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天の川よりの巨乳X襲来!?

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天の川よりの巨乳X襲来!?
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【六 乳との遭遇】

 一方、水着コンテストでは予選が始まっていた。
 運営本部からの推薦で、本選参加が決まっている一部の巨乳美女達は予選を免除されているが、飛び入りの一般参加者には、予選通過が最初の難関として立ちはだかるようになっていた。
「うむむ……勢いで参加してみたものの、こいつぁ場違いだったかな」
「え〜、そんなことないよ。とっても面白そうじゃん」
 シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)がいささか渋面を浮かべている隣で、金元 ななな(かねもと・ななな)が心底楽しそうに、あははと笑う。
 シャウラは本来男性であるが、なななと一緒に遊んでいるうちに五色の海域上をホエールアヴァターラ・クラフトで通過し、ハンドル捌きを誤って女体化の海へと突っ込んでしまったのである。
 それ以前はというと、シャウラの中ではすこぶる順風満帆だったといって良い。
 中々良い雰囲気でなななとのデートを過ごし、さりげない流れの中で、自分の気持ちも伝えた。
 尤も、ななな当人はほとんど聞き流してしまっていたのか、これといった反応は見せていなかったが。
 しかしシャウラ自身は、なななが心底楽しそうにしている姿を見て、もうそれだけでも満足だった。後はこの勢いのまま行けるところまで……というのが当初の目論見だったのだが、女体化の海に頭から突っ込んでしまってからは、全ての歯車が狂い始めていた。
 そして今、シャウラはなななと一緒に、水着コンテスト女子の部に参加する運びとなっている。
 これも運命の悪戯か、シャウラはなななを相手に廻し、『女として』戦うことになってしまったのだ。
 そんなシャウラとなななのやり取りを、複雑そうな面持ちで眺めている二人組がいる。
 世納 修也(せのう・しゅうや)と、ルエラ・アークライト(るえら・あーくらいと)の両名であった。
 このふたりも水着コンテスト女子の部への参加を、先程申し込み終えたばかりだったのだが、ルエラはともかく、修也は完全に本人の意思を無視して、無理矢理参加させられているという身分であった。
 即ち、修也もまた、女体化してしまっているのである。
 シャウラの場合は事故の結果、勢いでなななと一緒に参加、という分まだ救いがあるが、修也はルエラが仕掛けた包囲網に引っかかり、己の意思に反して女体化した挙句に、水着コンテスト参加という地獄を見る破目に陥っていた。
「くそっ……何で……何で、俺が……」
 スナイパーライフを抱きかかえたまま、修也は辛うじて己の精神を維持させるかのように、ひとりぶつぶつと呟いている。
 翻ってルエラは、辛気臭い雰囲気を漂わせている修也の肩を、ばしばしと盛大に叩いて笑った。
「ほーらほら、ノリが悪いよ! 折角笹飾りくんが用意してくれた舞台なんだから、もっと楽しまなきゃ!」
「いや……俺……頼んだ覚え無いし……」
 物凄く迷惑そうな表情でルエラを睨む修也だが、結局形としては、引っ張り込まれながらも参加用申込書に自筆でサインをしてしまったのだ。
 修也の心の奥底のどこかに、女になった自分の可能性を試してみたい、という心理が隠れているのではないだろうか。
「だぁ〜いじょうぶだって! ちゃんと女の子してるから、気にしなくても良いよ!」
「だから、そういう問題じゃないんだって……」
 尚も暗い顔つきでルエラをじろりと睨む修也だが、ルエラにしてみればどこ吹く風である。
 一方、シャウラとなななの側はというと、シャウラ自身がもう完全に開き直ったのか、ふたりして、
「いくぞー!」
「おーっ」
 などと気合の声を上げている。あれはあれで、楽しんでいるのだろう。

 水着コンテスト女子の部に参加する者の皆が皆、己の意思で参加している訳ではないというのは、修也の例を見ても明らかであったが、しかし何も女体化した男性だけに限った話ではない。
 元来の肉体が女性であっても、色々な事情から、水着コンテストへの参加そのものに振り回されている者も、中には居る。
 その典型が、水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)であった。
 ゆかり自身は、水着コンテストそのものには何らアレルギーのような感情は抱いていないのだが、マリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)の陰謀が加わったことで、様相は一変した。
「こ……これは……?」
 簡易ロッカールームで、ゆかりは漆黒のクロスワンピースの水着を手にして、明らかに動揺していた。
 対してマリエッタは、してやったりの表情で内心、ほくそえんでいる。
 下手なビキニなんかよりも遥かにセクシーなデザインのクロスワンピースは、余程自分のスタイルに自信が無ければ、寧ろ逆に、着用者にとっては精神への凶器と化す。
 そういう意味では、ゆかりのこの動揺はクロスワンピースによるダメージを最も如実に受けた結果であるといって良い。
 マリエッタはというと、タータンチェック柄のセパレートタイプを予定通り着こなしており、五色の浜でバストアップを果たしたゆかりとは対照的に、ナチュラルな可愛らしさでの勝負に打って出る格好となっていた。
「あー、それすごーい。セクシーじゃない。カーリーぐらいの年なら、それぐらいアグレッシブに攻めた方が断然良い結果になるよ、絶対」
 自分がすり替えました、などとはおくびにも出さず、困惑する一方のゆかりを笑顔で囃し立てるマリエッタの狡猾さは、ある意味恐ろしいともいえる。
 もうこうなったら開き直るしかない――妙に決意めいた表情でクロスワンピースに着替え始めたところで、不意に背後から感嘆の声が漏れた。
 声の主は、同じく水着コンテストに出場する隠岐次郎左衛門 広有(おきのじろうざえもん・ひろあり)であった。
「これはなかなか……体の線を強調し、且つ胸元の色香を存分に振りまく……何と見事な……」
 広有自身もそれなりのスタイルを誇り、ゆかりやマリエッタからしてみれば明らかに強敵ともいうべき存在であったが、広有はひたすら、ゆかりのクロスワンピースで強調される胸元に、感心したような視線を投げかけてきている。
 こういわれると、ゆかりも悪い気はしない。
 最初は戸惑い、ひたすら焦りに焦っていたがゆかりだったが、だんだんその気になってきた。
「そ、そんなにセクシー、ですか?」
「いや、実に素晴らしいですな。それがしも、見習わなければなりません」
 人間というものは、単純な生き物である。
 褒められると悪い気がしないのは当然といえば当然だが、それまで困惑の念しかなかったゆかりの脳内がすぱっと切り替わり、水着コンテストに向けて、いわゆる戦闘モードに突入したのだから、何が起きるか分からないものである。
 このゆかりの変化には、マリエッタが一番、驚いていた。
「うーん……これは案外……カーリーが一番のライバルになる、かも」
 悪戯して、ゆかりが困惑する姿を楽しむ腹積もりだったが、思わぬ形で敵に塩を送る結果となった。
 マリエッタも、うかうかしていられない。

 水着コンテストの予選は、意外な盛り上がりを見せている。
 観客席では榊 朝斗(さかき・あさと)アイビス・エメラルド(あいびす・えめらるど)が、ルシェン・グライシス(るしぇん・ぐらいしす)の予想外のパフォーマンスに驚きつつも、一応は声援を贈ってはいる。
 逆に、ルシェンのことを良く知らない他の観客達は、やんやの喝采と大きな拍手で場内を沸かせていた。
 もともと、ルシェンは水着コンテストに出るつもりは無かったのだが、日頃から、ネコ耳メイドあさにゃんを強要されている朝斗の仕返しで、本人も知らないうちにエントリーされてしまっていたのだ。
 アイビスも一切止めようとはしなかった為、結局ルシェンは出場を余儀なくされてしまった。
 また、エンヘドゥが本選に出場するという話もあり、何とか気持ちを落ち着かせて予選に出場したルシェンだったのだが――。
「ルシェンって、あそこまで吹っ切れる性格だったっけ?」
「さぁ……あれは流石に、私のメモリー内にも記憶されていませんね」
 朝斗とアイビスが戸惑うのも、無理は無い。
 ルシェンは最初のうちこそ恥ずかしそうに舞台の上でもじもじしていたのだが、拍手や声援を浴びているうちにだんだん気分が高揚してきたのか、或いは変な電波が宇宙から飛んできたのかは分からないのだが、長身ながらそれなりに均整の取れたプロポーションで、いきなりマッチョマンポーズを取り始めたのである。
 これには朝斗もアイビスも、すっかり度肝を抜かれてしまった。
「あれって、多分ハルク・ホーガンかウサイン・ボルトの、勝利のポーズ、だよね」
「さまになっているのが、却って恐ろしいぐらいですね」
 朝斗もアイビスも、ルシェンがある一線を越えると女王様に変貌する性格であるのは知っていたが、今、舞台の上のルシェンはどちらかというと、女帝である。
 見ている方が、恥ずかしくなってきた。恐らく、後でルシェン自身も我に返った時に、顔から火どころかプロミネンスが噴き出ることだろう。
 妙にいたたまれない雰囲気が漂い始めてきた朝斗とアイビス周辺だが、そのすぐ隣の席では、ひと組のカップルらしき男女が、興奮した様子で熱い声援を贈っていた。
「す、すげぇ! あのひと、すげぇよ! 俺、予選はあのひとに投票するぜ!」
「はいっ! 私も、あのルシェンさんって方に入れますね!」
 風祭 天斗(かざまつり・てんと)と、七瀬 灯(ななせ・あかり)の両名であった。
 今回天斗はパートナーの風祭 隼人(かざまつり・はやと)とは離れて、個人でこの五色の浜を訪れて、ひたすらナンパに走っていたのだが、そこに引っかかったのが、ラトス・アトランティス(らとす・あとらんてぃす)のパートナーである灯であった。
 灯は人体変化の海には敢えて挑戦せず、ひとりでゴムボートを借りて沖合に漕ぎ出すなどして遊んでいたのだが、矢張り女性ひとりというのは、却って目立つものである。
 天斗が灯を見逃さなかったというのは、ある意味、必然であったともいえる。
 灯も、殊更に断る理由も無かった為、天斗のナンパに応じてみたのだが、まさか水着コンテストの観客席で、ここまで一緒に盛り上がれようとは、本人にも全くの予想外であった。
 そんな天斗と灯のはしゃぎっぷりを尻目に、朝斗とアイビスは互いに顔を見合わせ、はははと渇いた笑いを漏らした。
「いや……世の中、分からないものだね」
「水着コンテストでマッチョマンポーズが受けるだなんて……案外、世間はこういうのを求めていたのかも知れません」
 若干、学術的な話になり始めてきたが、後でルシェンが顔を真っ赤にして恥ずかしがるのだけは、間違い無さそうである。