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リアクション
【第四章】
屋敷の庭。
その場に相応しく狩衣に身を包んだ陰陽師が赤い目の鬼に相対している。
高月 玄秀(たかつき・げんしゅう)。
そして「玄秀様、お呼びになられましたか」召喚されたのは式神 広目天王(しきがみ・こうもくてんおう)。
「今しがた連絡があった。封印の武器を持った生徒がこちらへ向かっていると。
どうやら……年貢の納め時らしいな」
玄秀の声は冷静そのものだ。
冷静すぎるのだ。
「鬼などというものは使役するものであって、ご大層にも結界を結んで人を喰おうなど……
思いあがりも甚だしい!!」
言い放つと、十二天護法剣 七星宝剣を掲げる。
樹齢千年を超える一位樫を加工して作られた木剣。
玄秀が印を結びながら刀身に刻まれた術式をなぞると、十二天の式神が光の玉になって現れる。
美緒の身体を取り囲んで結界を形成する。
美緒を支配している赤い目の鬼はそこから逃げ出そうともがくが、その度に光球が触れて傷をおっていった。
*
それと同じころ。
鬼の元へ走る加夜らの集団は、ルカルカの連絡によって更に人数を増していた。
空間を歪める張本人の鬼は玄秀の術にはまっている為、皆が容易にその場に集まってこれたのだ。
「彼は17! こちらは21! あっちの女性は36!!」
セレアナの指示にしたがって、柚、三月、海が操られた人間達を解放してゆく。
「鬼さんは外に出て下さい!」
柚の投げる豆と、サイドワインダーで三月が左右から同時に放った豆が当たり解放されたのは亜璃珠だ。
倒れかけた彼女を、真がすかさず支える。
「だ、大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、心配ないわ」
駆け寄ってくる柚に、亜璃珠は朦朧とする意識の中も笑顔で答えてやる。
「元に戻してくれてありがとう」
彼女の横に氷藍が駆け寄り、リカバリを始める。
真は先に進もうとする柚らに向かって告げた。
「君達が助けた人は俺が責任もって食堂に届けるよ」
「ああ、任せた任せた
んじゃ行ってくるぜ」
「あ、カガチ」
「なんだよ。今折角良い所で――」
「これ、もってけ」
言いながら、真は三月に貰ったティッシュを鼻に突っ込んだままのカガチの口に恵方巻を突っ込んだ。
「ふぐッ!?」
「食堂で聞いたんだけど、悪霊にやられた呪いが治るって。
鬼の所に辿り着くまでに頑張って最後まで食べなよ?
そのままじゃいくらカッコいい武器使っても格好つかないぞ」
カガチ達が真に見送られていた頃、セレアナは一人の鬼に操られた男に目を止めた。
「あれは!」
セレアナは豆を持つてに力を込める。
銃を撃ったのは鬼に操られた和輝だ。
「今度こそ助けて見せるわ!!」
セレアナが前に踏み込むが、和輝は斜め後ろに飛び退り豆は当たらない。
と、その時だった。
「くっ!!」
和輝が後ろから捕まえられ、動けなくなっている。
「今よ! 豆を!!」
セレアナは聞きなれた声に、反射的に和輝は豆を投げつけた。
豆は無事に当たり和輝の額からは鬼に操られた証の角が消えて行く。
正気に戻って行く和輝の後ろから、彼を抑えつけて居た者がひょっこり現れた。
「言ったでしょ、必ず帰ってくるって」
「セレン!!」
常に軍人たれと思うセレアナにも、耐えられない時はあった。
溢れそうになった涙を見せないように顔を隠すセレアナに苦笑しつつセレンフィティは和輝の耳元で
優しく声をかけてやる。
「さ、あなたも大事な人の所に戻ってあげるのよ」
*
一人、また一人と鬼に仲間にされた者達が戻って行く。
――仲間を助けるとか、正義とか
そんなのは偽善に過ぎないのに。
なんでそんなものを皆は護ろうとするのか。
きっと幸せだから。毎日が楽しいから。
愛する者に疎まれ、正義に裏切られた鬼でいられるのは……
私だけ。
「……うふふ……あははははは!!」
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