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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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リアクション

 男女で別々になっている露天風呂に入ろうと林田 樹(はやしだ・いつき)緒方 章(おがた・あきら)を連れてやってきていた。
 そこで出会ったクロスとカイン。
 クロスを連れて飲みに行ってしまった樹に置いて行かれた章はカインと一緒にカインたちの部屋に行くことになったのだった。


 部屋の明かりを点けて、ちゃぶ台を囲む。
 座るとすぐに急須にお茶をいれる章。
「はい。って、はっ!! つい! ここは僕の部屋じゃないのに!」
「いえ、こちらこそ気が利かなくてすみません」
「いやいや、こっちこそ! ついついやっちゃって」
(……なんだろう……ちょっとだけ自分と似た匂いを感じる……)
 章とカインは顔を見合わせると、苦笑した。
「邪魔するぜー」
 そこへ入ってきたのは新谷 衛(しんたに・まもる)だった。
「あっちの部屋は女同士の会話になるみたいだったから、こっちにきてみた」
 衛はそう言うと、あぐらをかき、買ってきたコーヒー牛乳を飲み始めた。
「オレのことは気にするな。適当に場所さえ貸してもらえればそれで良いからよ」
 コーヒー牛乳を飲み終わると、瓶をちゃぶ台の上に置き、寝っころがってしまった。
「あ、話があるんだったよね? 何?」
「はい、実はクロスのことなんですが、過去の記憶を失ってまして……。その過去の事を考えると頭痛が起きるようで……ひどいときは意識を失ってしまって……」
「ふむ……症状から考えると、器質性健忘症だろうね。頭部に衝撃を受けたことが原因……かな?」
「なるほど……。長年一緒にいるのに何もしてやれない……」
「……そばにいるだけで十分支えになってると思うよ」
「そう……でしょうか。実は……何が頭痛のきっかけになるか分からなくて、触れる事を躊躇してしまっているんです……」
「なるほどね……。でも、触れたいって思ってるならイッちゃっても良いんじゃない? って、ことでこれは餞別。ちょうどこんな良いシチュエーションなんだしさ」
 章は自分の懐から取り出したモノをカインの懐に押し込んだ。
「あっきー、お前かいにゃーの胸元にそんなの入れるなよー。ま、でもいんじゃね? 押し倒しちゃうのも1つの手だと思うぜ?」
 カインは入れられたモノを確認すると、真っ赤になった。
「えええええええっ!? いや、でもキスもまだ……!!」
 章と衛がにやにやと笑っているときだった、突然部屋にジーナ・フロイライン(じいな・ふろいらいん)が入ってきたのだ。
「餅ぃ!!! バカッパぁーーーー! 樹様とクロノス様がっ!!」
 それを聞くと、章とカインは勢いよく立ち上がった。
「行くよ!」
「はい!」
 2人はそのまま駆けて行った。


 樹たちの部屋に着くと、オオカミ化した2人がいた。
 カインはクロスを担いで自分の部屋へ戻る。
 部屋には樹と章だけとなった。
「来るな……! アキラ!! なぜか無性にお前を襲いたくなっているんだ! くるんじゃない! 服を脱がされたくなかったらくるんじゃない!」
 樹の必死な言葉。
 しかし、それに怖気づくことなく、章は樹に近づき、そっと抱きしめた。
「樹ちゃん、僕はそんなの構わないんだけど」
 にっこりとほほ笑む章。
 それを見て、ちょっとだけ泣きそうになる樹。
「私はアキラを傷つけたくないのだ……こんなの銃を乱射して押さえつけられる。だから私にかまうな……」
 樹はかまうなとは言っているが、さっきの強い調子とは違い辛そうだ。
「惚れた女が自分のことを『襲って』くれるのって、案外嬉しいことなんだけど?」
「……! アキラ……私に食いちぎられてもしらないからな?」
「大丈夫、望むところだよ」
 2人は瞳を重ね合わせると、唇も重ねたのだった。


 こちらは衛と章の部屋にやってきた衛とジーナ。
「アンタの部屋にきたのは仕方のないことなのです! ……何にもしないでくださいましね!!」
 そう言うと、ジーナは布団に潜り込んだ。
「しねーよ、バァカ!」
 その隣のちょっとだけ離した布団に衛も入った。
「なぁ、じなぽん。帰ったらチャーハン作ってくんねぇ?」
「チャーハンでやがりますか?」
 ジーナは掛布団からちょっとだけ顔をのぞかせた。
「……卵入り、ネギ増し増し、で、ございやがりますか?」
「おう、それそれ。ネギ増し増し。なんかさ、最近お前の作るチャーハンがうまくてよ」
「……やいバカマモ!」
 ジーナはまた掛布団を頭まですっぽりかぶる。
「……手、繋いでいーです、か?」
 掛布団からジーナの小さな手だけが出てきた。
「お、おうよ」
 それを衛は握ったのだった。