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平安屋敷の赤い目

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平安屋敷の赤い目

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 食堂。
 静香は一人の少女を遠くから心配そうに見つめている。
「あの子、どーしたんですか?」
 静香に声を掛けたのは理紗だ。
 亜璃珠に風術で飛ばされた後、ここに辿り着いた彼女は、リカバリを使い怪我人を癒したり、
ディテクトエビルで敵の位置を探る事で、ユーリ達の動きをサポートする大活躍を見せて居た。
「セレアナさんが連れてきてくれたんだけど、パートナーを失ってショック状態みたいなんだ。
 話し掛けても俯くだけで……」
「私、ちょっと行ってみますね!」
 理紗は言うと少女、アニスの隣にすとんと座った。
「お名前、なんて言うんですか?」
「…………」
「うーんじゃあ勝手につけちゃうね。
 髪の毛ふわふわだからふわふわちゃん、えへへどうかな?」
「……」
「一人は……不安だね
 私のおねーさまも私達を助けて……どうなったか分からないんだ」
 押し黙っていたアニスは、ハッとしたように理紗に振り向いた。
 ふと、前の席に座っていたマリカが小さく口を開いた。
「……あたしも、そうなんだ
 あたしなんかを庇ったから……だから鬼の仲間にかえられちゃった」
 二人の寂しそうな、でも少し柔らかい表情にアニスは少しだけ心を動かされる。
「……二人は……怖くないの? 大丈夫なの?」
「えーと、うーん……
 大丈夫じゃないけど大丈夫です、たぶん
 おねーさまに何かあったら私が無事なわけがないですから」
「うん。パートナーに何かあったら一番に分かるのがあたし達なんだし。
 きっと大丈夫だって、さっき助けてくれた人も言ってくれたから……」
「信じて待とう。ね?」
 理紗の手がアニスの頭に触れる。和輝が何時もしてくれたように。
 思いだして、涙が溢れてアニスはしゃくりを上げて理紗の胸で泣きだした。
「大丈夫、きっと……大丈夫」



 秘宝。ぽいぽいカプセル。
 スイッチの付いた小さなそのカプセルは、棒四次元空間のポケットの如く中に一つものを仕舞う事ができる
優れモノだ。
 放送室でそれを投げたのはいいのだが、有ろうことか中には特大ワカサギが入っていた。
「どうすんのこれ! 放送室もう使えないよ!!」
 放送室の前の廊下、道を塞ぐようにはみ出す魚影を指差しルカは怒りの声を上げた。

 事の発端はわずか数分前。
 放送室を襲った数匹の餓鬼との戦いに、ルカルカは直ぐに指輪が煌めく手を振り上げた。
 ブリリアントリングの光は餓鬼の目を潰し、透かさず恵みの雨で水を生むと続けてブリザードでそれを操る。
 カルキノスがそこに稲妻の札で通電する。
 見事な連携にアクリトも称賛の声を送った。
 そこまでは良かった。
 反対側からきた敵影があの白い悪霊だと分かるや否や、カルキノスはとにかく間を塞がねばと
慌ててぽいぽいカプセルを投げてしまったのだ。
「ノートパソコンだけは持って出たから、通信はここからでも出来るだろう」
「でも」
「そう怒るなよ。ほら、あっちから頼みの綱もやってきた事だし」
 カルキノスが言うのは陰陽の武器を手に携えた加夜らの事だった。
「遅くなった。
 ……って妙に魚臭いな」
「その魚の向うに悪霊が現れたのだ。
 さて、それが陰陽の武器か」
「はい。これ……どうすれば」
「どうやらそれ、君が手にすると形を変えるようだな。
 鏡は真実を映し出すもの。
 古代から日本では鏡は神聖なものとして扱われてきた。
 そちらの彼女が展示室で調べてくれた文献によれば、かつて鏡が鬼の罪業を暴き出し打ち滅ぼしたというものが
多々あったという」
 アクリトの言葉にリースが頷いている。
「この鏡を鬼の前に掲げ、真実の姿を映しだすのだ。
 そこで強い霊力を持ったその刀を使えば鬼を滅ぼす事は可能」
「しかしこの刀、振るうものは……」
 司が言った所だった。
「それ、俺に使わせちゃくれねぇか?」
 カガチだった。
「しかしそなたは悪霊の呪いを受けて」
「ああ、でも鼻水程度で心折れてたら生徒会長なんざやってらんねえのよ」
「自らの学園を護る。か」
 頷くカガチに、周りのものは笑顔を向ける。
 司が刀をカガチに差し出すと、カガチは刀を手にし、鞘からゆっくりと抜いてゆく。
 彼の前に魚の向う側にいたはずの白い煙が立ち上り、やがてそれは一つの形になる。
 白い悪霊が姿を現したと同時に、カガチは脚を踏みしめ走り出した。
「おおおおお」
 一太刀の後、白い悪霊はその場から消え去った。
 パチンと音を立て、鞘に納める。
 ――本当はこういうかっこいい事ぁ山葉がびしっとキメるとこなんだよなあ……
 でもしゃーねぇから俺が代わりにビシっとキメといてやるさ。
 戻った山葉に情けないとこ見せるわけにもいかねえし。
「なんせ「俺達の」蒼空学園だしさ!!」