空京大学

リアクション

5
　ローザマリアが潜入した頃、榊　朝斗（さかき・あさと）も「光学迷彩」「殺気看破」「トレジャーセンス」「ブラックコート（ユニーク化）」を使って慎重に潜入をしていた。
「……電波検出。幸い誤動作が起きていないことを考えるとシールドコーティングがうまく動作しているようだ……さて、ネットワークに接続されたコンピュータを探そう」
　そうして朝斗はコンピュータを探し始めた。

『ミレリア、お前が寺院の人間だからじゃない、カノンを連れて行ったからじゃない……歌を最低な道具として使用しているから許せない！』
　垂がそう叫びながら栞が分析したミレリアの戦術をもとにミレリアに攻撃を加える。
『ふん！　歌は人の心を動かすためにあるのよ！　どんな方向に動かすこともできる。それがあたしの歌よん』
　しかしミレリアに回避されてしまう。
『【リベレイト小隊】、カノンへの道を開いて！　僕がカノンを説得する！！』
　レオが部隊を指揮しながら戦闘を行う。
　レオの指揮のもと【リベレイト小隊】は凸陣形で中央突破を図る。
　可憐が魔道銃で敵全体に攻撃を行う。
　アリスが鬼払いの弓で敵の随伴飛行歩兵を駆逐する。
「ちっ、やべーな。数じゃこっちが上だが、部分的に出血がひでー。綾瀬、俺達も出るぞ！」
「わかったよ！」
　鮮血副隊長はそう言って、シュヴァルツ・フリーゲに乗り込み、待機させてあったシュメッターリング4機を率いて出撃する。
『各機、設楽カノンに向かっているイコンを囲め。包囲しろ！　ミレリア、景気のいい歌を一発頼むぜ！　邪魔する連中は俺が惹きつけてやる！』
　トライブのその指示に従って、突出している【リベレイト小隊】を半包囲するように鏖殺寺院のイコンは陣形を敷く。
　それによって【リベレイト小隊】は少なからず被害を受け、後退を強いられた。
　さらには、ミレリアの歌が始まる。

「KAORI、再度プログラム展開！　山葉校長、気をつけて！」
「はい。解析用プログラム展開！」
　茉莉がKAORIに再度解析用プログラムを展開させる。
　先程の歌だけでは、カノンの洗脳を解除するためにはデータが足りなかった。

いざ起（た）て戦人よ　御旗に続け
雄雄しく進みて　遅るな徒（あだ）に
歌いて進めよ
歌声合わせて　潮の如くに
正義の御神は　我等の護り
我等の護り
我等の護り
正義の御神は　我等の護り

忘るな功（いさお）し　我等の父祖の
続けよ同胞（はらから）　護れこの地を
歌いて進めよ
歌声合わせて　潮の如くに
正義の御神は　我等の護り
我等の護り
我等の護り
正義の御神は　我等の護り

『うおおおおおおおお！　ミレリア様のために！』
『寺院のために！』
『我らの大義のために！』
　ミレリアの歌によって勢いづいた鏖殺寺院は各所で戦線を前進させる。
　数で圧倒的に勝る鏖殺寺院が積極的に攻撃をしかかけてくると数で劣る学院側のイコンは苦戦を強いられる。
「其方、此処で挫けるのか？！　此処で挫ければただの天学生、ただの楽団因として笑い物ぞ！」
　足利　義輝（あしかが・よしてる）が佐那に向かって叫ぶ。
「わかってる！」
　佐那が答える。
「くそ、この程度のことで！　鏖殺寺院は悪だ！　悪に正義の御神などいるものか！」
　ワイルドペガサスに載った鬼崎　朔（きざき・さく）は、アウタナの戦輪で寺院イコンの解析資料を元に弱点を攻撃する。
「そうです、寺院に正義など！　六連ミサイルポッド発射！」
　スカサハ・オイフェウス（すかさは・おいふぇうす）は随伴歩兵に向けてミサイルを発射し、味方のイコンを守る。
『こちら【荒人】。【ブレイズ小隊】、【リベレイト小隊】を援護しろ！』
『了解！』
　【荒人】はクレイモアで敵イコンを攻撃すると、片側のブースターだけ出力上げて半身分動くスライドモーションと旋回機動を組み合わせてクイックターンをして敵の攻撃を避ける。
　戦場のデータを解析しながら、ふと異変に気づいたエクスは叫ぶ。
『【ブレイズ１】！　何かおかしい！　敵の動きが異常だ……これは！　強化人間たちが山葉を狙っている！』
『こちら【ブレイズ1】了解！　各機山葉校長を守れ！』
『校長はん！　引いたって！　このままじゃジリ貧やわ！　トマス、援護を！』
『了解！』
　トマスは泰輔の要請に従ってコームラントの大型ビームキャノンを発射する。そしてそれでできた隙をついて戦線を後退させる。
　泰輔は加夜、美羽、涼司とともにイーグリット・アサルトの火線を集中させ敵の攻撃を防ぐ。
『Ｓ＠ＭＰ、戦場の掌握を！』
　涼司が叫ぶ。
『了解！　コンマス、頼むぜ！　歌は師王　アスカ（しおう・あすか）で『ＫＡＮＯＮ』だ」
　フレイが叫ぶ。そして演奏が始まった。

貴方と出会えて良かった
こんな奇跡　きっと一度だけ
触れた指を合わせて繋ごう
もう二度と　離れないと誓って……

最初に会った日覚えてる？まだ私達は幼かったよね
親の背に隠れてた私に　ぎゅっと手を繋いで笑いかけた君

少しびっくりしたけど　その顔に思わず
つられて笑った
握る手がほんのりと　暖かくて
握り返してみた

貴方と出会えて良かった
こんな奇跡　きっと一度だけ
触れた指を合わせて繋ごう
もう二度と　離れないと誓って……

何気なく君を見上げたら　こんなに背が違ったんだね
視線に気付いた君は　私を優しく撫でてくれた

「髪が乱れる」と　怒ったけど
手は払わなかった
触れる手がとても　大きくて
優しさに包まれた

貴方と一緒に歩めて良かった
こんな気持ち　きっと一度だけ
この距離を保っていこう
出会いが永遠だと信じて……

貴方と出会えて良かった
こんな奇跡　きっと一度だけ
触れた指を合わせて繋ごう
もう二度と　離れないと誓って……


「あ……なに……なに……涼司……くん……」

　カノンが歌の影響を受けて心が涼司で占領される。
　カノン機の動きが止まる。

『まずい、ルシフェル！　グリモワール！　カノン様をお守りしろ！』
　アザゼルが強化人間たちに指示を出す。
『カノン！　俺はここだ！　ずっとそばにいる！』
　そして涼司のふりをしてカノンの精神の安定を図る。
『あんたは、あたしの涼司くんじゃない！！！』
　しかしカノンにはその言葉は通用しなかった。
「これ以上、ミレリアに好き勝手やらせへんで！ここらでおしおきしたる！」
　妙子は混乱しつつある戦線を離脱しミレリアを大型ビームキャノンの射程ギリギリで捉えると、ミレリアの内蔵スピーカーに向けてビームを発射した。
「きゃん！」
「ミレリアさま、スピーカーが破壊されました！」
　直撃に揺れるシュヴァルツ・フリーゲでリリアが報告する。
　これらの一連の動きで鏖殺寺院はカノンを守ろうとする強化人間が戦線を後退させ、またミレリアを守ろうとするシュメッターリングも戦線を後退させたことによって敵の攻撃が一時的に中断される。
「よくやった。これで敵の戦域支配はできん。このまま盛り返すぞ！」
　朱点童子　鬼姫（しゅてんどうじ・おにひめ）が妙子にそう言って賞賛する。
『フレイ・アスク！　ジェリコの戦いじゃ！』
『おうよ！』
　Ｓ＠ＭＰは続けて楽曲を演奏する。
　トランス風にアレンジされた黒人霊歌ジェリコの戦いだ。
　
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down

God knows that
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down

Good morning sister Mary
Good morning brother John
Well I want to stop and talk with you
want to tell you how I come along

I know you’ve heard about Joshua
He was the son of Nun
He never stopped his work until
Until the work was done

God knows that
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down

You may talk about your men of Gideon
You may brag about your men of Saul
There’s none like good old Joshua
At the battle of Jericho

Up to the walls of Jericho
He marched with spear in hand
Go blow them ram horns, Joshua cried
’Cause the battle is in my hands

God knows that
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down

You may talk about your men of Gideon
You may brag about your king of Saul
There none like Joshua
At the battle of Jericho

They tell me, great God that Joshua’s spear
Was well nigh twelve feet long
And upon his hip was a double edged sword
And his mouth was a gospel horn

Yet bold and brave he stood
Salvation in his hand
Go blow them ram horns Joshua cried
’Cause the devil can’t do you no harm

Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down

Up to the walls of Jericho
He marched with spear in hand
Go blow them ram horns, Joshua cried
’Cause the battle is in my hands

Then the lamb ram sheep horns began to blow
The trumpets began to sound
Old Joshua shouted glory
And the walls came tumblin’ down

God knows that
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
And the walls come tumbling down

Down, down, down, down, down
Tumblin’ down

「ファンと現在・過去・未来のアイドル達に謝れ！　いや、死ね！！」
　杏がミレリアをワイヤーで捕獲し、至近距離から大型ビームキャノンを叩き込もうとする。
　しかし、適切な射程範囲外（近すぎる）のためビームの焦点が合わず、その攻撃は徒労に終わる。
「賢しいよ！」
　ミレリアはそのまま前進し杏に近づくと、振動剣で【ポーラ・スター】のコクピットを突き破る。
「直撃です！」
　早苗が報告する。幸い振動剣は杏までは届かなかったが、杏のコームラントは爆発し、脱出を余儀なくされる。
　杏と早苗は重症を負って地面に落下し、味方の回収を待つこととなった。