこの君、何をやっているのですかな?」
 眉を潜めマーゼンは怪訝そうな顔をし、黎明へ近寄る。
「いえ・・・その・・・あぁっ!相手側に撃つ花火を取りにきたのですよ」
「態度が怪しい・・・。さては・・・東軍のスパイですな!?」
 マーゼンは途切れ途切れに言う黎明を警戒し始めた。
 一歩後ずさった疑わしき者に、マーゼンが飛びかかり縄で岩場にくくりつける。
 裏切った者だとそれらしい言葉を書いた紙を張りつけ、マーゼンは再び巡回に戻っていく。
 その光景を見つけた真が、黎明の縄をといてやった。
「皆このテンションだから早く逃げたほうがいいよ!」
「―・・・逃がしてしまっていいのですか?敵軍側と疑われた私を・・・」
「えぇ、お祭り騒ぎですし。楽しくやりたいからね」
 真は黎明へニコッと笑顔を送る。
 軽く頭を下げると黎明は東軍側へ向かう。



「私たちもそろそろ動きますかウィッカー」
「そうじゃのう」
 ガートルードと一緒に予備の発射台の裏へ隠れていたシルヴェスターが頷く。
「あぁそういえば私たち、東にスカウトされていたんだっけ?すっかりわすれていたよ」
 笑いながらカリン・シェフィールド(かりん・しぇふぃーるど)は思い出したように言う。
「問題は向こうまでどうやって行くか・・・あっ電話が鳴っている・・・」
 服のポケットから携帯電話と取り出す。
「もしもしー?」
「ちょっとカリンーッいま何時だと思ったいるのよ!始まるまでにこっちに着なさいってあれほどいったでしょう!」
 電話越しでメイ・ベンフォード(めい・べんふぉーど)が喚き散らした。
「痛たたた・・・分かったよ、今からそっち行くからさ」
 メイの喚き声で痛くなった耳を押さえ、カリンはなんとか返事を返す。
「まったく・・・じゃあ東軍が仕掛けたトラップの位置教えるから、注意しながら来てよ」
「―・・・むふむふ」
 カリンは教えたもらった位置をメモにとっていく。
「絶対だからね、絶対!じゃあ待ってるからねっ!」
 言いたいことだけ言うと、メイはプチッと電話を切った。
「やれやれ・・・こりゃ急いで向かわないとなぁ」
「東軍側の人ですか?」
 様子を窺っていたガートルードが問う。
「あぁ今からいくとこ。早くいかないとメイが五月蝿いからな」
「では私たちは花火に細工をしておきますね」
「了解!互いに頑張ろうぜ」
 坂になっているところを滑り降り、敵に見つからないように隠れ身の術で姿を隠したカリンは東軍側へ向かっていった。



「ああっ花火が発射できない!?」
 応戦しようと発射台にセットした花火に火をつけたゴットリープが声を上げる。
 ガートルードたちに細工されて湿ってしまった花火が発射できなかった。
「うぁあっ花火が落ちてくる!どうしよう・・・あぁどうしましょう。よし・・・こうなったら・・・」
 焦りながらゴットリープは手当たりしだいに、周辺にあった使えそうな道具を集め始める。
 古した一週間ほど選択していない靴下や、強烈な匂いを放つクサヤなどをつめた悪臭爆弾に加えて、墨汁の入ったペットボトルとタバスコと混ぜて風船に流し込んで攻撃道具を創作する。
「(神様仏様・・・お父さんお母さん・・・お兄ちゃんお姉ちゃん。それかお爺ちゃんお婆ちゃん・・・!このさい誰でもいいから助けてくださぁああい!!)」
 心中で叫び無事なロケット花火に紐でくくりつけ、発射台にセットしていき巽に向かって発射する。
「また花火が飛んできましたね・・・てっ・・・花火じゃない!?」
 身体を傾けながら巽は危険物を避けていく。
「なかなか苦戦しているようですね・・・、私も頑張らないと。ん・・・あれは・・・」
 強烈な匂いを放つシュールストレミングの汁とハバネロの粉末を混ぜた水風船を、ロケット花火にくっつけて撃っていた水神が物陰で蠢く人影を見つける。
 手造りの水爆弾を予備の花火に投げつけようとしているテクノの姿がった。
「攻撃に集中している時が一番隙ができるんだぜ。食らいやがれヒャッハァアアー!」
 ドォオンッと爆音が空気を振動させて辺りに響き渡る。
「スッキリ爽快だな!エーが待っている所へさっさと行くか」
 テクノは後をつけられないように、注意深く向かう。
「やっと戻ってきたでござるか」
「さぁ俺たちの陣地に戻ろうぜ」
 エーの上に乗り戻ろうとする。
 そうはさせまいと水神が彼らへロケット花火の発射台を向け、花火を発射させた。
「当たらねぇよっと!ぶぁああっ!?」
 ロケット花火についていた水風船が、飛んでいく時の風圧に耐え切れずテクノの頭上で破裂した。
「ぎゃぁあっ何かベタベタするでござる!」
 エーはバランスを崩し、地上へ着陸する。
「うあぁーっ、何じゃこりゃぁああ!」
 あまりの臭さにテクノは絶叫し、意識が途切れてしまった。



 光学迷彩の能力で姿を隠して潜入したイリーナは、獲物を狙うように赤色の瞳をギラつかせ花火を撃っている人々の隙を狙っていた。
「ここが仕掛け時かっ!」
 破壊工作でしかけていた火炎瓶を破裂させる爆破スイッチを押す。
「何やら爆発したようですが・・・」
「見てください、イリーナです!」
 望遠鏡を覗き込んでいるクリスフォーリルが人差し指で示す先にはイリーナの姿があった。
「私たちも応戦しましょう」
 クリスフォーリルは狙撃銃型の花火の発射装置で、残っている東軍側の砲台を狙い撃つ。
「おっと、そうはさせないよ」
 花火の火薬がついていた落ちていた鉄棒で、カリンが向かってきた花火を叩き落す。
「もうっ遅いー!」
 100m先で待っているメイが怒鳴った。
「そう怒るな・・・こうやってちゃんと来たんだから」
 カリンはすぐさまメイが待つ方へ駆け寄り、落下してくる花火を叩き落していった。
「西の奴には恨みはないが。まぁ・・・あれだ。戦場だからないいよな」
 黒く塗ったロープを張った先に、トラップの落とし穴を仕掛け、その中に腐った卵を敷き詰める。



「向こうの方で何か落ちた音がしましたね・・・」
 ガートルードは望遠鏡で自軍の状況を探る。
「うむ・・・また犠牲者がでてしまったんじゃな」
「残り時間も少ないでしょうから、私の能力を使って花火を撃てなくしてやりましょうか」
「それがいいじゃろう」
「です・・・・・・ね!」
 気配がした方へガートルードが鬼眼を発動させて振り返った。
 小動物が恐ろしい獣に睨まれたかのように、背後から触ろうとしてた仁の顔が恐怖で強張る。
 ジャリッと足を前に出すと、恐ろしさで完全に彼の身体は動けなくなってしまう。
「さて、この調子で花火の発射を阻止していきますか」
 鬼眼の能力を使ったまま、ガートルードはシルヴェスターと共に砲台の方へ進んでいった。



「さぁ予備の砲台も残り少ないようだ。まずはこの砲台を破壊して・・・」
 ただならぬ気配を感じ、イリーナは火炎瓶を投げつけようとする手を止める。
「やはり来たようですねイリーナ」
「そっその声はイレブンなのか!」
「フッ・・・気づくのが遅いぜ!」
 砲台に隠れていたイレブンが、花火をセットしてある砲台の自爆スイッチを押す。
「これでしまいさ」
 獲物が引っかかり、カッティがニヤリと笑う。
「あぁああー!!」
 イリーナの身体は爆風で後方へ吹き飛ばされてしまう。
「やっぱりこうなるのであろう・・・。あぁ・・・夜空に星が輝いてるな・・・」
 空を仰ぎ見ながらシーマは覚悟を決め、爆発に巻き込まれる。
 凄まじい爆発音により、ユインも目を回して倒れてしまう。
「どうですか、耐え切ってみせました!」
「フッ・・・だが時間切れのようだ。全滅は免れた・・・ぞ・・・」
 凛とした表情でイレブンを見上げ、言葉を言い終えたイリーナは力なく戦場に倒れた。
「やれやれ・・・まったく運がないねぇ。逃げ遅れてしまったよ・・・」
 同じく爆発に巻き込まれてたカリンはドサッと前へ倒れ込む。
 終戦の真夜中のシャンバラ大荒野中に、花火の火薬の香が風にのって辺りに漂っていった。
 勝敗の結果、東西ともに生存者がいたため引き分けに終わった。