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リアクション
第4章 ナラカへの誘い
「ここは運命の神(ダイス)のお告げに従うしかないな!」
6面体ダイスを手の中で振り、プリーストのローブを身に纏っているエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は床へ転がす。
「(うえーん・・・・・・。なんでこんなことになったんだろ)」
半ば無理やり連れてこられたようなクマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は半泣きする。
「えっ本当にダイスを振ってる!?」
お告げを聞こうとするエースに、クマラは目を丸くする。
「『Cエリアに吉報あり』との卦がでたぞ」
転がしたダイスの出目は3だった。
「さあクマラ、Cエリアに向かうぞ。男の子なんだから、泣かない!!」
エースはアメ玉口をクマラの口に放り込んでやる。
「怖くない、怖くない。というかむしろ出会ったら粉砕だよね。ゴーストクリーチャーっていうんだから、あいつらは幽霊じゃなくて、クリーチャーなんだよ!!」
クマラは涙目になりながらエレベーターに乗り込み、力説をして強がるクマラにエースは肩をすくめ彼の後に乗り4階へ上がった。
「(あわわっどうしよう・・・エースが探してる看護師ってたしか・・・・・・)」
これから探す看護師が幽霊だというとこを、はっとした表情で思い出しブルブルと震える。
「(うぁああーんっ降りたいよぉおー、もうお家帰るぅううー!誰か助けてぇえー!)」
一刻も早く逃げ出したいクマラは、ベタンッとエレベーターのドアに両手を当てて心の中で泣き叫んだ。
-PM20:00-
「(暗いよ寒いよ・・・怖いよー)」
周囲を警戒しながらエースの後ろを歩き、突然お化けが現れたりしないかクマラはキョロキョロと左右を見る。
「わきゃぁあっ、何か聞こえてきたよエース!」
カツンッカツンとゆっくり歩くハイヒールの音が廊下に響き渡る。
「エースは前衛、オイラ後衛だから」
戦う意思ゼロな態度でクマラは、エースの背を両手でグイグイと押し出す。
「おいっ、そんなに押されると転んでしまうだろうが!」
ギャァギャァと言い合っていると、足音は突然ピタッと止まる。
ほっとした顔でクマラが背後へ振り返ると、明らかにこの世の者ではない青白い肌の女の霊がたたずんでいた。
「わきゃぁああ゛ーっ!!」
顔面を蒼白させてクマラは絶叫し、腰を抜かして床に尻餅をついてしまう。
「安心しろクマラ、彼女に敵意はない。むしろ俺たちが探していた方だ。この世界の哀れな魂を救うために、貴女のお話を聞かせてもらえませんか」
一輪のマドンナ・リリーを捧げようとするが女の手をすり抜けてしまい、すでにこの世の者でない彼女は受け取ることができない。
「―・・・沢山の・・・・・・命を使って・・・・・・化け物が・・・甦る」
「化け物・・・それは一体なんですか?」
「皆・・・が・・・・・・それ・・・に・・・・・・食べられてしまう・・・・・・」
「食べられる・・・。患者たちの身体を使い、何か行われていることなんですか?それを倒せば・・・他の魂も解放することができると・・・?」
「邪悪な・・・・・・恐ろしい存在・・・・・・関わって・・・は・・・いけない・・・・・・」
それだけ言うと女は闇の中に消えていった。
「俺はついに理解したぜ!つまり美人さんと仲良くなるには先に結果を出せってことを!!」
静まりかえったCエリアで鈴木 周(すずき・しゅう)は1人、ケレスと親密になりたいと思いの炎を熱く燃やしながらガッツポーズを取る。
「へぇー・・・それはすごいわね」
レミ・フラットパイン(れみ・ふらっとぱいん)は周の考えを読み取るように軽く睨み嘆息する。
「まぁ、周くんだし・・・どうせケレスさんが目当てなんだろうけどね・・・・・・」
「心臓がどこにあるかなんて知らねーけど、大事なもんなんて一番上か一番下にあるってのがお約束だろ?」
「だから、そんなにどんどん進んだら危ないよ・・・・・・ってあたしの話聞いてる?」
周囲を警戒せずに真っ暗な廊下をズンズンと進む周を止めようとするが、彼は忠告をまったく聞かず進み続けた。
マットを踏み自動ドアが開くと周は、ゴーストが潜んでいるかもしれないのにも関わらず、中の様子を見ずに堂々と室内へ入っていく。
「イッて!何だ・・・棚か・・・」
暗がりで前が見えないせいで、金属のラックにガンッとおでこをぶつけてしまう。
「あぁー・・・だから危ないっていったのに」
「見えないんだからしょうがないだろ。んっ・・・奥の方に何かあるな、行ってみようぜ」
「ちょっと待ってよ、周くんー!」
「この裏に何かあるな」
壁についている錆びた小さな蓋を取ると、何かのスイッチを2つ見つける。
1つ押してみるとどこかでガシャンッと何かが外れた音が聞こえた。
「トラップだったらどうするのよ」
「大丈夫だって、もう1つも押してみようぜ。ぽちっとな」
押してみるとテーブルがスライドし、中には心臓の入ったケースが入っていた。
「へへっ見つけた!あとはこれの持ち主のゴーストを見つけなきゃな。(これであの美人さんも喜んでくれるよな)」
周がケースを取った瞬間、天井の金網がガタンッと外れ、そこに潜んでいたゴーストが床に落ち彼に襲いかかる。
「あれだけ注意したのに、やっぱりトラップにかかっちゃったわね!」
レミは周の腕を掴むと入り口の方へ放り投げた。
「ちょっとそれ貸しなさい」
彼の手からケースをひったくるように奪い、蓋を開けて心臓を床にベチャッと落とす。
「あぁあっ、何するんだ!」
「ぼさっとしてないで、爆炎波で心臓を燃やすのよ!」
指示通り燃やしたのを確認すると、レミはウォーハンマーでゴーストの背骨と頭部を殴りつけた。
「求める物を傍で燃やしてあげた後、身体を破壊すれば帰る場所もないからケレスの元に行って成仏できるはずよ」
「まだ他のもどこかに隠されているんだろうな」
「そうかもね」
「んじゃ通気口を探してFエリアへ行ってみようぜ」
周とレミはFエリアへ移動するため、通気口を探そうと再び歩き始めた。
「ずっと屈んで探してたら膝が・・・」
「だらしないわね・・・」
リーンは政敏を見下ろしながら呟く。
「特に何もみつからないようですね、どうしますか?」
「もう少し探してみないか?」
「他の場所は他の人がもう探索しているわよ」
「Fエリアの方に行ったら何かわかるかもしれませんよ」
「うーん・・・そうだな」
政敏たちはCエリアをきりあげ、Fエリアへ向かうことにした。
「ここは資料室でしょうか・・・研究ファイルがいっぱいありますね」
棚からファイルを1つ手に取ると刀真は埃を払いページを開いてみる。
「見たところ普通の医療研究みたいですが・・・他の者に見られてはいけない資料となると、部屋の中に隠されている可能性もあります」
止まりながらタンタンッと床を足で踏み鳴らし、空洞がないか調べていく。
音に違和感を感じた場所を見つけ、ハンドライトの明かりで確認すると鍵穴を見つけた。
ピッキングで開けてみるとそこには書類の束が隠されていた。
「ふむ・・・・・・なるほど、どうやら普通の病院ではないようですね。患者たちを実験材料に何かを甦らせようとしているようです」
ページをめくっていく彼は、険しい表情へ変えていく。
「集めている心臓は、それを動かすための電池のような役割をしているのですか。誰も探さない・・・誰も探しに来れない場所を作り出し、好き勝手やらかしているようですね」
書類を元の位置に戻すと、刀真は急ぎFエリアへ向かうため通気口を探しに部屋を出た。
「さて・・・膨大な資料から探し出すにはどうしたらいいものか・・・・・・」
ロブたちが明かりのついていない、暗い部屋に入ると棚が10以上並んでいた。
その中には医学書や病に関するファイルがびっしりと収まっている。
「こっちの棚は普通の本しかないみたいだな・・・」
本のタイトルを指差しながらレナードが確認していく。
「というかここで亡くなった人かなり沢山いるんだったか・・・・・・ははっ、出るわけないよな・・・。そっち何か見つかったか?おーいロブ、おーいっ聞こえないのか?・・・・・・あれ?」
突然キュラキュラとタイヤが床を転がる音が聞こえてきた。
身を潜めていると点滴をつけたスタンドを引きずりながら、入院用の患者服を着た男が室内に入り、ロブの方に向かってゆっくりと歩く。
「ロブ危ないっ、逃げるんだ!」
思わず声を出してしまうと、その霊はパッとレナードがいる方へ顔を向け、彼の方へ近づいていった。
「(ゲッやばいっ、こっちに来る!)」
逃げようとすると背後から腕を掴まれてしまう。
ズルズルと引きずられていく。
「おいちょっとロブ、調べてないで俺を助けてくれぇええーっ、おぉおおいぃいいいっ!」
必死に大声で助けを求めるが、彼にはまったく声が届かない。
レナードは暗い廊下へ引きずり出されてしまう。
「いやだいやだぁあやめろー!このっ・・・こいつー離せよっ!俺はまだ若いんだ、ナラカなんて行きたくねぇえよぉおおー!!」
なんとか逃れようと必死に抵抗するが、ギリギリと掴む手から逃げられない。
幽霊の腕にホーリーメイスでドスッガスッと殴りつけ、なんとか振りほどくとロブがいる部屋へ駆け込んでいく。
「どこへ行っていたんだ、重要な書類はどこかに隠されているようだから、さっさとFエリアへ移動するぞ」
「ロブーーーーーーー!今そこでアレがアレでアレがぁあっ」
「アレアレだけでは分からん。分かるように説明しろ」
「ゆ・・・ゆゆう・・・ゆゆゆゆゆうぅ・・・ゆうぅうれ・・・・・・」
「後で聞いてやる・・・とにかく行くぞ」
ガクガクと怯えながら言うレナードの腕を掴み、ロブはFエリアへつながる通気口を探す。
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