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ハーメルンの狂想曲

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ハーメルンの狂想曲

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五曲目

 シャンバラとコンロンの境で起きた一件は、早天党の敗北という形で決着を迎えた。
 あちこちでは降伏した早天党の兵士と洗脳されていた村人たちが治療を受けていた。
 クエスティーナ・アリア(くえすてぃーな・ありあ)はジョブスの傷を癒していた。
「む……? ここは?」
「あ、気がつきました?」
 ジョブスは真っ青な空を見ながら、全身の力を抜いた。
「負けたのか……他の兵士は?」
「みんな怪我はしてますけど、死んだ人はいませんよ。あの……ひとついいですか?」
「何かな?」
「どうして、革命をしようと思ったのですか」
 ジョブスはその問いにフッと表情を曇らせ、
「……私の妻はコンロンでの小競り合いで命を落とした……私の目の前でだ。……妻は死のまで私の名を呼んでいたよ……今も、声が耳から離れたことはない」
 クエスティーナが言葉が出せずにいると、ジョブスは話を続ける。
「妻の亡骸に泣きつきながら、ずっと考えていたよ。なんで人は争うのかって」
「それで……革命を?」
「その通りだ」
「そんなの……そんなの間違ってます!」
 クエスティーナは大声で叫び、ジョブスは思わず目を丸くする。
「だって……そうやって、人を操って争ったら……あなたと同じ境遇の人を生むかもしれないじゃないですか!」
「……馬鹿げた話しだろう? 誰にだって辿り着けそうな答えを私は……私たちはずっと無視してきたんだ。だから私はハーメルンを利用した。たとえ洗脳であっても争いが無い世界ならこの世が平和になると……妻と私のような存在はもう生まれないと信じて、な」
 ジョブスは一度大きく深呼吸してから視線をクエスティーナから青天井に向けた。
「思想統一は、私の……早天党の夢だった。が、『夢』は見たら醒めるのものだ。君らに敗れたことで……目が醒めた気がするよ」
 ジョブスは小さくため息をついて、
「今日をもって、早天党は解散する」
 ハッキリと、そう宣言した。