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最終決戦! グラン・バルジュ

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最終決戦! グラン・バルジュ

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第十一章 グスト・バルジュ

「うらぁ! てめぇらどきやがれ!!」
 豪放な声を上げて、ラルクが則天去私を見舞う。
 陽とテディを残してやってきたバルジュ兄弟討伐組の後続メンバーは、しつこく追ってくる兵士たちに辟易しながら進んでいた。
「あーもう邪魔だっ!! 刻むぜ、雷神のビート! サンダーブラストっ!!」
 ラルクの光拳とシリウスの雷撃が、道を駆け巡って兵士を葬っていく。
「な、なんて強いんだ。こ、こいつらは一体……」

「魔法少女、シリウスッ!!」

 丁寧に、敵の言葉に答えるシリウス。
 瞬間、その場の空気が凍りついた。
 味方も敵も、苦笑する者、怪訝そうな顔をする者、残念そうな顔をする者の三つのうちのどれかに完全に分かれてしまった。
「いや、あの歳で魔法少女はなぁ……。少なくとも“少女”ではないような……」
「18歳以上はババァだよね」
「う〜ん、なんつーか、“10年遅い”って感じかなぁ」
「杖を振ると若返るっていうなら許す!!」
「いや〜、俺としてはストライクゾーンかな! ババァ結婚してくれ!!」
 さんざんな言われようである。

「……てめぇら、オレはめっちゃ傷ついたぞ……」

 怒りのオーラを撒き散らしながら、シリウスは指をポキポキ鳴らす。
 目尻には、うっすらと涙が浮かんでいた。
「はぁ、少し、頭冷やそうか――」
 今までにないほど、放電を始めるシリウスの腕。
「刻むぜ……。ああ、刻んでやるともよ、雷神の――ビィィィィィトォォォォォ!!」
「ひいいっ!!」
 言ってはいけないことを言った、と、その場にいた敵は後悔した。気がつくのがかなり遅かったが。
「サンダーブラストッ!!!!!!!」
「ぎゃーす!!」
 ぷすぷすと煙を上げて、敵はほとんど戦闘不能に陥った。
「シリウス、よほど悔しかったんですわね……」
 リーブラが、苦笑を洩らした。
「今だ! 敵も減ったし、残った兵士も、さっきの発言で士気を失ってる!」
 優の発言を聞いて、メンバーが殺到した。
「おっしゃーーっ!」
 軽身功を使って、“壁を”走っていくラルク。
 敵に近づくたびに、則天去私を使って蹴散らしていく。
「雑魚風情が、邪魔すんじゃねぇ!!」
 だんだんと、ラルクの背中が小さくなっていった。
「キリカ、俺達も急ぐぞ!!」
「はい! 雑魚はボクに任せてください!」
 ラスターエスクードを構え、ヴァルを守るようにしてキリカが走り出す。
「どきなさい!!」
 巨大な盾で敵を吹き飛ばし、ヴァルの道を確保する。
 本来とは違う用途に感心半分呆れ半分の表情を浮かべながら、ヴァルも疾走していった。
「やっちゃん! 他の人を守ってあげて!」
「了解した!」
 透乃の指示を受けて、泰宏がディフェンスシフトで防御を固め、他のメンバーの盾となる。
「よし! 刹那と零は泰宏さんの後ろで魔法の詠唱! 俺も露払いに参加してくる!」
 そう言って、優は大太刀を構えて大きく踏み出した。
「なっ――こいつっ……」
 向かってくる兵士が、ハルバードで斬りかかってくる。
 刃の軌道を読みきった優は、そのまま兵士の横合いに入り、胴を払った。
 どうやら剣戟が浅かったらしく、余力を振り絞ってハルバードを再び振りかぶる兵士。
 すると優は、持ち上げられたハルバードを大太刀で押さえつけた。
「予備動作が大きすぎだ」
 忠告めいたことを言うと、優はハルバードの柄に沿うように刃を滑らせ、兵士の指を斬りおとした。
「ぎゃああああっ!!」
 壊れた水道のように血を垂れ流す兵士に止めを刺し、先に進む。
「くっ――くそっ!!」

「くそってのは、もちろんおまえらのことだよな」

 焦りを見せる兵士の側面から、聖夜がブラインドナイブスを仕掛ける。
 至近距離からショットガンで撃たれた兵士が、ばたりばたりと倒れていく。
「震えるは赤、燃え上がる誕生の炎、わが道を遮る邪悪を、払いたまえっ!!」
「煌け雷光、破邪の剣となりて、敵を貫けっ!!」
 刹那と零の詠唱が聞こえる。
「もういいのか――ふんっ!」
 二人に襲い掛かってきた兵士を薙刀で吹き飛ばしながら、泰宏が訊いた。
「ええ、大丈夫よ。助かったわ、泰宏。みんな、どいてっ!!」
 出来るだけ味方に損害が出ないような、かつ敵には大打撃を与えるような場所を選定し、そこに魔法を唱えた。
 炎と雷が渦を描いて、敵を葬らんと迫っていく。
 まるで、赤と黄の輪舞。
 ある者は全身を焼き、ある者は全身を痺れさせた。
「大分減ったね〜! 行こうか、みんな。早くグストと戦いたいよ!」
 注文した料理を待ちきれないといった具合で、透乃が急かした。

◆◇◆

 脇腹を押さえながら、ソレント・バルジュは元いた部屋にもどってきた。
 そう、アリア・セレスティを痛めつける前にいた部屋だ。
「うう、いたいよ……いたいよ……」
 痛みに涙を流すソレントを見て、グストが悲哀と驚愕の表情を浮かべた。
「なっ、ど、どうしたんだい! ソレント!!」
 すぐさま駆け寄って抱きしめるグスト。
「しんにゅうしてきた、あいつらに、やられた……」
「何だって……おのれ……許さんぞ」
 ギリッ、と奥歯をかみ締めるグスト。
「とりあえず、僕のゴーストの力を上げるから、それできっと、身体の回復機能が活性化するはずだ」
 グストはポケットからペンダントを取り出した。
 そして、ソレントのポケットを探り、全く同じ形のそれに取り付ける。
「……よし、これで少しは楽になるはずだ……」
「ありがと、にいさま」
「いいんだよ。気にしないで」
 笑顔を見せるグスト。

「おりゃああああっ!! 一番乗りだっ!!」
「バルジュ兄弟、発見したぜ!!」

 ヴァルとラルクがその部屋へとたどり着いた。
 続いて、ソレントと戦っていたメンバーも到着する。
「どうやら、年貢の納め時のようだぜ? バルジュ兄弟」
「君たちか……許さないぞ……僕の弟をっ!!」
 さっきまでの笑顔が、怒りに沈む。
 それを見て、ヴァルが唐突に尋ねた。
「おまえら……どうしてこんなことをしているんだ……何かわけがあるんだろ? なぁ!」
「君たちに話したところで、何にもならないさ」
「それでも! 俺は知りたい。弟を傷つけられてキレてるおまえの感情は本物だ! そんなヤツがどうしてこんな馬鹿げた真似をしたのか、俺は――知りたい」
 真摯な眼差し。
 ヴァルのそんな眼差しを見て、グストは怒りをほどき、その代わりに皮肉な笑みを浮かべた。
「いいだろう……話してあげるよ。僕たちがこんなことをする――理由」
 グストは、語り始めた。