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学食作ろっ

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 ■ 新メニューの打ち合わせ ■
 
 
 
 皆の提案が盛り込まれた形で学食の建設工事が始まった。
 もうすぐ取り壊される学食にも、その工事の音が聞こえてくる。
 今日は日曜日。学食にランチを求めて駆け込んでくる生徒たちの姿は無い。
 けれど緑ヶ丘キャンパスの学生食堂には多くの生徒たちが集まっていた。
 
「なんか人が集まってるけど何かやってるのかな?」
「ちょっとセレン! ……その何にでも首を突っ込む癖、なんとかならないものかしらね」
 蒼空学園に用事があってやってきたのに、人の多い方にふらりと引き寄せられていってしまうセレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)に、セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は苦笑しながらもついていった。
 セレンフィリティが食堂を覗いてみると、入り口近くの席に座っていた秋月 葵(あきづき・あおい)が振り返った。
「今日は学食はお休みなんだよ。ごめんね」
「ううん、食べに来た訳じゃなくて、何の集まりなのかなーって」
「ああ、それはね……」
 葵はセレンフィリティにこの食堂がもうすぐ新しい場所へと移転すること、その為に今日は新しい学食で出すメニューの相談と試作をしに、皆が集まっていることを教えてくれた。
「良かったら参加してみない? たくさんの人の意見をあわせれば、より良い学食メニューが出来ると思うんだよ♪」
「するする。セレアナもいいよね?」
「いいけど……料理の試作はやめておいた方が良いと思うわ」
 セレンフィリティにかかれば、レトルト食品ですら人外魔境の食べ物に変えてしまいかねないからと、セレアナは釘を刺しておいた。
 食堂の中央に寄せられたテーブルでは、もう既に皆が話し合いを始めている。といっても堅苦しいものではなく、学食のことや学生生活についてなど、思い思いにお喋りしてゆく中で案を練っていた。
 
「ほら、学食にファストフード店が入ってるところって、あったりするじゃない? だからファストフードで出てくるようなセットメニューってあっても良いと思うの」
 簡単に提供できて気軽に食べられるメニューとしてローザマリア・クライツァール(ろーざまりあ・くらいつぁーる)が提案するのは、勿論。
「アメリカ人の私が提案するのは当然――ハンバーガーよ!」
 それも、ファストフードチェーンが出しているような、薄っぺらいミートが挟んであるのではない。パンからはみ出さんばかりのミート、たっぷりのレタス、厚切りトマト、オニオンもみじん切りではなく厚切りスライス。付け合わせはフレンチフライかオニオンリング。
 ジャンクフードのイメージが強いハンバーガーだけれど、パンと肉、野菜をバランス良く食べられる料理だし、生徒にもきっと人気だろう。
「もちろんドリンクもつけるんだけど、もう1つ絶対に外せない故郷の味もセットにしたいの。それは……アップルパイよ! というか、むしろ大事なのはアップルパイの方なの」
 学食ではデザートやスイーツが少なくなりがちだからこそ、アップルパイの甘味が大切なのだとローザマリアは説く。
「スイーツのように冷やしたパイじゃなくて、揚げたてアツアツのアップルパイ。シナモンを利かせたのを頬張ると最高よ」
 そう力説するローザマリアに、いややはりここは、とグロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)は英国料理を推す。
「くっくっく。学食の新メニューとはまさに千載一遇のチャンス。この機に英国料理をメニューに加え、その真価を世に知らしめるのだ!」
「……ライザ様、英国料理の名は良くも悪くも広まっていますよ……自国民でさえも、その壊滅的な味を話の種にするほどに。食堂を阿鼻叫喚のるつぼに突き落とすつもりですか……?」
 ブラダマンテ・アモーネ・クレルモン(ぶらだまんて・あもーねくれるもん)の言葉に、グロリアーナは苦笑した。
「いや、本当に美味いのだぞ?」
 ただし、材料を厳選し腕利きのシェフが調理すれば。その前提条件を敢えてグロリアーナは口には出さずにおく。
「それ故妾はフィッシュアンドチップスとプディング、紅茶の英国セットメニューを提案するのだ」
 冷食をただ油に放り込んで出されるフィッシュアンドチップスはげんなりするような味がするが、新鮮な生魚を揚げて作れば正しく美味な料理となる。
 英国の労働者階級に広がったことからも分かるように、安価でお腹の膨れる料理だから、食べ盛りの生徒の腹を満たすには良いメニューとなるだろう。そこにプディングと紅茶をつけてセットにすれば、女子生徒にも好まれるに違いない。
 この機会に、英国料理もきちんと作れば美味しいのだということを皆に知らしめたいと、グロリアーナは強く英国セットを推す。
「英国式ファストフードとは考えましたね。では、わたくしの方はデザートとして、フランスの伝統的な菓子シャルロットを提案致しますわ」
 種類も様々なシャルロットだから、プラダマンテは幾つかを試作してお披露目会に出し、その中で好評だったものを新メニューとして推薦してみることにした。
「そうですね……まずは、シャルロット・リュス、シャルロット・バスク、シャルロット・アフリケーヌ……でしょうか」
「へっ?」
「何風のシャルロットなのかを後ろにつけているだけなのですわ。リュスならロシア風、バスクならバスク風。アフリケーヌというのは、崩したケーキ、卵黄、メレンゲ、溶かしたチョコレートをシャルロット型に入れて焼いたアフリカ風、というように」
 聞き慣れない名前の羅列にオタケがすっとんきょうな声を挙げるのに、プラダマンテは微笑んだ。
「名前は耳慣れないかも知れませんが、下ごしらえの簡単な作りやすいお菓子ですのよ。甘いものは学業で疲れた生徒たちや、日々の激務で疲弊した教師達にもまたとない福音足りうる筈です。味付けのアレンジは必要かと存じますが」
 プラダマンテの説明に、オタケはまだちょっと不安そうな顔をしている。
「これまで洒落た菓子なんて作ったことなんてないから、大層なもんは作れないよ。デザートを作るんなら、学食の料理の傍らでちょっと作れるくらいのもんじゃないと」
「取り敢えず作るところを見ていただければ、どのようなものか分かると思いますわ」
 出来る出来ないの判断はそれから、とプラダマンテが言うと、それもそうだねとオタケも納得した。
 
 ロザリンドたちがアメリカ、イギリス、フランスというお国柄も様々な料理案を提示するのを聞いていた葵は、だったらこんなのはどうかな、と提案する。
「学食のメニューっていうか、折角だからランチだけでもビュッフェ形式なんてどうかな? ご飯、メイン、サラダに汁物、好きなものをその日の気分で食べれるのって良いと思うんだよ♪」
「ビュッフェ形式って何だい?」
 首を傾げるオタケに葵は説明する。
「料理を大皿に盛っておいて、みんな食べたいだけお皿に取って食べるんだよ。これだったら季節メニューも入れやすいかな、多分ね〜。それと、みんながそれぞれ取って食べるからお昼どきで注文が多いときの混雑の緩和にもなると思うよ」
「へぇ、それは楽しそうだね。予算とか栄養バランスとかの面で考えなくちゃいけないことがありそうだけど、土曜日とかに取り入れたら週末気分も盛り上がるかねぇ」
「全部をビュッフェにするのが難しいようでしたら、サラダやフルーツをビュッフェ式……サラダバーにするというのも考えられますよ。女の子はサラダバー大好きですし」
 イレーヌ・クルセイド(いれーぬ・くるせいど)も葵の提案を後押しする。
「それはいいね。サラダバーをやるには料理を置くテーブルを用意すれば良いのかい?」
「ビュッフェでしたらテーブルに料理を並べれば良いと思います。温かいものを温かく提供できる器具もありますし。サラダバーなら野菜や果物を冷やしておける専用のサラダバーワゴンを導入することも考えられます。その辺りは厨房機器を入れてもらう業者さんに尋ねてみると良いかと思いますよ」
「ありがとう。そうしてみるよ」
 オタケはイレーヌに礼を言うと、手元のメモにビュッフェとサラダバーのことを書き足した。
 
「アメリカ風、英国風、フランス風……ところで日本風はどんな料理になるんだい?」
 地球料理に興味を示すオタケに、日堂 真宵(にちどう・まよい)ばふっふっふと笑った。
(見ていらっしゃい。今日は蒼学の食堂を恐怖に陥れてあげるわ。そして跡形もなく消え去ると良いわ!)
 蒼空学園で何か有る際には適度に悪さをするのがイルミンスール魔法学校の生徒たる自分の使命と、真宵は意気込んでここにやってきたのだ。
「日本ではね、腐った豆や虫の佃煮、ぐにゃぐにゃした生き物が大人気なのよ。ええっと……ああちょうどここに写真があるわ。はい、これを見て」
「うっ……」
 真宵がしめしたナマコをはじめとする軟体海産物の写真に、オタケはたじろいだ。四方を海に囲まれた島国日本とは違い、パラミタ内海しか海を知らないシャンバラ人のオタケは、海産物に対しての知識があまり無い。
「日本から来ている生徒を喜ばせるには、腐ったものや虫を出すことね」
 目を白黒させるオタケに、琴子は違いますわよと訂正する。
「納豆は発酵食品ですけれど、腐っているのではありませんわ。虫の佃煮を食べる地方は確かにありますけれど、ほんの少数ですし、日本でも食べるのをためらう人の方が多いと思います」
「別にわたくし、間違ったことは言ってないわよ。ふふっ」
「誤解を招く言い方はやめて下さいまし」
 琴子は真宵をたしなめると、話題を変えるように他に何かありませんかと生徒たちに尋ねた。
「料理に季節感を出したいっていうなら、やっぱり材料に旬の食材を使うのが手っ取り早いと思うんだ」
 匿名 某(とくな・なにがし)は小さい頃、祖母から聞いた言葉をオタケに話して聞かせる。
「ばあちゃんは、『すべての食べ物には旬があり、旬のモノを食べるのが人間の身体にとって一番いい。美味いからといって季節はずれのモノは食べちゃいけない。口にすれば今まで昔からずっと大事にされてきた、季節のありがたみを忘れてしまうから』と言っていた。……ところで、こういう考えは俺が地球人、もとい、日本人だからの考えで、シャンバラではやっぱり違うモンなのか?」
 興味を持って某が尋ねると、オタケはそうさねぇ、と答える。
「旬も何も、地球と交流が始まるまでは、あたしのような庶民にゃ、旬以外の物なんて手に入らなかったからねぇ。何が良い悪いということもなく、その季節によく採れるものを食べるか、それを貯蔵しておいたものを食べるかだったから。貯蔵しておいた季節はずれのものだからって、食べていけないとは聞いたことないねぇ」
 そんなことを言っていたら冬場に食べる物がなくなってしまうから、とオタケは笑った。
「今はこの辺りじゃ、いろんなものが前より随分簡単に手に入るようになったよ。これも地球との交流のお陰だね」
 地球との接触によって、特に学校が建てられた周辺はめざましい発展を遂げた。蒼空学園周辺の物流も盛んになり、今では旬の物以外でも口にすることが出来るようになっている。
「だったらそのうち、日本のように旬が大切にされるようになってくるかも知れないな」
 他の季節のものが食べられるからこそ、旬とそうでないものの区別が出てくる。そんな時だからこそ、この学食が旬の素材を出すようにするのは、大切なことだろう。
「そうだねぇ。心がけて使うことにするよ」
 オタケは頷きながら、それもメモに書き添えた。
 
「学食のメニューですかぁ……定番メニューはありますよねぇ。かといって、特定の個人が好むだけでは学食としては成立しないと思います。多くの人が食べるメニュー、食べなれているもの……でも定番だと既にある、う〜ん」
 神代 明日香(かみしろ・あすか)は悩みに悩んだ。その隣では、ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)が同じくうんうん唸りながら、紙に何かを書き出している。『運命の書』ノルンが明日香の幼少期に酷似している為、そうしていると姉妹が並んで考えているように見えて微笑ましい。
「そうだ、お汁粉なんてどうでしょう。美味しいですよ〜」
「お汁粉とはどういう料理だい?」
「それはですねぇ……」
 明日香がした説明を聞いて、オタケは首を傾げた。
「随分甘くなりそうだけど、それがおかずになるのかい?」
「おかず……は難しいかも知れないですねぇ。食後や放課後に食べる甘味ですよ〜」
「ああ、デザートのようなもんだね」
 オタケは理解したようだが、ちょっと顔を曇らせる。
「あたしゃそちらの方には詳しくなくてね、今もたまにランチに果物をつけたりはしてるけど、それじゃあ足りないのかねぇ?」
「果物もいいけど、でもやっぱり甘いものは絶対絶対に欲しいと思うのっ!」
 ここぞとばかりに、明夏 灯世子(めいか・ひよこ)が口を挟む。
「そんなに凝った物じゃなくても、ちょっとした甘味がついてたらランチの楽しみも倍増間違いなし。少なくともあたしは、ランチに今日はデザートがついてるって知ったら、午前中の授業そっちのけで楽しみにしちゃうよっ」
「……それはあまり宜しくないのではありませんの?」
 琴子が思わず苦笑する。
「そ、それはともかく、あたしはデザートがあった方が嬉しいな。プリンなんて作ってくれたらオタケさんとダンスしたい気分になるし、オタケさんが作るの大変なら、クッキーとかアイスクリームを1口つけてくれるだけでもいいんだけどな〜」
 灯世子の言葉に、それまでテーブルにかがみ込んで真剣に紙に書き付けていたノルンがぱっと顔を上げた。
「そうです、アイスです」
 これを、とノルンが書いていた紙を見せる。
 明日香にはそれが何を書いたものなのかはすぐに分かったが、それでも聞かずにはいられない。
「ノルンちゃん、これなぁに〜?」
「アイスです」
 ノルンはそう繰り返した。
 ノルンが書いていた紙には、バニラ、ストロベリー、チョコレート、オレンジシャーベット、抹茶、チョコチップ、ラムレーズン、モカコーヒー、チョコミント、ミルクシャーベット、クッキー&クリーム、キャラメル、ナッツ、等々のアイスクリームの種類がびっしりと記入されている。
「秋の季節ならパンプキンとかマロンです。柿のシャーベットもあまくておいしいです。バニラに日本酒かけるのもおいしいですけど、高等部ではアルコールは許されないので我慢します」
「ノルンちゃん……いくらなんでも多すぎると思いますぅ」
 女学生用のアイス専門店でもあるまいし、と明日香が言うと、全部じゃなくていいんです、とノルンはにこにこと答える。
「季節変わりにすると、その季節が来るのが楽しみになるんです。……どうですか?」
 ノルンはきらきら期待のまなざしでオタケを見上げる。
「どうって……」
 オタケはすっかり大量のアイスクリームリストの驚きに呑まれている。
 ノルンが一生懸命なのとオタケが固まっているのを見かねて、明日香が口添えする。
「えっと、女学生には喜ばれると思うので、生徒の半分くらいには需要が見込めますよ。もちろんこんなに沢山でなくて、順番に種類を変えながら何種類か置いておけば、コーンの上に載せるだけで出せますし〜。あ、ビュッフェだったらアイスクリームを入れて自由に取ってもらえる器具を置くだけで出来ますよ〜」
「実現されたらイルミンスールから毎日食べに来ます」
 そんなことをされては大変だと思ったが、ノルンがあまりににこにこしているので明日香は黙っておいた。実現されたらその時に、ノルンを何とか言い含める方策を練れば良いだろう。
「甘いものって本当に人気なんだねぇ」
 目をぱちぱちさせてオタケが言うと、久世 沙幸(くぜ・さゆき)もそうだねと同意する。
「女の子ならやっぱりデザートが出てきたら嬉しいかなって。たとえばランチセットに季節のスイーツがついてたら、絶対に女の子に人気出ると思うんだよね。それに、スイーツが別に頼めたら放課後に友だちとお茶だってできるし!」
「そういえば学食への匿名の意見書にも、デザートの充実やハーブティを出して欲しいとかあったねぇ。デートスポットにも使えるようにって。そんなに食べたい子が多いんだったら、やってみようかねぇ。あたしに出来るといいんだけど」
 スイーツ好きの多さを知り、オタケも作ってみる方向へと気持ちが動いたようだ。
「難しく考えなくても、お子さんに作ってあげるおやつみたいなものだと思っていただけばよろしいんですのよ」
「うちのおやつなんて、木の実や乾した果物を粉で焼いたケーキとも言えないようなもんとか、蒸し物ぐらいだからねぇ」
「そのお菓子、食べてみたいですわ。いつか学食で出して下さいましね」
 まだ不安そうなオタケに、琴子は微笑んでみせた。
 
「提案としてはこれくらいかねぇ?」
「あ、はーい! 飛び入りでも意見を出していいのよね?」
 それまで話を聞いていたセレンフィリティが手を挙げる。
「もちろんさ。何でも聞かせておくれ」
「メニューのネタとして、ほら、よくデパートで駅弁大会のようなものが開催されてるよね? それに煮たような企画として、各校の名物メニューを月に1回程度、月替わりで出して、それを機会に全校の学食間で交流したらどうかな?」
 セレンフィリティが何を言い出すのかとはらはらしていたセレアナだったが、パートナーの口から出たアイディアは意外にまともなものだった。まあ、メタリックブルーのトライアングルビキニの上にロングコートを羽織った恰好での発言に、説得力があるのかどうかは別として……と、セレアナはとりあえずセレンフィリティの発言につっこみを入れる。
「全校のを一同に集めるのではないから、駅弁というより物産展かしらね」
「そう、それ。それぞれの学食では、学校ごとの特色あるメニューや、その学校のある地元のご当地メニューを出してるだろうから、そういったものの中から『うちの学食の自慢メニュー』みたいなものを、紹介がてら出したらどうかな。たとえば……1月は百合園、2月は教導団……といった感じで。教導団の戦闘糧食とか、他の学校では珍しいんじゃないかな?」
 普段と違うものが食べられるというだけでなく、それをきっかけに各校の間で交流を促すことも出来る、とセレンフィリティが説くと、オタケは感心したようにしきりと頷いた。
「あたしゃ、ここの学食のことを考えるので精一杯だったけど、確かに他にも地球からの学校はあるものねぇ。そんなに学校ごとの違いがあるなら、是非にも校長に頼んでみようかね」
「学校間には色々あるようですけれど、料理での交流ならば受け入れられやすいかも知れませんわね」
 良い案だと思いますわと、琴子も微笑んだ。
 
 
 この集まりの中で出た運営案は学園との間で交渉してみることになり、料理案は、実際にオタケに作り方と味を見て貰うこととなった。
「この食堂が取り壊されるのは寂しいけど、こうして新しい食堂のことを考えるのは、こんなに胸がわくわくすることだったんだね」
 オタケは皆の意見を書き留めたメモを、大切そうにエプロンのポケットにしまった。