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水晶の花に願いをこめて……

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水晶の花に願いをこめて……
水晶の花に願いをこめて…… 水晶の花に願いをこめて……

リアクション

 
〜 最終日・午前 〜
 

それぞれに出来る事を近い、最終の一日を迎えた朝
そこから昼の間は一番あわただしく、予想外の事に混乱する一日だった

早々に駆けつけた面々がテーブルや飾りの準備をし
フレンディス・ティラ(ふれんでぃす・てぃら)アルセーネ・竹取(あるせーね・たけとり)が食事の用意に尽力する
司会進行の段取りなども滞りなく決められる中

トラブルは主催者二人によってもたらされたのである


 「……なんで、見つかっちゃったんだよ、こた姉」

目の前で完全にしょげかえっている林田 コタロー(はやしだ・こたろう)に困ったように問いかける緒方 太壱(おがた・たいち)
コタローの後ろには今日という日の主賓であり、新郎であるはずの緒方 章(おがた・あきら)がにこやかに立っていた

 「二人揃ってこっそりと忙しそうにしてたら、やっぱり気になるよ、でも……よくここまでやれたもんだねぇ〜」

言葉と共に、準備が整いつつある祭壇前の広場を見渡す章
一方のコタローは言葉をうまく出す事が出来ず、下を向いてうつむいている
見かねた太壱が章に向って口を開いた

 「あのさ親父、とりあえずずっとこた姉は、これがやりたいって楽しみにしてたんだよ
  二人を差し置いて、こういう事やったのは謝るって、だからさ」
 「別に怒ってないよ、楽しみだねぇ」
 「は?」

太壱の言葉に飄々と答える章に、コタローともども驚いて顔を上げる

 「こういう事って言っても、僕には何の事だかまだわからないしね
  とりあえず、僕は樹ちゃんを連れてくればいいんでしょ?楽しみにしてるよ……何のイベントかわからないけど♪」

そう言って、コタローの頭をわしゃっと撫でながら去る章

 「………ありがとう」

その際に、コタローだけに聞こえる声で礼を言ったのを誰も知らない



主賓の片割れにバレたことで完全シークレットではなくなったが、中断も混乱もない事が判明し
それからはみんなで急いで最後の準備に取り掛かった
ルカルカに来場を拒否られた某校長も、最後の意地か大量の花を用意してくれたらしく
それを飾り付けたところ、祭壇周りも花に溢れて華やかになり、女性陣が感嘆の声を上げたという

……もっとも、まだバレていない主賓がこれを目の当たりにしたら赤面して逃げ帰りそうだが……



そんな中、コタローは奏輝 優奈(かなて・ゆうな)が祭壇の前で何かを水に静めているのに気が付いた
興味深く駆け寄ってみると、スイレンの形を模した小さな花をいくつも繋げたネックレスだった

 「なにしてうんれすか?」
 「あーコタローさんか、いやなに昨日の話をきいてな、すこしお水様の力にあやかろうかと思ってな
  ここが、このままっちゅうわけにはいかんけど、少しでも思い出は残したいやろ?」

中央に浮かぶ本物のスイレンを囲むように無数の小さい花が置かれる様は
水に浮かぶ水晶の花畑のようで、二人は眼を細める
ふと思いついたように、コタローが手元の箱を開けた

 「らったら、こえもいいからなー?」

箱の中には綺麗にモールで作られたリングが二つ
いつの間にかそのやり取りを見ていた太壱が、呆れたように横槍を入れる

 「やめとけよ、モールは乾かなくなるぜ、せっかく作ったのに……しかし良く作ったもんだよな
  で、これ誰が渡すんだよ?」
 「……たい」
 「は!?俺?……いやいやいや、リングボーイなんて柄じゃねぇぞ!?」

あわてて提案を拒否する大男、だがそれで引き下がるかわいい姉気味ではなく、うーと睨みつけるのを見て
やれやれと頭をかいて答える

 「【ペンギン・アヴァターラヘルム】に運ばせるか……それでいいだろ、傍にはいるから」

その返答に顔を輝かせてうなずくコタロー


その様子を見ていた周りの者が一斉に笑い声をあげた