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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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Blutvergeltung…悲しみを与える報復

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第9章 和解などありえない・・・報復の殺し合い story2

「アルファ、・・・大丈夫?」
 暗い表情の彼女を元気付けようと十六夜 泡(いざよい・うたかた)が手を握ってやる。
「はい・・・。十天君を封神しなければ、屋敷にいる私だった者は永遠に出られず・・・その存在に怯え続けてしまいますわ」
「倒すっていうか、命を奪うことになるんだものね」
「彼女たちを改心させることは出来ませんし・・・。屋敷から逃げ出せるように、後2人は倒せなくてはなりませんの。本当は十天君の計画を失敗させたいのですけど・・・」
「それって魔女の力が必要なの?」
 十天君を何人も葬ってきたせいか、他の種族の助力を得ようとしていることに疑問を持つ。
「えぇ・・・必要な知恵を技術を持つ者と、魔力がある者でなければ協力出来ないみたいですわ。ですがこのまま協力を続ければ、捨て駒として扱われるだけかもしれないんですの」
「捨て駒・・・・・・。(アルファも協力だけさせられて、そうなっていたかも・・・ってことよね)」
「魔女の方なら説得して連れ戻そうとしている人もいるみたいだよ?」
 気分を落ち着かせてあげようとエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)は2人に一輪の花を渡す。
「んー、この戦いが終わったら。アルファちゃんはどこにいくの?」
 オメガとは一緒に住めないし、ドッペルゲンガーとして彼女の魂を狙っていたから水竜にも頼れそうにもない。
 クマラ カールッティケーヤ(くまら・かーるってぃけーや)は暮らせる居場所があるのか聞く。
「それはどこか探しますわ。これ以上、皆さんに甘えるわけにもいきませんもの」
「行くあてがなければ、私のところでもいいわよ?契約しなくっても別に構わないわ」
 皆も一緒にいたいでしょうし、自由にさせてあげたほうがいいわね、と言う。
「ルカのところにも遊びにおいでね♪おもてなしは何にしようかなー」
「料理だけはやめておけ」
「ひっどぃ淵、これでも頑張ってるのに・・・」
「アルファさん、全て終わったら・・・葦原の方に遊びに来てください。唯斗兄さんが宴会の企画を考えているんです!」
「宴会・・・?」
「オメガもあの屋敷から出られたら一緒にな」
 屋敷はゴーストの襲撃のせいで、当分修理中になるだろうな・・・と想定した彼が提案する。
「それって何人入れるんだ?まぁ、入れそうなヤツの家にいけばいいか」
 この人数なら誰かの家に突撃出来そうだなと紫音は楽観的に言う。
「宴会の話もいいが・・・すでに封神台の中ということを忘れるな」
 アルス・ノトリア(あるす・のとりあ)はディテクトエビルの領域に、害意のある者が踏み込んでいないか警戒する。



「なぁ、わざわざ妖精をぶっ殺しに来たんだ?今じゃなくってもいいんじゃないか」
 それも告知までして、他のやつらを呼び寄せる必要があったのかと、疑問に思ったゲドーは金光聖母に問う。
「これ以上、私たちの邪魔をさせないための警告です」
「警告って?」
「目の前で大切な存在が消えたら、どうなると思います?」
「悲しい・・・とか、殺したやつに復讐したいとか?」
「その復讐の牙を圧し折る悲しみを与えてやるんです・・・。逆らうならまたもう1人、もう1人とそいつらの目の前で殺してさしあげます」
「戦意を失わせて、ゆっくり実験を再開しようってことか」
「えぇ、そのめにも魔法学校から奪った魔女を失うわけにもいきません。ですが・・・何人もその魔女まで失ってしまいましたし・・・。何もしないと高を括っていた彼らが、絶望に沈むことろを見てみたいですから」
 心まで痛めつけられた彼らが戦う気力を失う光景がどんなものか、彼女はフフフッと冷笑する。
「で・・・もう不老不死になったやついるんだろ?そっちの研究の方をもらえないか」
「かまいませんが・・・他の者に知恵を与えたり、裏切るようなことなどがあれば、私やハツネ様たちが捕らえにいきますからね?」
「ハツネちゃんを怒らせたら、ボクも呼ばれそうだね。裏切りは絶対に許さない主義みたいだし」
「んなことはしねぇって。ほらよこせよ」
「―・・・・・・何て無礼な男!こんな輩に・・・、葛葉様が検体になった研究データを渡すというのですか・・・?」
 どうしてこのような輩に・・・と思ったアルカ・アグニッシュ(あるか・あぐにっしゅ)は、ゲドーに嫌悪の眼差しを向ける。
「うまく扱えるか扱えないかは、本人次第ですよ?」
「えぇ・・・そうでしょうね・・・。(扱うための思考がなければ、・・・宝の持ち腐れってことですか。・・・フッ)」
 小ばかにしたように睨むと、予備にコピーしたディスクを渡すとすぐさまツンッと彼に背を向ける。
「―・・・何者っ」
 ディテクトエビルで氷のような殺意を察知し、金光聖母を守ろうと彼女の傍へ寄る。
「ゲドーさんも排除に協力してくださいね」
「げ、マジか・・・」
 はぁ〜と嘆息してめんどくさそうに言う。
「(ぬぬぬ・・・納得いかん!なぜ、あのような不幸そうな男に見せ場があって、私がカッコいい所を見せようとしたのに見せれなかったのだ!くそ、次こそが私の見せ場だ!!)」
 しかもまったくやる気のない者に、見せ場を取られてたまるものかと、グレゴール・カフカ(ぐれごーる・かふか)はゲドーにライバル心を燃やす。
「あなたたちだけですか?まぁ、その方がヨウエンにとって都合がいいですけど」
 金光聖母が連れているドルイドの魔女の姿があるが、葬る相手だけ狙いましょうと十天君の1人にブリザードを放つ。
「う・・・っ、何て力・・・っ」
 ファイアストームで防ごうとするが、無表情の男に魔力で負かされそうになる。
「しっかりしてよ、アルカさん。いきなりリタイアはさすがにかっこ悪いよ?」
 右天はフォースフィールドで肌寒い程度の吹雪にまでに緩和させる。
「いつまで持つんでしょうね?期限付きの完全不死の者もいないみたいですし」
「な・・・・・・っ。あの男・・・研究だけ持って逃げたんですね・・・っ」
 アルカは右天以外の男には嫌悪を抱いてるせいか、いつの間にやらいなくなったゲドーがより憎々しく思える。
「守りの割りに対したことありませんね」
 つまらなそうにため息をつき、痛みを知らぬ我が躯の痛覚を感じにくくなっている彼は、アルカの炎に焦がされながらも、我は射す光の閃刃で十天君ごと倒そうとする。
 義理堅いわけでも傷を負う気もさらさらない2人はさっと避ける。
 すでに他の生徒が十天君を襲撃しようが知るものかという態度のゲドーは・・・。
「へっ、もう面倒ごとはごめんだ。さぁて、俺様は完全不死の研究の続きをするぜ」
 いつの間にやら金光聖母たちとおさらばし、研究所から持ち出した物をカバンから出す。
 ミニパソにディスクを入れて、完全不死となるための研究を始める。
「これで俺様も完全不死に・・・。げっ、魔道具がいるのかよ。金光聖母ちゃんのラボもぶっ壊れて何も残ってないだろうな・・・」
 協力だけさせられてアルカが言うように、本当に宝の持ち腐れになっちまうのかと、使えそうな結果がないか探す。
「ちくしょう、うっ胃が・・・・・・」
 無数の胃潰瘍が出来てしまったような感覚に襲われ、これも封神台の中にいるせいなのか・・・と、じたばたともがき呻く。
「んなところでのんびりしてたら、やつらに見つかって研究資料を破壊されちまう・・・。俺様だって少しくらい、幸せになってもいいじゃないかっ」
 痛みに耐えながら指をぷるぷると震わせ、ぽち・・・ぽちっとキーボートを操作する。
「このページは・・・。対象に魔道具で生成した液を流し込み、生命の気の流れを理解出来る術者が術を唱えることで不老不死となる・・・!?」
 金光聖母とあのおっさんしか無理じゃねぇーか!と思いつつ読み進める。
「お、これなんかよさそうだな。えーっと何々・・・生命の気の流れを理解せず行った者でも可能かもしれいないが。代償として魔力が枯渇してしまい、何日も動けず回復するまでかなりの時間がかかるだろう・・・!!?」
 画面に向かって、どんだけハイリスクなんだ!と突っ込みを入れる。
「魔法学校に行けば、いろいろ揃えられそうだけど。んな実験してたら、ぜってー泡とかに見つかるよな。そんでドラゴンアーツとかで研究資料も取り上げられそうだぜ・・・。完全不死の効果がきれちまったら、ちょーボコボコに殴られそうだし。ていうかあいつはぜってー殴るよな。真言ならまだ・・・いやあの執事は別の意味で危険だ!すげー説教とかしてきそうだ。しかも何時間も正座させられてな・・・。はぁ〜、今あるもんでなんとかするしかねぇか」
 ネガティブなことばかり呟き、胃の痛みに耐えつつ封神台の中で研究を続ける。



「何だか急に冷えてきたどすなぁ〜」
 綾小路 風花(あやのこうじ・ふうか)は寒そうに震え、紫音の傍に寄り添う。
「なぁ妖精と会った季節って、こんな寒かったのか?」
「いいえ、暑い時期だったはずよ。ルカたちと会う前の記憶の中かもしれないし・・・」
 紫音に聞かれたルカルカはふるふると首を振り、分からないという仕草をする。
「アルファがいるのだから、深追いはするな主」
「んなこと、言われなくてもわかってるぜ!」
 いくら力になりとはいえ無理に特攻して、自爆なマネはするなとアストレイア・ロストチャイルド(あすとれいあ・ろすとちゃいるど)に釘を刺された。
「あれは人なのか・・・?」
 絶対闇黒領域で氷の悪魔のような闇の化身になっている遙遠の姿にアルスは顔を顰める。
「一見押してるようにも見えるけど、・・・その代償のダメージはでかいからな」
「紫音さん、十天君がいますわ!」
「あの女か・・・」
 金髪の女を見つけたアルファの視線の先を見ると、余裕そうな表情の金光聖母の姿がある。
「どうしました?私に近づけないようですが」
「心配しなくても、すぐに殺してあげますよ」
 ドルイドの崩落する空の光のレーザーに身を焼かれながらも、遙遠はじりじりと相手との距離を詰める。
「オメガのドッペルゲンガー・・・。わざわざくるなんて、探す手間が省けました」
 金光聖母は金光陣を発動させ、アルファとなった者もろとも陣の中へ取り込む。
「何この鏡ばっかりの部屋!?」
 突然の出来事に驚いたルカルカはミラーハウスのような空間を見回す。
「はぁ〜まったく。どうしたらこんなに傷つくんだ」
「問題ありません・・・リジェネレーションで治りますから」
「そうはいっても、すぐ治るもんじゃないって。俺が治してやるよ」
 今までよく倒れなかったな、と思いながらもエースは命のうねりで遙遠の傷を治す。
「その姿のこと気にしてるのか?それくらいで皆が何か言ったりしないと思うぜ?」
 顔を背ける彼に誰も気味悪がったりしないから、と言葉をかける。
「なーに暗い顔してんだ。んなどんよりした顔じゃ戦えないぜ!」
 100万ワットの元気いっぱいの紫音に、バシバシッとおもいきり背を叩かれる。
「戦いに表情はあまり関係ないと思いますが・・・」
「えー、何いってんだ?超大事だろっ」
「主・・・。時によっては、ポーカーフェイスも大事だ」
「そんなもんなのか?」
「その顔が、悲しみに濡れるところをぜひ拝見したいですね。大切な者を失った時、どれほど絶望の声をあげるのか・・・」
 ズ・・・ッと彼の目の前に現れ、金光聖母は冷酷な言葉を浴びせる。
「へぇ・・・聞けなくて残念だったな?―・・・鏡!?」
 ブレード・オブ・リコで女の胴を薙いだはずだったが、それは鏡に映った姿だった。
「ドッペルゲンガーはアルファと名乗っているんですね?ではそのアルファをオメガの代わりにいただいていきましょうか」
「アルファさんは渡しませんっ」
 ハンカチでつなげている手をぎゅっと握り、睡蓮は唯斗の後ろに隠れる。
「人の嫌がることを平気で行うくせに、自分たちの行動の邪魔をされたら怒って仕返しをしようとする・・・いやぁ、実に人間味があって良いわね・・・まったく・・・ふざけんじゃないわよ!!」
 魔法武具 天地(まじっくあーてぃふぁくと・へぶんずへる)を両手と両脚に装着させ、ミラージュの幻影を作った泡は手甲をはめた拳で叩き割る。
「鏡の中にいるわけ?その根性は治りそうにないから、封神台の中で反省するといいわっ」
 オメガを苦しめるだけに飽き足らずアルファを利用しようする女に怒りをぶつけ、チェインスマイトで粉々に砕き歩く。
「この鏡が元に戻るのが早いか・・・俺たちが全て破壊するの早いか勝負だなっ」
「紫音、割ればいいんどすか〜?それなら私も叩きますぇ〜」
 パチパチッシュバババッ。
 サンダークラップの電撃で風花も鏡を破壊する。
「そこにおるのか!?」
 敵に味方し嘲笑う右天に、天罰を与えようと天のいかずちをくらわす。
「くっ、ただの鏡か・・・」
「あはは、残念だったね?ボクたちを倒さなきゃ、あの魔女を連れていっちゃうよ」
「貴公らのような者にアルファは渡さぬっ」
「必死だねぇ〜。かつては他の魔女を引き連れて他の種族を下僕のように扱おうとしていたのにさ。なんで守ろうとするのか理解出来ないよ」
「む・・・っ、それは昔のことじゃ。誰かを傷つけたわけでもなかろうっ」
「でもさ、こんなふうに思ったこともあるんじゃない。もしこの魔女が有益になることを見つけたら、自分たちを裏切るんじゃないかってね」
 まるで彼女の周りにいるかのように、鏡に姿を映しながらゆっくりと歩く。
「わらわたちを裏切ったりはせぬ・・・」
「すごい自信だね?どうしてそう確信を持てるんだか理解に苦しむよ。今も都合の言いように動かされてるだけって思わない?敵意を向けてたのに頼ってきたから仲間だなんてありえないし」
 動揺の色を見せるアルスを眺め、可笑しそうにケラケラと笑う。
「アルス、そんなやつの言葉に耳を貸すなっ。アルファは俺たちを裏切ったりしない!」
 紫音は彼女を囲む鏡を壊し、1度信じたなら疑うなっと叱るように言い放つ。
「そうじゃな・・・すまない・・・」
「ねぇ、それは本心?」
「あぁそうだ!」
 どこからか話しかけてくれる少年に言う。
「アルファ・・・アルファ・・・アルファ・・・ってばかみたいですね」
 魔女を守ろうとする彼らを金光聖母が笑い飛ばす。
「―・・・・・・ばかは死期の幻影を見せられても、治らないでしょうね・・・」
 アルカは光術を鏡に反射させ紫音の脳天を狙う。
「うわっ!?」
「紫音に何するのっ」
 風花は鏡を投げ光術の軌道を変える。
「殺気看破があっても、この空間じゃどれが本物か分かりづらいから気をつけて、紫音」
「あぁ、うん。ていうかフツーの鏡とは違うみたいだな」
「私もとっさのことでしたし・・・」
「なぁ風花、今から言うことを皆についたえてくれ」
「はい・・・え!?分かりました・・・っ」
 ごにょごにょと耳打ちする彼に頷いた彼女は、仲間にテレパシーを送る。
「(鏡はどんな役割をしてくれはるのか、思い出してください)」
「鏡・・・姿を映す以外に・・・ですよね。なるほど、そういうことですか。ヨウエンもそれを利用させてもらいますか」
「えー、どういうことだろう?ねぇ、エースは分かった?」
「んー・・・だいたいな」
「皆だけ分かっててずるーい!オイラにも分かるように教えてよー」
「口に出して言うと敵に気づかれるから、頑張って考えてみるんだクマラ」
「うぅ、ひどいよー。えっぐえっぐ」
「泣きマネだな、騙されないぞ。仕方ないな、ちょっと耳を貸せ」
 教えてもらおうと泣いたフリをする少年に、エースはヒントを与えてやる。
「特性を逆に使ってやろうって話だ」
「それだけじゃ、全然理解できなーい」
「あぁ、たとえるならあれだ。十天君が好きな言葉の、リサイクルだ。俺たちとの根比べになりそうだけどな」
「エコの時代には違いないけど、もうちょっとヒントちょーだいっ」
「論より証拠よ。見てれば分かるわ」
 割れた鏡を拾ったルカルカは遙遠の後を追うようについていく。
「ルカ、本当にこんな小細工で大丈夫か?」
「向こうがそうくるなら、どんな汚い手でも使ってやるわ」
 淵にも持たせると注意深く鏡を見ながら警戒し、相手が仕掛けてくるのを待つ。
「泡さん、ちょっと囮役を頼めるかしら?」
「あいつを倒せるならなんでも手を貸すわ。で、私は何をすればいいの?」
「ミラージュに映った姿が、本物かどうか相手も判別つきづらいはずよ。そこを狙うの♪」
「それって、どこでもいいのかしら」
「アルファを狙ってくるはずだから、その近くにいてくれる?ルカたちを倒すよりも、奪って逃げるはずよ。鏡の中を移動できるのは十天君だけのはずだけど。他のやつもいるから、気をつけてね」
「(冗談じゃないわ、誰がやるものかっ)」
 魔女を連れ去ろうとする女を倒すべく、泡は真っ白な床の上を歩き、アルファの回りをうろく。
「(かかったわねっ)」
 光のレーザーが鏡に反射し、彼女を貫こうと襲う。
 それをルカルカは手に持っている鏡で遮り、あさっての方向へ反射させる。
「思った通り、使えそうねこれ」
 術者以外が不自由に見えるこの空間を、逆に利用してやろうとにんまりと笑みを浮かべる。
「きゃぁああ!?」
 ぬっと壁にかけられた鏡から現れた女の手に驚いた睡蓮が悲鳴を上げる。
「触れるなっ」
 バリィインッ。
 唯斗が疾風突きで破壊すると、女の手も消えてしまった。
「いやぁあ、唯斗兄さん床からも!」
「捕まえたぞ、金光聖母っ」
 彼女の手を掴み引きずり出そうとする。
「その程度で私を・・・捕らえたとでも?朽ちてしまいなさい」
 冷淡な口調で言い光のレーザーで彼を葬ろうとする。
「残念だったな、自分の技で自爆しろっ」
 ルカルカがやったように反射させた淵が女の手を貫く。
「凍傷させて切断されれば、ネクロマンサーのスキルでも治癒出来ません。どうやら泣き叫ぶのはあなたの方のようですね」
 遙遠は女の手にブリザードを放ち、凍結させ腐らせようとする。
「余計なのがいますね」
 ズシュッ。
「・・・って、思ったより深いッ・・・だが・・・どうだ?今この瞬間、私はカッコ良くないかッ?」
 金光聖母の手の上に被さり守ろうしたカフカだったが、ブリザードをくらったあげく破片を背に突き立てられる。
「邪魔です、退きなさい」
「ふぐぁあ!?」
 ガスッと蹴られ床に転がされる。
「金光聖母はこの空間のどこかに逃げてしまったようですね・・・。せっかく倒せるチャンスを見つけたのに、どうしてくれるんですか?」
「がふっ、この・・・やめっ・・・ぐぁあっ」
 コロコロと蹴り転がされ、無様な姿を晒してしまう。
「わ、私のことなど構うな。あの魔女を連れ去り、おまえは目的を果たすのだ!」
「いっそ助けてとか頼んだらどうです?あなたの使い道はそれくらいしかないんですよ」
「私を蹴るなっ。ちょっとくらい顔がいいからと、いたぶって楽しいかっ!?」
 悪魔のようなネクロマンサーにいたぶられているカフカは、一見哀れにも見えるがアルファ側の者たちは誰も助けようとしない。
 それどころか右天とアルカも彼を放置している。
「楽しい?そんなの知りませんよ。あなたを逃がしたら、また邪魔されてしまいますから。動けない程度にしておいてあげますよ?」
「その恨み・・・私が晴らしてさしあげましょう」
 アルファを連れ去り後は無視して逃げようと考えていたが、遙遠に痛めつけられているカフカの姿に、彼を救おうと策を練る。