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リアクション
***
権兵衛を成仏させるために、色々と動き始めた契約者たち。
いまは数人の者たちが浜辺に出て、ビーチバレーをやるために準備を進めていた。
「権兵衛さん、みんなの準備が終わるまで俺とコレで遊ばないか?」
大岡永谷は、手にしたトランプを見せながら権兵衛にそういう。
「それは……花札のようなものですか?」
「トランプだね。もしかしてやったことないのか?」
「はい、そういうものに縁がなったもので……」
「そっか。まあでも、そんなに難しいものじゃないから、ちょっとやってみようぜ」
「そうですね。せっかくですから」
権兵衛はそういうと、永谷と向かい合う形で席についた。
「なんじゃ、トランプをやるのか?」
と、アリエティがそこへひょっこりと顔を覗かせる。
「ああ、アリエティも一緒にやろう」
「ふふふっ、いつもひとりトランプで鍛えておるワタシを誘うとは……後悔してもしらんぞ!」
(ひっ、ひとりトランプ……もしかして、アリエティって友達いないのか?)
永谷はそう思いながら、苦笑いを浮かべる。
と、永谷は誰かの視線を感じてふと視線を動かした。
するとそこにはじっとこちらを見つめるアリス・ドロワーズの姿があった。
「君もやるかい?」
「――いいんデスカ?」
「もちろんだよ」
パァと顔を明るくして、小さなアリスは自分の座っていた席から飛び降りると、永谷たちの元に向かう。
そして契約者であるアキラ・セイルーンに向かって声をかけた。
「アキラも一緒にどうデスカ?」
「んーっ、俺はいいよ。このラーメン伸びちゃうからさ」
アキラはそういうと、先ほどおばちゃんが運んできたラーメンをズルズルと啜った。
「それじゃあ、この4人でやろうか。ゲームはそうだな……簡単なババ抜きにしよう」
永谷はそういうとトランプを切り、カードを配る。
そして、配られたカードを皆はそれぞれ手に持った。
と、何気なく権兵衛に視線を向けたアリエティは目を丸くする。
「ごっ、権兵衛のカードが宙に浮いておるのじゃ!?」
「いやー実は私、物に触れられないタイプの幽霊らしくて……ただ念力のようなものがあるんでしょうかね? こうやって物を浮かせたりするのは得意なんですよ」
「なっ、なるほど」
アリエティはなんだかよくわからないが納得してうなずく。
と、配られたカードに目を通した権兵衛が真面目な顔になって永谷を見つめる。
「あの、すいません」
「なんだ?」
「この死神の絵が描かれた札はなんなのでしょうか? もしかして、これを持っていると呪われるとか……」
「違う違う。それはジョーカーといって、ババ抜きというゲームではそのカードを最後まで持っていたら負けになる。だから、人にわからないようにしてそれを引かせるんだ」
「ほぅ、そうなのですか」
「権兵衛さん、そうやって見せてたら誰も引かなくなるぞ?」
「あっ、それもそうですね」
権兵衛はそういうと、ジョーカーのカードをくるりとひっくり返す。
そして念入りにシャッフルをした。
「それじゃあ、ペアになってる数字のカードを捨ててゲームスタートだ」
永谷はそういうと、各自はカードを捨てていき、ババ抜きが始まった。
4人は時計回りにカードを引いていき、手持ちのカードはドンドンと少なくなる。
そして最終的に残ったのは権兵衛と永谷だった。
「ふふふっ、1番にあがってやったのじゃ。これもひとりトランプの成果じゃな!」
アリエティはない胸を張って勝ち誇る。
「権兵衛さん、がんばってくださいネ」
先にあがっていたアリスは、権兵衛を応援してニコリと微笑む。
「よし、引くぞ」
と、永谷はそういって権兵衛のカードに手を伸ばす。
「こっ、これはなかなか緊張しますね」
権兵衛の手持ちの札はジョーカーとスペードのエース。
相手がスペードのエースを引けば、その時点で勝負が決まる。
ドキドキとしている権兵衛は、相手の手が動く度に表情が変わっていく。
その様子を観察していた永谷は、ジョーカーの札を見抜き、スペードのエースを引いた。
「よし、上がり!」
「……まっ、負けた」
権兵衛はがっくりと肩を落とした。
アリスとアリエティはそんな権兵衛に向かって、「大丈夫デス、次がありますヨ」とか「初めてにしてよくやった方じゃ」と励ます。
そんなふたりの言葉を聞いて、権兵衛は嬉しそうに微笑んだ。
「戦いに負けても怒られないというのは、良いものですね」
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