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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第4章 簡単に事が進むのもつまらないだろう?・・・気紛れなメガネの女 story2

「もうそろそろ森の外に出てもいい頃だと思うが・・・」
 グラキエス・エンドロア(ぐらきえす・えんどろあ)は先に進んだ生徒が残した目印をたどり、黒い翼で飛びながら封神台を目指している。
「おい、アウレウス。遅いぞ、もう少し早く走れないか!」
 空飛ぶ箒スパロウを止めたベルテハイト・ブルートシュタイン(べるてはいと・ぶるーとしゅたいん)が怒鳴る。
「うーむ・・・今翼を使うわけにはいかないからな」
 ダッシュローラーで獣道を進みながらアウレウス・アルゲンテウス(あうれうす・あるげんてうす)は2人の後を必死に追っている。
「グラキエスまで待たせるな、疲労などは気合でなんとかしろ!私はグラキエスのためなら、48時間全力で走れるぞ!?」
「いや・・・そんなに走る予定はないだろう?」
「つっこみどころはそこなのか、グラキエス・・・」
「というか途中でアウレウスに倒れられては困る。強化光翼は想像以上に負担が大きいからな、あまり無茶はするな」
「もし倒れたら私を中心に頼ってもいいんだぞ。―・・・おーい、グラキエス?」
 アウレウスの体力がゼロになったら“兄”に頼れ!というふうに、爽やかな笑みを向けるが彼から返事はない。
「ん・・・悪い、聞いていなかった。今、何か言ったか?」
 目印を探すために集中していたグラキエスが振り返る。
「ごほんっ、じゃあ改めて言うぞ。もし倒れたら誰よりも先に、私を中心に頼ってもいいんだぞ?」
 軽く咳払いすると、“兄”としての役割を若干強調させて主張する。
「あぁ、頼りにしている」
「フフフ・・・任せておけ」
 グラキエスにそう言うと後ろにいるアウレウスへ視線を移し、勝ち誇ったような顔をする。
 アウレウスは主が“頼りにしている”という意味は、俺たちパートナーのことと仲間のことだと思うが、と心の中で呟いた。
 せっかく上機嫌で浮かれているのだからと、言わないでおいてやった。
「平原が見えてきたな・・・」
「やっと森を抜けられたか」
「封神台はこの先か、主」
「たぶんな・・・」
「待て、こっちに炎が飛んでくるぞ!?」
 ベルテハイトがグラキエスの襟を引っ張り、草むらの中へ伏せた瞬間、頭上スレスレに炎の嵐が通過する。
「誰だこんなマネするやつはっ。グラキエスが火傷したらどうしてくれる!?」
「俺のことよりも、森が・・・」
「ウフフ、上手く避けたみたいね」
 口元に片手を当てて魔女が可笑しそうにケラケラと笑う。
「魔法学校を出たといっても、よくも平気でこんなことが出来るな」
「だって不老不死になれるチャンスなんて滅多に無いわよ?どんな目に遭おうとも死なない体ってステキじゃないの♪」
「グラキエス、こんなヤツに構っている暇なんてないぞ。封神台に行って、十天君を倒すのだろう?」
「それはそうだが・・・」
 ベルテハイトに助け起こしてもらった彼は、焼け落ちていく森へ振り返り、放っておいていいものなのか迷う。
「十天君を倒すですって?そんなの、この私が許すわけないでしょ!森ごと消えてしまいなさいよ」
「はいはい〜、夏の火遊びはそこまでにしてねぇ?まっ、夏じゃなくってもいけないことだけど」
「また邪魔者が増えたみたいね」
 ディテクトエビルで察知するものの、声だけで姿の見えない相手を探そうと、魔女は辺りをキョロキョロと見回す。
「皐月、とりあえず消火よろしくー」
「森を燃やすなんて正気じゃないね、まったく・・・」
 ブリザードで燃え盛る炎を消し去り、焼け焦げた木々の香りが鼻をつんとつく。
「(吹雪・・・?そこか!?)」
 皐月の存在に気づいた魔女がロッドを向けたその時、得物を持つ手が突然凍てついてしまった。
「なっ、私の手が!」
 ビキキ・・・メキッ。
 ハイラルの氷術で凍結させられてしまう。
 自分の術をあっさり消されてしまった怒りのあまり、彼の存在を察知しきれなかった。
「(なんちゃって♪もう片方の手が使えれば問題ないわっ)」
 倍返してやるわ!と、サンダーブラストを放とうと彼に手の平を向ける。
「ていうか、あんた。そこに隠れてんのバレバレよ?」
 草陰から不意打ちする隙を狙っているレリウスをギロリと睨む。
「あんたも片付けてやるわ!」
 ドガガガガンッ。
 雷の雨は地面をえぐりそうな威力でレリウスたちを襲う。
「ほらほら、逃げ惑いなさいよ。オーッホホホ♪愉快だわ〜」
「レリウス攻撃は最大の防御だぜっ」
「それはわかりますが・・・」
「オレを信じろ!」
「―・・・分かりました」
 ハイラルの考えに任せて信じようと彼は小さく頷く。
「この状況で何が出来るっていうの?」
「ちょっ、飛び込む気!?」
 縁の声も聞こえないほど無心で魔女の懐目掛けて特攻する。
「飛んで火に入る夏の虫ってやつね〜?」
「今だ、狙え!」
 アシッドミストの酸濃度をゼロに近くなるように調節し、真っ白な霧で魔女の視界を奪う。
「(視界さえ封じてしまえば、ある程度は術が避けやすくなるということですか)」
 槍で腹を突き魔女がロッドを落とした瞬間、後ろ手に縛り上げる。
「いったぁあい、何すんのよぉお。むぅ〜っ」
「その状態ならもう術なんて使えないのも同然でしょう?」
 布で視界と口を塞ぎ、平原へコロコロと転がす。
「無理に発動したら、それこそ自爆的な感じになりそうだしな」
 ハイラルがほんのり脅すように言い放つ。
「うひゃぁ〜、容赦ないね」
「何言ってんだ。命を取らないだけでもありがたいと思ってくれなきゃな?」
 ぼそっと呟く縁に対して冗談混じりに言う。
「これでもオレたち、かなり手加減してやってんだし」
「まぁ、そうかもね」
 本気でやりあっている歌菜たちと大佐を縁がちらりと見る。
「そっちは魔女を引き付けてくれるんだよねぇ?」
「中に行ったやつが無事か気になってんだが。こっちも大変みたいだから、今のところは外にいる感じだな」
「俺たちは十天君を倒しに行くが、あなたはどうする?」
「ついていきたいけど。真さんたちが心配だから外かな」
「よすが、真さんと左之助が倒れているよっ」
「ありゃー、また派手に怪我でもしたわけ?」
 箒に乗ったまま2人は彼らの傷をみてやろうと飛ぶ。
「もしもーし、大丈夫〜?うーん、そんなに傷ついてるわけじゃないみたいだけど」
「でも何か、凄い苦しそうだよ」
「ちょっと毒にやられちゃったみたいだね・・・。あのダガーに猛毒が含まれてるから気をつけてね」
「―・・・またエグイマネする人が増えたもんだねぇ。皐月、ぱぱっと治療してあげて」
「うん、左之助さんも毒にやられたのかな」
「いや・・・俺は病原体に感染しちまってな。どうやら毒島の嬢ちゃんの炎にくっついているみたいだ」
「感染しちゃってからだいぶ経ってるよね?ちょっと時間かかっちゃうかも」
 皐月は重病な左之助から先に、清浄化で病を取り除こうと治療を始める。
「治療している間なんて与えてやると思うのか?」
 機晶爆弾に着火した大佐が皐月たちをまとめて始末しようと放り投げる。
 ズガァアァアアンッと爆音が轟き、土煙が巻き起こる。
「向かってくるものは、爆弾だってぶっ壊してやる。・・・あがっ」
 霜橋で砕き実力行使でなんとか破壊出来たが、爆発の焼けつく痛みをくらった真が膝をつく。
「また無茶しやがって・・・。あんまり動くと、毒の回りが速くなるぞ!?」
「無茶でもなんでも、ここで皆倒れちゃうよりかはいいじゃないか。兄さんこそ、大人しく治療が終わるまでじっとしててよね」
「へぇ〜、真さんも言うようになったねぇ」
 むぐっと黙る左之助の様子を見て、いつも逆に言われてそうなのに・・・と縁が顔をニヤつかせた。



 真たちに機晶爆弾を投下しようとする大佐に歌菜が槍を向ける。
「治療中の相手を狙うなんて。ずいぶんと堪え性のない人なんですね」
「かといって、戦意を失ったわけじゃないのだろう?ならば回復を待たず、倒そうとするのは当たり前だ」
「そうですか・・・。だったら、いくらでも汚い手を使ってみてくださいよ?こっちもアンフェアで挑みますから!」
 歌菜は口笛を吹き、ワイルドペガサスを呼び寄せて手綱を掴み飛び乗る。
「わざわざ飛び込んでくるとは、愚かにもほどがある!」
 バーストダッシュの加速をつけたまま地面を蹴り、空へ飛び上がった大佐はワイルドペガサスの足を狙う。
「くそっ、ここからじゃ間に合わない。カティヤ!」
「オッケ〜♪」
 スピードにはスピードね♪と彼女は弾丸のようにバーストダッシュで空を舞う。
 ガドッ。
 絶望の剣で猛毒の刃を防ぐ。
「あの男もいると思ったんだけど。まだ来ていないのかしら?それとも・・・もう封神台の中にいたりして?」
「この私が正直に言うとでも?」
 誰が答えてやるものかとカティヤの得物を弾く。
「まぁ聞かなくても、あなたを倒せば敵の戦力を殺げるのは確かだものね」
 柄を掴み剣を拾い上げた彼女は、ちらりと歌菜の方へ視線をやりいっきに叩きのめすように合図を送る。
 頷いた彼女はワイルドペガサスの上に立ち、相手の腕を貫こうと切っ先を向ける。
「貴様らごときが私を倒すだと?ソリッド・フレイム、あの女を焼き払え!」
 ゴァアアッ。
 歌菜は炎に臆するどころか、相手をギラリと睨みつけ2本の槍を巨大な十字架のようにクロスさせる。
「これで終わりですか?私に傷ひとつつけれてませんよ♪」
 槍をギュルルルッと回転させ、炎を払い打ち消す。
「ちっ・・・。だが病原体までは消しきれていまい?というか避けてもいいのだぞ。むしろそうしてやってるつもりだがな」
「最悪だね、あんた・・・。歌菜が避けたら分かってて言ってるでしょ!?」
 彼女が炎をかわしてしまったら縁たちまで病原体が撒き散らされてしまう。
 仲間同士の友情を利用し、薄汚い手ばかり使う相手に、カティヤが平手打ちをしてやろうとするが避けられてしまう。
「ほめ言葉として受け取っておこう。私に一撃も与えられない貴様に、果たして勝ち目はあるかな?」
 四肢から徐々に蝕んでやろうと、小動物を弄ぶ猛獣の如く、わざと浅く切りつける
「さっきの威勢はどうした?だいぶ息があがっているようだが・・・」
「―・・・くぅっ」
 互いにバーストダッシュの加速を使っているが、長引けば毒に身体を蝕まれていくカティヤの方が不利だ。
「カティヤ、俺が壁になってやっている隙に・・・」
「いえ、よしなさい羽純。無理に突っ込めば、あなたまで猛毒の餌食にされるわ」
 たかが掠り傷だと思っても、毒の影響で体力も殺がれてしまうかも、とカティヤが声を上げる。
「だがどうする?もたついている間に、十天君が先に妖精を見つけてしまうかもしれないぞ?」
 魔女に行く手を阻まれ封神台に入れないグラキエスたちを大佐がちらりと見る。
「俺たちはこいつに治療の邪魔されないように妨害するが手一杯か・・・。縁、魔女を封神台の前からどかせろ」
「はいはぁーい。そんじゃまぁ、てきとーに気絶でもしてもらおうかねぇ」
「ふ〜ん。やれるもんならやってみればぁ〜?―・・・アシッドミスト!」
 シュゥウウウ・・・。
 真っ白な酸の霧が縁の周りにたち込め、視界を遮られてしまう。
「そんなの一瞬で消え・・・わわっ!?」
 チュチュンチュンッ。
 足元に火術のファイアーアローを放たれ、ドタドタと足踏みさせられ踊らされる。
「あははっ、踊れ踊れ〜♪人を魔法で攻撃するのって、こんなに楽しいなんて知らなかったわねぇ〜」
 十天君と長くいすぎたせいか性格まで歪み、自分の力を見せつけ相手を倒す喜びを覚えてしまった。
「え〜?私とそんなにダンスがしたいのかい?」
 にんまりと不適に笑い、タップダンスを踊るようにファイアヒールの踵からプレゼントを送る。
「つまらない小細工ね。か〜るくよけられるわよ♪」
「そのつもりでやってるだけだから、気にしないで」
「ずいぶんと無駄なことが好きなのね。でも飽きちゃった、そろそろ終わらせていいかしら?」
 弾丸の舞を軽くかわし、勝ち誇ったように言い放つ。
「そーいわず、もっと踊ろうよ」
 グリントライフルのスコープを覗き、相手の得物を撃ち落そうとロックオンする。
「ねぇ、おまえたち。踊りながら魔法を撃てるのかねぇ?」
「あっそぅ。そんなに袋叩きにされたきゃ、お望み通りにしてやるわ」
「へぇ〜、それって俺も混ぜてもらえるのか?」
「―・・・えっ、あぐっ!?」
 ドゴォオッ
 いつの間にやら忍び寄った左之助に背を蹴られ、草原にすっ転ばさせる。
「あ〜、結構痛かったかもな?脛宛つけたんまだったからさ」
 地面に突っ伏し咳き込む魔女を見下ろしてへらっと笑い、まだ治療を負えていないパートナーに目配せをする。
 立ち上がろうとするウィザードの首筋に、トスッと手刀を真がうちこむ。
 ディテクトエビルで気配には気ついていたが、どうせ治療中でまともに動けないとたかをくくっていたのだ。
「ナイス、真!」
「んもぅ〜何がナイスなの!治療も終わっていないのに、動かないでよね。はい、そこに座って!」
「あ・・・ごめん」
「硬いこというなって、じょうちゃん。いいじゃんか、1人倒せたんだから」
「動けばそれだけ、また毒がまわっちゃうのに。わかっていってる?」
「おーこ怖い怖い。佐々良のお嬢ちゃん、あとは頼んだ!」
 じっと睨む彼女に左之助は冗談混じりに言い、笑顔で誤魔化す。
「えぇ〜もしかしなくても私のこと?こっちにフラないでくんないかな・・・ていうかムリだし」
 魔女の得物目掛けて撃ちながら、さらりと拒否する。
「うちらのことはいいから、早くいっちゃっていいよ」
「すまない・・・」
 グラキエスたちは八卦の台に乗り、封神台の中へ転送されていった。
「兄さん、俺たちも封神台の中に援護しにいく?」
「いや〜・・・この戦況で仲間を置いていけないだろ?」
「だよなぁ・・・。歌菜さんたち、大佐さんにかなり苦戦してるみたいだし」
 また怒られないように大人しく治療のを待ちつつ歌菜を見上げる。