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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

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ブラッドレイ海賊団3~海賊船長と、その右腕~

リアクション

「我が英国に許可も無く海賊行為を行うは万死に値する蛮行。よって、此処に其方たちを討伐する!」
 グロリアーナ・ライザ・ブーリン・テューダー(ぐろりあーならいざ・ぶーりんてゅーだー)が小型飛空艇から旗艦に向けて降下しながら叫ぶ。
「おいこらモグリの海賊モドキども! ドレーク様が直々に参上してやったんだ! もっと派手に歓迎しろや!」
 慌てて甲板へと集結した海賊たちに、フランシス・ドレーク(ふらんしす・どれーく)も声を荒げた。
「援護はお任せください」
 も2人の後ろで、鬼払いの弓を構えながら、声を掛けた。
「雌雄を決する刻が来たようだ――海軍と海賊、海を統べる者は二つと要らぬ。其方の意地とやらを、見せてみよ」
 エセルバートに向けて、グロリアーナは両の手に構えたブリタニアとタイタニアで以って、急所を狙って強力な突き技を繰り出す。
「くっ」
 最初の一撃こそ不意をつかれたか、腕を掠めていく切っ先に眉をしかめたエセルバートであったが、単調に繰り出される突き技を見極めたのか、徐々に回避し、逆に彼女へと斬りかかってきた。
 けれどもグロリアーナは武器を交差させるように構えることで、彼の長剣を受け止める。
 その背を狙って、海賊の1人が短剣を振るう。だが、羽を模した柄が特徴の、白い剣がその一撃を止めた。剣を持つのはフランシスだ。
「陛下! 俺っちが陛下の背中は護りまっさぁ! だから陛下は遠慮なくこのモグリどもをブッ飛ばしてやって下せぇ!」
「ありがとう、フランシス」
 グロリアーナは頷き、再び剣を構える。
「わたくしも援護します」
 告げる菊も戦女神の威光を光の刃に変えて、海賊たちに向けて放った。
「うわあっ!?」
 襲い掛かる光の刃に避け切れなかった海賊たちが声を上げる。
 グロリアーナは再び急所を狙った突き技を繰り返し、彼が油断したところで、2本の剣に禍々しいオーラを纏わせると、エセルバートだけでなく、近くの海賊をも巻き込んで、攻撃を仕掛けた。
「うわっ!」
 巻き込まれた海賊が声を上げつつ、前のめりに倒れていく。
「くっ! お嬢っ!」
「ここは、通しません。エセルバート・ナイトレイ……」
 大きな痛みを追いつつも、エヴァンジェリンの方を気にするエセルバートの前に、ヒルデガルドが立ち塞がった。
「……リミッターを解除します」
 手加減はしない。
 その心積もりを口に乗せ、ヒルデガルドは構えた。
 エセルバートを含めた海賊たちに向けて、機晶石から放射されるエネルギーを蓄えてから、機関銃が弾をばら撒くように発射する。
 周りの海賊たちはその一撃に、倒れたり、膝をついたりした。
 それでもまだ立ち続けるエセルバートに、ヒルデガルドはキャノンの先を向ける。
「警告します、貴方では、私は倒せません!」



「どうにもキャプテン・エヴァンジェリンって、そんなに悪い人には見えないんだよね」
 ぽつりと呟きつつも彼女を捕らえるべく旗艦の甲板を駆けて行くのは小鳥遊 美羽(たかなし・みわ)だ。
 彼女のパートナー、ベアトリーチェ・アイブリンガー(べあとりーちぇ・あいぶりんがー)もそれに続く。
 機械でできたドラゴン――ジェットドラゴンに乗り、周りの海賊たちも蹴散らしてきた伏見 明子(ふしみ・めいこ)は、その後真っ直ぐにブラッドレイ船長を目指した。


 多くの相手を前に立ち回るエヴァンジェリンに、美羽は奈落の鉄鎖を投げつけた。
「っ!」
 鎖に巻かれるのを避けたがために鈍った動きを逃さず、近付いた美羽は、機晶技術によって作られたスタンガンを彼女の身体に当てる。
 強力な雷電がエヴァンジェリンの身へと駆け抜ける……はずだった。
「道具による電撃対策くらいはしてるのよ。魔法には敵わないけれどね?」
 服の下に電気を通し辛い素材で出来た防具を着込んでいるのだと告げ、くすと笑うエヴァンジェリンは体勢を立て直すと、美羽に向けて至近距離から銃を撃つ。
「うぅっ!」
 避けることが出来ずに、腕を貫いていく銃弾を受けながらも、美羽は再び鉄鎖を投げつけるけれど、エヴァンジェリンはそれを軽々と避けてみせた。
「パラ実の伏見明子よ。今回はヴァイシャリーに雇われてるんで、そのつもりでよろしくー」
 美羽との間に立つように出てきたのは明子だ。
 ひらひらと手を振って、気軽に挨拶してくる彼女の姿に、エヴァンジェリンは一瞬呆気にとられた。
「バカにされてるのかしら?」
「そんなつもりはないわ。海賊とパラ実の殴り合いだし、これぐらい肩の力抜いてやるのが普通でしょ」
 訊ねてくるエヴァンジェリンに、明子はそう返すと、早速と言わんばかりに彼女の行動を先読みすると、それより先に梟雄剣ヴァルザドーンを振り回す。
 距離を取ろうとしていたところに、横薙ぎに刃を喰らったエヴァンジェリンは小さく呻く。けれども倒れることなく踏み止まった彼女は、バックステップで明子との距離を取り、銃を構える。
「射撃対決?」
 訊ねるように言えば、明子は梟雄剣ヴァルザドーンの切っ先を真っ直ぐとエヴァンジェリンに向ける。
「剣で何が出来て?」
 梟雄剣ヴァルザドーンの機能を知らないエヴァンジェリンは、引鉄を引き、銃弾を放つ。
「ただの剣と思ったら大間違いよ」
 笑んだ明子の持つ梟雄剣ヴァルザドーンから放たれるのはレーザーだ。
「そんなっ!」
 予測の出来なかったことに、レーザーをもろに喰らったエヴァンジェリンは、体勢を崩す。
 けれども、まだ倒れる気はないと、ふらりと立ち上がった。
 そこへ魔鎧と化したラナを纏った美緒――“黒髭”がエヴァンジェリンの前へと辿り着く。
「本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫です。美緒がここに来るというのに、私だけ寝込んで居られませんから」
 出撃の直前、ラナは具合が悪そうな様子だった。けれど、意地で魔鎧と化し、美緒の身体に纏ったのだ。
 エヴァンジェリンの周りに集っていた取り巻きの海賊たちは、マリカの必殺の拳で薙ぎ払うことで、“黒髭”たちはここまで乗り込んできていた。
 手にした長剣で“黒髭”が斬りかかる。エヴァンジェリンはそれを銃身で受け止め弾き返し、距離の開いたところで銃弾を放つ。
 間に割り込んで、盾となったのは、パートナーのシャルロット・ルレーブ(しゃるろっと・るれーぶ)を内包した試作型改造機晶姫 ルレーブ(しさくがたかいぞうきしょうき・るれーぶ)だ。
「助かった」
 “黒髭”の言葉に、無言のままルレーブが頷く。
「盾にはなります。暴れろというのであれば、ご命令を」
 自分からは動かぬ旨を継げ、ルレーブはいつでも盾になれるよう傍に立つ。
「周りからちょっかい出してくるヤツは阻んでくれると嬉しい。ピンチだったら、手出してくれて構わないがな」
 それまでは一度くらい刃を交えてみてぇ、と答える“黒髭”に、ルレーブは頷き返すと、辺りへと注意を向ける。
 マリカが抑えてくれている分、エヴァンジェリンの近くまで他の海賊たちが踏み入ってくることはないようだが、隙あらば彼女を守るために傍に来ようと、攻めて来てはいる。
 ミニたいむちゃんタワーを構えたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)もまた、そんな海賊たちを足止めすべく、その切っ先からビームを発射していた。
 炎熱に雷電、氷結などの属性を持つビームを受けた海賊は熱いのに冷たかったり、痺れたりと惑う。
 けれどもそれを振り払った海賊は、ヴァーナーへと短剣を手に斬りかかった。だが、ヴァーナーが放つ気迫に、畏怖を覚え躊躇いを見せた瞬間、彼女が全身から声を発した。
 神ですらおののくようなその一声に、海賊は内側から痛みを覚え、膝を突く。
 ヴァーナーが頑張っている間にも、“黒髭”はエヴァンジェリンと刃と銃を交わしていた。