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【冬季ろくりんピック】イコン スキージャンプ(生身もあるよ!)

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【冬季ろくりんピック】イコン スキージャンプ(生身もあるよ!)

リアクション


■イコン部門・個人戦 中盤戦
 ――大変お待たせいたしました、整地作業が完了しましたのでこれより競技を再開したいと思います。
 七組目、次のイコンは桐生 理知(きりゅう・りち)選手と北月 智緒(きげつ・ちお)選手の乗るジェファルコン、ヒポグリフ。その名の通りに力強い翼で飛びきることができるでしょうか。
「こちらヴィゼント。理知選手、いつも以上に気合が入ってるけどどんな演技を観客たちに見せつけるんだ?」
「んーと、イメージとしては鳥かな。チームのためにも、しっかり頑張りますっ!」
「OK、気合十分だな。そんな理知選手と智緒選手に、心強い応援が来てるぜ!」
 はい、現在実況席には特別ゲストの一人として辻永 翔(つじなが・しょう)さんに来ていただいております。翔さん、よろしくお願いします。
「こういったのは初めてだから、緊張するな……よろしく」
 さて、翔さんは理知選手からの応援を頼まれたとのことなので……理知選手に何か一言、お願いします。
「えーっと……理知、頑張れよ。ここから見てるからな」
「う、うん! 翔くん見ててね、チームの為にも絶対勝つから!」
 ……若いって、いいですねぇ。さて、そうこうしているうちに競技開始の時間となりました。機械仕掛けの鳥馬獣、いよいよ滑走です。
 斜面を滑走するヒポグリフ、そのスピードを『バーストダッシュ』で上げ、安定した姿勢で――テイクオフ。ここまでは無難な出だしですが、翔さんはどう見ますか?
「ジェファルコンは性能は高いものの、その分高度な操作技術を要求される機体なんだ。でもそれを理知と智緒のコンビネーションでうまく操縦できてると思う。ジャンプの瞬間はぶれも少なかったし、普段の訓練の成果が出ているように見えるかな」
 さすが、イコンに詳しいだけのことはありますね。さぁ、ヒポグリフはまさに鳥が風と戯れるかのように、後方回転やひねり回転、左右を揺らして飛び回る様子は、風を纏って飛翔する幻獣ヒポグリフそのもの! ラストはジェットコースターのような後方回転を見せ――ピタリと着地! 優雅に止まり、翼を閉じる動きは、本物の羽を思わせる雰囲気を見せているようだ!
 ――さぁ、ヒポグリフの演技が終わりましたが、いかがでしたでしょうか? あ、理知選手が翔さんに手を振っているようですね。
「機体性能をうまく生かした、立派なマニューバ演技だったと思う。理知と智緒も頑張ってたし、俺としては褒めたいところだよ」
 翔さんから嬉しい言葉が出ましたね。これは理知選手も大喜びだと思います。
 しかし、それと得点は別の話になります。さぁ、得点が出ました――あっと、55点。どうやら着地は良かったものの、演技の面で派手さが見受けられなかったのが原因でしょうか。思ったより得点は伸びなかった模様です。


 ――個人戦も折り返しを過ぎました、八組目。どうやらパイロットは単体の参加だそうですが……ヴィセントさーん?
「ああ、その通りだ。競技開始地点にはマナ・ウィンスレット(まな・うぃんすれっと)選手が準備してるんだが、ドラゴネット化してでかくなった巨大マナ様として参加している。しかもコスチュームとして怪獣パジャマを着てて、可愛さがボンバーしてるくらいだぜ!」
 なるほど、可愛さでアピールというわけですね。ところでキャンディスさん、ドラゴネットというのは?
「ドラゴネットとハ、マナ選手のようなドラゴニュートが一時的に将来の姿の龍に変貌する状態のことを言うワ。ただ、マナ選手は元が成体に近い状態だったカラ、ドラゴネット化しても元の姿のまま大きくなっちゃったみたいネ」
 だから、ほぼ巨大化しただけの状態になっていると。なるほど、参考になりました。……さぁ、競技開始の時間となり巨大マナ様が滑走を始めます。
 加速などを使わない、いたって普通のジャンプ。これは高度は大丈夫なのか――ああっと、上昇中にフロントフリップ……というよりは、これは空中でんぐり返しだ! あざとい、あんな可愛い見た目ででんぐり返しとか、心地良いくらいのあざとさ! さらに二回転半のストレートローテーションをこなし、下降が始まる!
 ……フラットスピン! 後方宙返りに横一回転半を加えた、フラットスピンだ! しかしここまでの演技、傍から見ればもふもふした何かが空中でじゃれているだけに見える! なんというあざと――いや、可愛さだ! 可愛いは正義、体現しているぞ!
 さぁ、高さ的にも最後の技になりそうだが――出たぁぁぁっ、フロントフリップという名の空中でんぐり返し! 可愛さアピールを最大限に繰り出すが……ああっと、まさかの着地失敗! でんぐり返しをしながら着地をしてしまった! 丸いもふもふが着地点を転がっていく、このままでは観客席にぶつかってしまいそうだが――そこは河馬吸虎のキャロリーヌが無事にキャッチして事なきを得たようです。あまり激しい突進ではなかったか、キャロリーヌの食指は動かなかった模様です。
 しかし、着地失敗したにも関わらずここまで可愛いとは……犯罪のにおいがプンプンします。しかも本人としてはいたって真面目にやっている辺り、可愛さが際立っているように見えます。マスコット的可愛さは本当、重要だと再確認させられました。
 キャンディスさんが言うと、微妙に切実な感じに聞こえますね。さて、得点が出たようですが――70点! 審査員たちも可愛さアピールを受けて審査を甘くしてしまったのか!? さすがとしか言いようのあざとさでした!


 九組目となりましたが、いまだ天候は晴れ一色。選手たちも非常に快適な演技ができるのではないでしょうか。次のジャンパーは紫月 唯斗(しづき・ゆいと)選手。搭乗機は絶影と言う名前の機体のようですが?
「絶影は以前乗っていたイコンのデータを元ニ、唯斗選手専用に作られたワンオフ機の玉霞ネ。玉霞は芦原明倫館の鬼鎧の一種デ、高機動隠密型の機体ナノ。それを自分専用にカスタムしたのダカラ、性能は折り紙つきヨ」
 ワンオフ機なんですねぇ。ワンオフ機は漢の夢、という印象があります。さて、ヴィゼントさん。唯斗選手の様子はいかがでしょうか?
「競技開始地点ではすでに唯斗選手は機体に乗り込んで、精神集中しているようだ。乗り込む前におこなったインタビューでは「チャレンジ精神を大事にしたい、着地の限界に挑戦したいと思います」とコメントしてくれたぜ。黒き忍者が白い空中をどう縫い上げるか、すごい楽しみだな」
 ありがとうございました。どのような演技を、そしてどのような着地を見せるのかが楽しみです。さぁ、いよいよ滑走開始となります。
 滑走開始するやいなや、『高速機動』『加速3』さらにはイコンホースを駆使してスピードを上げる! そして勢いに乗ったまま、それに任せてテイクオフ! さぁここからどう出る!?
 おお、忍者スタイルが織りなす華麗な体捌きです! まるでマフラーが生きているかのように、赤い軌跡を空中に刻んでいく! そして、これまでの最高高度を更新する高度を記録! 軌跡を描きながらの下降が始まるっ!
 マフラーの軌跡がろくりんピックの象徴である、六つの輪を描いている! あれだけの体捌きを披露しながらの一芸、まさに忍び! まさにNINJA!
 しかし、ちょっとスピードが速すぎるような気がしないでもありません。わたくしの目から見ても、少し下降速度が速いような……ああ、これはアクシデント! 着地をしようとした絶影ですが、最高高度からの下降によるスピードの計算がうまくいかなかったか、乱れた着地になってしまった! これは痛いミス! 唯斗選手も愕然としております。高い高度からの着地のむずかしさを思い知らされましたっ……!
 途中までの演技がよかっただけに、このミスは痛いです。 得点が出ましたが……25点。やはり着地の失敗の影響が大きかったようです。


 ――先ほどの失敗の影響でしょうか、会場も少し静けさを取り戻したように思えます。しかし、競技は続けなくてはなりません。さぁ大台に乗った十番目は宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)選手のグランシャリオ。航空機形態にもなれるこの機体による滑走となります。
「こちらヴィゼント。祥子選手のインタビューしたところ、「今日、私は鳥になるわ」と返答してくれたぜ。祥子選手の考える鳥になる演技、どんな出来になるのか楽しみだな。観客のみんなも、俺のボンバーヘッドみたいにボンバーに燃え上ってくれよ!」
 なるほど、鳥になる――ですか。果たしてどのような演技になるのか、未知数ながらも期待されます。
「グランシャリオは一般的にはスフィーダと呼ばれている機体ネ。汎用性がある分、乗り手の技術では十分化ける可能性を秘めているワ。ミーも期待しちゃうワネ!」
 そうですねぇ。今までの選手の皆さんは変形機構もうまく使っているので、それを使ってくるかどうか、楽しみです。さて、そうこうしているうちにどうやら競技開始の時間となりました。どのような演技を見せてくれるのでしょうか、グランシャリオ――滑走を開始!
 滑走から踏切までは特別変化のない、普通のジャンプの模様。そのまま上昇していますが――おおっと、変形した! グランシャリオ、航空機形態へとその姿を変えてきました! そしてそこから……あれはバレルロール! 180度ロールによる、いわば航空機の側転を左に一回、右に一回! 軽やかに転がっているかのようだ!
 これは……マニューバだ! 航空機の機動手段として使われる、アクロバット飛行でもお馴染みの飛び方です!
 言うなれば、このジャンプはマニューバによる雪空航空ショー、といったところか! さらにブーストをふかして高く飛ぶと――機首を上げるピッチアップからの180度ループ! これはかつて活躍したエースパイロットの名を冠したインメルマンターンだ! それをもう一度行い、再び機首を天高く向けなおす!
 だがここで下降状態へと入っていった! さぁ何が飛び出す、空京大のドッグファイター! ……おおっと、失速した!? 下降状態だが機体を90度、地面と垂直になるような形にして失速状態となったグランシャリオ、何をするつも――!
「間違いないワ、あれは木の葉落とし! さながら木の葉がヒラヒラと舞い落ちるように機体を失速状態にシ、慣性による姿勢制御から機体の速度を戻すマニューバヨ! 存在自体が揺らいでいる特殊機動と聞いていたケド……やっぱりその存在は確かナノネ!」
 なんと、幻と言っても過言ではないマニューバを繰り出した祥子選手! 我々は今、存在の揺らぐ技をその目に見れたようです!
 さぁ、失速状態から回復したグランシャリオは着地する模様! しかし航空機形態のままの着地だと、普通の着地と何ら変わりないように見えます! ……今、着地!
 ――いや、違う! 着地じゃない、これは……タッチアンドゴー! 着陸後にすぐ離陸態勢をとって離陸する、基礎航空技術の一つ! すぐに飛び立って、どこへ行こうとするのか!?
 離陸したグランシャリオ、その機首の向ける先は真上! 急上昇したグランシャリオは、その上昇の中でスクランブル変形! 今度は人型で着地を――決めたぁぁぁっ!
 短い時間での航空ショーに観客たちからも盛大な拍手が飛んでおります! 一度の失敗もない、ほぼ完ぺきな演技でした!
 これは得点が期待できそうですね。……どうやらその得点が出た模様です。得点は70点! マニューバの見本市ともいえる航空技術の応酬を評価されたところでしょうか。 特に木の葉落としを見れたのは、実に幸運なことでしょう。
 さて、観客の盛り上がりも高まっているようですがここで整地作業が始まりますので競技再開まで少しの間お待ちください。それでは、一旦CMです。