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五機精の目覚め ――水晶に映りし琥珀色――

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五機精の目覚め ――水晶に映りし琥珀色――

リアクション


第五章


翠玉の行方2


「エメラルドさん!」
 由宇がエメラルド・アインの姿を発見し、そのまま駆け寄っていく。彼女に怪我はないようだ。
「キミは、あの時の……」
 エメラルドは話せる状態ではあるようだった。
「大丈夫ですか? 何があったのですか?」
 この三日間で彼女の身に起こった事を、由宇は知らない」
「あのまま連れていかれて、ずっと気絶させられちゃっててさ。一回目を覚ました時は、女の人を治すように言われて、仕方なく治したんだ」
 その女の人とは、『灰色』の事だ。
「それで、今ここに転送させられたんだ。もう、ボクにも何が起こってるか、分からないよ」
 事態をエメラルドも把握してはいないようだ。
 その時、
「うわっ!!」
 突然フラッシュがたかれたかのように、光が起こった。何者かによる光術だ。
「エメラルドさん!」
 目晦ましを食らい、目が見えない状態でエメラルドに手を伸ばそうとする。
 しかし、由宇より先にエメラルドを掴んだのは――
「よし、このまま連れてくぜ」
 北斗だった。光術を放ったのはクリムリッテであり、その隙にエメラルドを連れていく。
(悪いわね、とは……言わないわよ)
 由宇達を足止めするため、通路に火術を放ち、追跡を防ぐ。
「あとはマキーナと合流するだけだ」
 本来なら、エメラルド以外の五機精を狙うはずだったが、転送の座標がどういうわけかずれたために、行動を変更せざるを得なかった。
 合流を優先したが、エメラルドの姿を発見したために、急遽確保する事にしたのである。
 だが、
「エメラルドさんを、放して下さい!」
 ルイが由宇からの連絡を受け、この場に駆けつける。
「悪いが、邪魔するんだったら力ずくで行かせてもらうぜ!」
 北斗が光条兵器を構え、ルイに切りかかろうとする。
「北斗!!」
 クリムリッテの声に反応しなければ、彼はここで倒れていたであろう。
「……外しましたか」
 レイナが、隠れ身を駆使して北斗の背後に回り込み、大鎌で一気に首を落とそうとしたのだ。
 薙いだ鎌が空を切る。
 その間に、ルイが二人に接近する。
「これ以上、仲間には、友人には手を出させません!」
 彼が拳で北斗を殴り飛ばそうとする。
「く……ッ!」
 なんとかこらえる。現状、二対三だ。しかも、北斗側にはエメラルドという人質がいる。
 そこへ、今度は機晶姫用レールガンの光が飛んできた。
「ルイ、大丈夫か!」
 リアが、彼らを援護したのだ。
「はい。エメラルドさん、さあ――」
 ルイがエメラルドに手を伸ばし、北斗達から引き離す。
「さあ、もう大丈夫です!」
 彼女を抱きかかえ、微笑みかける。
 敵は通路の前後を塞がれ、挟み込まれた。まともに戦ったところで、もはや勝ち目はない。
「くそっ……」
「この場は、一旦引くわよ」
 最大光量の光術を、再び発動するクリムリッテ。視界を封じている間に、その場を離脱した。
 エメラルドを再び攫う余裕は、もう残っていなかった。
「……逃げられましたか」
 残念そうにするレイナ。
「しかし、エメラルドさんは無事に戻りました――由宇さん」
 改めて顔を合わせる由宇とエメラルド。
「ずっとあなたと一緒に過ごしたかったです。さぁ、一緒に帰りましょう」
 由宇がエメラルドに微笑みかけた。
「うん!」
 元気よく、彼女に応えるエメラルド。
「エメラルドさん、これを」
 ルイが友情のバッジを手に取り、それを手渡した。
「私達はもう、友達です。ジェネシスさんも貴女達の事を考えていたようですが……」
 に、っとルイも笑みを浮かべる。
「私の望みはただ一つ! エメラルドさん――貴女の笑顔です」
 それ以上の言葉はもはや必要なかった。
「行きましょう。もう長居は無用、そんな気がするのです」
 エメラルドを狙う者もいた。
 彼女と一緒に、敵もこの施設に侵入したのだ。一筋縄ではいかない強敵もいるだろう。
 だからこそ、彼女達はエメラルドを連れ、施設の外へと脱出していった。