空京大学

リアクション

第十五章　ストーリーテラー

情報通？　僕の言うことが本当かどうかはわからない、といつも言ってるだろ。では、そろそろ。ベスティエ・メソニクス（少年探偵と蒼空の密室　Ａ編）

１・四条輪廻失踪事件の解答

やあ。多重世界の狭間を旅するベスティエ・メソニクスだよ。
きみはいま、アンベール男爵とテレーズ嬢の結婚の一件の記録を読んでいるのじゃないかな。
あの事件は終盤、いくつかの謎があって、そのすべてを自分の目で見渡せたものはいないんじゃないのかな。
でも、事件にかかわったからには、真相を知りたいだろう。
僕の知る限りで、あれらの謎の解答をお伝えしよう。
さあ、準備はいいかな。

シェイド・クレインが小屋の男のウソを見破れたのは、彼が蜂は夜飛ばない性質なのを知っていたからさ。
蜂のせいで銃が暴発したなんて、大ウソだ。
あの後、駆けつけた四人に男は、真相を白状させられ、四条輪廻は無事救出されたらしい。
幸いケガは軽かったようだ。
それから、リリ・スノーウォーカーは男たちの裏金を全部頂いて、それを資金にマジェの市役所に孤児院を設立するよう、働きかけているらしい。
マリーウェザー・ジブリールは、男に仲間たちの名前、居場所をしゃべらせ、こってりとお灸をすえにいったそうだよ。迦陵を連れてね。

２・秘密の書斎事件の解答

霧島春美が男のウソに気づいたのは、書架がデューイ十進分類法で分類されている（項目、アルファベット順、五十音順）にもかかわらず、サイモン・ブレットが、スタンリイ・エリン。スタンリイ・ハイランド。スーザン・ギルラスらの後にあるのは、おかしいからだよ。
男は、書架をチェックをしていないか、本物の司書ではないか、という可能性がでてくる。
春美たちにウソを暴かれた男は、自分は実は娼館に忍びこんだコソ泥だと告白したんだ。
春美が異常を感じたサイモン・ブレットの「死のようにロマンティック」がスイッチになっていて、隠し部屋は発見された。
そこにあったはずの手帳だが、ファタ・オルガナが燃やしたとも、春美がヤードに渡したとも、ガートルード・ハーレックが裏ルートで売りさばいたとも言われている。
どうなったのだろうね？
また、いつか表にでてくかもしれないよ。

３・ルドルフ神父殺人未遂事件の解答

知的探求者の黒崎天音は、画商の所持している絵画の写真をみて、贋作だと気づいたんだ。
ルネッサンス初期の絵画は、人間のヘソが描かれてないのが特徴の一つだからね。
ルディと二人で話していた画商は、ルディにもウソがばれたと勝手に思い込んでルディを襲った。
男爵は画商から贋作を巻き上げて、彼の罪の証拠を握った。
だから、これまで、そうと知りつつ贋作で商売していた画商は焦っていたわけだ。
そう言えば、天音はルディにお見舞いとして、赤ワインのボトルを新品のブーツに入れて送ったそうだよ。
ルディは、それを宝物として保管したかったらしいが、ニトロが飲んでしまったらしい。
ブーツは、セリーヌが頂いたみたいだね。

４・令嬢自殺事件の解答

七尾蒼也は、遺言書の書きだしの短い文章だけで、誤字を二つ見つけた。
穣渡は正しくは、譲渡。
緒費用は正しくは、諸費用だ。
蒼也は、そこに疑問を感じたんだ。
マリーらしくない、とね。
マリーのその他の書き物をみると、やはり彼女は誤字脱字の非常に少ない人物だったらしくてね。
犯罪組織の内部抗争で命を落としたのが、明らかになったよ。

５・機密爆発事件の解答

クレア・シュミットは、真鍮からは火花がでないのを知っていた。
真鍮製のドアノブからは、火はでない。
だから、男のウソに気づいたのだよ。
武器を扱い、人、物を壊すことのある兵士は、その武器、物の材料まで、知識を持っている。
問い詰められた男は、自分が爆弾で部屋を爆破したのを認めたが、それ以上は、なにも知らなかった。
あの部屋になにがあったかもね。
謎だ。
事件の闇まだまだ深いというわけだ。

６・義足事件の解答

ミア・マハは歩けないはずの車椅子の死体の靴に、血が入り込むほどの皺がよっているのを見つけた。
この靴はおかしい。
死者はもしや歩けたのでは、考えた。
となると、姉と妹が入れ替わり、車椅子で射殺されたのは、妹。
そう推理したわけだ。
推理は当たっていた。
互いについていた嘘が関係をむしばみ、殺意を生んだらしいね。
ああ。
それと、レン・オズワルドはこの後、好みのタイプの少女セリーヌに会いに行って、慣れぬ笑顔をムリにつくってあいさつをしたら、誘拐犯とカン違いされて逃げられたそうだ。
レンとセリーヌの物語は、これからはじまる。
のかな？

７・新郎新婦心中の解答

ブリジット・パウエルが落ち着いて考えてみれば、車の内外側すべてのドア、窓の隙間に完全にテープを貼ったら、中で自殺できないのは、明白だった。
車自体に入れなくなってしまうからね。
二人に毒物を飲ませ、車に乗せ、外からテープを貼った犯人は、ついていねいに貼りすぎてしまったというわけだよ。
そうそう、ここで出会ったシェリル・マジェスティックとシャーロット・モリアーティは、パートナー契約を結んだんだ。
シェリルはついに運命の相手と出会えた。
よかったね。

以上、七つの解答を語らせてもらったよ。
怪しげな僕の言葉を信じる信じないは、自由にしてくれたまえ。
では、どうぞ、物語の終幕へ。