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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別

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十人十色に百花繚乱、恋の形は千差万別
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第十六篇:綾原 さゆみ×アデリーヌ・シャントルイユ

「まさか王女様と一緒に東京を歩けるとは思わなかったわ」
 綾原 さゆみ(あやはら・さゆみ)は隣を歩くアデリーヌ・シャントルイユ(あでりーぬ・しゃんとるいゆ)にそう語りかけた。
 アデリーヌは東京を表敬訪問した、パラミタのとある小国の王女だ。
 過密なスケジュールと疲労感と自由のない生活への不満に耐えかねてこっそり宿泊先から抜け出す。が、道に迷った上に財布もスラれ、心細い想いで街を彷徨っている所を通りかかったごく普通の女子高生であるさゆみに助けられた。
 心細い王女はさゆみについてきてしまい、すぐに素性がばれてしまうが、一日だけでいいから自由になりたいという彼女の願いを叶えるべく、翌日は学校をサボってさゆみはアデリーヌに同行したというわけだ。
 二人はまず最初に王女の髪型を変え、服装やアクセサリー類などもさゆみの物――カジュアルな秋物を貸してあげて、東京の色んなところを一緒に回った。
 秋葉原の街を歩きながらアデリーヌは思う。この表敬訪問は決して無駄ではなかったと。
 一日だけ、王女としての立場から自由になって年相応の少女として闊達に過ごすうちに、二人の距離は段々と近づいていった。
 だが、この楽しい秘密の観光も、そろそろ終わりにしなければならない。
 アデリーヌを探しに訪れた護衛の男たちの姿を見つけると、アデリーヌはさゆみに礼を言って、小走りでかけていく。
「今日はすごく楽しゅうございました。感謝しますわ」
 そして、やがて一日が終わり、二人の恋物語もそこで終幕を迎えたのだった。