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首狩りの魔物

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首狩りの魔物

リアクション


 示 現 

 ……これはまた、大変なことに首を突っ込んでしまったな……。
 シオン・グラード(しおん・ぐらーど)は、ソウル・オブ・ジャッジで敵をなぎ倒しながら軽い後悔に苛まれる。
 面識が一応ある十兵衛の名で依頼が出されていたからついてきたのはいいものの、予想を超えた激戦だ。一人一人の敵も強い。武道のメッカの住人というのもダテではないようだ。
「ま、やる以上本気でやるさ。俺だって成長してるんだ、腕の立つところをバカ師匠に見せつけないとな」
 シオンは、そう言って気をとりなおした。
 ちなみに、バカ師匠とはナン・アルグラード(なん・あるぐらーど)の事だ。
 彼らは、ともに元村の勇士共と戦っている。
 基本的な戦術はナンと連携を取りながら隙をできるだけ少なくして戦うことだ。ナンが殺気看破で敵の位置を把握し、最低限の回避を歴戦の防御術とブレイドガードを行いながら拳からの則天去私と大剣での乱撃ソニックブレードを組み合わせて超攻撃的に動く。その間、シオンは俺は女王の楯と、歴戦の防御術で防御を固めながらナンの隙を補うように攻める。武器の聖化で光輝を強く帯びたソウル・オブ・ジャッジで次々と雑魚敵を倒して行く。
 一番の大技は精神感応でナンと連携を取りながら、敵の守りを突き崩して切り伏せることだ。防御を斬る崩して飛び込んで来る二人に、敵はロクに反撃もできないままに倒されて行く。
 しかし、敵は塀を乗り越え次々に襲いかかって来る。確か塀の外ではリブロが弾幕援護をしているはずなのに、銃弾をものともせずにやってくるのか?

「こんな人数相手にしてられるか!」

 ついに、シオンはキレた。そして、氷華翔翼を装備するとまとめて吹雪を浴びせてやった。

「吹雪を喰らってまとめて吹っ飛べ!」 

 同じくナンが、ドン・ドラグーンを呼んで上空から火炎をぶちまいて退ける。


「群がる格下に用はない!やれ、ドン!」

 雑魚敵共が吹雪と炎で次々に倒れて行く。


 その脇では柳生十兵衛も雑魚剣士を相手に戦っていた。彼は無二剣と神妙剣で次々と敵を倒して行った。

 そこに、雑魚共とは明らかに雰囲気の違う剣士が乗り込んで来た。大柄で激しい闘気を纏っている。目を赤く光らせ、荒い呼吸をしながら十兵衛に気付くと、奇声を発して必殺の剣を繰り出した。

「イェアァァァァーーーーー」

 一撃必殺の剣だ! しかし、常人なら真っ二つであろうその攻撃を、十兵衛は辛うじて太刀で受け止めた。そして……

「……!」

 十兵衛は我が目を疑うがごとく我が太刀を見る。敵の太刀を受けながら、彼の愛刀『三池典太』には亀裂が入っていた。亀裂は見る見るうちに大きくなり、刀は音を立てて二つに折れる。折れた刀を持ったまま、十兵衛はとっさに後ろに逃げた。しかし、そこに敵の二太刀目が……

「イェアァァァァーーーーー」

「危ない!」

 十兵衛の危機に気付くと、ナンはとっさに従者の山田(ニャンルー)を掴みあげて投げた。

「行け! 男を見せろ、山田!」

「にやあああああああ」

 山田は避けびながら敵の眼前に飛んで行った。予想外の飛来物に敵の剣が鈍る。

「にやあああああ!」

 山田が爪で敵を引っ掻こうとする。その姿を見てナンは呟く。

「……見事戦い抜いて戻ってこい、山田」

 が、しかし……

「ふん!」

 敵は、山田の頭をつかむと、塀の向こうに思い切り投げ飛ばした。

「にやあああああーーーー!」

 山田の悲しげな叫び声が響く……。


 そのほぼ、同時刻。
 富永 佐那(とみなが・さな)は、そこから、さほど離れていない場所で戦っていた。
 隠形の術や隠れ身で気配を殺しつつ、雑魚敵を倒して行く。
 その側ではパートナーの 足利 義輝(あしかが・よしてる)が戦っていた。
 彼は、言霊と共に魔技(ヒロイックアサルト)を発動させている。

『帰(き)せ??千烈太刀襖』

 その言葉とともに、無数の見えない太刀が敵に襲いかかった。

「童子切り安綱、鬼丸国綱、鬼切国綱、ニッカリ青江、二つ銘則宗、不動国行、薬研藤四郎、骨喰藤四郎、大典多光世、小龍景光、南泉一文字、三日月宗近、鷹巣宗近、籠手切正宗、村雨郷……」

 雑魚敵が次々に倒れてい行く。義輝は、その姿を淡々と見つめていた。

 その時、

「にやあああああーーーー!」

 今まさに、投げ飛ばされんとしている山田の悲しげな叫び声が響く……。

「何事だ?」

 義輝はそちらを見た。すると、彼の視界に異様な殺気を纏った剣士と、投げ飛ばされている山田と、そして、太刀を折られた十兵衛の姿が映った。

「なんと……! 石舟斎の孫殿の危機」
 
 義輝は驚く。実は彼は十兵衛の祖父である石舟斎と共に上泉信綱の下で鍛錬を積んだ仲なのだ。

「その、石舟斎の孫の危機とあらば参じぬわけにはいくまい」

 義輝は綾刀を構え、剣士の前に立ちはだかった。そして、言った。

「生前は名のある剣士だったのだろう。名を名乗れ。聞いてやろう」

 すると、剣士は答えた。

「東郷示現」

 名乗るや否や、示現は必殺の剣を繰り出した。

「イェアァァァァーーーーー」

 義輝は後の先で防御を固めると、剣が繰り出される寸前にサイコキネシスで示現の腕を僅かにブレさせた。

 ガッ!

 示現の剣が庭の石を打ち砕いた。しかし、示現はそれを目にもたまらぬ速さで振り上げると反撃の隙も与えずに義輝に斬り掛かって来る。
 
「イェアァァァァーーーーー」

 恐ろしい速さだ。義輝はとっさに刀で敵の太刀を受け止めた。

 ガン!

 音をたてて太刀が砕かれる。

「……」

 しかし、義輝は動じなかった。そして、もう一振りの刀に持ち替え戦いを続けようとする。


 富永佐那は屋敷の中に身を隠しながらこの戦いを見つめていた。

「公方様(義輝)の一騎打ちの相手は手強そうだね……身を隠しながら少しでも太刀筋が見えれば……」

 と示現の動きを観察する。刀を繰り出す速度が速くても、それを動かす手の動きは目視出来る筈だ。

 ガン!

 東郷が義輝の足元の岩を撃ち、それを砕く。義輝は太刀を使わぬように敵の攻撃を避けていく。あまりの速さに攻撃する隙もない。少しでも気を抜けば真っ二つに切裂かれるだろう。緊迫した攻防がおわりなく続いてく。義輝に疲れが見えて来る。対して魔物の傀儡と成り下がった東郷は息一つ乱さない。この戦いは不利だった。
 やがて東郷の太刀が義輝の頭を真っ芯に捕らえた。そして、振り下ろそうとした。

「危ない!」

 佐那はサイコキネシスで示現の手を横にずらした。そして、ブラインドナイブスで死角からバイタルオーラを撃つ!

 バシュ!

 光輝属性を持ったエネルギー弾が東郷に向かって行く。東郷は身を翻してそれを避けると、エネルギー弾が撃たれた屋敷の中を睨み、恐ろしい勢いで乗り込んで来た。それを撃ったものを捕まえようと考えたらしい。

 しかし、そこにはルーシェリア・クレセント(るーしぇりあ・くれせんと)アルトリア・セイバー(あるとりあ・せいばー)が待ち構えていた。二人は、手にソードブレイカーを構えてている。
「この先は行かさないですぅ」
 ルーシェリアが叫ぶ。
「佐那殿はつかまえさせません」
 アルトリア・セイバーも叫んだ。
 東郷はにやっと笑って二人に向かい太刀を振り下ろした。
 ルーシェリアとアルトリアは、ほぼ同時に東郷の太刀を受けた。
 
 ガッ

 当たった切っ先から火花が散る。

 東郷は笑った。このわしの太刀を正面から受けるなど愚か者が……とでも言うように……。
 その思いに答えるようにアルトリアが言う。
「あなたの戦いは見ていました。その一太刀が相手の刀を折ってしまう事も……」
 その後の言葉をルーシェリアが続けた。
「でも、一本ならこちらの剣が壊されてしまうかもですが、二本ならそうそう壊されないはずですぅ」
 確かに、三本の刀が交差し、その力は拮抗している。

「さらに、幸いこちらの剣は剣を壊すことに長けたソードブレイカー!」

 アルトリアの言葉に東郷が動揺する。

「ふん!」

 東郷は叫ぶと、力任せに刃を抜いた。そして、我が太刀を見て青ざめた。

 「見て下さい。アルトリアちゃん」

 ルーシェリアは東郷の刀を指差し叫んだ。

 東郷の刃が明らかにひび割れているのが分かる。

「へし折るまではいきませんでしたが、ダメージを与える事には成功したようですぅ」
「ええ」
 アルトリアは満足げにうなずいた。

 一方、東郷は、ひび割れた刃を見てぼう然としていた。人の太刀を打ち砕きこそすれ、自分の刃が壊されるとはまさか思わなかったのだろう。

 その敵の隙をつき、ルーシェリアは則天去私で攻撃を仕掛けた。しかし、東郷は寸とっさにそれをかわすと、隠し部屋の方向に向かって走って行った。