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リアクション
第7章(4)
「いらっしゃいませ。どうぞごゆっくりご覧下さい」
シンクの片隅にある道具屋。由緒正しい鎧(ベネトナーシュ・マイティバイン(べねとなーしゅ・まいてぃばいん))が飾られたこの店の主人、ルネ・トワイライト(るね・とわいらいと)が勇者達を迎えた。
戦いから一夜明けた今日。勇者達は最後の戦いに挑む為、準備を行っている所だった。その中には昨日の戦いの時は不在だったルカルカ・ルー(るかるか・るー)とダリル・ガイザック(だりる・がいざっく)の姿もある。
「よりにもよってルカ達がいない間に魔王軍の襲撃があるなんて……いくらなんでもタイミングが悪すぎだと思わない?」
「仕方が無いだろう。あの時点で近くを見て回れるのは俺達くらいしかいなかった。実際に魔物に襲われていた商隊がいた以上、俺達の行動が無意味だったとは言えないだろう」
「それはそうだけど……でも相手を考えると、ね……」
「朝斗か……俺達が信じて送り出した勇者がああいった末路を辿るとはな」
二人にとっても榊 朝斗(さかき・あさと)は同じ村に住む知り合いだった。もし自分達が昨日、その場にいたならば。そう思ってしまうのも仕方の無い事だった。
「ありがとうございました。またお越し下さいませ」
買い物を終えた勇者達が次々と伝統のある鎧(ベネトナーシュ・マイティバイン)が飾られた道具屋を後にする。彼らに続いて店を出たルカルカは今回の事件によって、今まで自身が思ってきた事をより深く考えるのであった。
(今の勇者の仲間には元魔王軍の人がいる。この村にだっている訳だし……人間と魔王軍の違いって何なんだろ。人間と魔王軍。それから……魔王)
旅立ちの直前。勇者達は村の入り口に集まっていた。彼ら一人ひとりに向けて篁 透矢(たかむら・とうや)が守護の力を与えて行く。
「――これでよし。塔は魔王の力で勇者達の力が抑えられるんだが、今の加護が効いている間は力を完全に発揮出来るはずだ」
透矢が持つ魔王討伐の鍵、それは彼の血筋に流れるこの力だった。加護を受けた黒凪 和(くろなぎ・なごむ)が透矢にお礼を言う。
「すみません。僕達まで加護を与えてもらって」
和の言う僕達とは白津 竜造(しらつ・りゅうぞう)達の事だ。魔物相手への容赦の無い戦いぶりから虐殺勇者と呼ばれている竜造は他者から忌み嫌われている事が多かったが、双子の弟である和はその原因が自分が善を、竜造が悪を持って産まれたせいではないかと思って悩む事が多かった。
「竜造には良くない噂がありますけど……それでもあいつはあいつなりに街を護ろうとして戦ってきたんです。だからそれを信じてくれたみたいで……嬉しいです」
「ここまで来たら、俺は皆を信じて送り出すだけさ。塔での戦いは大変なものになるだろうけど、頑張ってくれ」
勇者達がシンクを旅立つ。目指すは魔王の塔、そして……最後の戦いへ――