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リアクション
丸目
十兵衛達は、隠し通路を抜けて朝比奈家の屋敷に一番近い出口から外に出ると、早速屋敷に向かって駆けていった。
屋敷の周りには傀儡となった剣豪達が集まり、一個団体になって契約者達を待ちかねているようだった。
「これは、また随分とたいそうなお出迎えだな……」
リブロ・グランチェスター(りぶろ・ぐらんちぇすたー)はつぶやいた。
「剣豪とは、一騎当千出来る兵と聞くが、不死者となって傀儡に成り果てた者達など、集団戦と戦略を駆使すれば、然程恐るるに足らずと言う事を奴らに思い知らせてやろう」
それから、リブロは先頭をきって走り出した。リブロをめがけ雑魚剣豪達が雪崩をうって駆けて来る。
「先制掃射だ!」
リブロは機関銃を手にスプレーショットとシャープシューターを展開した。弾丸に貫かれて剣豪達は次々と倒れて行く。
「ふん。この程度の戦線を無傷で突破出来なければ、剣豪と言ってもタカが知れている」
リブロは笑うと、弾幕を張りながら仲間達に向かって叫んだ。
「さあ、皆、今のうちに行け!」
「かたじけない」
十兵衛は礼を言ってリブロの脇を通り抜けていった。その後を契約者達も追って行く。行く先は朝比奈屋敷だ。そして、リブロはしんがりを行く。しんがりを走りながら、リブロは彼らに襲いかかろうとする雑魚剣豪達を撃ち殺して行った。やがて、戦線が前に進んだと判断すると、バーストダッシュで左翼に移動し、後続の雑魚剣豪を側面からスプレーショットとシャープシューターで不意討ちを狙って先制掃射していく。
「この先は行かせん! 貴様らは、全てここでしとめる!」
リブロの援護を受けてようやく屋敷にたどり着いた契約者達は、壁を乗り越えて敷地内に入って行った。目の前に広がったのは、武道家の修練所なのだろうか……広い砂地である。
その、一角を神条 和麻(しんじょう・かずま)が用心深く進んで行く。
淀んだ気配が漂い辺りを包み込んでいる。そして、静かだ……あまりにも静かすぎる。和麻は警戒を強めた。
その静寂を破るかのように、突然、何者かの気配を和麻は感じた。そして、淀んだ空気のその向こうに、和麻は一人の剣豪の姿をみとめた。
「なんだ? お前は」
尋ねた和麻に向かい、剣豪は静かに答えた。
「丸目クラウド」
その目が赤く光っている。
「敵か……」
和麻は言うと三尖両刃刀をゆっくりと構えた。丸目も刀を構えて来る。そして、見合う事数秒。突然、叫び声とともに丸目が斬り掛かって来た。
対する和麻は、焦らず精神集中して剣撃を刀で正確に受け流していく。しばらくの剣戟の後、丸目は蹴技を仕掛けて来た。和麻はそれを刀の柄で相殺する。丸目は後ろに飛びすさると、再び剣を構えて攻撃。受け止めた和麻の脇に回り込み、その指で和麻の両目をついて来た。
「!」
和麻の視界が暗くなる。しかし、和麻はあくまでも冷静に【ディテクトエビル】で敵の位置を感知し、【歴戦の防御術】でなんとか攻撃をかわしていく。
丸目は、飛掛り飛廻ってどんどん和麻を追い込んで行った。
「ふん。目つぶしとはな……」
二人の戦いを見ながらレノア・レヴィスペンサー(れのあ・れう゛ぃすぺんさー)はつぶやいた。
「戦で死しても不死者として敵に使われ、死しても尚生き恥を晒しているのは、不本意だろうな、おまえ達……なら、せめてこの私の手で、再び戦場で滅してやろう。武士道に情けがある様に騎士道にも、そして軍人にも少なからず情けはある」
そして、レノアは丸目の動きをじっと見つめ続ける。じっくり観察してみれば、丸目は獲物を中心にして九つの円を描くように移動しているようだ。
「そうか……」
レノアはうなずくと、自らもバスタードソードを構えた。
「見切ったぞ」
そして、丸目が次に着地する瞬間を狙いランスバレストで攻撃。刃が丸目の足をかすめる。驚き、振り返る丸目に向かって
「遅いっ!!」
と叫ぶと、レノアは敵に隙を与えず、轟雷閃と爆炎波を展開。武器から轟雷と爆炎が放たれ丸目に襲いかかる。丸目の体を炎が包み込んだ。
「やったか?」
固唾を飲み見守るレノア。しかし、次の瞬間には失望しなくてはいけなかった。
あれだけの炎に包まれながらも丸目は傷一つ負うことなく立っている。
どうやら、効かなかったようだ。
そして、恐ろしい速さでレノアに斬り掛かって行く。
その時、丸目の周りで『見えない何か』が爆発した。
不意をつかれて驚く丸目。とっさに避けながら、その『何か』が飛んで来た方向を見る。
そこには高崎 悠司(たかさき・ゆうじ)が立っていた。
悠司は言った。
「剣豪の村が化け物に滅ぼされそうってねぇ……。そんなバケモンとやり合おうなんて奴らは、よっぽど物好きなんだろーなと思ったら、やっぱ見覚えのある顔が結構いやがる。まー、味方にすりゃ頼りになる面子ってことかね。もっとも、今は危機一髪みたいだし、しかたねえから、助けてやるか」
それから、悠司は栄光の刀を構えると、丸目に向かって斬り掛かって行った。
丸目はにやりと笑うと、猛然と悠司に向かって飛びかかって来る。
そして、ものすごい速さで飛掛り飛廻りながら蹴技・眼潰を何度も繰り出して来た。悠司は壁を背にして立ち、相手が背後に来れないようにして防御に徹した。そうする事で、相手が仕掛けてくる方向を限定させ、さらにタイミングを把握しようとしたのだ。
やがて、相手の動きを見切ると、悠司は突然何かに気をとられたような顔をした。あらぬ方を見て、だらりと刃をおろす。見るからに隙だらけだ。実はメンタルアサルトでわざと隙を作ったのだが、丸目はまんまと悠司の策にのせられ、とどめを刺そうと襲いかかって来た。そこに、カウンターで攻撃。
激しい剣戟音とともに刃と刃がぶつかりあう。
しかし、互いに、互いのとどめをさす事はできなかったようだ。
とっさに離れようとする丸目の体を、悠司はフラワシ『ホワイトライアー』で妨害した。そして、刀で攻撃するふりをして非物質化していた機晶爆弾で奇襲をかけた。
見えない爆弾が丸目の周りで次々に爆発する。その衝撃に丸目は体をよじらせてもがく。悠司は言った。
「見えねーもんに掴まれてるってのは不気味だろ? ま、そろそろ寝ときな!」
そして、とどめを刺そうとする。
「うぬう……」
丸目は真っ赤な顔でうめくと、『ホワイトライアー』に捕まれたまま猛然と走り出した。その、あまりの速さに『ホワイトライアー』は、ついにふり落とされてしまう。丸目は、超高速で動きながら、自らの分身を次々と作り出して行った。
「1、2、3、4……ったく、恐ろしい化け物だねぇ」
分身した丸目をみつめて八神 誠一(やがみ・せいいち)は肩をすくめた。
「しかし、あの丸目クラウド、とか言う剣士、剣術と体術を併用して使ってる上に、撹乱まで使ってくるとなっちゃ、正統派の剣士戦士じゃ分が悪い、かな。非正規な人を相手するのは、まともな手段を用いないの人間がお似合いなんだろうねぇ。一つ、死合ってみますかねぇ」
と、誠一は刀を構え分身した丸目達の中に飛び込んでいった。そして、
「この分身は、実は速さを利用したただの錯覚なんだよねえ」
とつぶやき、目を瞑って殺気看破で本物の丸目の気配を察知!
「そこだ!」
と刃を繰り出す。
その途端、丸目の動きが止まり分身が解ける。
丸目は誠一の刃を受け止め、蹴技を入れて来た。誠一はそれをかわすと、二の太刀をふるった。丸目はそれも受け止める。激しいつばぜり合いの中、丸目は指を立てて誠一の目を突こうとして来た。誠一はそれを肘で防御する。そうしながら、丸目の動きと太刀筋をじっくりと観察していった。そして、レノアと同じ事に気付く。丸目は自分を中心にして、その周りを円を描くようにして動いている。その数は9個。そして、9つめの円を描ききった時に、必ず大きく剣を振り下ろして来る。
誠一は、徐々に劣勢に追い込まれていくフリをした。わざと蹴技に当たってみせ、剣を受けそこなって転んでみせたりする。丸目は調子に乗って、攻撃を仕掛けて来る。そして、9つ目の円を描いた瞬間、思い切り刀を振りかぶり、誠一に止めを刺そうと必殺の一撃を放ってきた。その瞬間、誠一は煙幕ファンデーションを投げた。丸目の視界が奪われる。さらに、誠一は、煙幕の中の影を利用した実践的錯覚で、丸目の間合いを誤らせた。そして、歴戦の立ち回りでその間合いの内側に潜り込み、ヒロイックアサルト『一刀流奥義夢想剣』でカウンターを仕掛けた。
「うぐ!」
丸目の額から血しぶきが上がる。
「生前なら剣士としての本能で下がってただろうけど、死を恐れぬ化物になってた事が災いしたねぇ」
言い放つ誠一に向かい、丸目はなおも襲いかかろうとした。その丸目の足を神条和麻が薙ぎ払う。丸目の胴体から足が離れた。和麻はさらに【光術】を展開。丸目の体が光に包まれ、ついに丸目は絶命した。
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