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天の川よりの巨乳X襲来!?

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天の川よりの巨乳X襲来!?
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【十 MIB(メン・イン・ブラジャー)】

 件の焼きそばとカレーの集客効果は、絶大なものがあった。
 勿論、噂の二品を作っているのは、鋭峰とネージュの両名である。
 今ではふたりが厨房に立つ海の家の前に、相当に長い行列が出来上がっており、ルカルカや桃音といった面々が、注文を取ったり料理を配って廻ったりして、忙しそうに駆け巡っていた。
 そんな中、男体化し、ゴムボートの上でティセラ・リーブラ(てぃせら・りーぶら)と甘いひと時(?)を過ごしていた宇都宮 祥子(うつのみや・さちこ)も空腹には勝てず、ティセラともども浜辺に戻ってきて、ふたり一緒に行列に並んでいた。
「いや〜……男の体って、物理的な差異だけじゃなく、胃袋も全然違うものなんだなぁ」
 祥子は己の肉体変化に合わせて、わざと男性口調で喋っている。
 そんな男性化気分が刺激したのかどうかは分からないが、女性の時には感じたことが無い程の強烈な空腹感に見舞われ、正直なところ、目が廻りそうな勢いであった。
 ややふらつき加減の男体化祥子に、ティセラは心配そうな、それでいて幾分羨ましそうな視線を投げかけてきていた。
「何か……顔についてる?」
「いえ、そうではなくて……」
 一瞬いい澱んだティセラだが、しかしその直後、彼女は予想外の台詞を放った。
「わたくしも、男体化した方が良かったでしょうか」
「えぇっ!? いやいやいや、ちょっと待った。それはいかん。っちゅうーか、駄目でしょ、あーた」
 思いがけないひと言に、男体化祥子は目を白黒させた。
 冗談ていっているのかと思ったが、案外本気らしい。果たして、その心は。
「だって、物凄くお腹が空いてるのでしょう? 食事の時、一番のスパイスは空腹だといいます。お腹が空いてる時のお料理は、格別に美味しいのでしょうね」
 要するにティセラは、料理をより美味く味わいたいが為に、男体化もやぶさかではない、などといい出しているのだ。
 料理の腕は駄目なティセラだが、食べることに関しては、結構好きな方なのかも知れない。
「少し落ち着いたら、地球のグルメツアーなんかに参加してみるのも、良いかも知れませんわね」
 それは、男体化祥子にとっては重大な意味を持つひと言であった。
 ティセラは敢えて口にはしていないが、その視線から察するに、グルメツアーの同伴者として祥子を指名してきているのは、ほぼ明白であった。
(おぉ〜、ここここの展開わっ!)
 据え膳とまではいかないが、ティセラの思いに応えられなければ女が廃る。いや、今は男体化祥子だから男が廃る、と表現しなければならないのか。
 ちょっとややこしい。

 今回、五色の浜を訪れたリネン・エルフト(りねん・えるふと)は、男体化に挑戦した。
 勿論それは、フリューネ・ロスヴァイセ(ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ)に対する、ちょっとした悪戯心から生じた、他愛もない遊びに過ぎないのだが――。
「キミは、好きなひととか居るのかな?」
 男体化リネンは、不意にそう問いかけられて、思わず言葉に詰まってしまった。
 ニーネルと名乗り、フェイミィ・オルトリンデ(ふぇいみぃ・おるとりんで)のサポートを受けてフリューネと絡んでやろうと考えていた男体化リネンは、予想外の反撃に遭い、目を白黒させてしまっていたのである。
「だってキミ、ここでフェイミィや私をナンパしてるってことは、恋愛対象として普通に女性が好き、ってことじゃない?」
 本物の女体リネンと合流するまでの間、少しだけ時間潰しの相手にさせて貰うという設定で、ネーニルを名乗る男体化リネンは、フリューネとフェイミィを同時にナンパした中性的な顔立ちの少年たるスタンスでこの場に臨んでいたのだが、逆にフリューネの方が、妙に色っぽい仕草を見せて、男体化リネンを性的に挑発してきている。
 これは、シチュエーションとしては嬉しい限りかも知れないが、しかし今のリネンは、フリューネの知っているリネンではない。
 寧ろ、本来のリネン以外の人物に対し、フリューネが積極的にアプローチを仕掛けているという事実に、内心で変な嫉妬心を抱き始めている。
 尤も、その嫉妬の相手が自分自身なのだから、この複雑な感情のやり場も無い。
 流石にフェイミィも、すっかり困り果てた様子であった。
「あー……なぁ、フリューネ。そろそろリネンが来るかも知れねぇから、探しに行かないか?」
「じゃあ、フェイミィひとりで行ってきて頂戴。私はネーニル君と、もう少しお話していたいわ」
 こう出られると、もうお手上げである。
 フェイミィはこれ以上は手に負えないといった仕草で、フリューネに気付かれぬよう、見えない角度から男体化リネンに対して小さく肩を竦めてみせた。
 対する男体化リネンも、これ以上ネーニルとしてフリューネの相手をしているのが、段々苦しくなってきていた。いっそのこと、白状してしまった方が楽だ、とさえ思えてきた。
 正直なところ、本当に辛くなってきている。
 男体化リネンは、観念した。
「あの……実は、ちょっと大事な話があるんだけど」
「あら? 初対面の見知らぬ女に、いきなり大事な話を持ちかけるの? キミって、大胆だね」
 フリューネの意地悪そうな笑顔に、男体化リネンはもう泣きたくなってきた。
「えと、その……ご、ごめんなさい!」
 いきなり男体化リネンは、飛び退るようにして距離を取って、フリューネに対して頭を下げた。
「私、本当はリネンなの!」
「知ってたわよ」
 あっさり答えたフリューネに、男体化リネンとフェイミィは両目を大きく開き、呆然と立ち尽くす。
 そんなふたりの様子を可笑しげに眺めながら、フリューネはくすくすと小さく笑った。
「馬鹿ね、ふたりとも……気づかないとでも思ったの? 生憎だけど、ひと目見て分かったわよ」
 要するにリネンとフェイミィは、フリューネに悪戯を仕掛けるどころか、逆にからかわれていたのである。
 フリューネの方が、一枚上手であった。

 ルシア・ミュー・アルテミス(るしあ・みゅーあるてみす)を五色の浜に誘うついでに、自らは男体化した桐生 理知(きりゅう・りち)は、落下した巨大星を望む位置にビーチパラソルとビーチチェアを広げ、トロピカルジュースで喉を潤しながら、ちょっとしたガールズトークに興じている。
 曰く、今年の日本での流行は可愛い花柄のワンピースだとか、美味しいスイーツの店が新しく空京に出来たとか、好きなひとはどんなタイプだとか云々。
 ルシアもこの手の話は嫌いではないらしく、理知の振った話題には次々と食いついてきたのだが、しかしちょっと待って欲しい。
 ガールズトークとはいっても、今の理知は、男なのだ。
 分厚い胸板と、股間に生えるものが生えている、立派な男体なのだ。
 そんな理知がルシア相手に、まるで女子そのものの仕草と話し方でお喋りしている姿は、傍から見ていると、物凄い違和感に満ちている。
 尤も、ルシア自身、少しどこか天然っぽいところがあり、男体化理知との会話には何ひとつ違和感を感じてはいない様子で、極々普通に対応していた。
 それが余計に、周囲から奇異の目で見られているのであるが。
 当人同士が納得しているのだから、別に良いではないか、という見方もあるから、あまりとやかく論ずるべきではないのかも知れない。
 そんなふたりの世界を作り出している男体化理知とルシアの前に、突然、絹谷 姫百合(きぬたに・ひめゆり)が物凄く深刻な表情でぬっと顔を突き出してきた。
 驚かない方が、無理というものである。
「どわぁっ! な、何ですかぁ!?」
「こんにちは……わたくし、絹谷姫百合と申します。少し、お時間を頂戴出来ませんでしょうか?」
 いうが早いか、姫百合はいきなりぬっと手を伸ばし、水着姿のルシアの胸元を軽く触れてきた。
 男体化理知は思わず目を剥いたが、当のルシアは別段慌てた様子も無く、姫百合の好きなように自身の胸を触らせている。
 微妙な空気が、しばらくその周囲に漂っていた。
 が、それも然程長くは続かず、姫百合はゆっくりとルシアの胸から手を離した。
「ありがとう……ございました……もう、十分でございます」
 辛うじて喉の奥から声を搾り出した姫百合は、精神的ダメージを受けているかの如く、よろよろと定まらない足取りでその場を去っていってしまった。
「い、一体、何だったんだろう……?」
 流石に気になって仕方が無い男体化理知は、ルシアと共に情報収集してみたところ、以下のような経緯が判明した。
 姫百合はそもそも、ラナのマッサージ講座に参加し、美緒の胸を好き放題触りまくっていたのだという。
 ところが何かの拍子で、別の女性の胸に触れた。
 その際、姫百合は美緒の巨乳と他の女性の胸の感触が、然程に変わらないという事実に驚嘆の念を覚えたらしいのだ。
 美緒の巨乳を特別に神聖視する姫百合にとって、それは由々しき事態であったのだが、しかし現実は限り無く厳しい。
 結論として、美緒の素晴らしい巨乳も、感触という部分では他の巨乳と大して変わらない、というところに落ち着く。
 違うのはあくまでもそのサイズ、形、質量、ある部分では色合い、というところなのだろうが、実際の触感はというと、如何なる巨乳とも差は無いのである。
 特別な存在は下手に触らず、目で見て鑑賞するにとどめておくべし――これはある意味、人類普遍の真理であろう。
「ふ〜ん……そういうものなんだ」
「大きくても、触り心地は同じ、なのね」
 全くもってどうでも良いといわんばかりに、男体化理知とルシアは、素っ気無い表情で頷き合うばかりであった。