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魔女オメガのハロウィンパーティー

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第5章 ハロウィン仮装コンテスト

「決めました!俺たちは[第一回オメガ記念仮装大賞コンクール]を開きます」
 グラスを高らかに片手で持ち上げ、黒のタキシードを着用し外側が黒、内側が赤色のマントを羽織り吸血鬼の仮装をした譲葉 大和(ゆずりは・やまと)が声を上げる。
「何じゃそれは?」
 突然の思いつきのように言う大和に、眉を潜めて九ノ尾 忍(ここのび・しのぶ)は首を傾げた。
 ちんちくりんボディーにビキニの毛皮を着用して、忍は狼女ならぬ狐娘の仮装をしている。
「仮装している方を対象に、誰が一番似合ってるかをオメガ嬢に判断していただきます」
「ふむ、して・・・その心は?」
「こういった他愛もないイベントで心の隙間を埋めていくんですよ」
「じゃが、あやつはわしより年上じゃぞ?」
「この際年齢何か関係ありませんよ。人とのふれあいが少なかった分をこれから取り戻せば良いだけですから」
「そうとなればわしも協力してやろう」
 大和の説明に忍は納得したように頷く。
「では、貴方は今コンクールのマスコットを勤めてください」
「ふむ・・・良かろう」
「俺は司会をさせていただきます」
「わし達はみなを盛り上げるだけ盛り上げて、オメガ嬢に判断を委ねればよいのじゃな?」
「えぇ・・・あと、演出などもお願いするかもしれません」
「何にせよ任せるが良い!」
「では、2人でよい夜にしましょう」
 2人は仮装コンテストの準備を進めることにした。



「皆さんパーティー用に沢山作ってきたんですね・・・。どれから食べたらいいか迷ってしまいますよ。あっ、このモンブラン美味しそうですね」
 菅野 葉月(すがの・はづき)は生徒たちが作ってきた料理を、じーっと眺めていた。
「そんなに近づくと、カツラが鍋の中に落ちるわよ」
 ジュースを飲みながらミーナ・コーミア(みーな・こーみあ)は眉を潜めて注意する。
「え?あぁ・・・そうですね」
 江戸時代風に仮装した葉月は、落ちそうになっているちょんまげのズラのポジションを直す。
「しかもいくら注目を浴びたいからって・・・その手に持っているのは何よ」
「これですか?仮装のテーマに合わせてみたんですけど」
 左手に持っているちょうちんに目を移し、おかしな格好なのか首を傾げる。
「で・・・それは何?」
 ミーナは葉月が腰の紐と着物の間に挟んでいる十手を指差す。
「えーっとですね・・・ただの江戸時代の剣士じゃつまらないと思ったんで工夫してみたんですよ」
「―・・・だいぶ目立つわね・・・いろんな意味で・・・」
「あはは、そうですか?」
 褒め言葉に受け取ったのか、葉月は照れ笑いをする。
「向こうの仮装・・・かなり勇気いりますよね・・・」
 遠くのテーブルから霜月が、横目でちらっと見る。
「他の生徒たちも個性的でありますね」
 アイリスは生徒たちの仮装を壁に寄りかかりながら眺めていた。
「そろそろお菓子もらって歩こうか・・・」
 美味しそうなお菓子を持っていそうな生徒がいないか、バンシーの仮装をしたジャンヌ・ダルク(じゃんぬ・だるく)はオペラグラスを覗き込んで探す。



「(兵士の服装にしようと思ったんですが・・・何故こんな格好に・・・・・・)」
 パートナーの強引な意見で無理やり宮中の女性の衣装に変更させられた佐々木 真彦(ささき・まさひこ)は、両手で顔を覆い隠し恥ずかしそうにする。
 染めただけの単純な布でできたドレスだったが、周囲の生徒たちは笑いを堪えて見ていた。
 真彦がパーティーのために着ようと思って作った兵士の服装を、関口 文乃(せきぐち・ふみの)が自分用に調節させ着ていた。
「(変なゆる族よ、皆の注目を集める効果大!)」
「小間使いコスプレと言うけど・・・このかつらは目立つと言うか・・・ださくない?この糸の束みたいなものがくっついているかつら・・・・・・」
 遠くから生徒たちにクスクス笑われる声に、顔を俯かせてマーク・ヴァーリイ(まーく・う゛ぁーりい)は赤面する。
「あぁ・・・皆こっち見てます・・・」
「オレたちもの凄いガン見されているよな」
 真彦とマークは恥ずかしそうに壁の隅っこに移動するが、よけいに注目を浴びてしまった。
「ちょっとあんたたち、なんでそんな角にいるのよ。目立たないじゃないの!」
「―・・・そっちに行くと目立つからここにいるんだが」
「もっと会場の中心に来なさい」
「簡便してくださいー!」
「や・・・やめろ、離せ!」
 いやがる真彦とマークの首根っこを掴み、文乃はズルズルと引きずっていく。
「うぅ・・・もの凄く目立っていますよ・・・」
 彼らは穴があったら入りたい気分に陥り、恥ずかしそうに顔を両手で覆い隠す。
「だからいいんじゃないの♪」
 一方、文乃は生徒たちの視線を浴びながら、満足そうな表情をする。



「おぉ、なんとめんこい格好じゃ!もっとちこう寄ってわしに見せとくれ!」
 パンプキンガールの仮装の仮装をしているウィノナに、忍がニヤニヤ顔で近寄る。
「―・・・何やっているんですか・・・」
「何じゃ!わしは今露出の高い少女を愛でるのに忙しいのじゃ」
「仕事してください・・・・・・」
 逆ギレする忍に、大和はため息をついた。
「そろそろ仮装大賞をオメガ嬢に決めてもらいましょう」
「ではオメガ嬢、大賞を決めてくだされ」
「皆さんそれぞれ個性的でステキなんですけど・・・そうですわね・・・」
「今宵お集まりの紳士、淑女の皆様!ただ今より第一回オメガ記念仮装大賞コンクールをはじめたいと思います!」
 スポットライトの代わりに光の精霊を飛ばす。
「森の妖精さんの仮装をしたルインさんに決めました」
「えっ!?ルインなの?」
「おめでとうございますー!」
 突然のことにルインは目を丸くする。
「1位になったご感想は・・・」
 大和は1位になったルインにマイクを向けた。
「えっと・・・いきなりだったからビックリしたけど・・・嬉しいよ!」
「皆様、盛大な拍手をー!」
 会場内の生徒たちはルインへ拍手を送った。