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インテリ空賊団を叩け!

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インテリ空賊団を叩け!
インテリ空賊団を叩け! インテリ空賊団を叩け!

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〜 11 phase【混沌】〜


さて、そんな佳境の最中の空賊団の大型飛空母艦の一角

かの偽りの【私掠船免状】にて集められた多くの宝あふれる貨物倉庫の一角で
騒々しい音を聞きながらセシル・フォークナー(せしる・ふぉーくなー)はのんびりと呟いた

 「さて、そろそろ引き上げ時かもしれませんわね。獲るべき物も獲りましたしね」
 「この修羅場の最中に火事場を好んで仕事するなんて、いい度胸よね〜海賊さんも
  ホントびっくりしたわよ、こんな処で見かけるんだもん」

傍らに宝を抱えて満足げな彼女を見ながら
雷霆 リナリエッタ(らいてい・りなりえった)が呆れたように木箱に座りながら声をかけた
そんな彼女にセシルは口をとがらせて抗議する

 「そういうあなたこそ、偵察役ならちゃんとやるべきじゃありません? 
  こんな処で油売ってる場合じゃないでしょう?」
 「だぁって〜ここまでみんな乗り込んだら案内もいらないし
  対して情報も手に入らなかったしね、こんなもの持ってるくせに」

そう言ってリナリエッタは手にした【私掠船免状】をひらひらと泳がせる

 「だいたい頭とかはインテリなんでしょうけど、末端はしょせん馬鹿なのよね
  これの価値なんかフリーパス程度にしか思ってないんだから
  ちょっと色仕掛けしたら寄越してくれた上に、あとは知らぬ存ぜぬってどういう事よ?」
 「大きい組織なんてそんなもんですわよ。だから私は少数でこうやって有意義に稼いで……あら?」

リナリエッタの愚痴に適当に付き合いながら、最後にもう一度積荷を漁っていたセシルは
荷物の一つが動いた気がして、不思議に思って近づいてみた

 「何かしら?禁猟種の動物でも捕まえて…あ……る?」

荷物をどかした彼女の手が止まる
荷物の先でのっそりと蠢いたのは、動物ではなくれっきとした人間だった

 「ふわぁ〜あ……何や何や? おねえちゃん等が二人もおるし…外が騒がしいのは祭りか?」
 「な……ななななななななな!?何ですかあなた!?どうしてこんな?」

物陰から完全に姿を現し瀬山 裕輝(せやま・ひろき)はセシルの問いにのんびりと答える

 「あ、俺か?
  配達感覚で荷物になってたら飛行船の荷物に紛れ込んでたもんで……で、ここどこ?」
 「空賊船よ。このいわくつきの【私掠船免状】でひったくられた荷物の中ってわけ」
 「おお!」

リナリエッタが【私掠船免状】を目の前に見せると、裕輝が素っ頓狂な声をあげる
その反応に理解してもらえたか……と彼女は思ったのだが……

 「で、何なんその……しりょめ……ん?ああ、鼻紙か何かか?」
 「違ぇーよ! 何でティッシュに見えんのよ、あんた!」
 「いや、丁度鼻紙が欲しかったところでなぁ……ズビーッ」

 『………ああああああああああああああああああああああああああ!?』

あろうことか見せていた【私掠船免状】をひょいとつかみ、裕輝は鼻紙代わりにした
当然の如く、リナリエッタだけでなくセシルまでもが一緒に叫ぶ

 「ちょっ、てんめっ!何してんのよ!?」
 「いやぁ、ちょっと鼻の調子が悪かったもんやからなぁ
  あ、紙おおきに。助かったわ」
 「うわやめてよ、こいつ超最悪!」
 「……普通しませんわよ、こんな事……」

突き返された鼻水まみれの紙をつまみ上げ、リナリエッタがうめき声をあげ
セシルが嫌悪丸出しの声をあげる、だがそんな事お構いなしに裕輝の言葉は続く

 「おぉ! そうやそうや思い出したわ
  このオレ、否定人間こと瀬山 裕輝はなぁ、最低と最悪、そして最厄さえもこの身に担うと
  ──ってそう言いたかったんや、テヘ」
 『聞いてないし!!』
 「もうヤダよコイツ!」
 「ずっとコイツのペースですわ!どうしてくれましょうかしら!」

すっかりこの珍客のペースに乱され
時に声をそろえ、キャラも崩壊しかけた勢いでまくしたてる女性陣二人
だがその爆発寸前のピークも新たな珍客によって妨害される

 「も〜みんな張り切っていろいろやっちゃうし!託も鈿女も勝手にサクサク進んじゃうし!
  あたしやる事無いじゃん!いいもんいいもん!
  それじゃ敵船の『なんか面白そうな物』を物色してるわよーだ!
  なんか持って帰ったら面白そうな物ないかな〜♪……………って、え?」

飄々と扉を開け入って来たのはラブ・リトル(らぶ・りとる)
だがその楽しげな姿が、既にいる3人の姿を発見してしばし固まり……みるみる口が開かれる

 「……………………………きゃ」
 「いやっほ〜!私掠には私掠!お宝ゲットだぜ!!」

しかしその口から叫び声を上げようとする刹那
続けざまに入って来たオルフィナ・ランディ(おるふぃな・らんでぃ)の勢いでそれは止められた
そのまま今度はオルフィナが、中にいる女性3人(男もいるが眼中無い)に目を止める

 「あれ?……てっきり財宝の類いだと思ってたけど、お宝って女もいるのか?
  随分と俺の趣味を知ってるなぁ、ここの空賊」
 『違いますっっっ!!』

図らずも女性3人の声がユニゾンする。
そこにようやくセフィー・グローリィア(せふぃー・ぐろーりぃあ)が現れ、事態を把握する

 「お宝じゃないわよ、先客よ先客
  この騒ぎにちゃっかり来てるとは流石ね【キャプテン・フォークナー】」
 「お見知り頂き光栄ですわ、確か…【白狼の剣】でしたわね」

一人事態を相変わらず把握していない男を除き、我に返ったセシルは退路を獲るべき動き出す
それを察したオルフィナが剣を構えた

 「悪いがこっちは正式な私掠権限だ、泥棒は放っておけねぇな
  ぶんじばって、コレクションにしてやるよ!」

斬りかかるオルフィナだが、その剣は空を切り視界が真っ黒に染まる

 「……察するにその趣味はありませんわ、それで勘弁してください★」

【空蝉の術】にて顔を覆った上着をはぎ取りオルフィナが彼女を確認した時にはその姿は壁に消えていた

 「へぇ、【壁抜けの術】とはね。やるじゃない」
 「この!待ちやがれ!」

感嘆の声を上げるセフィーとは逆に、オルフィナは急いで壁の向こうの廊下に出るが
セシルの姿は既になく、反響した声が響き渡る

 「やりたい事は終わりましたので、これでお暇させて頂きますわ
  またどこかでお会いした時はよろしくお願いいたします、では」

ほほほほ〜……という反響とともに完全に気配が消える
やれやれ、とため息をつくとセフィーはリナリエッタとラブの方を向いた

 「で、あなた達はどなたかしら?
  同業でも空賊でもなさそうだし……協力者、といったところかしら?」

セフィーの問いに、あはははは……と乾いた笑いを浮かべ、既に価値がなくなりかけている紙をつまんで
リナリエッタが答えた

 「一応協力者ですよぅ……仕事がそこの馬鹿のせいでパァになりかかっているんけど」

そう言って、キッ……と殺気満載でにらむ
彼女の視線の先には相変わらず空気の読めていない裕輝がいた