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リアクション
AM10:00
「全員いるな」クレーメック・ジーベック(くれーめっく・じーべっく)は、集まった仲間たちの顔を順番に見やる。
自分のパートナーの島津 ヴァルナ(しまづ・う゛ぁるな)と三田 麗子(みた・れいこ)、ゴットリープ・フリンガー(ごっとりーぷ・ふりんがー)とパートナーのレナ・ブランド(れな・ぶらんど)、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)とパートナーの神矢 美悠(かみや・みゆう)、マーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)とパートナーの早見 涼子(はやみ・りょうこ)、ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)とパートナーの天津 亜衣(あまつ・あい)。
以上十一名が今回の作戦に従事するメンバーだった。
「先ほど雅羅・サンダース三世(まさら・さんだーすざさーど)から説明があったように、何者かにさらわれた金元 ななな(かねもと・ななな)少尉を穏便に救出するのが今回の作戦目的だ。少尉がさらわれた理由は不明だが、このことが公になければ最悪万博の中止もありうる。その事態を避けるために、我々の手で可及的速やかに少尉を奪還する」
見渡す仲間たちの顔はいつも通りの表情で、私を見つめている。「では、各自の意見を求める」「それではわたくしから、おおまかな救出作戦を提案させていただきます」最初に口を開いたのは、島津だった。「といっても、たいしたものではありません。少尉を捜索・奪還するチーム、他の生徒たちと連絡を取るチーム、全体の指揮を取るチームの三つに分けて事態の収拾を図ります」
「具体的には?」
質問をした三田をちらりと見やってヴァルナは説明を続ける。
「まずはジーベック中尉のテレパシーで少尉と連絡を取って情報収集。目的や犯人の人数、現在位置などを確認。その後は犯人たちの行動を誘導。どこかの建物内部へと誘い込み、それを待ち伏せて犯人及び少尉の身柄を確保。建物周囲の人間には要人警護訓練の一環と説明。以上です」
「即席としては十分な作戦だと思います。つけ加えるなら少尉をさらった犯人は教導団本校の独房に拘禁、今回の件は外部に漏らさないように関係者には口止めしておくのが妥当かしら」
「ならば、自分と早見は部外者への対応にあたります。施設やコンパニオンへの取材が行われているので、そちらも含めて行いましょう」
「研修の講師がいないことを気にするような者がいるとは思えませんが、少尉の行方について万一聞かれ場合は、一時的にヒラニプラの本校に戻っているという形で対応すべきと思います。取材に対してはこちらからは何も伝えずに、聞かれた時には訓練中と答えれば十分かと」「犯人を待ち伏せる場所は、手頃な準備中の建物をおさえましょう。表には【爆発音や悲鳴が響くかもしれないが、訓練の一環につき容赦願いたい】といった看板を出しておけば、疑問に思われることもないでしょうな」
クロッシュナーと早見が、部外者への対策を提案する。
「それじゃあオレと天津は他の生徒たちへの連絡役をやるぜ。各自バラバラに動いて足を引っ張り合ったり、騒ぎが大きくなるとまずいからな」
「あたしもヴェーゼル少尉と一緒に行きますが、少尉たちを発見した場合にはそちらを尾行しつつ他の生徒たちが勝手に動かないように説得にあたります」
「なるほどな。下手に他の生徒を探そうとするより、少尉たちを見つけたらそちらについた方が他の生徒たちも見つけやすいし、救出作戦もやりやすくなるな」
ヴェーゼルと天津は、周囲との連携を取りやすくする為にバックアップに回ることを宣言した。
「となると残った僕らは、少尉の捜索兼救出チームという形ですね」
「必然的にそうなるわね。なるべく早い段階で少尉と犯人を見つけましょう」「何者が犯人かは知らぬが、ロクな連中ではあるまい。我が拳の前には抵抗などで無意味と思い知らせてやろう」
「ファウスト少尉は殴り合いになると熱くなるから、やりすぎないか心配になるね。犯人たちはあたしが拘束するから、ほどほどに殴って無力化してくださいよ」
フリンガー、ブランド、ファウスト、神矢の四名は、少尉捜索と犯人確保の実働部隊として動くことになった。
全員の意見を聞き終えたところで、各自の意見をまとめ上げるた私は全体に命令を下す。
「これより私たちは三チームに分かれて行動を開始する。Aチームは、私、島津ヴァルナ、三田麗子の三名。情報収集と作戦指揮を担当する。Bチームは、ゴットリープ・フリンガー少尉、レナ・ブランド、ケーニッヒ・ファウスト少尉、神矢美悠の四名。少尉の捜索と奪還を担当する。各自のパートナーとともに少尉を捜索し、見つけ次第私に連絡を入れてくれ。合流の指示をだす。Cチームはマーゼン・クロッシュナー中尉、早見涼子、ハインリヒ・ヴェーゼル少尉、天津亜衣の四名。他の生徒たちへの連絡と現場の混乱を最小限に抑えるのを担当するが、目標を見つけたらそちらの追跡を優先してくれ」
言葉を切って彼らの顔を見渡せば、全員がしっかりと頷きを返す。
「【プリエンツ】行動開始!」
ジーベック中尉の号令で、全員が一斉に動き出した。
AM10:00
「私のテレパシーでななな様に連絡を取りますわ。救出の為に必要な情報を集めましたら、ななな様を助ける為にみなさんの力をお貸しください」
ななながさらわれたと聞いて彼女と友人関係にある者たちが集まった場所で、セシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)はまっさきに発言すると、目を閉じて黙り込んでしまった。
「はあ……ひとまずセシルさんが情報収集にあたってくれるみたいだから、俺たちはその間に役割分担を決めようと思いますが、いいですか?」
「ああ」
「問題ない」
「手早くしようぜ」
樹月 刀真(きづき・とうま)の発言に皆が口々に賛成する。
「ありがとうございます。俺と月夜は皆さんのバックアップにまわろうと思います。俺は【タブレット型端末KANNA】を持ってますから、月夜の【テクノコンピューター】と併用すれば、みなさんの携帯や情報端末に情報を送信できます。月夜は便利なスキルや特技を持ってますから、その辺は信用してもらって大丈夫です。なあ、月夜?」
「刀真の言う通り、私はユビキタスのスキルと資料検索の特技を持ってるわ。情報収集と分析に関しては任せてもらっていいわ」
取り出した端末を見せながら刀真がパートナーに話をふると、現在パビリオンの衣装を着た漆髪 月夜(うるしがみ・つくよ)は、長い黒髪を手ですきながらしっかりと答えた。
「ありがとう月夜。そういうわけなので、皆さんの連絡先を教えてください。お願いします」
そういって端末をおこした刀真は、次々と連絡先を登録していく。
「まったく。いくら事件が起きたからって、刀真はもうちょっと私の事も見るべきよ」
その様子を見ながら不満げにこぼす月夜だったが、それに予想外の反応が返ってきた。「ごめんね、月夜。その衣装はとても似合っていて可愛いと思うよ。この件が片付いたら俺の展示物【蒼空学園の今までとこれから】のコンパニオンをしてよ」
連絡先を登録し終えた刀真に優しく頭をなでられた月夜は、黙ってうなづいた。
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