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リアクション
「……はい!出来たよ。ティナちゃん達の似顔絵!」
「わ〜い!ありがとう!」
「ねぇねぇ!今度は愛とママの絵でしょ!?」
「うん、いい子にしてたら、おなもみ先生はちゃっちゃって描いちゃうぞ〜☆」
スケッチを終えひっつきむし おなもみ(ひっつきむし・おなもみ)はティナと呼んだ少女に描き終えたそれを渡し
続いて月美 あゆみ(つきみ・あゆみ)の子供である愛にせがまれ、次の似顔絵にとりかかる
ティナの傍らで、父親の七尾 蒼也(ななお・そうや)が真剣に覗き込んだ
「絵でもティナは可愛いな……そしてジーナと……え?あれ?俺がいない?」
「かわいいは正義♪私の漫画にはそれしか存在しないのだ☆」
「ええ〜!?それじゃ家族の似顔絵って言わないんじゃ……」
「それじゃあ、あたしがパパの顔描いてあげるね!」
一生懸命、貰った絵に自分の顔を描き始める娘のティナの姿を見て蒼也の顔が曇りから晴れに変わる
「ティナは可愛いし、賢いし、本当にいい子だな……ママ、いやジーナにそっくりだ」
「先輩、それもう七度目ですよ、本当に親馬鹿なんですから」
そんなパートナーの様子にジーナ・ユキノシタ(じーな・ゆきのした)は困ったように笑う
しかし笑われた蒼也の方は大真面目に絵を見ながら答える
「いや、こうやって並んでると本当に似ているよ。絵にすると写真よりもずっとわかる、それに……」
絵を覗き込みながら蒼也は言葉を続ける
「不思議だな……画像データーの方が本当は緻密なのに、こっちの方がずっと存在を感じるなんて」
「うん。ここには漫画のネタ集めのつもりできたのにね。
こんな事に自分のやってる事が役に立つなんて自分でも思わなかった、なんか予想外だ」
鉛筆を休める事なく走らせながら、おなもみは自分に語るように呟いた
目の前にいるパートナーの子を作り出したきっかけは自分にある
確かにあゆみもシュミレーターを面白がって参加してくれた。けれどきっかけは自分の些細な理由
新しい漫画のアイディア出しに付き合ってくれと持ちかけ
自分の理想の子供が生まれてきた……そこまではキャラ作りと大差ない感覚だった
あはは!片親設定だからほんとあゆみそっくりだ
……ほら見てよ、おなもみ!愛、あゆみの小さい頃にそっくりだよ!
だけど、どんなに仮想だと理解はしていても
二人の前で、愛は笑い、抱きつき、自分の足で駆けていく
手に確かな温もりと思い出を積み重ねていくうち、その存在は大きくなっていく
かわいい!愛、あゆみがママだよ!
それでも……これは仮想の夢、それだけはわかる
どこかで誰かさんがそれを認められずに我侭を働いているみたいだけど、それに同意なんて出来ない
何より、自称【銀河を守る正義の味方】のあゆみが認めるわけが無い
だから立ち上がろうと3人で決めた、同じ想いを間違って歪めてしまっている人を正す為に
そして同じ様な決意を持った蒼也と出合った
あゆみ達の為に本気で絵を描きたいと提案したのは自分だ
えへへーいいね、おなもみ二人一緒の似顔絵描いてよ
ほら愛、ママの膝においで絵描いてもらお!
何か証をこの手で、自分のせめてもの力で残してあげたかった
親ではないけど……この子をこの世界に産み落とした者の片割れとして
「はい、できた!これでどうかな!?」
「わぁい!見てママ!愛がちゃんとママのお膝にのってるよ!そっくりだよ!」
「……ほんとだ。ママと、愛だね」
絵を受け取り愛が見せる姿を見ながら、あゆみはその頬を撫で、娘を抱きしめる
愛の染まった頬がもっと赤くなり、うっすらと瞳が潤む
おなもみが思わず立ち上がろうとすると、彼女はそっと指をたてておなもみに合図を送った
……ママには内緒だよ、と
彼女ももう自分の事も、これからの事もちゃんとわかっているのだろう
それが解るからこそ、その様子に一層おなもみは胸が締め付けられる
あゆみにそっくりな愛ちゃん、ホントあゆみよりしっかりしている感じだ
涙を流さないのは強さなんだろうか?……逆に弱さな感じもするな
涙こそ出ていないけど……その顔を見るとこっちの胸が痛いよ?
きっとこちらから見えないあゆみの顔も同じなのだろう
ホント、この数時間で見たことも無いような顔になった……それが親なのだ
そして立ち上がり、自分の方に振り向いた彼女の顔は、いつもの元気で
……そして今まで以上に決意に満ち溢れていた
「さぁ、準備万端だ!愛、いよいよ親子レンズマン出動よ☆」
「うん!」
そう言って親子二人は己がレンズの付いた手をぱちんとあわせ、今一度叫ぶ!
「「レンズよ愛を導け!!」」
その姿を見て蒼也もジーナと愛するわが子を見る
「俺達も行こう、今も聞こえるあの声…少年の元へ!」
「ええ、先輩についていきます」
「ティナも一緒だよ!」
腕に抱きつくティナを見て、彼も決意を新たにする
ティナ……本当にかわいいな。この子のためなら何でもしてやりたい
………だが娘が可愛いからこそ、このままじゃいけないんだ
現実に会うために俺達がちゃんと努力しなければ………
それに、かっこいいとこも見せなきゃな!
………かくして、全てを理解した者達が立ち上がり
共に仮初の子らと手を取り、セントラルビルに集まっていく
自分達と何ら変わり無い想いを抱いた
ほんの少しだけ間違ってしまった仮初の親子を救いに………
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