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空賊よ、さばいばれ

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空賊よ、さばいばれ

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chapter .9 パルコ 


 長かった船旅にも、終わりが見えてきた。
 夕方になり、船はツァンダ沿岸部の近くまで進んでいた。その道中、空峡に浮かぶ小さい島にその施設はあった。
 パラミタルーザーズコート。略してパルコである。
 その名の通り敗北者が集うこのコートには、これまで船から落ちた参加者たちが一斉に集まっていた。どうやら蜜楽酒家の空賊がボランティアで落下者を回収し、ここまで送り届けてくれたようだった。
 ここで、これまで脱落した者を確認するためにもこのコートにいる参加者のリストを表示しよう。

 脱落者一覧(落下順)

 19時〜22時
 巨獣 だごーん
 メカ ダゴーン
 巨熊 イオマンテ
 イーグル・ホワイト
 セイニー・フォーガレット

 22時〜1時
 作曲者不明 『名もなき独奏曲』
 如月 佑也
 ロア・ワイルドマン
 風祭 隼人
 セシリア・ライト
 フィリッパ・アヴェーヌ
 ステラ・クリフトン

 1時〜4時
 ロザリィヌ・フォン・メルローゼ
 小鳥遊 美羽
 神代 正義
 いんすます ぽに夫
 皆川 陽

 4時〜7時
 日下部 社
 佐伯 梓
 緋桜 ケイ
 悠久ノ カナタ
 五月葉 終夏
 ルクリア・フィレンツァ
 鈴木 周
 斎藤 邦彦
 草薙 莫邪
 鉄草 朱曉
 水神 樹
 草刈 子幸
 ケイラ・ジェシータ
 御薗井 響子
 小林 翔太

 7時〜10時
 トライブ・ロックスター
 ファタ・オルガナ
 橘 カオル
 南 鮪
 土器土器 はにわ茸
 赤城 長門
 レン・オズワルド
 琳 鳳明
 南部 ヒラニィ
 水上 光
 ルカルカ・ルー
 森崎 駿真
 リリ マル
 一条 アリーセ
 東雲 秋日子

 10時〜13時
 変熊 仮面
 鳥羽 寛太
 ジャック・フォース
 緋桜 遙遠
 ファニー・アーベント
 如月 玲奈
 伊万里 真由美
 カーラ・シルバ
 清泉 北都
 ソーマ・アルジェント

 13時〜16時
 ヌウ・アルピリ
 高崎 悠司
 早川 呼雪
 泉 椿
 春夏秋冬 真都里
 九条 風天
 ネル・マイヤーズ
 小豆沢 もなか
 七枷 陣

 以上、計66人が脱落者の面々である。
 そして前回同様、脱落者たちは互いの戦歴を存分に語り合っていた。
「では今回の、誰が一番影が薄かったでしょうかグランプリ!」
「ひゅーひゅーっ!」
「ボクは結構自信……あります」
 ケイラのパートナー、響子が立候補すると、負けじと北都のパートナー、ソーマが名乗り出る。
「俺だって負けてねえぜ。何せ、ほとんど喋ってねえからな」
 やはりこのグランプリはパートナーが有利なのか。そんな仮説を打ち消すように、陽と光が手を上げた。がしかし、これは周りから反対の声が上がり却下された模様だ。
「お前、スクール水着着せたりして欲望思う存分満たしたろ! 出番うんぬんの前に、やりたいことやれてるじゃねえか!」
「お前に至っては、あのフリューネの胸に触ってるじゃねえか! そんなラッキーな目に遭っといてこれ以上何を望むんだ!」
 一方、影が薄かったでしょうグランプリの隣では「誰が一番酷い目に遭ったでしょうグランプリ」も開催されていた。
「わしじゃろう! 船に乗ってもいないのは高ポイントじゃろう!?」
 イオマンテが高いところから声を降らせると、美羽が反論した。
「私なんて、乗ったはいいけどひどいセクハラ受けたんだからね!」
「あのー、私たちも負けてないと思うんだよね」
「そ、そそそうよっ……! セクハラプラス、出番が……!」
 終夏とルクリアが揃って不満を言う。
「でもまあ今回はあいつだよな、やっぱり……」
「逆に、どうやったらあれだけ酷い目に遭えるのか知りてえくらいだよ」
 何人か候補者は出たものの、最終的にシャンバランこと正義が今回一番死にそうになってたよね、という結論に落ち着いた。
 もちろん、どちらも選ばれたからといって特に何もないが。
 そんな実りゼロの話し合いの中、カナタがふと上を見る。そこには乙女座(パルコ)のザクロの像があった。ガイドで出てこないって書いたのに、あんた、嘘つきだね!
 カナタはじっとザクロを見つめると、手ぬぐいを頭に巻きつけた。
「本当なら笠を用意してあげたかったのだが……」
 おもちゃ屋に笠が売っていなかったため、止むを得ず所有物の手ぬぐいを使うことにしたようだった。
「これから、もっと熱くなるだろうからな」
 と。コートに突風が吹きつけ、せっかくの手ぬぐいが風で飛んでいってしまった。
「あ……」
 一同は、揃って空を見上げる。
「しかし、太平洋に落ちなかった今だから言えるけどよ……」
 誰かが、ぽつりと呟いた。
「今思えば、料理くらいであんなに殺気立たなくてもよかったよな」
 空賊たちが用意してくれたそうめんをすすりながら、全員が頷いた。