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リアクション
「閃いた!」
二人のルカルカは美絵華の様子を見て同時に同じ事を閃いた。
「まだ、時間はあるよね?」
思いつくも時間が気になり、みんなに振り返った。
「まだ何も連絡はありませんから大丈夫だと思いますよ」
陰陽の書がルカルカに答えた。
「それじゃ、風になろう!」
「空を飛ぶの!!」
すくっと二人のルカルカが立ち上がった。
「それはおもしれぇな。俺も賛成だぜ!」
ルカルカの案にウォーレンも賛成した。
「そうと決まれば」
早速、動き出した二人のルカルカ。『空飛ぶ魔法↑↑』でルカルカは美絵華と夕花を宙に浮かせ、自分達も空を飛んで慌てる二人の手を引いた。
「うわぁ、浮いてる!!」
車椅子からゆっくりと離れ、空に浮かび出す美絵華の手をルカルカがしっかりと握っている。
「風を感じに行こう」
美絵華に笑いかけ空へ。
「今日は最高の天気だから。気持ちいいぜ」
ウォーレンも背中からコウモリの羽を出して一緒に空へ。まだ騒ぎが収まっていないので何が起きるとも分からないのでもしものために。
「え、私も!?」
美絵華だけだと思っていた夕花は慌てたが、ルカルカの分身がしっかりと手を引いている。
「頑張っている夕花さんも一緒に!」
分身がにっこり笑って夕花の手を引いて空へ。
「気を付けて。怖くなったらすぐに戻って来るんだ」
和輝の分身は飛んで行く美絵華に優しく言い、主不在の車椅子のグリップを握って番を始めた。
「……あんまり遠くに行ってはだめよ」
「気を付けて下さいね」
零と陰陽の書は飛んで行くみんなに言った。まだ街の方では騒ぎが収まっていないので少しばかり心配。
「楽しんで来いよ」
聖夜は飛んでいく美絵華に手を振った。
美絵華達を見送った後、中庭では手術について何かと話されていた。
「担当医に会ったと言ってたけど……」
涼介は先ほどのルファンの発言が気になり訊ねた。医療を志す者として誰が手術するのか気になっていたのだ。
「ダリルじゃ。神経を圧迫する新生物を除去するそうじゃ。縫合はナノ縫合と言っておった」
ルファンは涼介に答えた。
「……難しい手術だね。リスクが高いよ。でもナノ縫合だったら手術後、足を露出しても大丈夫だけど」
涼介はすぐに難易度が高い手術だと分かった。
「本人も難しい手術だと言っておったが、成功すると断言しておった。あの様子では問題無いとわしは思うが」
ルファンは自信に満ちた様子で答えるダリルを思い出した。
「問題なのは美絵華ちゃんの心か」
優がルファンが次の言葉を口にするより先に言った。
「それももう大丈夫だろう」
聖夜は、主不在の車椅子を眺めながら言った。
「……大丈夫か」
和輝の分身は、車椅子のグリップをしっかりと握って心配そうに空を眺めていた。
その様子を離れた所から眺める者三人。
「……展開が良くなったな」
「にひひ、アニスの言った通りでしょ〜」
少し安心しながら見守る和輝にアニスが少し誇らしげに言った。
「……分身と分かってても優しくしているのを見るのは少し悲しいですぅ」
ルーシェリアは複雑そうに見守っていた。
中庭でそんな会話が行われているとは露知らず、美絵華は空の散歩を楽しんでいた。
眼下には分身騒ぎで賑やかな街が広がっていた。
ルカルカは飛んですぐ、慌てている二人のために『オープンユアハート▽』と『リリカルソング♪』を併用して使い、二人を落ち着かせた。
「ほら、飛べるよ。もう、一人でも大丈夫、やってごらん」
「夕花さんも。大丈夫、怖くないよ」
ルカルカ達は、ゆっくりと二人から手を離していく。
「怖がらなくても大丈夫だ」
ウォーレンも応援しつつルカルカを手伝った。
何とか一人で飛ぶ事が出来た二人は、改めて飛んでいる事を実感していた。
「うわぁ、飛んでるよ。ね、夕花さん」
「そうだね。鳥になちゃったね」
楽しむ美絵華と夕花。
「……すごい事になってるな」
ウォーレンは改めて眼下を見下ろし、街の惨状を確認していた。それでも心配はしていない。きっと誰かが収拾してくれるだろうと信じているから。
「でも、もうそろそろ解決するよ」
「解除薬も手に入るよ」
ルカルカがウォーレンに言い、分身が解除薬が手に入るのもすぐだと言った。ルカルカも解決に走る誰か達を信じているのだ。
そして、すぐに二人のルカルカは、美絵華の方に向き直り、
「気持ちいいね」
「人が豆粒だよ」
ルカルカが気持ちよさそうに言い、街にいる人々を指さし、美絵華と楽しんでいた。
「うん!!」
美絵華は楽しそうにうなずいた。
「せっかくだし、一曲!」
気持ちよくなったウォーレンは美絵華のために歌を一曲披露した。
「上手!!」
美絵華は楽しそうにウォーレンの歌を聴いていた。
しかし、その楽しい雰囲気もすぐに終わった。
何かに気付いたウォーレンは美声を披露するのを中断し、
「何か来るぞ!!」
ウォーレンは、『野生の勘』で何かがこちらに飛んで来る事に気付き、素早く美絵華の腕を引っ張った。
「危ない!!」
ルカルカも急いで夕花の腕を掴んで避難。
「何だろう」
分身は飛んでくるものを警戒。
「きゃぁ!!」
飛んで来る何かに驚く美絵華。
先ほど彼女がいた場所にミサイルが通過して行った。
もしあのままいたら大変な事になっていた。
「な、何!?」
夕花は先ほど自分がいた場所を通り過ぎるいくつものミサイルに驚いていた。
すぐにミサイルの正体は明らかとなった。
いくつも打ち上げられたミサイルは派手な音を立てて様々な光の花を咲かせた。
「花火?」
「綺麗だよ!!」
ルカルカ達は予想外の出来事に歓声を上げる。
すっかり危険を回避したルカルカとウォーレンは二人から腕を離した。
「綺麗」
美絵華は鮮やかに咲き誇る光の花に手を叩いた。
「びっくりした」
夕花はまだどきどきする胸を撫でていた。
「……一体、どこから」
ウォーレンは、発射元が気になり、弾道から探った。
場所を知って呆れ顔になった。
「……あの二人か。分身か?」
発生源は、アキラ軍事国家を邪魔しているロズフェル兄弟の分身達だった。上空からは本物か分身かは見分けはつかなかったが。
「……これ以上何か飛んできたらまずいな。もうそろそろ、戻らないか」
ウォーレンは、もしもの事を考え、中庭に戻る事を提案した。
「……そうだね。もっと危ないものが飛んで来たら大変だし」
「ごめんね。もうそろそろ帰ろう」
ルカルカはウォーレンにうなずき、分身は楽しんでいる美絵華に謝った。
「……うん」
「また何か飛んで来たら大変だしね」
少し残念そうにする美絵華に夕花は慰めていた。
何とか何事もなく四人は中庭に戻る事が出来た。
空から四人が帰還し、美絵華はゆっくりと車椅子に着地した。
「大丈夫か? 怪我とかしなかったか?」
和輝の分身は、戻って来た美絵華を気遣った。車椅子のグリップは夕花に渡していた。
「大丈夫だよ」
美絵華は心配する和輝の分身に笑顔で答えた。
「お帰り、どうだった?」
聖夜が戻って来た美絵華に感想を訊ねた。
「楽しかったよ。でも、もう少しいたかったなぁ」
美絵華はほんの少しまだ興奮しているのか上気しながら答えるも少し残念そう。
「何か音が聞こえたが」
優は思い出したように訊ねた。あまりに盛大過ぎてここからでも花火発射の音は聞こえていた。
「花火だよ」
「びっくりだよ」
ルカルカが答え、分身が驚いた事を話した。
「……花火か、それで大丈夫だったんだろう?」
聖夜が無事な四人を確認しながら念のために聞いた。
「あぁ、すぐに気付いたから」
ウォーレンが聖夜に答えた。あのまま気付かないでいたらこうやって無事には戻っていなかっただろう。
「こんなに明るい時間に花火なんて変わった事も起きるものだね」
「こんな騒ぎだからな。しかもあの迷惑双子が発射した物だった。本物か分身かは分からなかったが」
涼介の言葉にウォーレンは答え、肩をすくめた。
「……夕花さんも大丈夫でしたか?」
陰陽の書は夕花の無事を訊ねた。
「はい。花火にはびっくりしたけど、でもまさか空を飛べるなんて」
夕花はまだ心臓が飛び出ている胸を押さえながら感想を口にした。
「少しは気分転換が出来たかのぅ」
ルファンは、車椅子に座っている美絵華に訊ねた。
「……少しだけ」
美絵華はこくりとうなずいた。
「少しだけでも気分転換が来たのなら良かった」
涼介は美絵華の様子を見て安心した。
「それで街の様子はどうだったんだ?」
聖夜が街の様子を確認したと思われる三人に訊ねた。
「すごく賑やかだったよ」
「いろんな分身がいた」
ルカルカが騒いでいる街の様子を分身がたくさんいる分身について言った。
「……分身達を集めて変な事をしている奴がいたぜ。もちろん、捕縛や排除をしている奴もいた」
ウォーレンは自分が目撃したアキラ軍事国家の事を報告した。
「……変な事かのぅ。とりあえず、協力者もいるようで安心じゃな」
ルファンは相変わらずの騒ぎの様子に気がかりだが、協力者もいるという事で一応は安心した。
「……大丈夫?」
零が元気になった美絵華を見ているエッツェルに訊ねた。
美絵華と話している様子を見ていたため少し心配して。
「……大丈夫です。美絵華ちゃんが少し元気になったようで良かったです」
エッツェルは零の心配に答え、楽しそうにしている美絵華に胸を撫で下ろしていた。
「楽しかったのなら良かった。君のその顔を見る事ができて満足だ」
和輝の分身は楽しそうにする美絵華ににこやかに言った。
その様子を少し離れた所から見つめる三人。
「楽しそうだね〜、和輝」
アニスは楽しそうに美絵華達を見守っていた。
「……そうだな」
そう言いつつ和輝も美絵華の様子を見守っていた。
「……すっかり馴染んでますぅ。でも……」
ルーシェリアは美絵華達の輪の中にいる分身を見て眉を寄せるも自分の隣にいる和輝を見て表情を戻した。
そうやって少しばかり元気になった美絵華と共に解除薬が戻って来るのを待っていた。
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