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【十二の星の華】悲しみの襲撃者

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【十二の星の華】悲しみの襲撃者

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第2章 揺れる学園

1.お触り探偵

「……なるほど、そこで意識が途切れたわけじゃな」
「はい」
「一瞬の出来事でした……」
 空京総合病院のとある一室。そこではファタ・オルガナ(ふぁた・おるがな)がお見舞いという名目でユニとラミに聞き込みを行っていた。
「では次に傷口を見せてはもらえんかの?」
「構いませんが」
 ユニが胸元をはだける。そこには一筋の切り傷があった。
「痛々しいのう。少女の柔肌に傷をつけるとは許せぬ」
「ヴァンガード強化スーツがなければどうなっていたことか……」
「どれ、ちょっと失礼」
「あ、あの、どこを触っているのですか……」
「なに、これも調査のためじゃ」
「はあ……」
 ファタはユニの胸を念入りに触っていく。
 (もうちょっと年下ならベストなんじゃが……。まあ贅沢は言ってられぬな、美少女じゃし。それにしてもええ乳しとんのー)
「ご苦労、もうよいぞ。ふーむ、凶器は刃物で間違いなさそうじゃが……なんじゃろうな、どうも傷口が特殊な気がするの」
「あの」
 考え込むファタに、ラミが声を発した。
「む?」
「暗闇だったので確かではありませんが、襲われるときに一瞬凶器が目に入ったんです。刃の部分が湾曲していたような……」
「湾曲、か。頭に入れておこう。そちらの兄さんは何か覚えておらぬか?」
 ファタが部屋の隅に佇むクルードを見る。
「……いや……くそ、闇討ちなどする相手と話し合おうと考えた俺が馬鹿だった……ユニ、ラミ、すまない……俺のせいで危険な目に遭わせてしまった……」
「そんな、クルードさんが謝ることなんてありません! 私がもっとしっかりしていれば……」
「そうですよ! すみません、私の力が及ばないばかりに武器を渡すこともできなくて」
「……二人とも……」
 ユニとラミがクルードに寄り添う。
「クルードとやら、そう悲観することもなかろうて。こうして三人とも無事生きて帰れたのじゃからな。ではわしはそろそろ失礼するとしよう。邪魔したな。そうそう、見舞いの紅茶はここに置いておくぞ。わしのおすすめじゃ。後で飲むといい」
 ファタは病室を出て扉を閉める。
「さて、次は現場に向かうかの」

「どうじゃお前たち、犯人の臭いが残ってはおらぬか?」
 ビーストマスターのファタは、従える狼に昨晩クイーン・ヴァンガードが襲われたという場所の臭いをかがせている。
「うーむ、おかしいのう、こやつらの鼻なら手がかりをつかめると思ったのじゃが」
 どこかとまどいを見せる狼たちを見て、ファタは自分も現場の臭いを入念にかいでみる。そうして何かに気がついた。
「……! わずかじゃが香水のような香りがするの。これは桔梗? なるほど、犯人は香水で自らの臭いを消した上で犯行に及んだという訳じゃな。ぬかりのないやつじゃて。よしお前たち、次の現場に行くぞ」
 ファタは狼たちを連れてその場を離れる。
「クイーン・ヴァンガードに直接関係はないが、隊員にはいたいけな少女もいるじゃろう。となると放ってはおけぬな。もう少し調べてみるとするか」