校長室
【2021ハロウィン】大荒野のハロウィンパレード!
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話は円盤を追跡している虹を架ける箒に戻る。 「ふふふ……不審者を見つけるとは、流石なななと言ったところね!!」 箒を操るルカルカの後ろに乗ったなななが宣言する。 「……はい、そこのパンプキンヘッド! 大人しく止まりなさい!!」 ルカルカが言うと、セントリフューガに乗ったパンプキンヘッド、もといジャック・オー・ランタンの小次郎がフルフルと首を振る。 此方を気にしないでパレードを楽しめるよう配慮して、遊軍的な位置づけとして動くので、他の警備員とも連携は取らず一人でセントリフューガにのってフワフワと漂っていた小次郎。ルカルカも同じ警備員として書類上では小次郎の存在を確認していたが、よもや、彼が物言わぬジャック・オー・ランタンに仮装していることは知らない。 小次郎は、抵抗の意志はない、怪しい者じゃない!と主張するが、ジェスチャーだけでは伝わり難い。 「さっきお客さんに手を出していた分際で! シラを切る気ね! このなななのアホ毛を見忘れたとは言わせないわよ!!」 「……見るも何も、ななな……あんた、とんがり帽子被っているじゃない?」 「心の目よ!!」 ルカルカはなななに反論する事をやめたと同時に、警備のためとはいえルカアコと別行動を取った事を後悔した。 確かに、このジャック・オー・ランタンの暴行現場を彼女も上空から見ていた。 見るからに悪そうなモヒカン相手に、ジャック・オー・ランタンが大立ち回りを繰り広げていた。スウェーで攻撃をかわし、則天去私を放ったジャック・オー・ランタン。見た目は兎も角、中身は相当の達人であることがわかった。 「(さて……どうしましょうか?)」 ルカルカが悩む。ジャック・オー・ランタンを撃墜する方法なら、いくつか持ち合わせている。しかし、パレードに支障をきたしては元も子もない。ルカルカが取った行動は、パレードから遠ざけたところで落とす、であった。 小次郎のセントリフューガをパレードから遠ざけた時、ルカルカが叫ぶ。 「天の炎!!」 天から巨大な火柱が小次郎目がけて落ちる。 「!?」 ―――ドォォォーーンッ!! 「やったの!?」 なななが下へと下がっていくセントリフューガを見る。 「怪我させちゃ駄目だから、直撃は避けたけど……あのダメージの少なさは禁猟区のせいね」 冷静に観察していたルカルカが箒をそちらの方へ向けて加速させる。 フラフラと落ちて行くセントリフューガが、パレードの沿道を大きく離れたところに着地する。 「……」 頭を振った小次郎が機体の損傷を確認しようとすると、 「はーい! そこまでそこまで!!」 なななとルカルカが降りてくる。 「ふふふ……なななから逃げられると思ったの?」 「……」 「言い訳があるなら聞くけど?」 ルカルカもじわりと距離を詰める。 「待って下さい!!」 一本三つ編みを揺らして走ってきたのは小夜であった。その後ろを志成が続く。 「この方は、わたくしを助けて頂いた方です!」 小夜はそういって小次郎の前に回り込み、通せんぼするように大きく手を広げる。 「助けた……? どういう事?」 ルカルカが聞くと、小夜が当時の状況を語りだす。 志成と一緒にパレードを楽しんでいた小夜は、その人混みの中を移動中に志成とはぐれてしまった。 方向感覚が鈍い小夜は、志成を探して彷徨くうちに、気づけばパレードから少し離れた場所にいた。 「ここは‥…どこでしょうか?」 振り返ると。パレードの光は遠くに見える。 「わたくし、迷ってしまったのですね」 小夜が踵を返そうとすると、彼女の背後にモヒカンの男達が数名いた。 「ヒャッハー! 魔女のお姉ちゃん! 俺達と遊ばないかい?」 「……結構ですわ。わたくし、志成様の元に戻らなきゃいけませんので」 小夜がそう言うと、モヒカン男が小夜の腕を掴む。 「そうは言わずによぉー! 楽しもうぜ!!」 その時、モヒカン男の肩がポンと叩かれる。 「あん?」 振り返ると、ジャック・オー・ランタンの小次郎が首をフルフルと横に振っている。 小夜を上空で発見した小次郎が、なるべく平和的に解決する方向で仲裁に入ったのである。 「何だ? こういう事すんなってか? ……うるせぇ! カボチャ野郎!!」 モヒカンの裏拳をかわした小次郎が、離れ際に男のボディに拳を叩きこむ。 「あ……て、テメェ……」 腹を押さえ、地面に倒れる男。 「てめぇ!!」 「やろうってのか!?」 殺気立ったモヒカン男達が、小次郎を取り囲む。 小夜を庇う様に、その前に回りこんだ小次郎がフルフルと首を横に振る。 「あの、この御方は、手を出さなければ何もしない、と仰っています」 小夜が通訳するも、モヒカン男達は既に戦闘モードに入る。 クルリと小夜を見た小次郎がコクンと頷く。 「少し揉んでやるから下がっていろ……と? わかりました、お気をつけ下さい」 ベルフラマントを翻した小次郎がサッと戦闘態勢を取る。 「やっちまえぇぇぇーーーッ!!」 「うおぉぉーー!!」 数名のモヒカン男達が小次郎に一斉に襲いかかる。 小夜の話を聞いていたなななが頷く。 「私が見たのはその現場だったわけね……うん」 「『うん』じゃないでしょおぉぉーーッ!! 全然、この人悪くないじゃない!!」 ルカルカがなななの頬をつねり上げる。 「イタタタ……真実がわかって良かったじゃない?」 ルカルカが小次郎に頭を下げる。ついでに、なななの頭も強引に下げさせる。 「ごめんなさいね! セントリフューガは後で経費で修理するから!」 「……(コクンッ)」 小次郎はただ頷き、セントリフューガにまた乗り込もうとする。 「あの……ジャック・オー・ランタンさん?」 志成が小次郎に話しかける。 「小夜を助けて頂いて、本当にありがとうございました」 「……」 小次郎が志成の手と小夜の手を取り、それを互いに握らせる。 「離れないようにしなさい……と仰っているのですか?」 小夜の問いに小次郎は大きく頷き、少し壊れたセントリフューガに乗ってまた空へ上がって行くのであった。 「さ、小夜。パレードに戻りましょう! でも、人混みに紛れてもこの手は離してはいけませんよ?」 「はい、志成様!」 二人は手を繋いだまま、パレードへと戻って行く。 ルカルカとなななも箒にまたがろうとした時、なななが声をあげる。 「ねえ、ルカルカ?」 「何?」 「ななな、あのカボチャ頭さんを良く知ってる気がするんだけど」 「……そうね。私もそんな気がしているわ。教導団の生徒かもしれないわね」 ジャック・オー・ランタンの正体は、彼が修理の見積書を提出するその時まで、ルカルカ達が知ることはなかった。 場面は再びパレードに戻る。 空飛ぶジャック・オー・ランタンを追って行った志成と小夜と別れた来栖は、次の煙草に火を点けようとするが、「……やめとこう、今はそういう気分だ」と、取り出した煙草とライターを再びしまう。 しかし、煙草が無いと手持ち無沙汰な感じがする。 来栖は先程立ち寄った勇刃の屋台で、軽食を買った時に貰った棒付きキャンディを取り出す。 「今日はそういう日だ」とキャンディを口に含む来栖。 煙草の味とは異なる味が口いっぱいに広がる。甘く、どことなく懐かしさを感じる味。 「うん、甘い……」 顔をほころばせた来栖が、キャンディを舐めながら呟く。 「ホントに……明るくて綺麗だな……まるで昼間みたいだ」 日に当たれば肌が焼け、傷つく傍から『再生』する身体を持つ来栖は、人工的な明かりとはいえ、久々に光を堪能する。 そんな来栖の近くでは、朔夜(の体に憑依した桜)が、屋台でお買い物をした記念にと、銃型HCでアンネリーゼ、屋台のネージュ、勇刃達と、エースも含めて記念撮影をしようとしており、来栖がシャッターを押す係として呼ばれる。 パレードを背に立つ一同。緋葉はカルミとセレアに強引に後押しされて勇刃の隣に立つ。 「えっと……はい、じゃあ皆さん、いきますよー。はい、チー……」 撮影しようとした来栖に待ったをかける朔夜。 「違いますよ、掛け声は、Happy★Halloween! でお願いします」 「……えーと、じゃあ……Happy★Halloween!」 来栖の掛け声で写真に収まる一同。 朔夜は来栖に礼を言い、渡された貰った銃型HCのモニターで写真を確認する。 「あれ?」 「え……私、間違いましたか?」 来栖が尋ねると、朔夜が首を振る。 「いいえ……このお化けみたいなものは何でしょうか?」