葦原明倫館へ

空京大学

校長室

天御柱学院へ

ミッドナイト・シャンバラ3

リアクション公開中!

ミッドナイト・シャンバラ3

リアクション

 

お悩み相談

 
 
「お悩み相談コーナー!!
 さて、最初のお悩みは、ペンネーム、スイカの花嫁さんからです。
 シャレードムーンさんこんばんわ。前回まで白黒の魔女っ子と名乗ってたものです。
 このコーナーで紹介するのも変なのですが、私…結婚指輪を貰いました!

 それは、おめでとうございます。
 旦那様はとってもいい人で、毎日お仕事で忙しいはずなのに私にとっても優しくしてくれて…それにかっこいいし、夜も一緒にお布団で寝てくれるとってもいい旦那様です!これからもずっとずっといちゃいちゃしていたいと思います!
 えっと、爆破されないように気をつけてくださいね。
 でもでも、ひとつだけ問題がありまして…実は旦那様、あんまりスイカの事が好きじゃないらしいのです。
 もちろん普通に食べるくらいなら平気なのですが、スイカあるところに私ありと呼ばれた私にとってそれは由々しき事態なのです!
 どうにか好きになってもらおうと、料理にスイカを入れてみるんですが…毎回不評なのです…
 あと、毎日毎日スイカばっかりでいい加減飽きるって…

 ええと、いったいどんな料理にスイカを入れたのでしょうか……。
 スイカよりも旦那様の方が好きだけど…スイカの事を諦める事もできなくて夜も悶々としてしまいます…
 
 シャレードムーンさん、どうやったら、旦那様がスイカの事をもっともっと好きになってくれるのでしょう?
 素敵な答えをお待ちしております!それでは

 それはもうピロートークで、睡眠学習するしかないでしょう。
 あなたはだんだんスイカを好きになる、スイカを好きになるって毎日ささやけば、きっとスイカを大好きになりますよ……多分」
 
    ★    ★    ★
 
「お前はだんだんスイカがほどほど好きになる。ほどほど、ほどほど……」
 ラジオを聞いていた篠宮 悠(しのみや・ゆう)が、隣で大の字になってすぴすぴかわいい寝息を立てているリース・アルフィン(りーす・あるふぃん)の耳許でささやいた。
「ううーん、スイカ……大好き」
「ほどほど、ほどほど……」
「うーん、スイカ……好き」
「ほどほど、ほどほど……」
「うぐぐぐぐ、スイカ、ちょっと好き……。悠さんちょっと好き……」
 
    ★    ★    ★
 
「えーと、ここで番組にメールで投稿小説がきたみたいです。読んでみますね。
 シャレードさん。こんばんは
 俺の現在置かれてる状態を相談したくて投稿します
 ある女性とデートが終わって、帰宅途中に突然黒い服を着た人達に抵抗する間もなく縛られて、どこか狭くて暗いところに拘束されているんだ!
 何かの犯罪に巻き込まれたかのか俺にはわかりません!
 それともデーとした相手がお義父さんの手の者でしょうか?
 確かに彼女との交際は正式に認められてませんが!
 それはともかく、たーすーけーてー!
 
 先ほどの【PN.獅子座を想う者】のパートナー【PN.ストーカー】です
どうも拉致されたと思い込んでるようですが、単に家に連れて帰るために配送業者に荷物の手配を頼んだだけですので、シャレード様が心配なさるような犯罪ではありません
 
 再び投稿です!
 どうやら、黒服の人に依頼した誘拐犯と黒服の元締めが話をしてるようです!
 現金の受け渡しが済んでしまったようで、これから俺は何処へ連れて行かれるのでしょうか?
 恐怖でどうにかなりそうです!
 
 シャレードさん。こんばんは【PN.血煙爪ガール】です
 今、【PN.獅子座を想う者】が逃げだそうとしたので大人しくさせました!
 赤いケチャップがダンボールから出てますけど気にしてません!
 こんなに可愛い美少女二人から逃げるなんて酷すぎます!
 
 逃げようとしたら…全力で攻撃されました
 結局逃げられません!
 ラジオを聴けて良かったです…シャレードさん
 ありが…と…う…

 長いリレー小説でしたね。
 それとも、まさかとは思いますが、これってリアルなんでしょうか。はは、さすがにそれはないですよね。
 スタッフが悪戯だと思って没にしかけたくらいですから。
 でも面白かったですよ。今度は、無事脱出するバージョンをお願いしますね」
 
    ★    ★    ★
 
「ということになっているが、いいのか?」
 ラジオを聞いた橘恭司が、動かなくなってからしばらく経った段ボール箱を見つめて龍ヶ崎灯に訊ねた。
「予定通りです」
「まあ、仕事だからな」
 さらりと答える龍ヶ崎灯に、橘恭司が割り切って言った。
「それじゃあ、これもらっていきます。さようならー」
 リリィ・シャーロックが、段ボール箱を蹴っ飛ばしながら運んでいった。彼女たちの去った後には、一筋の赤い跡が長くのびていた。
 
    ★    ★    ★
 
「ぼー」
 玉藻 前(たまもの・まえ)の膝枕で耳かきされながら、樹月 刀真(きづき・とうま)は聞くともなくラジオを聞いていた。
『次は、匿名希望さんからです。
 私は剣の花嫁です。私にとってパートナーは剣として契約者として己の全てを預けている大切な人です…彼も
そう思ってくれています、だけど女の子として見てくれないんです。
 この前もお風呂上がりに際どい格好をしてみましたが大した反応無いし…こう、男女の盛り上がりがあっても良
いと思うの!…助けてシャレード・ムーン

 ラジオから流れてきた放送を聞いて、樹月刀真はチラリと漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)の方を見た。
 なんだか、そわそわとしながら、そっぽをむいたり、こちらをチラ見したりしている。
 そういえば、以前風呂上がりに黒い下着にワイシャツだけの姿でとことこと人の前を何度か往復した気もするが。
 いや、それ以上に、なんで今日はワイシャツ一枚なんだ。下着も着けていないじゃないか。
 平常心、平常心……。
「さて、玉藻、もういいぞ。もう遅いから寝る。ああ、それから、月夜、風邪ひくからちゃんと服着て寝ろよ、じゃあ……いてっ」
 いきなり漆髪月夜から機晶犬を投げつけられ、樹月刀真はお尻を押さえてあわてて逃げだしていった。
「ううっ……」
「ほら月夜、お前の耳かきもしてやるからおいで」
 軽く唸っている漆髪月夜に、玉藻前が膝をポンポンと叩きながら言った。
「うん……」
 うながされるままに、漆髪月夜が玉藻前の膝の上に頭を載せる。
「そんな格好なんかしなくても、充分であろうに」
 長襦袢姿の玉藻前が、耳かきを巧みに動かしながら言った。
「お前は我が羨ましいみたいだが、我はお前の方が羨ましいよ。お前だから刀真から気づかれずに懐の財布を抜き取れるんだ、その時財布を抜くのではなく刃を突き立てればあいつは死ぬ訳だし。お前なら静かに確実に刀真を殺せる……。漆髪月夜は、樹月刀真にとってそれを無意識に許してしまうほどの存在だということだよ。試しに今夜刀真のベッドに潜り込んでみろ、刀真は起きずにそのまま一緒に寝られるよ。我? ああ、我が潜り込んだら、あっさり蹴り出されるだろうな」
 玉藻前にそそのかされるように、漆髪月夜は樹月刀真の部屋に忍び込んでいった。
 ――ん、誰だ。月夜か。
 誰が来たのか、樹月刀真が素早く察知する。
 敵でないことに安堵すると、ごそごそと布団に潜り込んでくる漆髪月夜を放っておいて、樹月刀真はそのまま朝までまんじりともせずに寝たふりを続けた。