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リアクション
chapter .4 1時〜4時
船内は深夜を迎え、静かさを増していた。
と、言いたいところだが、好奇心や性欲旺盛な若者が集まっている以上、そう静かになるわけがなかった。むしろ深夜ということで、危険な方向にテンションが上がっている者も何名かいた。
ということで、おそらくこの時間帯は性的な描写が入る恐れがあるだろう。ぜひとも気をつけてもらいたい。
2階、大広間入口付近。
隼人に水鉄砲をかけそのまま走り去った美羽は、非常食も食べきってしまい空腹が限界に近付いていた。
「うー……お腹が、お腹がピンチだよー……」
とぼとぼと元気なさそうに歩く美羽。と、彼女が通路脇に何かを見つけた。
「ん? 今度は何だろう?」
つい興味をひかれた美羽が近付くと、それは段ボールで組み立てられた、小さな家だった。よく見ると、段ボールの外側に文字が書いてある。
『決して入らないでくださいませ! この中入るべからずですわっ!』
「……んー、何だろう、これ」
じっ、と不審そうに美羽が見つめる。同時に、お腹の音がなった。
「怪しいなー、でももしかしたら中に食べ物とか入ってるかも。それに、昔何かの話で聞いたことあるっ! たしかトンチってやつよね!」
美羽は、頭のそばに指を持ってきてくるくると回し始めた。
「この中……入る、べからず……」
少しの間考えを巡らせた美羽だったが、すぐに面倒臭くなって結局入ることにした。
「えーい、よく分かんないから入っちゃえ。お邪魔しまーす!」
精巧につくられた段ボールの扉を開け、段ボールハウスに入る美羽。
「おーっほっほ、ようこそですわっ」
「わっ!?」
入ったと同時に、美羽の至近距離で彼女を出迎えたのはロザリィヌ・フォン・メルローゼ(ろざりぃぬ・ふぉんめるろーぜ)だった。家と言っても所詮は段ボールでつくられたものなので、中は広くない。ゆえに、美羽とロザリィヌの体はほぼ密着状態だった。
「ちょっ、ちょっと近っ……!」
「あらあら、こんなに短いスカートをはいて。そんなに触れてほしいのでしたら、遠慮なく触れて、撫でて、擦って、舐めてさしあげますわっ!」
ロザリィヌは美羽の言葉を聞き入れる様子もなく、なおかつ許可を得る様子もなく美羽の美脚を触り始めた。女の子が好きで好きでたまらない彼女は、段ボールハウスでオリジナルの百合ホイホイを設営し、獲物がかかるのをひたすら待っていたのだ。美羽は百合ではなくいたってノーマルなのだが、女の子ならロザリィヌはなんでもアリだった。
「やっ、ちょっ、どこ触って……」
ロザリィヌの細くしなやかな指が美羽の足をつう、と滑らせた。程よい質感を持った太ももは彼女の欲情を肥えらせ、さらに息遣いを荒くさせた。密閉された空間で汗ばむ美羽は心なしかうっすら赤くなっているようにも見え、ロザリィヌは堪えきれずにその四肢を絡ませた。
「もっと、もっと晒してくださいませっ」
ロザリィヌの手が美羽のブラウスに伸びた。ゆっくりとボタンを外していくロザリィヌ。美羽の白い肌が徐々に露になっていくと、ロザリィヌはその柔肌を爪でなぞった。ぴくん、と僅かに美羽の体が震える。そしてロザリィヌは、懐から何やら小さな機械を取り出した。
「さあ、あなたはどこか敏感なのか、調べてさしあげますわ」
ロザリィヌの持っている機械が、ブブブ、と振動する。念のため言っておくが、これはマッサージ機である。ピンク色でリモコンがついていて、コードが伸びてはいるが立派なマッサージ機である。だから全年齢対象でも大丈夫だよ!
「ほら、入ってますわ! 入ってますわよ!」
これも誤解のないよう言っておくが、ツボに、である。
「あんっ、ああっ」
もはやどちらのものとも区別つかない嬌声が段ボールハウスから漏れる。それを聞き足をとめたのは、同じく段ボールを持ち込んでいた斎藤 邦彦(さいとう・くにひこ)だった。彼はゲーム開始時からずっとこの段ボールをかぶって姿を隠し、移動を続けていたようだ。まるでどこかの施設に潜入する諜報部員のようである。ちなみに彼はこの状態のまま、甲板からスタートしここまで歩を進めてきたらしい。
「なんだあの段ボールは……同業者か? ならここで落としておいた方が効率的だな」
甲板にあった武器庫から拝借していた火薬を用い、邦彦は破壊工作をしかけた。
「これでよし……と。さて、面倒くせえが先へ進むか。あまり消極的な態度だと何かペナルティを食らう可能性もあるだろうからな」
そのまま段ボールをかぶり、去っていく邦彦。数分後、ロザリィヌの百合ホイホイは綺麗に吹き飛ばされた。その勢いで、中にいたふたりは段ボールの破片ごと空へ放り出されたのだった。
ロザリィヌ・フォン・メルローゼ、己の欲望に夢中になりすぎて脱落。
小鳥遊 美羽、女好きの女に巻き込まれて脱落。
◇
3階、シャワールーム。
「ね、ねーさまちゃんと見張ってくれてる?」
シャワーの音に紛れ聞こえてくる、久世 沙幸(くぜ・さゆき)の不安そうな声にパートナーの藍玉 美海(あいだま・みうみ)はゆったりと返事をした。
「ふふ、沙幸さんは心配性ですわね。ちゃあんと見張ってますから、安心してくださいな」
「う、うん、ねーさまがそう言うなら……ありがとう、ねーさま」
小さい個室のように壁で隔てられたスペースがいくつかあり、沙幸はその中のひとつに入って汗を流していた。動き回って体が汗ばんでいた彼女は、洗い流したいとずっと思っていた。が、のぞかれることを心配してなかなかシャワーを使えなかったのだ。が、美海が見張りを申し出たことで、沙幸はようやくすっきりすることが出来ていた。「任せてください、沙幸さん」と言った美海の表情が何か企んでいそうだったのが気がかりといえば気がかりだったが、ベタベタする体には勝てなかったようだ。
「ねーさま、いる?」
「いますわよ、沙幸さん」
仕切りの外側で、美海が返事をする。もう何回も繰り返された質問だった。美海はふふっと微笑むと、おもむろに服を脱ぎだした。
「そんなに心配なら、いつでも確認出来る位置まで移動してあげますわ」
「えっ?」
沙幸の返事を待たずに、美海が仕切りの内側へと入る。
「ちょっ、ねーさまっ、何でこっちに入ってきてるの!?」
「沙幸さんがあまりに不安そうでしたから、これはそばにいて安心させてあげなくてはと」
「だって、見張りはっ……」
「あら、わたくしはいつだって沙幸さんのことをじいっと見張ってますわよ?」
「そういうことじゃ……あんっ」
美海の手が、沙幸の首筋を撫でる。
「ねーさま、こんなとこ誰かに見られたら……!」
しかし、美海の愛撫はとまらない。むしろ段々と激しさを増しているようにも見える。それに比例して、沙幸の声のボリュームも大きくなっていった。
「ふふ、そんなに声を出しては、どこかの殿方に見つかってしまうかもしれませんわね」
「そっ、そんなこと言ったってねーさまが……んっ」
一向にやめる気配のないふたり。何分かそれが続いた頃だろうか。案の定と言うべきか、よがる声に引き寄せられ、シャワールームに侵入する男がいた。
「おっぱいバトラーシャンバラン〜、俺は戦士〜」
おもちゃ屋で手に入れたという女性の胸が強調されたマウスパッドを手に、珍妙な歌を歌いながらやってきたのは神代 正義(かみしろ・まさよし)であった。
どうやら彼は、興奮のあまり正義のヒーローという設定を忘れ、性戯のヒーローと化してしまったようだ。トレジャーセンスによってここまで導かれた性戯……いや、正義は鼻息荒く沙幸たちのいる場所へと足を踏み入れた。
「おっぱいの気配がしたので参上しました! おっぱいマイスターシャンバラン!」
一切自重しないそのぶしつけな名乗り口上に、沙幸と美海は揃って怪訝な目を向けた。もちろん大事なところを隠すことは忘れていないのでセーフだ。正義はいつの間にか厨房で調達してきた牛乳を水筒に詰め、いつでもかけられるようスタンバイしていた。
「ね、ねーさま、のぞき魔が出たよっ!!」
「予想通りですわね。成敗ですわ」
美海が火術を放つ。ここまでは、正義の計算通りだった。相手が攻撃してきた隙を突き、水筒の中身をぶっかける算段だったらしい。が、正義の計算は狂ってしまった。なぜなら美海の放った炎は、正義の大事なところ目がけて放たれたからだ。さすがにこれを受け流すことは出来ず、正義の陰部は燃やされた。
「うおおおああああああああっ!!!!!」
毛が、皮が燃えていく。正義はかつてない危機に、叫び声をあげた。咄嗟にシャワーを掴み消火作業にあたるも、彼の大事なところはうっすら黒くなっていたように見えた。いや、元から黒かったのかもしれないが。そして今の今まで沙幸たちがシャワーを浴びていたため、その温度設定は割と高めになっていた。
「あっちいいいいいいいいいいっつっうううあああ!!!」
火は無事消えたが、依然彼の急所な大変なことになっていた。彼に残された手段は、手持ちの水筒の中身をぶっかけることだけだった。びしゃっ、と牛乳を自らのモノにかけた正義は、涙を流しながらシャワールームを後にした。
「ね、ねーさますごい……」
「さ、では続きをしましょうか、沙幸さん」
「……え?」
その後、シャワールームから再び艶めかしい声が聞こえてきたがそこに侵入しようとする者は誰ひとりいなかったという。
◇
1階、医務室。
大事なところが大事に至ってしまった正義は、治療をするべく医務室へと足を運んでいた。
「誰か……いたら治療を……!」
しかし、そこで正義が目にしたものは、なんとヨサークの船にいるはずがないセクシーな女医であった。否、それは女医に扮した崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)の姿であった。
亜璃珠は胸を強調したブラウスの上から白衣をまとい、スリットの入ったミニスカートをはいて色っぽく足を組んでいる。武装欄になかったからきっとこれは彼女の自前なのだろう。一体他にどのようなコスプレセットを持っているのか、気になるところである。
「あら、いらっしゃい。どこか具合でも悪いの?」
チンパンコの体臭のせいか、それとも夏のせいか、完全になりきっている亜璃珠。そんな彼女を見て、正義はちょっとだけ恥ずかしそうに言った。
「……んが」
「うん? 何て?」
「ちん……ちんが」
途切れ途切れに言葉を出しつつ、痛みのあまり股間をきゅっと押さえる正義。亜璃珠はそれを見て、へんな勘違いをしてしまった。
「あらそう、そこの具合が悪いのね。ふふ、溜めすぎは良くないわよ」
亜璃珠がすっと立ち上がり、正義の背中を優しく押す。正義が誘導された先は、ベッドだった。そのまま彼女はカーテンを閉めると、正義をベッドの上に押し倒した。ぐい、と亜璃珠が正義のお面を取る。
「あら、かっこいい子ね。なんで今まで被ってたのかなあ?」
お面のことね。
「ねえ、保健体育の授業しちゃおっか。先生もなんか、そんな気分になってきちゃった」
ぐい、と胸を寄せる亜璃珠。間近でその豊満な胸を見た正義の股間は、本人の意思とは無関係に膨張を始めた。が、半ば火傷状態の彼のそれは、膨張と同時に激痛をもたらす。
「おおおああああああああっ……!」
「どうしたの? 怖いの? 大丈夫、怖いのも、痛いのも最初だけ……先生に任せてれば気持ちよくなれるから。ね?」
亜璃珠はそう言うと、どこのおもちゃ屋から見繕ってきたのか蜂蜜的なものを取り出し、正義の衣服を脱がすと様々な箇所に塗り始めた。この瞬間、正義の股間で奇跡のハチミツ牛乳が出来上がった。
「ふふっ、ベタベタしちゃったね」
「う、うん……」
高濃度のエロスを振り撒く亜璃珠を前に、正義は若干幼児退行していた。
「色んなとこが汚れちゃったよ、先生……」
「大変ねえ。じゃあ、どうやってお掃除すればいいかなあ?」
「分かんない。教えて、教えてねえ先生……」
「ふふっ、素直な子。先生そういう子好きよ」
亜璃珠の手が正義の股間に伸びる。そのまま彼女が手を動かすと、正義は痛みと快感の狭間で昇天した。
先ほどまであれほど女性の胸を求めていた正義も、これほど豊かな胸の持ち主の手でやられるなら本望であろう。亜璃珠は2回戦に入ろうと、正義の股間に顔を近づけた。その時だった。
「くさっ」
今までは蜂蜜の匂いが部屋に漂っていたので誤魔化せたが、股間にはたっぷり牛乳がかかっており、それを至近距離で嗅いだ亜璃珠は一気にテンションが下がった。
「ちょっとあなた、何ヶ月溜めたらこんな臭いが生まれるの?」
亜璃珠は鞭でびしっと正義を叩き、窓から突き落とした。
神代正義、最終的に誰の胸も揉めず肉体と精神に大きな怪我を負い脱落。
◇
同じく1階にある機関室。
だごーんとメカダゴーンに先立たれ、ひとり残されたぽに夫はエアお茶会に飽き、機関室を出るところだった。
「いあ、いあ。あちこち騒がしいみたいですが、一体皆さんは何をしているんでしょう……かっ!?」
部屋を出たと同時に、ぽに夫は何かに足を引っかけ転倒した。
「な、何ですか?」
「や、やった! かかった!!」
それは、皆川 陽(みなかわ・よう)がトラッパーで仕掛けた縄跳びの罠であった。陽はそのまま素早く縄跳びをぽに夫に巻き、動きを封じると機関室へと連れ去った。
「はあ……はあ……水着っ、スクール水着をっ!!」
普段気弱で大人しい彼からは想像も出来ないほどアグレッシブな行動とセリフである。チンパンコに彼もあてられていたのかもしれない。ラリった彼は、己の欲望を100パーセント解放していた。さらに性質の悪いことに、陽のストライクゾーンは相当に広かった。女性でも男性でも、人外でもどんとこいの構えであった。今回その欲望にたまたま巻き込まれたのがぽに夫だったのは、陽以外の全ての者にとって不幸というしかない。誰だって、綺麗なおねえさんやかわいい女の子の緊縛シーンを見たかったのに。何が悲しくてぽに夫のあられもない姿を……今これを読んでいるほとんどの者がこう思ったことだろう。誰が得するねん、と。
そうこうしている間に、ぽに夫はスクール水着を着せられ、縄でいやらしい縛り方をされていた。
「ああっ、この食い込み具合、スクール水着から滲む背徳感……もうボクは満足だっ!」
喜びのあまりテンションが異様に上がった陽は、ハイな気分のままくるくると踊り始めた。AV(赤ちゃん向けビデオのことらしい)で見たばかりの幼児の踊りである。
「こ、これ以上関わるとろくなことにならなさそうです」
もう既にろくなことになっていないが、ぽに夫はこの狂った世界から抜け出すべく、ダンゴ虫のように地面を這う。機関室の壁はそのほとんどがだごーんたちによって壊され、吹き抜け状態となっている。ぽに夫はそこからダイブした。
「ああっ、スクール水着!!」
陽はぽに夫の落下に気付くと、慌てて駆け寄った。が、既にぽに夫の姿は小さくなっていた。
「スクール水着を着て縛られたままバンジーなんて、そんな……」
ボクもその瞬間を見たかった。陽はのん気に踊っていたことを後悔したが、すぐに解決策を思いつく。
「今飛べばまだ間に合うかもっ……! 待っててスク水縄っ子バンジー!」
陽は、数歩下がって助走をつけてから満面の笑みで空に体を放り投げた。
「I can fly!」
ぽに夫、陽、やりたいことやって脱落。
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