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Blutvergeltung…導が示す末路

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Blutvergeltung…導が示す末路

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第12章 “欲”が示す末路か story3

 王天君を倒すべく、弥十郎に憑いた敦は策を練る。
「(考えろ。僕はテクノだ)」
 なぜ彼女は術を発動しないのか?
 ハツネたちがいるから、安心だと思って使わないだけか。
 もしもその3人が危機に陥ったら術を使うのだろうか。
 わざわざ危険な状況になってから発動させるなら、理由があるはず・・・。
「(あの3人が傷ついたとしたら、傷口から血が・・・。そうか、血のなのか!?)」
 そう思った少年だったが、血を流すような状況に悪化させてまで、待つ利点が分からない。
「でも、使ってくれたほうが、こっちは都合がいいんだよね」
 もう1人の十天君と引き離すことも出来るだろう。
 だが、そうなる状況を作り出すのはかなり難しい。
「・・・葛葉。お前の主の為に、死なない程度の無理をしてくれるか」
 散々前で出るなと言っていた天 黒龍(てぃえん・へいろん)だったが、今度は傷が癒えていない彼に無理をしろと言う。
「(黒龍が、・・・そう・・・望むのなら・・・・・・)」
 いくらパートナーとはいえ、自分の片足がナラカへ突っ込むようなマネはしたくないだろうが、紫煙 葛葉(しえん・くずは)は黙って頷き、その命に従う。
「ハツネとか言ったか・・・?お前の姿・・・・・・、見えているぞ」
 殺気看破でハツネを見つけた黒龍は、丸腰同然の格好で言う。
「あなたも、野蛮ないじめっ子の仲間なの?大嫌い・・・壊れちゃえっ」
 葛葉や他の魔女たちは、王天君の研究に喜んで協力したのに、それを理解しようとしない彼らを人形以下の者として睨む。
「見えているといっただろうっ」
「そう・・・。じゃあ、これ・・・見破れる?」
 ハツネはミラージュで自分の幻影を作り出し、則天去私を容易くかわす。
「・・・なのに、なんで頑張ってるお姉ちゃん達を苛めるの?・・・他の人を傷つけたから?・・・そんなのそっちだって同じなの」
 じわじわと壊してやろうと、ギルティクラウンに病原体をバラまかせる。
「じっくり、中から壊してあげるの・・・」
「―・・・フラワシかっ」
 慌てて袖で口と鼻を覆っても防ぎきれず、べちゃりと粘体が頬にはりつき、そこから少しずつ身体を蝕まれてゆく。
 殺気看破で気配はわかっても、目で見ることは出来ないものはさすがに対処しきれない。
 紫煙の方は、少女の相手をしている主のために、紫煙は幻槍モノケロスの回収に向っている。
「マドロンのパートナーね?これがほしいのかしらぁ」
 幻槍モノケロスを魔女がロッドでつっつき、クスクスと笑う。
「あはは!炎がいい?それとも吹雪がお好みかしら?」
 ファイアストームやブリザードで阻み、必死に主の得物を拾おうとする紫煙をいじめる。
「(せめて・・・黒龍のところまで、・・・・・・もてばいいっ)」
「ちっ、頑張るじゃないの?でも、それを持っていける力はないんじゃないの」
 息を切らせながら主の得物を抱え、必死に彼の元へ運ぼうとする男を眺める。
「(―・・・黒龍・・・・・・受け取れ!)」
 今の主は黒龍しか考えられないのだから、見下され傷を受けようとも、よろめきながら彼の傍へゆく。
「葛葉っ」
 確かに無理をしろとは言ったが、予想以上の傷に自分が言った言葉を、少し後悔そうになる。
「(この身が・・・少しは・・・役に立ったのだろう・・・・・・か)」
 得物を手渡すと役目を果たしたかのように、彼は地面に膝をつき、動けなくなってしまった。
「マーリン、紫煙さんの手当てを!」
「あっ、あぁ・・・!」
 真言の声にマーリンは命のうねりですぐさま治療を始める。
「(ありがとう・・・)」
 黒龍はメモ帳にその言葉を書き、マーリンに見せる。
「礼なんていいから、早くパートナーのところへいってやれっ」
 バシッと彼の背を叩き、気合を入れてやる。
「まとめてぶちのめしてやるぜっ」
 そう言い放つと王天君は自分の指を噛み、ぽたぽたとその血を地面に垂らす。
 紅水陣を発動させ、ハツネを自分のほうへ抱き寄せる。
「もっと惨めな姿にして、壊してあげるの」
「(ハツネのためだ、役に立てよ)」
 大石 鍬次郎(おおいし・くわじろう)は光学迷彩で姿を身を隠しているスナイパーをちらりと見る。
 雪吾と礼青の引きつけ役をしろという指示だ。
 対物ライフルの銃口を彼らへ向けた東郷 新兵衛(とうごう・しんべえ)は、幼い子供以外は容赦するつもりはないと、始末する気でトリガーを引いた。
「うわっとっと!!どっから銃弾がっ」
「へっ、じゃあな」
 クククッと笑うと鍬次郎は、王天君が紅水陣を発動させようとするエリアへ駆け込む。
「あなたは行かせないわよっ」
 小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)はゴッドスピードで回り込み、趙天君の行く手を阻んだ。
「ちっ、間に合わないか」
 十天君の2人を守るはずだったが、美羽の足の速さを計算に入れていなかった鍬次郎は、悔しげに舌打ちをする。



「魔女も護衛も紅水陣に入ったようね?これであなたを守るものは、どこかにいるスナイパーだけね」
 その相手もパートナーや協力を頼んだ彼らに任せれば、問題ないと美羽は冷たい眼差しを憎い相手に向ける。
「(1発も当たらないとは・・・っ)」
 幼い2人の護衛でもなく、大人の姿のヤツを護らねばいけないのかと、新兵衛は不満げな顔をする。
「お〜怖い怖い。当たったら危険やねぇ〜」
「あいつ、ふざけているのか?」
 わざとらしくスレスレでかわす長剣を手にしている男の姿に苛立つ。
 彼に向って撃った後、そのパートナーの少年にも撃つが・・・。
 いつ陣が解除され、撤退するか分からないからと、ひき続きこちらへ注意を向けるためだけだ。
「そこで踊ってろ。銃弾が飛んでくるほうを狙えばいいだけだしな」
 パートナーを助ける様子もなく、新兵衛が撃った方向を確認し、そこへ狙い撃つ。
「といっても、相手も生きてるんやし。なかなか当たらんと思うんやけどなぁ」
「黙って踊るか、今ここで撃たれるか選べ」
「ひどっ!?うちパートナーなのにっ」
「地球人となんか契約するから、そんな目に遭うんですよぉ♪そんな生き物と、パートナーになるなんて理解できませ〜んっ」
 アヤカシの女は嘆息し、あの乱暴者4人集が、妖怪よりも劣る生き物と一緒にいるのか理解しがたいと言う。
「類は友を呼ぶってことでしょうねぇ♪」
「あなたたちと契約したいなんて思うほうがどうかしてるわ。仲間も減ったことだし、ずっと寂しいままね?」
 毒虫の群れの中に隠れている趙天君に、哀れんでやってるかのように美羽が言う。
「せめて同じ場所へ送ってあげるわっ」
 ヴォルテックファイアの焔で毒虫を焼き払い、地面の草花を焼き逃げ道を無くす。
「ウフフ♪」
 ヒュッ・・・バシイィイッ。
「―・・・っ」
「美羽さん!!」
「平気よベアトリーチェ・・・。もう、終わったから」
 その身をムチで打たれたのと同時に、趙天君の胴を乱撃ソニックブレードで胴や四肢を斬り裂いた。
 龍騎士のコピス【焔】の火に焼かれ、断面からはあまり血が出ていない。
「下等動物に・・・あたいが・・・・・・っ」
「あなたの敗因は、相手の力量を見ようとしないところね」
 十分強い相手ではあったはずなのだが、挑んでくるものを下等扱いし、力を見極めようともしないところだと、留めの一言を言う。
「あたいを討っても、・・・あの男は戻らないというのですよぉ・・・・・・」
 あの過去を思い出させてやろうと捨てセリフを言い、趙天君は身体ごと封神台の下層地へと送られてゆく。



 紅水陣に取り込まれた者だが。
「蓮生、援護を頼む」
「師匠を呼び捨てにするな。(弥十郎が、なぜその名で・・・)」
 突然、弟子に呼び捨てられた直実は訝しみながらも怒鳴り、赤々とした水の上を軽身功の体術で駆ける。
 先の先で鍬次郎の刃がどこを裂こうとしているのか読み、足を射抜こうと矢を放つ。
「いい狙いだったな?」
 それを黒刀で受け流し、返り討ちにしようと脇腹を狙う。
「ぐぅっ」
 飛び退き僅かに掠めた程度だったが、ノコギリのような刃にやられ、普通の刀と違い浅くともじわじわと傷口が痛んでくる。
「マドロンがハツネと戦ってるわっ。こうなったら、私たちが王天君を護らなきゃ!」
「そこの魔女さんたち」
 行かせまいと回り込んだ敦が、トレンチコートのボタンに手をかける。
「これ、見てよ」
「はっ?―・・・いっ」
「ほ〜ら♪」
「いやぁあああ!!!」
 敦がコートを広げた瞬間、魔女たちが絶叫する。
 メンタルアサルトにやれた彼女らは、うぇええぇえ・・・とついに吐いてしまった。
 不気味なものを見てしまったと、彼の女装姿を直視した者たちはぐったりと項垂れる。
「はい、お疲れ様っ」
 今にも倒れそうな者たちの隙をつき、邪魔出来ないように、マーリンが蒼き水晶の杖でスキルを封じてしまう。