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★第二章・2.5「とある男の日記」★


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○月×日
 イキモのところで子供が生まれた。元気な男児らしい。……喜べない自分がいた。

○月×日
 イキモから、子供に会いに来てくれと手紙が来た。
 あいつは、どんな顔でこの手紙を書いたのだろう。
 俺が……俺が今どんな顔をしてこの手紙を読んでいると思っているのだろう。

 どうしてだ。なぜいつも、俺の元から誰かが去るたび、あいつの元に誰かが増えるのだ。

○月×日
 今日も手紙が来た。破り捨てた。
 仕事が忙しいと書きなぐったメモを送りつけた。

○月×日
 手紙が来なくなった。
 仕事に没頭した。

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 ここで突然日付が飛ぶ。

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○月×日
 あの日から1年が経った。……まだそれだけしか経ってないのかと絶望した。
 あいつから手紙がまた届いた。

 最後ぐらい顔を見てやろう。そう思った。


 笑顔で俺を出迎えたあいつは、俺にこう言った。

「息子の名付け親になってくれ」

 目の前の男を、今までもバカだバカだと思っていたが、本当にとんでもないバカだった。1年間も子供の名を決めずにいたらしい。さぞ周囲は困ったことだろう。

 だったら適当な名をつけて、さらに困らせてやろうと思ってバカ男の子供を見下ろした。

 青い瞳が俺を見上げた。



 気がついた時には、俺の口が勝手に動いていた。――我が子の名を、呟いていた。


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 日記はこれ以後書かれていない。