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0プロローグ
女帝が君臨する国がある。緑豊かで一年中花が咲き気候も温暖。だれもがあこがれる場所だが、問題はその女帝だ。圧倒的な権力を持つ女帝には誰もさからえない。新年を向かえ国の 中央にある城では祝賀パーティの準備が始まっている。
大広間は塵ひとつなく掃除され、中央にはピカピカに磨かれたシャンパングラスが高く積み上げられている。珍しい四季折々の花が飾られた巨大なケーキもある。
大勢のメイドやトランプの形をした兵隊たちが黙々と働いている。
女帝は一段高い台座からその様子を見ていた。
「みんな良く働く。満足だ」
とても機嫌が良さそうだ。
そのとき、天井に次々と黒い穴が空いた。
ドサッ、ドサッっと落ちてくる人々。
「またあの馬鹿ウサギ、場所を間違えたのね。あれほどドレイは牢獄に落とせと命令しているのに」
女帝の眉間に大きなしわがよっている。
ドサッ。
「きゃぁーーーーーーー!」
メイドから悲鳴が上がった。
ドラゴニュートがケーキの上に落ちてきたのだ。
生クリームが大広間に飛び散る。
「なんてことを、お前なぞ、こうしてやる!」
女帝が手を向けると、そのドラゴニュートブルーズ・アッシュワース(ぶるーず・あっしゅわーす)の姿は消えてしまった。
「うわっ!」
今度悲鳴をあげたのは、女帝の傍らに立っていたメイドだ。
「消えましたわ!どこにいったのですか」
声の主は、百合園女学院の高務 野々(たかつかさ・のの)だ。
女帝の傍らに控えている数人のメイドがぶるぶると震えている。
野々は女帝に進言する。
「女帝様。心無きメイドなど主たる女帝様の近辺に侍らせたりせずに、適当にパーティの準備をさせておけばよいのです。恐れながら、その心得たる私のようなメイドに貴女様の小間使いをお任せ願えないでしょうか?」
少しでも女帝の怒りに触れる人を減らすために盾になろうというのだ。
「そのとおりかもしれぬ」
震えるメイドに、
「お前たちは準備に行け」
追い払う。
1落ちる人々
「 Happy New Year!」
新年、ヴァイシャリーの街はお祝いムードに溢れている。年末年始の休暇を利用し手旅行に来た地球人や空京の住人が、ゴンドラに乗ったり買い物をしたり、風光明媚な町並みを楽しんでいるとき、
「大変だ、大変だっ!遅れちゃう!」
街を一匹の巨大な黒ウサギが駆けてきた。
どこからどうみてもパラミタウサギだが言葉を話している。ゆる族かもしれない。
「大変だ、大変だっ!」
大変なのは、ヴァイシャリーの住人だ。
「ギャーーーーーー!」
ウサギが足を地面に落とすたびに、悲鳴が聞こえてくる。
アイリス・ブルーエアリアル(あいりす・ぶるーえありある)と買い物に来ていた高原瀬蓮(たかはら・せれん)は、悲鳴を聞いてきょろきょろしている。
「騒がしいね、なんだろ?」
瀬蓮が振り返ったとき、黒ウサギがピョンピョン跳ねて、目の前に飛んできた。
ウサギが跳ねるたびに、地面に大きな黒い穴が空いては消えてゆく。
「うわっ!アイリス、助けて!」
瀬蓮の前にも大きな穴。
「セレン、つかまって!」
アイリスが手を伸ばすが、
「うわゎぁぁゎぁーーーーー!」
セレンは穴の中に落ちてゆく。
他にも多くの人が穴に落ちる。買い物していて恋人だけが穴に落ちたカップル、手をつないだまま二人同時に落ちていった夫婦、悲鳴が上がるたびに人の姿が消えてゆく。
鬼崎 朔(きざき・さく)は、ブラッドクロス・カリン(ぶらっどくろす・かりん)、スカサハ・オイフェウス(すかさは・おいふぇうす)、尼崎 里也(あまがさき・りや)をつれて新年のヴァイシャリーの街を楽しんでいた。
「うぁー、綺麗な街だね」
はしゃぐブラッドクロス。
メイドになりたい機晶姫スカサハは、街を歩く百合園女学院のメイドたちを憧れの目で見ている。
英霊の里也はそんな二人をほほえましく見ている。
女4人の一行は、賑やかに楽しげに歩いていた。
ウサギがかけてくる。
「うわゎぁぁゎぁーーーーー!ぎゃぁーーーーーーーーーーー!おぉぉーーーーーーーーーー!」
悲鳴と共に先行して歩いていた三人が穴の中に飲み込まれた。
残されたのは、朔一人だ。
助けようと差し出した手には、里也のかんざしが握られている。
鬼崎 洋兵(きざき・ようへい)はユーディット・ベルヴィル(ゆーでぃっと・べるう゛ぃる)とともにヴァイシャリーの正月を楽しんでいた。
黒ウサギがやってきたのは、本当に一瞬だった。
洋兵の少し後ろを歩いていたユーディットは悲鳴すらあげず黒い穴に吸い込まれていった。
「ちきしょー!何が起こったんだ」
黒ウサギを追いかける洋兵。
高村 朗(たかむら・あきら)とルーナ・ウォレス(るーな・うぉれす)は正月の風景を楽しんでいた。
突然砂埃が上がって、
薔薇の学舎鬼院 尋人(きいん・ひろと)はめったにヴァイシャリーにはやってこない。今日いるのは、憧れの先輩黒崎天音が来ていると聞いたからだ。
街中をぶらぶらしていた尋人は、すぐ目の前に、ブルーズ・アッシュワースと歩く天音を見つけた。
「先輩!」
声をかけようとした瞬間、大きなウサギがかけてきた。
一瞬で、ブルースが、そして追うように天音の姿が消えた。
「先輩・・・」
尋人はウサギを追いかける。
高村 朗(たかむら・あきら)とルーナ・ウォレス(るーな・うぉれす)は正月の風景を楽しんでいた。
突然砂埃が上がって、猛スピードの黒ウサギがかけてくる。
朗は慌ててルーナをみやるが、既に姿はない。
朗の周りには小さな穴が無数に空いて、多くの人が落ちていった。
「捕まえろ!あの黒ウサギを捕まえろ!」
お正月の華やかなムードは一転、ウサギを追いかけ街は大騒ぎとなった。
やっとアイリスが黒ウサギを捕まえた。
ウサギは激昂するアイリスを見てぶるぶる震えている。
「セレンはどこにいった?」
「こわ〜い女帝のところだよ、あそこにいくと、みんな強制的にメイドにさせられて働くんだよなぁ、大変だよなぁ」
アイリスは黒ウサギの耳をつかんで、つるし上げる。
「どうすれば、セレンの元に行けるのか?」
「簡単だよ!」
するっとアイリスの手を抜けたウサギは、地面にトンッと落ちた。
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