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【2020年】ハロウィン・パティシエコンテスト

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【2020年】ハロウィン・パティシエコンテスト

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第6章 寝落ちたらアウト?完成を目指せ!

-PM18:00-

「参加するには仮装しなきゃいけないんだよね。あたしはせくしー的な方じゃないし、コミカルに行こうかな?」
 買ってきた魔女衣装を纏い、ミルディア・ディスティン(みるでぃあ・でぃすてぃん)は作ったパンプキンランタンを、頭からかぽっと被る。
 ジャック・オー・ランタンの格好をした彼女は、火術でバターをやわらかくする。
「いっぱい作らなきゃいけないからミキサーを使おうっと♪」
 まずバターと砂糖を入れて、卵と薄力粉の順番に3回に分けてミキサーにかけ、枝角の形にしてオーブンで焼く。
「うーんなかなかいい焼け具合だね。よし、もう1度オーブンに入れてっと」
 20分後、型から外したスポンジケーキに、シロップにブランデーを加えたものを塗り、オーブンに短時間だけ入れる。
「カリッと表面を焦がすだけじゃなくて、アルコールも飛ばせるからね。これに生クリームを塗り塗り〜」
 生クリームを丁寧に焼きたてのケーキに塗る。
「これだけじゃ寂しいから、もう少し何か作ろうかな」
 水飴と砂糖を鍋でカラメル色になるまで煮込み、包丁で刻んだアーモンドを加え、型に入れて冷やす。
「隣使ってもいいか?」
「どーぞ」
「ありがとう。俺たちも今から作らないと間に合わないからな」
 朝霧 垂(あさぎり・しづり)はパックから卵を取り出して室温に戻す。
 参加するには仮装しなきゃいけないということで黒のビキニを着て、超感覚の黒豹の耳と尻尾を生やしている。
「普通の包丁じゃ、切りにくいな」
「それで切っている人は怪力の籠手とかのおかげで切ることが出来るみたいだけど。それ以外の人はかなり時間がかかっているよ。刀を使ったらどうかな?」
「あ、そうだな!」
 ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)の言葉に彼女は、虚刀還襲斬星刀を消毒し、カボチャをスパンッと斬り裂く。
「きゃーっち」
 床に落ちる寸前、ライゼがガシィイッとキャッチする。
「お椀サイズだから中は何とかくり抜けそうだな」
 まな板に置いてもらったカボチャの中身をスプーンで力いっぱいくり抜く。
「顔は彫刻刀でやるか」
 目や口を作り部分に薄く三角刀で傷をつけ、右印刀と平刀を使い分けて薄く削ぎ顔を作る。
「サツマイモがあるからだいたい10分くらいだな」
 その容器とくり抜いた身、サツマイモと栗を蒸し器に入れて一緒に蒸す。
 10分後、蓋を開けると真っ白な湯気が立ち上る。
「この木ベラでサツマイモと栗を裏ごしし後、砂糖を・・・」
「あーっ、味付けは僕がやる!」
「そうしてだよ。これでも結構、料理が上達したんだぜ?量だってちゃんと量ったんだし」
「それでも無理ーーっ!あの頃の垂から進化してないんだよ、どんなに分量をきっちり量っても破壊的な味付けになっちゃうんだよ!?」
 ロケット花火戦争で食用兵器を作った彼女は、そこから先も味つけだけは上達していないといいきる。
「ちょ、ライゼ・・・おまぇええっ!!」
 ライゼの物言いに垂はビキィッと青筋を立てて怒鳴り散らす。
「いいの?ここで生徒たちが大量に倒れちゃっても。学校新聞とかに載っちゃうかもよ、タイトルはナラカへ誘う甘い罠で決まりだね」
 ジャック・オ・ランタンの衣装を掴まれても、じっと見据えて冷静な口調で言い放つ。
「うっ、それは・・・・・・困る・・・」
 それにはさすがの垂も、しゅーんとしょんぼりとする。
 大人しく裏ごしだけ終わらせ、後はライゼに任せることにした。
「お砂糖をさらさら〜。美味しくなーれ、美味しくなぁれ♪」
 彼女と交代したライゼは砂糖を加えてかき混ぜながら弱火で水分を飛ばす。
「もういいかな。卵はいっきにどばーっと入れるんじゃなくって、すこーしずつ混ぜなきゃね」
 火から外し牛乳と卵を入れてしっかりと練り混ぜる。
「よーし、出来た!」
 生クリームを混ぜてカボチャの容器に流し入れ、蒸し器にそっと入れて蒸し焼きにする。
 火加減は垂が調節してやり数十分後、串をさして生地がついてこないか確認してみた。
「こんなおまけがあってもいいよね♪」
 おまけに暖かいものも用意しようと、ライゼは余った牛乳と中身を使って別のコンロでカボチャスープを作る。
「自然の甘さがちゃんと出てるね」
 ちょこっとおたまですくい、味見をして完成させる。



「ベア、パイってどうやって作るの?」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)は料理上手のベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)と一緒に参加する。
 彼女たちの仮装は、ローブを纏い頭に三角帽子を被り、マントを羽織った魔女の姿だ。
 その衣装は全てブラックカラー。
「簡単ですから私のやり方を見ていてくださいね。小麦粉とバターを水に入れるんでけど、これを耳たぶくらいの硬さになるようにこねるんです」
「手ごねなのね」
 ベアトリーチェをお手本に美羽もパイ生地をこねる。
「お菓子じゃないですけど、こねなきゃいけない蕎麦やうどんよりは簡単ですよ」
「そうね。そっちはかなり力がいるみたいだもの」
「えぇ、この生地は簡単に出来ますから。私は出来ましたけど、美羽さんはどうですか?」
「うん。ベアに教えてもらった硬さになったわ」
 耳たぶを触り美羽はちょうどいい硬さか確認する。
「冷蔵庫に30分寝かせましょう」
 ベアトリーチェが2人で作った生地をパタムと冷蔵庫の中にしまう。
「ではその間にパンプキンクリームを作ります。大きなカボチャは切りづらいですから小さめのやつを使いましょうね」
 カボチャを小さく切り電子レンジで温める。
「この後、どうするの?」
 数分間温めたカボチャを取り出して次の作業を聞く。
「ペースト状にしないで粗めに潰してください」
「レンジを使うと簡単にやわかくなるわね。・・・潰したわよ!」
「そしたら泡立て器を使って生クリームと卵、グラニュー糖とシナモンパウダーを加えて混ぜるんです。生クリームは美羽さんが生地を作っている間に、シャンバラ山羊のミルクで作ってきました」
「なるほどね」
 作り方を指導してもらい、透明なボウルに入った材料をシャシャッと混ぜる。
「さっきの生地でクリームを包んでオーブンで焼くんですけど、まだ寝かせなきゃいけませんからね」
「出すならやっぱり焼き立てがいいよね?」
「あ、そうですね」
「んー、じゃあ日付が変わる頃に出来るようにしようか」
「えぇそうしましょう」
 使った道具を流し台で片付けながら、焼き立てを出そうと頷いた。



「私もジャック・オー・ランタンに仮装して参加するよ!」
 五月葉 終夏(さつきば・おりが)はパンプキンヘッドを被り、ブラックコートを羽織って参加する。
「フフッ、猫娘ですよう!にゃーっ」
 猫耳をつけ浴衣を着て仮装したシシル・ファルメル(ししる・ふぁるめる)が、猫娘の真似のをする。
「やっぱり、皆でわいわい言いながら食べられる物がいいよね?」
「そうですねー」
「こんなのはどうかな。クッキーのラッピングの紙に御神籤のスタンプでも押しておくとか」
「スタンプは大吉とか末吉ですね?」
「うん、そうだよ。凶と大凶は少なめにしておこうかな。開いて残念な気分になっちゃうかもしれないからね」
「えぇそうですねー!」
 バターと砂糖を混ぜながらどんなクッキーにしようか話す。
「大体3個ずつにしたらいいかもしれないですよう」
 クリーム状になったそれに卵黄と小麦粉を加え、カボチャのペーストとチョコレートを入れて、別々に混ぜ合わせて2種類の生地を作る。
「あはは!ずいぶんレアな感じだね」
 生地を冷蔵庫にしまい、シシルの方を向いてまずそれだけ取れずに残るんじゃないかと、おかしそうに笑う。
「レアがそれってどうなんでしょうね。フフッ」
 シシルたちは生地を寝かせ終わるまで、クッキー型を作りながら椅子に座り30分ほど待つ。
「―・・・30分経ったかな?」
 冷蔵庫から生地を取り出した終夏は、カボチャ生地の方を伸ばし棒で薄く伸ばす。
 チョコレートの方はシシルが伸ばし、待ち時間の間に作っていたジャック・オ・ランタンとコウモリ、アーデルハイトやエリザベートの型でくり抜く。
「顔はレーズンやドライフルーツで作ろう♪」
「じゃあオーブンに入れますね」
 シシルは鉄板の上に並べたクッキーをオーブンに入れて、焼くスタートボタンを押す。
「ラッピングの紙にスタンプを押しておきましょう」
「うん、これは吉・・・こっちのはー中吉!」
 ポンッポンッとスタンプを押しまくる。
 2人が夢中で作業をしていると数十分が経ち、オーブンが止まりクッキーが完成する。
「香ばしい色に焼けたね」
 クッキーを乗せた鉄板をテーブルの上へ置き、手早くラッピングして入れ物に入れる。
「出来たー!後は30日になるのを待っているだけだね」
 携帯の時間を見ながら、早く30日ならないかゆっくりと待つ。



「んーもう、何で来ないんですの!?」
 ナース服で仮装をしているリリィ・クロウ(りりぃ・くろう)はカフェの入り口で数時間、カセイノ・リトルグレイ(かせいの・りとるぐれい)を待っているが、来る気配がまったくない。
「はぁ仕方ありませんわね。まだパートナーが来ていないのですけれど時間がありません、始めましょうか」
 これ以上は待てないとため息をつき、クーラーアウゲンを先に作りを始める。
「すでにバターがいい感じに、常温に戻っていますわね」
 持ってきたバターをボウルに入れ、砂糖と卵を加えてゴムベラで練り混ぜる。
「忘れているなんてことは・・・。―・・・まさかそんなはずないですわね」
 カセイノがコンテストの開催日を忘れているんじゃないかと考えつつ、小麦粉をふるい切るように混ぜ合わせる。
「―・・・来ないですわね。もう生地が出来てしまいましたわ」
 まだカフェに現れない彼を待っていたが、完成したクッキー種を冷蔵庫にしまう。
「電話でもかけてみましょうか」
 流し台で手を洗い、カバンから携帯を出してカセイノに電話をする。
「あれ、リリィ?」
「もしもし〜、遅いですわよ。あと焼くだけなんですからね」
「え?ええっ!今日だっけか?今行くすぐ行くちょっと待ってろ!あぁ〜衣装どうしようか・・・。えぇい適当でいいやっ」
 クローゼットの中にある白衣を掴んで羽織る。
 医者コスをしている彼をはたから見たら、急患でもあったのか?というふうに見えそうなくらい急ぎ、会場のカフェへ走る。
「本当にまさかの事態になるなんて思いませんでしたわ」
 その頃、リリィは寝かせておいた種を、丸く真ん中がへこんだ形に成形して温めたオーブンで焼き始めている。
 数分後。
「受け取れー!」
 会場に駆け込んできたカセイノが、リリィに思いっ切り携帯音楽プレイヤーを投げつける。
「危ないじゃないですかっ!」
 彼の声が聞こえ、振り返り様にパシッと両手でキャッチする。
「やっと来ましたね、こちらはもう完成ですわ。味見します?」
 すでに荒熱が取れたクッキーのへこみにジャムを乗せて完成させてある焼き菓子を差し出す。
「もう出来たのか。悪いなー」
 クッキーをはむっと食べて味見をする。
「それどういうふうに使うんだっけ?」
「隠し味としてお皿の下に置いて流しますわ」
「俺もまだミンストレル新人、ちょっと恥ずかしーじゃんかよ・・・・・・」
「あら、小さな音量ですから大丈夫ですわよ。それとも遅れてきた罰として、大音量で流します?放送室でカフェ内全体に聞こえるように流すのもいいですわね」
「や、やめてくれ。それだけはーっ。後生だからこのとおーりっ、頼むー!」
「フフッそんなことで後生を使わないでくださいよ。そんなことをしたら隠し味になりませんからね」
 まったく隠れていなくなってしまうからそんなことはしないとクスリと笑う。
「何だ・・・冗談かよー・・・」
 からかわれただけだと気づいたカセイノはずぅーんとへこんだ。



「これくらいの時間なら出来立てを出せそうですね」
 魔女の衣装を着て参加しに来た咲夜 由宇(さくや・ゆう)は、さっそくクッキー作りにとりかかる。
 ボウルにバターを入れて練り、白っぽくなるまで粉砂糖を数回に分けて混ぜる。
「ただ焼くだけじゃおもしろくありませんよね。隠し味にバジル粉を入れちゃいましょう♪」
 それに生クリームを加え、香りのいいバニラエッセンスと隠し味を少しだけ入れる。
「手でこねるのかのう?」
「はい、ヘラよりも私はこっちの方が作りやすいんですよ」
 薄力粉を入れて手でまとめながら、見に来たアーデルハイトにニコッと笑いかける。
 出来上がった生地を冷蔵庫に入れて1時間ほど寝かせる。
「こら、生地よ。起きるのじゃ!」
「フフッ、1時間くらい待たないとオーブンに入れられませんよ」
 急かすように言う彼女の姿に、ちょっとだけ待つように言う。
「うーむ。少し歩き疲れたからここで待つとしよう」
 我が物顔でアーデルハイトがぽすんと椅子に座る。
 由宇が生地を寝かしている頃、霧雨 透乃(きりさめ・とうの)たちは和菓子作りを始めた。
 裏ごししやすいように、大きなカボチャを丸ごと鍋でコトコトと煮ている。
「洋菓子が多いね。てことは私たちの和菓子って結構目立つのかな?」
 白玉粉にトポポッと水を注ぎ入れて軟らかく練る。
 仮装はサキュバスっぽい翼と露出の激しい服を着ている。
「あらー素敵な仮装ですわねー♪」
 椿の監視の目から逃れ、ミナが透乃を激写する。
「わぁっ何!?」
 突然のシャッター音にびっくりした彼女は、加えようとした砂糖を落としそうになる。
「お騒がせしてすまないな!ほらミナ、戻るぜっ」
「うわーん、そっちの方の写真も撮ろうとしにー!離しなさい椿っ」
 椿に回収されたミナが、ぎゃぁぎゃぁと騒ぐ。
 緋柱 陽子(ひばしら・ようこ)の仮装は三角帽子を被ってマントを羽織りローブを纏った魔女の姿だが、透乃の陰謀によりローブが小さく、くびれやバストといった女性らしい身体のラインがはっきりと分かる。
 その上、丈も短く脚の露出も多い。
 しかもスリットが入っているため、歩く度に後ろの太ももまで見えてしまう。
「ありゃ、陽子の写真は撮れなかったんだね」
「撮らないでいいです!恥ずかしいですから・・・」
 恥ずかしそうに顔を俯かせて赤面する。
「あらあら。ずいぶんとセクシーで大胆な格好でいらっしゃったのね」
 彼女を見つけたラズィーヤが、エリザベートたちに便乗してデジカメで撮影し始める。
「美しさを隠すのもいいですけど、時には見せるのも大切ですわよ。たとえば、近くにいる大事な人にアピールするためにとか・・・フフッ♪」
「み、見せるなんてそんなっ。(私の大事な人・・・恋愛的なら透乃ちゃんですよね。はっ、すでにずっと見られているじゃないですか!)」
 両手の人差し指同士をうにゅうにゅと合わせ、透乃の方をちらりと見てかぁっと赤くなる。
「透乃ちゃんだけならいいですけど、他の人の目もありますし・・・。あ、透乃ちゃんだけって意味はその・・・あぁっ、私ったら何を言っているんでしょう」
「それも一種の愛の表現ですわね♪」
「―・・・そ、そうなんでしょうか・・・」
 照れながら木ベラでぺたぺたとカボチャの裏ごしをし、量を量って器に入れてある砂糖をサララッと加えて練り中身となる餡を作る。
「和菓子の中には甘いのもありますわよね?」
 ラズィーヤは扇を口元に当てて鍋を見つめる。
「そうだけど私が作っているのは、味を殺さないように砂糖の量を控えているよ」
 透乃は砂糖を加えて加熱しながらさらに練りつつ、お菓子の説明をしてお菓子の外側になる求肥を作る。
「出ました透乃ちゃん」
「ありがとう陽子ちゃん」
 作ってもらった餡を丁寧に求肥で包み、紅葉のようなものとかぼちゃのような形にし、ヘラを使って筋を入れて見栄えをよくする。
 彼女が作っている間、陽子は食べた人が幸せになるようにと、幸せの歌を歌いお菓子に幸せをこめる。
「きれいな歌声ですね」
「お菓子もきれいだけど、歌もいいな」
 歌声に誘われてセーフェルと樹たちが近くで聴き入る。
「なんだか和菓子の雰囲気と合っているね」
 コンテストの観戦しようと清泉 北都(いずみ・ほくと)はパートナーからジャタの服を借りて仮装し、クナイ・アヤシ(くない・あやし)と早めに会場内へ入った。
 超感覚でぴょんと出した犬耳をぴくぴくと動かし歌を楽しむ。
「色はクチナシと食紅でつけようっと♪」
 透乃は練り切りのような和菓子を鮮やかに染める。
「まずは2つ完成っと」
「写真撮らせてくれないかな?」
「いいよー」
 撮りやすいように、器に盛りつけたお菓子をテーブルの上に置く。
「ありがとう。クナイ、ブレてないか見てみて。この手じゃ操作出来ないからさ」
 肉球つきの獣手グローブをはめたままでは上手く操作が出来ないからと、パートナーから借りた吸血鬼の衣装を着ている彼に頼む。
「はい、ちゃんと撮れてしますよ」
「よかった。あ、ねぇデジカメで録画してどうするの?」
 お菓子作りの様子を撮影しているラズィーヤに気づき、録画した動画をどうするのか聞く。
「そうですわね。エリザベートさんたちもどこかで撮影しているはずですから、後で編集してウィートゥーブのサイトにでも乗せておきますわ」
「動画サイトだね」
「えぇ、お菓子を作っている方々だけじゃなくって、北都さんたちの姿も録画してありますからね。フフッ♪」
 北都と髪を解いて玩具の牙を付けているクナイにレンズを向ける。
 彼女の口ぶりからすると、気づけば撮られているという感じだ。
「おもしろいサプライズだね!」
 和菓子に色を染めながら透乃はカメラに笑顔を向ける。
「今という瞬間は、後からでは撮れませんからね。一生の記念になりますわよ。とても美しい光景が録画出来ましたわ、ありがとうございます」
「そういうことなら遠慮なく映していいよ♪」
「まだ試食の時間じゃないから後で行くね」
「うん、待っているね」
 他のコンテスト参加者のところへ行く彼に、透乃がふりふりと手を振る。



「わぁー。皆さま手がこんだの作っていますね。ボクも頑張らなきゃ!」
  静香たちにお菓子を食べてもらい、少しでも幸せな気持ちになってくれたらいいなと真口 悠希(まぐち・ゆき)も参加する。
 鍋に牛乳と水を流し入れ、ナイフでとったバターをぽんっと加えて、塩と砂糖をサーッと入れて火にかける。
「沸騰してきましたね、火を止めましょう」
 とろとろとバターが溶け出し、香ばしい香りを放つ。
「粉の量はこれくらいですね。もう1度火にかけなきゃ」
 薄力粉を加えて掻き混ぜてひと塊にする。
 パチチッ。
 コンロに火をつけて鍋を中火にかける。
 木ベラでかき混ぜ、生地が鍋底から離れるようになるまで加熱する。
「静香さま・・・本当に悪魔の格好でいらっしゃるんでしょうか。校長室で聞いてしまった時、なんだか大胆な格好のように聞こえましたけど・・・」
 そんなことを考えつつ鍋を火からおろし、生地の温度が下がらないうちに卵を加え混ぜる。
「考えただけでドキドキしちゃいますっ」
 生地を絞り袋の中にぱぱっと入れて絞り、オーブンの鉄板に乗せて霧吹きする。
「こうしておくと上手く膨らむんですよね」
 鉄板をオーブンに入れて20分間焼く。
 焼きあがったシュー生地に、カスタードを入れて完成させる、
「気づいてくれるでしょうか・・・」
 大切な人に気づいて欲しいと願いを込めながら、チョコペンで文字を描く。
「この時間なら冷めないうちに食べていただけますね」
 携帯で時間を見て皆が試食にやってくる時を待つ。



「やっと型抜きができますね♪」
 由宇は1時間寝しておいた生地を冷蔵庫から出し、伸ばして型を抜きをする。
 180度で余熱しておいたオーブンで焼き始める。
「うーん、この間にアイシングを作ってしまいましょう」
 卵の殻で黄身と卵白に分けて卵白だけボウルに入れてほぐし、粉砂糖を少量加えて混ぜまる。
「CMYKカラーを用意しておけば、いろんな色が出来るんですよね」
 いい感じになってきたら、レモン汁を加えて各色素と混ぜ合わせておく。
 数分後、焼きあがったクッキーに塗り、カボチャやおばけのクッキーたちを常温で乾かして固める。
 エリザベート校長や世界樹も入れて色鮮やかに表現する。
 塗り終わったのは深夜12時頃になってしまった。



 数時間後、ミルディアは冷蔵庫から型を出して着色する。
「小筆だと塗りやすいね」
「あ、ここでも砂糖菓子を作っているのか」
 作業の様子を傍から樹が観察する。
「色つけは天然着色料を使っているから安心して食べられるよ」
 パンプキン型に作った砂糖菓子を彼に見せる。
「食べちゃうのがもったいない感じがしますね」
 セーフェルは銀色の瞳で、可愛らしい砂糖菓子を食い入るように見る。
「鑑賞用の作品じゃないから、ばりばりと食べちゃってくれていいよ。お菓子だし」
 緑と青色を混ぜたりして着色した砂糖菓子を、皿の周囲に並べて完成させる。

-PM21:00-

「やっぱり量的に時間かかっちゃいますね」
 顔の部分に使うチョコを作り終えたマティエは、ケーキを横半分に切り、白い生クリームとフルーツを挟む。
 外側に橙色の生クリームを塗りカボチャっぽくに表現する。
「後、30個くらいですか・・・」
 側面に顔パーツのチョコを貼りつけていくつか完成させたが、残りを同じように作らなければいけない。
「んー、絵を描くってめちゃくちゃ時間がかかるな」
 瑠樹の方は固めたチョコ類を使いチョコペンで子供達風の絵、キャンパスクッキーはチョコペンで家や風景の絵を描き終わった。
「そうだ、貼りつけるチョコを用意しておかなきゃ」
 残り半分はチョコを湯煎で溶かしておく。
 それをチョコを裏に塗り所々、子供達クッキーや型チョコを貼りつける。
 間に合わせようと残りも同じように貼りつけていく。
「チョコでお絵かきですか?あんなにいっぱい作るなんてすごいです!」
 ヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)もお菓子を食べさせてあげようと作りに来た。
 仮装はシーツを被ったような、お化けみたいなフードつきマントを着た姿だ。
 フードの部分にはお化けの目などがついていて、口のところには顔が出るようにしてある。
「ブルーベリとカボチャ、シャンバラ山羊のミルク味の3種類を作るです」
 それぞれ違う味のベースする。
 ブルーベリーにはグラニュー糖をまぶし、弱火でピュレ状にして粗くこした後、皮などを手で丁寧に取る。
「いっぱいあって大変ですけど、頑張るです!」
 カボチャは中身だけを滑らかにならない程度にごりごり潰す。
 それにグラニュー糖をまぶして混ぜる。
 3つ目のやつはのシャンバラ山羊のミルクアイスをとかし、カボチャの時と同じようにグラニュー糖をまぶして混ぜ合わせる。
「おいしそうなかおりがしてきました♪」
 その3種類のベースに水を入れて溶かしトロトロにする。
 溶かしたゼラチンを混ぜて、シーツなオバケの型に流し込む。
「この中でお化けさんがひえひえに固まるんです」
 テーブルに置き自然に室温で冷やした後、冷蔵庫に入れて固める。
「次はチョコレートで目と口を作るですっ」
 うきうきと楽しみながらチョコを刻んで溶かし形を作る。
「むむっゼリーが出来るまで時間がかるですね」
 待っている間、ぽすんと椅子に座る。



「エリザベートとアーデルハイトが虫歯にならければいいが・・・」
 『ブラックボックス』 アンノーン(ぶらっくぼっくす・あんのーん)はそんなふうに呟き苦笑する。
 彼の衣装は狼男のようなだぼだぼとした服装だ。
 犬耳はオルフェリア・クインレイナー(おるふぇりあ・くいんれいなー)につけられてしまった。
「まぁ、ちゃんと歯磨きをすれば大丈夫なはずだ。お菓子ばかりなのは当然だが、栄養補給もさせてあげないとな」
 さっそく粉末状のあおさと小麦、そして薄力粉とベーキングパウダーの粉類の分量を量り、まとめてふるいにかける。
 時間を無駄にしないように、大福用のカボチャを蒸し器で蒸している。
「バターは器に置いて、常温に戻しておこう。オーブンも先に温めておかなきゃな」
 使う分だけバターを器に置いておき、カップケーキを焼く適温に温める。
「これは泡立て器でやればいいか」
 カシャシャッと菜箸で卵を溶きほぐし牛乳に混ぜる。
「オルフェ何かやることありませんか?」
「今のところないな」
「暇ですね・・・」
「そうだな・・・・・・。だったら後でランタン作りでもやってもらおうか」
 バターをクリーム状に練り、砂糖を混ぜながらオルフェリアの担当を考える。
「面白そうですね♪」
「簡単だと思うが、刃物で怪我をしないようにな」
「はい!」
 ランタン担当をもらった猫魔女の仮装をしているオルフェリアは元気よく返事をする。
「食べるだけじゃなくって香りも大事だよな・・・」
 分けて混ぜていたやつを合わせ、バニラエッセンスとクローブで香りずけをしておく。
「種は大福に使うために中身をくり抜いて使うか」
 スプーンでぐりぐりとくり抜き、種はケーキ生地に入れる。
 ゴムベラを使ってさっくりと混ぜた後、アルミカップに流しこみオーブンの蓋をパタンッと閉めて焼き始める。
「これで作っておいてくれ」
「はーい分かりました!可愛いー可愛いランタンー♪中に隠れているのは何でしょうね〜。それはとってもとってーも甘いカップケーキさん〜♪」
 ようやく作れると嬉しそうに受け取り、ニコニコと笑顔でランタンを作る。
 焼いている間に、カボチャ大福を作り始める。
 カボチャの中身を裏ごしして生クリームを混ぜる。
「皮は白玉粉とみかんの果汁で作ろうか。レモン絞り器は他のやつにも使えるからな、みかんはそれで絞ろう」
 粉に湯と甘酸っぱい香りの果汁を混ぜると餡を包む皮が出来た。
「見た目も味のうちに入るからな、キレイに包まないと・・・」
 カボチャ餡を皮で丁寧に包み、口と目になる部分を作る。
「ん、ケーキが焼けたみたいだな」
 オーブンの扉を開けてカップケーキに、ほろ苦いココアパウダーをサラサラッとふりかける。
「ランタンをこっちにくれ」
「どうぞ」
「ありがとうオルフェ。これにケーキを口の中に入れて・・・完成だ!」
 オルフェリアに作ってもらったランタンの口にカップケーキを入れる。
「フッ、これで優勝はいただきだな」
 栄養補給を兼ね備えたお菓子を完成させ、アンノーンは出来栄えにニヤリと笑う。



「いっぱいロールケーキを作りますよ♪」
 明日香の仮装は、黒ベースに所々オレンジ色のフリルワンピースの可愛らしい魔女の衣装だ。
 頭には魔女らしくとんがり帽子で、ワンピースと同じく黒にオレンジのラインがはいっている。
「かなり量がありますからフードプロセッサーを使っちゃいましょう」
 生クリームとグラニュー糖、シャンバラ山羊のミルク、パンプキンペーストを混ぜてクリームを作る。
「崩れないようにキレイに巻き巻きと巻きします〜」
 それをココアスポンジの内側に、くるくると巻いて冷蔵庫に入れて冷やす。
 余ったクリームに生クリームを足し、固くしてまんまるにする。
「ここからお絵かきタイムです♪」
 刻んで溶かしたチョコを使い、ジャックオーランタンの顔を描く。
「たしか狼男さんとか吸血鬼さんとかがいましたね」
 プレーンクッキーには、すでに会場内にいて仮装している人の姿を思い出しながら、デフォルメした絵を溶かしたチョコレートで描いてみる。
「エリザベートちゃんはミニキャベツの仮装でしたね♪」
 会場内で見かけたエリザベートは後ろの唾の部分が葉をいくつも重ねたようなフェルトの帽子を被っている。
 そして緑色のワンピースには、またまたキャベツの葉を思わせるフリルがたっぷりついている。
「収穫前のミニキャベツなエリザベートちゃんとか、ラッピングされているエリザベートちゃんとか描いちゃいます!」
 可愛らしい校長の姿をいくつも描く。
 ロールケーキにジャックオーランタンを乗せ、囲むようにイラストクッキーを並べる。
 イラストといっても実際は、エリザベートだらけなのだ。

-PM23:20-

「間に合いそうかな?」
 バターを塗った型でワッフルを焼いている間に、蒼の様子を見ようと真が声をかける。
「うん。おーきなチョコじゃないから大丈夫だよ」
 楽しそうにしっぽをふりながら椅子に座り、ブラックや食紅で色つけたチョコでアザランなどの絵を描いている。
 風船を爪楊枝でパァーンッと割って、崩れないよう取り外す。
「わぁい出来た!」
「俺の方も出来たよ」
 ワッフルを皿に盛り、アイスとカラメリゼしたカボチャ、そして作っておいた飴細工を飾る。
「あー、被せるのやりたいっ」
 出来立てのチョコドームをかぽっと被せる。
「飲み物もなきゃね」
 最後に真が皿の傍にミルクティーを添えて作業を終える。



「棺作りに時間がかかってしまいましたね」
 スケルトンを入れる棺を作った遙遠は、ようやくケーキ作りにとりかかる。
 常温に戻したバターをグラニュー糖と混ぜ、卵をパカッと割り入れてさらにカシャカシャと泡立て器で混ぜる。
「しばらく眠っていなさい」
 生地をどぼどぼとスケルトンの型に流し込む。
「まぁ、とりあえずこんなところでしょう」
 トッピング用の生クリームを泡立て器で作ってフルーツを切り焼く準備を終える。