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怪談夜話(第2回/全2回)

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怪談夜話(第2回/全2回)

リアクション


◆ ピアス捜索:午後四時 ◆

「さぁ、話してもらおうか」

 ケイがピアスに詰めよった。

「回避方法! 回避方法を教えてください! 早く!!」

 陽太が涙まじりの声で訴える。

「……かいひほう?」

「あのごわいばなじの! どうやっだらあのがんぎんされだ男の子が来なくだるの!?」

 カーチェはもう、あっぷあっぷ状態だ。

「…………」

「も、もうごわぐでごわぐで……」

「……時間が無いから早く教えてよぉ」

 北都がのんびりした口調で言う。
 その横からルカルカが顔を出して。

「亡くなられたというご友人さんの話って嘘なのでしょ?」

「……えっと」

「早く!」

「えっと……」

「早く!!」

「あの……めちゃくちゃ言いにくいんだけど……」

「?」

「信じたの?」

「──……え?」

「あの話、信じちゃった?」

「は?」

「あれ──、…実はあたしが作ったんだ〜!」

「!!!!!????」

「ほら、あれじゃん。小道具が使えなくなっちゃって、どうしようかと思ってさ。他に良い題材も見当たらなくて、それならいっそ作っちゃえ〜って思って」

「…………」

「即興で考えたわりには、かなり良かったんじゃないの〜?」

「……」

「というわけで、……って、あれ? 顔色悪いよ?」

 冗談? 作り話??
 エリシアは、殴りたい衝動を必死に我慢する。
 今、この場に誰もいなければ、完全犯罪をやりとげる自身があった。
 まずはピアスの首をしめて……

「……ふふ、ふふふ…」

 葉月の口からひたすら笑みがこぼれる。もう笑うしかない。
 笑うことしかできない。

「は……葉月? 落ちつかなきゃ駄目だよ? 切れちゃ駄目だからね」

 ミーナがこっそり囁き、冷静になれと真剣な眼差しを葉月に送る。

「あれぇ? いや〜怖がらせちゃった? でも夜話会ってことでは大成功だよね……ふふっ」

 みんなのピアスを見る目が、すわってきている。
 危険を察してか、ピアスは慌てふためいた。

「や、やだなぁ。そんな目で見ないでよ、怖い話なんてたんなる作りもんだろ? ──うわっ!?」

 いきなり。
 ちあきがピアスのスカートをガバッとめくった。下着が一瞬、見えた…気がした。

「な……!」

「ほ、ほ、ほ、ほ、報復だもん!」

「…くっ……」

 ピアスは何か言い返そうと思ったが。
 まだ皆の目は死んでいない。
 これ以上、ここにいたら身ぐるみをはがされてしまうかもしれない……!?

「じゃ、じゃやね! あたしのパンツ見たんだから、これでいいでしょ? みんなによろしく言っといて〜!」

 逃げるようにピアスは去っていった。
 呆然と立ち尽くす面々。

「……なんだか、疲れました」

「うん、疲れたね……」

 葉月とミーナが、深い溜息をついた。

「どうする? みんなに言いに行く?」

「……なんだか疲れちゃったよ」

「そうだね」

「帰ろうか……」

「うん、疲れた……」

 皆はぐったりした身体を引きずり、特殊講堂へは向かわず、各々のいるべき場所へと戻っていく。

「──大体、講堂の生徒は、落ち着けと思うぞ。騒ぎすぎだ。幽霊なんか出ねぇよ」

 淵は冷静な口調で吐き捨てる。

「まぁな、俺もそう思う」

 ダリルも苦笑しながら賛同した。

「あれが真相か……」

 カナタは小さく笑った。

 その様子を見て、ケイが口を尖らす。

「笑い事じゃないぜ! ……ったく」

 口では文句を言うが、ケイの表情には、笑顔が戻っていた。
 ピアスを探した面々の表情には、精神的な疲れは見えていたが、なんだか、とてもさっぱりした顔つきになっていた。


 特殊講堂で恐怖に震えていた人達が真実を知るのは、翌日のこととなる──


  ◆ 


「これで、良かったんだよね……」

 誰かが囁いている。

「ああ言わなきゃ、みんなずっと怖い思いをしちゃうだろうし……」

 小さな吐息。

「あたし自身、本当かどうかも分からない。だけど──」

 ちょっとだけ脚色した。

 その箇所がどこかは、今となっては、もうどうでも良い事だけれど。

「これで本当に終わったんだ、怪談夜話──」

 安堵の溜息をついて誰かは部屋の電気を消す。

 暗くなった部屋には、月明かりが、静かに差し込んでいた。

担当マスターより

▼担当マスター

雪野

▼マスターコメント

今回こちらのシナリオを担当致しました雪野です。
夜話会にご参加下さいまして、ありがとうございました。

無事終わることが出来て、私自身、とても嬉しいです。

ご参加、ありがとうございました。