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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2

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太古の昔に埋没した魔列車…環菜&アゾート 2
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第18章 Christmas Eve After2

「弥十郎さん、苺のケーキと桃のジュースをちょうだい」
「落とさないように気をつけてね、北都くん」
 生クリームたっぷりのホールケーキを乗せた皿と、薄桃色のジュースを彼の方へ寄せる。
 真っ白なクリームが外に降り積もった雪のようにも見える。
「ありがとう!」
「ケーキは私がテーブルに持って行きます」
 大皿を両手で持ち、丸いテーブルへリオンが運ぶ。
「美味しそう…」
 ケーキナイフで切り分け、それぞれの皿へ移す。
「苺もたっぷり乗ってるね」
 甘ったるいよい香りが漂い、北都の鼻をくすぐる。
「外は寒かったけど、ここは暖かいね。美味しいケーキや飲み物もあるし、楽しい旅が出来そう」
 生クリームの甘さと苺の甘酸っぱさが、口いっぱいに広がり、超感覚で犬耳と尻尾をぴょこんと生やす。
 リオンを喜ばせようとフリフリと尻尾を揺らしてみせる。
「北都北都、犬耳触ってもいいですか?」
 茶色の瞳をキラキラと輝かせ、おねだりをする。
「ん、いいよ。駅舎の店舗や、魔列車の塗装が終わったお祝いにね」
 普段はあまり触れないように言ってるが、今日はおめでたい日だし、特別に触らせてあげる。
「わぁ〜…とってもふかふかですね」
 獣耳が大好きなリオンが、北都の耳をもふもふする。
「くすぐったい!」
「せっかく許可をもらったんですから、触っちゃいますよ。北都の獣耳とスポンジケーキ、どっちが柔らかいんでしょうね」
 ふかふかの可愛い犬耳を思う存分もふる。
「ん〜くすぐったーい」
 くすぐったさを我慢し、ふわふわな苺のケーキを食べる。



「人形の形をした明かりを配置したのね」
 コレットは、パートナーが普通車両に飾り付けた、電池式のライトのチェックをする。
 席が空いてるため、ちょこんとサンタやトナカイの人形が座っている。
「SR弁当の試食会を始めるわね」
 リーズや陽太たちに、弁当を配る。
「容器あ列車の形してるんだね。中も列車の形にしちゃってるよー!」
 蒼と真が作ったSR弁当にリーズが手をつける。
「オレのも残しておくんやぞ」
「やーだ、全部食べちゃうもん」
 陣に米一粒も与えず、全て完食する。
「えっとオレのは?」
「何よ、試食用だもん。仕方ないなー、プリンを分けてあげる。はい、あ〜……ん♪」
 陣の口元へスプーンを近づけるが、彼氏が口を開けたとたん、すぐさまスプーンをUターンさせ、自分の口の中にプリンを入れる。
「よし、ちょっとこっち来い。粛正してやる!」
「いたぁあい、いたーーーいっ」
 ぎゅぅうううっともみあげをひっぱられ、その手から逃れようともがく。
「今日という今日は逃がさんっ」
「イカ飯にパエリアが詰まっているのね?美味しいっ」
「セレン、ゼリー寄せはレンジで温めるみたいよ」
「じゃあ食堂車にいって、温めてもらおう」
 食べ物のことで騒動を起こす陣たちと違い、2人は食べ物を取り合うこともなく、食堂車に入る。
「フツー、パートナーってああゆうもんやないのか?オレらなんか違くないか?」
「人は人、自分は自分だよ陣くん」
「んなこと言ったって、環菜さんだって夫と仲良く食べてるやないか」
 陣も羨むその夫妻は…。
「列車で見る雪も楽しいわね」
「えぇ、キレイですよね、環菜」
 寄り添うように座り、窓から冬景色を楽しんでいる。
 列車はヴァイシャリーからピラニプラのほうに、まもなく到着しそうだ。
「陽太、そろそろ試作品のお弁当をいただかない?―…このトマトプリン、美味しいわね」
「俺のぶんもどうぞ」
「あらそう?じゃあ一口だけ食べてくれるかしら」
 環菜はそう言うと、プリンをスプーンですくい、陽太の口に入れる。
「相変わらずアツアツ夫婦ですわね〜」
「俺も味見したほうがいいってことなんですよ…。ですよね?環菜」
「夫である陽太も、弁当の味を把握しなくてはいけないのよ」
「(食べさせたかっただけじゃないんですの?)」
 それらしいこといって、しっかりイチャついてますわね、とエリシアがニンマリと笑みを浮かべる。
「わたくしも味見してみますわ。ふむ、しっとりとした甘さが絶妙ですわね」
「お子様ランチみたいなお弁当だね。緑色のピラフってピーマン?これ、スゴク美味しいよ!」
 ピーマン独特のイヤな苦味もなく、苦手な子供でも食べられそうな感じだ。
「お弁当は残さず食べるんですのよ、ノーン」
「うん、おねーちゃん」
「ほらなっ、仲がいいパートナーや夫婦っていったら、あんな感じちゃうん?」
 ノーンたちの態度を参考にするんや!とリーズに言う。
「ボクたちまだ夫婦じゃないしー」
「仮にもオレの彼女やろっ」
「陣くんのものはボクのもの。ボクのものはボクのものなんだよ?」
「そっか…それなら…、って仕方ないとか言うわけないやろっ」
「何ケンカしてるの?」
 席に戻ってきたセレアナが顔を顰める。
「いや、別にケンカちゃうし。だいたいリーズが…っ」
「一々彼女に対していうなんて…アレよね。フッ」
「セレアナ…、さりげに毒舌吐いたわね」
「私たち美味しく食べたいから、食堂車に行くわ。じゃあね」
 ツンとした態度で言い、恋人を連れて食堂車へ行ってしまった。
「なんやオレ、攻められまくりやないか!?」
「陣さん、彼女が求めるものは、あげるべきですよ。俺は…環菜のためなら、いつだってそう出来ますし」
「(さりげにノロケ!?はぁあもう、アッツー!アツスギなんやけどー!!)」
 自分のところと寒暖差の激しさに、陣が眉を吊り上げる。
「陣くん陣くん、ライブステージがあるんだから。お笑いライブでもやっちゃえば?ピン芸人としてさ」
「オレ芸人ちゃうし、そっちの道極めてないし、そもそも魔術士やしっ」
「お笑いの道を目指す魔術士の芸人、ナナカーセ・ジーン。特技は泣く子も笑わすこと。スキルはナーンチャッテサイクロン。必殺技を放つ時、両手に第3・第4の目が現れる。誰ともコンビを組まない、孤高のピン芸人」
「ナナカーセ・ジーンで誰や!?オレ、七枷 陣やけど!しかも手に目なんて出現しないっつーのっ。なんの厨二設定や!?」
「必殺技を放つ時、上上右を入力。笑い・涙・驚き・感動・失笑のリアクションを、対象に向かって放つ。発動する前は、新ネタ発表!と言う…」
「そんなスキルもってないっつーの!だいたい、なんでコマンド入力しなきゃいけないんやっ」
「俺的には、客寄せにはお笑いライブもいいと思いますよ?」
「やめてーっ、芸人道開かせるフラグ立てさせないで、陽太さん!」
「陽太もライブに立つなら、私…応援するわ」
「環菜さんまでとんでもないこと口走らないでっ」
 ライブステージをどうにか有効活用しようという魂胆かもしれないが。
 そのために陣がリーズに芸人名をつけられ、無理やり立たせられる危険性なフラグも立ってしまう。
「みんな楽しそうだね!クリスマスだし、何か歌ってあげるね」
 皆の会話を、ケーキを食べながら聞いていたノーンが、クリスマスソングを披露する。
「(ラブさんがアイドルなら、ノーンさんだってイケルんやないか?とにかく…オレは芸人なんて、断固拒否っ)」
 ノーンの癒し系の歌を聴きつつ、陣は芸人フラグがバッタリたおれますよに…と祈る。



 完成祝いのパーティーで賑わう中、列車はヴァイシャリー南湖の駅へ無事に戻り、ノーンたちは車内の掃除を始める。
「モップで、キレーイキレーイにしようねー」
 ハウスキーパーで床をピカピカにする。
「ゴミはちゃんと分別しておくんですのよ」
 エリシアは厨房で皿洗いをしながら、ノーンに言う。
「はーい、おねーちゃん」
「環菜も手伝ってくれるんですか?」
「2学校に出資してもらったり、皆に協力してもらってここまでこれたんだもの。私も手伝うわ」
 何もしないままでは、エリザベートに何を言われるわかったものじゃない。
 っと、いう理由もあるが、今日は2人きりになれていないから、ゴミ捨てについていく。
「重そうですから片側、持ちますね」
「ありがとう…」
「今度は…どこに道をつなげましょうか?―…環菜、星がたくさん見えますよ」
「空にはどれくらいの星があるのかしらね」
 どこへ夫婦のレールを伸ばそうか…と、2人は足を止める。
 妻の進む道には、必ず夫である自分が隣にいる。
 夫妻だけでなく、2学校の校長や、協力してくれる皆戸だって共に進める。
 星と星をつなげるように、指で夜空に線を描いた。
 行きたいところへ旅が出来るレールが、どこまでも延びるように…祈る。

担当マスターより

▼担当マスター

按条境一

▼マスターコメント

皆様、お疲れ様です。

新年早々、遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。

【進行度合い】

・駅舎の内装:完了

・魔列車の塗装:完了

・ヴァイシャリー南湖の駅、駅舎の商品開発:完了

・SR弁当の企画提案:完了


1部の方に称号をお送りさせていただきました。
それではまた、別のシナリオでお会いできる日を楽しみにお待ちしております。