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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション

―あなたにこれを―

 休日のショッピングモール。
 人でごった返す。
 でも、そこにいる人たちの表情には曇り顔などひとつもなく、みんな楽しそうにしている。
「博季ちゃん、次はこっち行こうー?」
 荷物で大分一杯になってきているいる博季・アシュリング(ひろき・あしゅりんぐ)の手を、リンネ・アシュリング(りんね・あしゅりんぐ)は握ると、ぐいぐいと引っ張っていく。
「ちょ、ちょっとリンネさん待ってくださ――」
「善は急げだよ、博季ちゃん! 早く早く!」
 生活必需品が入った袋。中にはお揃いのマグカップやお皿などの割れ物も入っている。
 博季とリンネ。二人の新婚生活、新たな家での必要な物をやっと買出しに来れたのだ。
 そんな中、服屋で二人の秋物の服を見ていると、リンネが博季に奇抜な服を見せてきて、困惑したり。
 リンネがいつもとは違う感じの服を選んでいたけれど、それがまたとても似合っていたり。
 なんだかんだで、その服を博季はプレゼントの形で買ってあげる事にする。
 たいそうな金額に目が飛び出そうになるが、リンネのためにならお金には糸目をつけないと決めていた。
 支払いを済ませ店を出ると、
「ね、博季ちゃん、荷物半分もとっか?」
 リンネがおもむろにそう聞いた。
「これくらい、ぜんぜん大丈夫ですよ」
 博季は軽々と荷物を持ち上げて見せた。
 そして、それよりも、と博季は切り出した。
「少しよりたいところがあるのですが、いいですか?」
「うん、いいけど、どこ?」
 少しだけ不機嫌な感じで、リンネは問い返す。表情に翳りが見えた。
 ――これからいく所があるのに、リンネさんの指、傷つけたくないじゃないですか……
 断腸の思いだった。
 荷物を半分持ってもらって、手と手をつないで歩きたい。
 博季だってそれは考えている。
 デパート内で一組の夫婦が楽しそうに腕を組んでいたのを見て、とてもうらやましそうに見ているのも知っていた。
 でも、我慢した。
「ここですよ」
 ずらっと並ぶ指輪の数々。
 そう、博季の目的は結婚指輪をオーダーすることだ。
 リンネは言葉も出ない様子で、目を丸くして店内を見ている。
 彼女の手を傷つけないために、それでいて彼女に喜んでもらおうと思って。荷物を持ってもらうことも、手をつなぐことも、我慢した。
「リンネさん。結婚指輪、作りましょう?」
 大事な伴侶。指輪なんか無くてもいいかもしれない。
 でも、これは証だから。
「どんなのがいいですか? 飛びっきり派手なのでもいいですし、リンネさんの好きな物を選んでください!」
 サプライズのつもりで、博季は腕を大きく広げてリンネに言った。
 そんな博季に、リンネはふるふると首を振ると、
「シンプルなのでいいよ? 私と博季ちゃんがずっと、いつまでも、一緒だってことがわかればそれでいいもん。
 だって、指輪は証明に過ぎないもの!」
 リンネは嬉しそうに笑いながらも、その瞳に涙を湛えていた。
「あ、あのすみません……。リンネさんの綺麗な指に傷ついたらって思うと……」
 しどろもどろになりながら、博季は今までリンネの手伝いを拒否していた理由を説明した。
「今分かったから、大丈夫だよ。ね、博季ちゃんはどんな指輪がいい?」
 涙を拭い恥ずかしそうに微笑を浮かべるリンネ。
 そんな彼女がまた愛おしい。
「僕は……リンネさんに似合う指輪なら……」
「それでしたら、お二人の誕生石をあしらった指輪などどうでしょう?」
 話を聞いていたのだろうか、デザイナーの人が話しかけてきた。
 確かに迷うくらいならという思いはある。
 リンネの誕生石……月ならルビー、日付まで含めればコーラルやムーンストーン。
 博季なら、月ならエメラルドで、日付まで含めればスモーキークォーツ。
 それはとても大事なことで、簡単には決められないことだ。
 彼女はシンプルでいいと言った。
 でも、いつも身に着けてもらうつもりのアクセサリーだし、少しくらい煌びやかでもいいのではないかと思う。
 しかし、博季はリンネが楽しく笑っていてくれるなら、それでいいとも思っているのだった。
 だから、今こうやってデザイナーの人と頭をつき合わせて、ああでもない、こうでもないと、指輪のデザインを考えている。
「はは……僕はなんて幸せなんだろう」
 笑顔と一緒に小さくもれた言葉。隣にいる生涯の伴侶も、楽しそうに笑ってくれている。
 伴侶だからとかそういうことを考えなくても、リンネにはずっと一人の女性として、女の子として、目一杯幸せを味わってほしいし、自分からも幸せな気持ちを分け合いたい。
 今みたいに、もしかしたら困らせたり泣かせたりすることもあるかもしれないけれど、最後にはお互い笑っていたいから。

 だから、
 ――愛してますよ、リンネさん。ずっとずっと、いつまでも。
 こう博季は思ってしまうのだ。