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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編

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太古の昔に埋没した魔列車…御神楽環菜&アゾート 後編
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リアクション

「もうすぐお昼ご飯だねー。材料もいーっぱいあるし、たくさん作っちゃおうっと」
 アニスが…というより、パートナーの和輝が予め手配しておいた昼用の食材を眺め、どう調理しようかウキウキと無邪気な笑みを浮かべる。
「傍にいないと思ったら、昼食の準備をしているのか」
 人見知りなため、電話でもなかなか注文出来ないだろうと思い、彼が代わりにここへ配達してもらえるよう頼んだようだ。
「こぼしちゃうとアリさんとかが寄ってきちゃうから。食べやすい大きさにしなきゃね!」
 チーズやハムを食パンにはさみ、ナイフで4分の1カットに切ると、オーブンの中に入れて薄い焼き色をつける。
 電化製品を雷術で動かしているため、バッテリーなどの無駄な荷物が少ない。
「フレンチトーストの方は、お野菜をたっぷりはさんだサンドイッチにしようかな。あわわっ、コンロを止めなきゃ!」
 カタカタンと揺れるフタの音に、アニスは慌ててパチッとスイッチをオフにする。
「コーンスープは準備おっけーだね!んーと、お味噌汁のダシはー…もうちょっとかも」
 スプーンですくい、ふ〜ふぅ〜と息で冷まして味見してみる。
「御握りの具はー…鮭とか焼きタラコでいいかな」
「ほう…焼くのか。生物は入れないのだな?」
 ミニキッチンで料理をしている小さなコックさんのところへ、リオンが様子を見に来た。
「うん!夏場だし、お腹壊しちゃうかもしれないからねー」
 そう言いながらアニスは御握りの両面に醤油を塗り、網でこんがりと焼く。
「お味噌汁に使った昆布を、みじん切りにして味付けしちゃえ!」
 捨てるのももったいないし、具に使ってしまおうと包丁で切り、ボウルに入れゴマ油や細かく千切った海苔と混ぜる。
「皆すごく疲れてると思うから、お味噌汁は濃くしたよ。お好みで冷たいお水でぬるくしたり、あったかいお湯を足せるようにポットも用意しておいたからね!」
「ふむ、随分と気が利くじゃないか」
「えっへん!アニスだって、これくらい出来るもん」
 感心したように言うリオンに少女が得意そうに言う。
「皆に配る…のは無理か」
 その言葉にパッと和輝の後ろに隠れた彼女の姿に、リオンはどうしたらいいものやら…と両手で頭を抱え、悩んでしまう。
「おぉーっ、うんまそぉ〜。これ、食べていいのか?」
「遠慮なく食べてくれ、アニスが作ったんだ」
 いつもの如く隠れている少女をリオンがちらりと見て光に言う。
「いいなー…。俺もパパになったら、きっと噴水の近くでこうやって…子供が作ったご飯食べたりするんだろうな」
 アニスのような小さな子供が出来たら、自分のために作ってくれるんだろうな、と…もわ〜んと妄想を始める。
「だが、アニスは和輝の娘ではないぞ…」
「娘っていうか、兄貴にみたいには見えるけどな!」
 誤解しないでくれ、というふうに呟く彼女に、へらっと笑いかけて“それくらい分かってるぜ”と言う。
「どれもうまそーだぜ」
 テーブルに置かれた箱から、石鹸の香りがするお手拭を1枚取った光たちが手を拭く。
「はぐっ。ん、鮭か!具がいっぱい詰まってて食べ応えもあるな」
 さっそく焼き御握りにかぶりつき、指についた米粒も残さず食べきる。
「水だけじゃなく、氷もある…とアニスが言いたいようだ」
 代わりに伝えて欲しいと、うるうるとした瞳で見上げるアニスのために、リオンが詩穂に言う。
「冷たくしたり出来るように、濃いめに作った…というわけだな」
 自分で言ってみないか…と、ちらりと少女の方を見るものの、首をぶんぶんと左右に振る様子に、やっぱり私が伝えてやるかと説明を続ける。
「お気遣いありがとうございます☆」
「コア、さっさと食べて作業に戻るわよ!ライブステージが私を呼んでるんだからっ」
「呼んではいないと思うが……。早く昼食をすませて、進めねばな」
 ねめつけるようなラブの視線に、コアは急ぎ食事をすませる。
 その彼女の目は、相手を見るだけでぶっ倒しそうな、恐ろしい感じだった。
「さーって、床造りの続きでもするか!」
 満腹になった刹那は駅舎の敷地へ走り、灰色のタイルを並べる。
 しかもそれが終わったら発電装置や予備電源装置の組み立てやら、配電工事までやらないという。
 線をつけ忘れたりすると動かないからと、静麻は彼女の傍で細かく手順を教えている。
「予定よりも規模を小さくしたようですけど、果たして無事に工事が終わるのでしょうか〜?」
 撮影を続けているオルフェリアは、心配そうに作業の様子を見守る。






 昼食を済ませた建設担当者たちは、すぐさま現場へ戻り工事を再開する。
「噴水に照明はつけないのか?」
 天伏に記入はないが、アイデアを出し忘れたのかと思い、和輝が聞く。
「感電防止の作業が難しそうなので、つけません♪」
 誤って中に落ちたりしたら、ビリビリッてなっちゃいます☆と言う。 
「外灯だけで明かりは足りると思いますよ。雷術を使ってもらって、個人で点ける程度ですけどね☆待合室の明かりもそんな感じです」
 配電も大変だし節約のため、ご自由に点してください、という感じだ。
「詩穂さんは魔列車の発掘に関わっていたみたいですけど。こちら側では建設を担当するのですね〜?」
「はい、これも大切なお仕事ですから☆」
 マイクを向けるオルフェリアにニッコリと微笑んで答える。
「向こうではどんな担当をしていたんですか〜?」
「フラワシに車体の全体図を描かせたりしていましたよ。細かいところまでは描き込まれていませんけど。ヴァイシャリーの別邸の近くに、展示会場が出来たらそこに飾られる予定です♪」
「それは楽しみですね〜!しかし、駅舎の近くじゃないのはどうしてでしょう…」
「建設期間が延びてしまうので、造る余裕がないみたいですね」
「あらら〜…。とても残念ですけど、無理すると倒れちゃいますからね〜。貴重なお言葉ありがとうございました!魔列車に関わった他の方たちにも、いろいろと聞いちゃいましょう♪」
 作業に没頭し始めるとコメントをもらいづらくなると思い、それに関わっていた者を探そうと、現場をきょろりんと見回す。
「はわわっ!?すでにインタビューしている方がいますね!ちょっと待たなければいけないようです〜…」
 すでにコアとラブから許可をもらい、インタビュー中の樹月 刀真(きづき・とうま)たちの姿が見えた。
「駅舎や待合室とも違う造りみたいですが…」
「ふっふ〜♪これはライブステージの土台よ!終電逃しちゃった人が、退屈しないようにねっ」
「朝までライブっていうことですか?何時間もスタージに立つ人も大変そうな気がしますが…」
「志願者がいなければ、私がずっと引き受けることになるわ。交通費分しか持ってない人もいると思うから、ボランティアになっちゃうけど。楽しんでもらえればそれでいいから、私は無報酬でもかまわないわ!」
「な、なんと完全ボランティア!?人のために始発まで頑張るとは…尊敬しますっ」
「(野外ライブみたいだけど、屋根はつけるのかしら?)」
 得意げに言うラブと、まだ土台だけのステージが画面におさまるように、月夜が離れたところで撮影する。
「ライブステージの建設現場にてインタビューさせて頂くですよー♪」
 会話を止んだ隙に、今度はオルフェリアがラブたちに突撃インタビューする。
「今、魔列車に関わっている人たちに、お話をうかがっているのですけど〜…」
「向こうの作業具合を聞きたいのか?」
「はいっ」
「パラミタ内海に到着後は、発掘もおこなっていたのだが…。列車を運搬する人手が足りないようだから、仲間と共に駅の予定地まで運んだぞ」
「予定地ということはすでに、運び込まれているということですか〜!?―…う〜ん…あっ、見つけました〜っ。イコンの機体や資材の山に隠れていたのですね〜!」
 コアの言葉に驚いたオルフェリアは、その魔列車の姿を探し、レールが敷かれる予定の敷地に置かれている車体を携帯のカメラで撮る。
 小さなサイズではないのだが…。
 一々資材置き場のエリアに取りに行くのも面倒だからとシートを敷き、レンガなどをどっさりと置かれた陰に隠れてしまったのだ。
「なんだか深い海の色みたいですね、塗装はするのでしょうか〜?」
「そのような話はまだないな」
「ベースの色が隠れてしまうと、もったいない気もしますね〜」
「そろそろ作業に戻りたいのだが、いいだろうか?」
「えぇ、どうぞっ。お忙しい中、ありがとうございました〜!!」
 ニッコリと笑顔でお礼を言うと次なるインタビュー相手を探しに向かった。






 躯体を造る工程まで進めると、刹那たちは地下の間仕切り壁を作る作業に取り掛かる。
「地下の壁は厚めにするんだな?」
「熱発電機器が故障したり、他の品物を保存したりするからな」
 眉を顰める刹那に、貯蔵庫もおく予定だしな、と静麻が言う。
 当然、食品を保存する大きな冷凍庫を何度も必要になるし、グッツなどを保管する部屋と別々にしておかなければいけないからだ。
「壁の色はどうするんですか?」
 機械と貯蔵室があるだけだが、そこまで凝るものなのかと白竜が静麻に聞く。
「塗る予定は無いな、客が見るわけじゃないからさ」
「関係者以外、立ち入り禁止でしょうから必要ないということですね。これ以上、余計な作業を増やすことも出来ないでしょうけど」
 あまり手順を増やすと遅々として進まなくなると、予定通りに完成するのかも怪しくなる。
「そっちの予定によると、改札とかも設置するのよ。大丈夫そうなの?」
 びっしりと寿司詰めなスケジュールを見つめ、心配になった咲が彼らに声をかける。
「セキュリティの方は理王が担当するので問題ありません。ですが、エスカレーターなどは少々厳しいかもしれませんね。改札まではきちんと設置しますよ」
「なんていうか…急ぎの突貫工事にならないようにしてね」
 規模的にも大変なのだが、作業を詰めすぎて無理をしないように注意する。
「建物の強度などの心配はいりませんが。日程を調節して、別の機会に進めたほうがよさそうなところはありそうです」
「おっけー、了解よ。環菜に伝えておくわ!」
 白竜との会話をメモし、まだ現場を視察中の環菜と検討するべく彼女を探しに向かった。